第162回国会 衆議院 厚生労働委員会 第24号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
 きょうは、五人の参考人の皆様、朝早くから国会においでいただきまして、貴重な御意見、大変にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 私たち公明党は昨年の九月、障害を持つ方々の就労支援ということで、次のような申し入れを行ってまいりました。障害を持つ人の就労支援について雇用と福祉が連携するよう法律に明記をする、また法定雇用率制度に精神障害を持つ人を適用する、また在宅就労を促進する施策を行うなど、五項目にわたりまして厚生労働大臣に要望を行いました。

 今回、障害者の就労に重点を置いた支援策の見直しとともに、関連法案として今回審議をされておりますこの障害者の雇用の促進に関する一部改正法案、精神障害者を障害者雇用率制度に加えることなどを中心とした法改正となっておりまして、公明党の要望にも沿ったもの、大変評価できるものというふうに考えております。

 まず最初、竹中参考人にお伺いをしてまいります。
 私も、竹中参考人のあの「ラッキーウーマン」を読んだことがございます。大変エネルギッシュな行動力、本当に勇気を与えていただけるものと大変感動いたしました。また、ユニバーサル社会の構築というものも目指していらっしゃるということでございます。障害を持つ方々をチャレンジド、障害者と呼ぶのではなくチャレンジドというふうに呼ぶ、また、ITを活用することによって、それもあるコンピューター会社から支援を受けてという、そういったさまざまな企業、また多くの人々を味方にしながら、障害を持つ方々の能力を最大限引き出して、そしてすべての人を納税者に、タックスペイヤーにという発想、就労支援を展開されていること、これは本当に障害を持つ方々にとっては大きな喜びだと、希望を与えているというふうに考えております。

 竹中参考人はこれまでも、日本の障害者が働くことを支援する法律というのは法定雇用率の義務化しかないとおっしゃっています。これには、企業に通えなければならない、一定時間以上決まって働かなければいけない、介護は不要など数々の制約があり、重い重症な方々には大変厳しい、難しい仕組みになっていると思います。私は、雇用率という数字ではなく、個々の力を評価し、またそれを最大限引き出せる環境を積極的につくることが求められていると思っております。

 障害者雇用促進法改正案では、障害者の在宅就業支援として、自宅等において就業する障害者に仕事を発注する企業に対して特例調整金等を支給すること、また、在宅就業に対する発注の奨励、在宅就業を支援する団体の育成、さらに、障害者福祉施策との有機的な連携策も充実した内容になっております。

 この在宅就業支援について、竹中参考人が主張されてきた新しい仕組みではないかというふうに感じるんですが、この支援策の効果と期待、先ほどの意見陳述のほかに、さらなる御提案があればお聞かせいただきたいと思います。

○竹中参考人 ありがとうございます。プロップの活動を御評価いただきましたことを大変感謝いたしたいと思います。

 先ほども言いましたように、国会議員の皆様方が、この方向に向けて、自立に向けて取り組んでいただくという、大変感謝申し上げているところですけれども、とりわけ、やはりこういった国柄にかかわる部分は、政権与党に携わられる皆さんが何よりまず御尽力をいただかねばならないというふうに、大変ずうずうしい言い方ですけれども、思っております。そういう意味で、与党の皆さん、とりわけ今公明党の皆さんがこの方面に大変お力を注いでくださっていらっしゃるということには、心から感謝をしたいと思います。

 今おっしゃいました在宅就業なんですけれども、今まで雇用一辺倒といいますか、働くということはイコール雇用なんだというのは、これは別に障害を持つ人に限らずすべての人に対してやはりそのような概念で来たわけですけれども、一定時間働くことが無理であるとか、通勤をすることが困難であるとか、それから身体のさまざまな、あるいは精神面のさまざまなサポートが必要であるというときには、自然に、いつかしら雇用というものの枠からも外されてきたというのが現実でした。そういう人たちは福祉の受け手、つまりタックスイーターとして存在をするのだというのが当たり前のような概念でこの法が進んできたわけです。

 ところが、私どもプロップ・ステーションを通じて、コンピューターやあるいはさまざまな技術を磨いて仕事を始めたチャレンジド、今も御説明いただきましたけれども、障害を持つ人のマイナスではなくて可能性のところに着目をした新しい呼び方なんですけれども、このチャレンジドの皆さん方が技術を磨かれ、そして、その人の体調の許す範囲で、体をつぶしてしまわない状態で、身辺の介護等もあるいは精神の介護等も受けながら働けるという仕組みができてきたわけです。

 しかし、この仕組みをつくったのは、法ではなくて、実際のチャレンジド自身が、私たちのできることをまず学ぶことで磨いて、そして磨いたことを仕事につなげる私たちのような、プロップのようなグループをみずから一緒につくり上げてきて、そして、働き方といいますか、働くことを推進していき、そして今、その実態ができたことに、法律が自立支援という形で支援をしようというふうに新しい法も生まれてきたわけです。

 これは、私はまさに自治というものだろうと思っているんですね。だれかが何かをしてくれるのを待つのではなくて、自分たちにとってこのような働き方ができるよということを自分たちで見せてきた、その結果がこの法につながったと大変感謝しておりますけれども、とりわけ、雇用ではなくて在宅の人たちにどれだけのアウトソーシング、お仕事が出ていくかというところがここの一つはポイントだと思います。

 それと同時に、そのお仕事の種類も、決してITだけではなくて、さまざまな物づくりのお仕事もアウトソースが可能だと私は思っておりまして、そういったアウトソースを進めるという法の後ろに、どんなものを進めていけるのか、あるいは、私たちのようなこういうコーディネートをする組織をどれだけふやしていけるのかといったようなところがついてこないといけないのだろうと思います。

 ただ、それを法に任せるのではなくて、私たち自身も、このようにすればできる、このようなアイデアもあるということを自分たち自身でどんどん発信をし実践をしていきながら、それがよりよき法の中身の充実につながるようにしていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、大村委員長代理着席〕

○古屋(範)委員 ありがとうございました。
 ITだけではなく物づくりにもという御意見がございました。

 私も以前に、これは柏市にありますNPOなのでございますが、コンクリートの平板をつくっているところがありまして、三十センチ四方くらいのコンクリート平板なんですが、そこに廃材を利用しまして、廃材といっても大理石まで廃材になってしまうんですが、タイルのようなものをコンクリートに模様をつけて埋め込んでいく。やっている方々は知的障害者の方々でありまして、ただ、でき上がったコンクリート平板というものは大変美しい、むしろ本当に芸術的な価値があるというような色鮮やかなものでありまして、そういった才能を持っている知的障害者の方々が、また非常に多い。また、そういうところで能力を発揮できるのだなということを感じた経験がございます。

 先ほども、グラフィックに大変力を発揮されている方がいるというお話がございましたけれども、このような障害者の方々を雇用していくということは、やはり生活そのものとかかわりながら支援をしていかなければいけない。ただ仕事をというだけでは済まない面が多いと思いますし、また、精神的なバックアップとか、あるいはもしかしたら家庭とかいろいろな意味での大きな支援が必要なのではないかと思っております。

 そうしたきめ細やかな支援、職業訓練とともに、ITを使わないそういった知的、精神障害者などの方々への就労支援、もしほかにもございましたら御提案をお伺いしたいことと、それから、先ほどスウェーデン、アメリカの例を引かれて、これから障害の有無、また年齢、性別にかかわりなく、あらゆる人がそれぞれのスタイルとまた働き方ができるような社会にしていかなければいけないと私も考えておりますが、このような中でアメリカでは、ADA、障害を持つアメリカ人法というのがあるというふうにおっしゃっていました。日本においてこうした法整備というものの必要性について御意見があれば伺いたいと思います。

○竹中参考人 今、法律についての御質問が出ましたので、少し、私の知り得る限りのお話をさせていただきたいと思います。

 ADA法というのは、先ほども少し述べましたが、障害を持つアメリカ人法ということで、障害を持つ人も、持たないアメリカ人と同じように自分の力を世の中に発揮しタックスペイヤーになっていく権利があるのだ、その権利を平等に与えようという法律なわけですね。日本では、残念ながら、タックスからどれだけ手当てができるかというところに主に集中されてしまっていたわけですけれども、アメリカやスウェーデンでは、既にそういう考え方を根幹から変えていったという非常に大きなものだろうと思います。

 特にこのADAが重要視しているものが数々あるんですが、教育の部分が実は大変大きいです。というのは、日本でも学歴社会とかそういうふうにずっと言われてきましたけれども、障害の重い方々はまさに教育の中でも分離されてきて、なおかつ高等教育に進んでいくということに非常に困難性のある我が国です。

 しかしながら、アメリカは、このADA法と、それから、今のブッシュ大統領のニュー・フリーダム・イニシアチブという、新しいユニバーサル社会に向けての構想と、例えば高等教育、大学教育におけるチャレンジドの学生の比率を、全米平均を一〇%にしようじゃないかという大きな数値目標が立てられております。一〇%という数値は、ほとんどすべての障害の種類の方が大学に進学できるようにしようということを意味しているんですね。アメリカでこの方面が進んでいるジョージ・ワシントン大学では現在七%になっていて、決していわゆる身体障害の方だけではなくて、認知的な御障害や、それから読書力の問題であったりLDであったり知的ハンディであったり、さまざまな、日本では問題児とかいうふうに片づけられてしまいがちな人たちが、小中高の教育を受けた上に大学まで進学できる、そのためのさまざまな、物理的な、科学的な、あるいは人的なサポートがあるというような状況を生み出しています。

 現在アメリカは全米平均が四%、大学におけるチャレンジドの平均は四%なんですけれども、では、翻って日本では何%なんだろうというと、残念ながら〇・〇九%という状況ですね。つまり、私たちは国民全員で、重い障害を持つ人たちを教育の場からも、残念ながら受け入れずに来ていながら、かわいそうな人たちと呼んでいる。ここのところにやはり私たち全員がそろそろ気づかないといけないんじゃないかなというふうに思います。

 そして、まず、そういうふうに、すべての人に教育とそれから堂々たる地位が必要であるということがこのADAの主眼になっておりまして、ことし、ちょうど五月一日から一週間、ADAの研修ツアーというのでアメリカへ参りましたけれども、私たちが出会ったさまざまな省の官僚の皆さんの中に、大変重い障害で電動車いすに乗っていたり、白いつえをつかれていたり、盲導犬や聴導犬を連れていたり、テーブルの向こうでノートテークが必要な方が、日本でいうならば霞が関の幹部職員でいらっしゃる。政策を国民に送り出す側にいらっしゃる。もちろん政治家の中にもそういう方が多数いらっしゃったのを拝見しました。

 ですから、やはり人の意識が変わるということと、法律が生まれる、変わるということが、この両方がとても大事なのかなと私は思っていて、そういう意味で、単に障壁を除くバリアフリーではなくて、その人が力を世の中で発揮できる、そして支える側にも回れるユニバーサルという、こういう法案がぜひぜひ生まれていただきたいなというふうに思っています。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、輪島参考人にお伺いいたします。
 私も昨年、ソニー株式会社の視察に行かせていただきまして、そこは光という子会社がありまして、知的障害者の方々が清掃と郵便物の仕分け、この二つの仕事に携わっていらっしゃる。清掃といっても、ここをきれいにするということが障害者の方々にとっては実は大変難しいことでありまして、雇用されている側も、ある意味、生活のことですとか、また、毎日出勤してくれるかどうか、そのような感じで非常に御苦労されながら情熱を持って雇用に取り組んでいらっしゃるということを伺いました。やはりそれは創立者のそういったポリシー、社会に貢献をするというものからも発しているということも、そのときお伺いをいたしました。

 やはり、今、こうした福祉的な就労から一般就労に移行した者が年間わずか一%という中で、企業の側として、やはりトップの方が、これは女性の雇用に関しても同じことが言えるんですが、トップのポリシー、考え方というものが非常に大きく反映してくるのではないかと思いますが、今後の方向性等についていかがお考えでございましょうか。

○輪島参考人 障害者雇用、また御指摘のとおり女性の雇用、社会への参画というようなことも、同じようなとらえ方で企業のトップの理解ということが重要だというふうに御指摘をいただいて、確かにそのとおりだというふうに思っております。

 特に障害者雇用の観点からいきますと、先ほど申しましたように、全体的には着実に雇用率への取り組みということが進んでいるというふうに思っております。その中で、特に最近はやはりコンプライアンス、それからCSRということで、企業がどのように社会的な責任を果たしていくのかという新しい観点も取り入れられて、むしろ企業のトップはそういったことに今後非常にセンシティブになっているのではないかなというふうに思っております。そういったことも反映して、障害者雇用への取り組みというようなことも進んでいるのではないかなと思っております。

 また、行政の方の考え方も、行政指導、特に障害者雇用率の達成のための行政指導のあり方ということにつきましても非常に厳格に運用するようになっておりまして、企業名の公表等々につきましての指導の基準というものも明らかにして、その基準に合致しなければ企業名を公表しますというような指導方針に大きく転換をしております。

 企業もそういうことは十分に理解をしているわけでございまして、そういったことと相まって、企業の理解を得られるように今後とも努力をしていきたいなというふうに思っているところでございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、土師参考人にお伺いいたします。
 年間、昨年八十一名の就労、その手助けをしていらっしゃる、また、こうしたシステムを構築されている、三百五十六人の障害者の方々への支援をしていらっしゃるということで、すばらしいシステムであるというふうに感じました。民間だからこそこうしたことができるのではないかというふうに逆に感じたわけなんですけれども、こうした民間のすばらしいシステムをもっともっと拡大していかなければいけないというふうにも感じました。

 そこの、民間だからこそできる、しかし、このところへの公的支援で必要なものというものがあれば御意見を伺いたいと思います。

○土師参考人 特に、NPO法人障害者雇用部会というのは、民間の集まりでございまして、雇用の場の拡大ということを一つの目的とさせていただいています。実際には非営利でございますので手弁当でみんなやっておりますが、そのNPOに参画していますのが、知的障害者を中心に雇用する企業が今二十三社ほどでございます。

 一つ今のお話の中でつけ加えさせていただきたいと思いますのは、それぞれの企業は、特例子会社の設立要件は今五人新しく雇用しろということでありますが、昔は十人だったと思いますが、それぞれの企業さんが一年、二年後には倍、三倍にみんななっている。例えば、十人でスタートしたところが四十人になっているとか三十人になっているとか、半年ごとに六人ずつふやしていっているとか、そういう部分があるんですね。これは、雇用する企業にとっても、この特例子会社という制度は、特に知的障害者を雇用するという面では大変いい制度だというふうに思っております。

 また、そこでの定着率といいますのは、日本経団連さんの方で特例子会社のアンケート調査がございますが、定着率九三%なんですね。そういう意味では、決して知的障害者が働けないとかそういうことではなくて、先ほども御説明させていただきましたが、企業の理解と支援と育てるということがあればそれで十分だと思っています。

 ただ、今、国の方でグランドデザインがいろいろ検討されておりますが、早くあの方向で決めていただきたいと思いますのは、実際に私どもの施設から就労させても、一人頭二万一千数百円しかないわけですね。実際に、年間二百万で考えますと、一月十六万や七万のお金をいただいて支援をしている、支援費はそうなっております。ところが、就労させるということはわずかそれぐらいであるということと、就労した後の支援も、一月以内の支援で先ほどと同額がつくぐらいで、では、一月たったらその働いた人はどなたが支援するんだということもないわけですね。ですから、就労ということをお考えになるのであれば、そういう福祉的な制度も変えていただくということが私は必要だというふうに思っております。

 もう一つは、今回の論議で少し外れているのかと思いますが、教育の分野なんですね。
 私どもの就労援助センターで三百数十人の就労を出しておりますが、本来なら、養護学校を卒業してその人が働き続けられるということ、そのための支援があるべきだというふうに思うんです。私どもは在宅の障害者が対象でございますから、ドロップアウトした人を再就職させる。ドロップアウトした人というのは精神的なメンタル面の負担もあるでしょうし、それから、私ども登録していただいて、本人が何ができるかということも時間をかけて見なきゃいけないとか、いろいろございます。基本的には、やはり、養護学校の就職率を上げると同時に、養護学校を卒業した人をどう支援するかということもあわせて御配慮いただきたいと思うんです。

 加えまして、就業・生活支援センターを見てみましても、大変低額でございます。神奈川の私どもは二千六百万からスタートしました。国の事業は千五百万とか六百万だと思います。実は、就労させるということはプロでなくてはできない部分だと思うんですね。福祉的な専門家でありながら、企業との連携をきちっととれる、働くことを理解する、そういうプロでなくてはいけないと思うんです。私は、数をふやすことも大事でありますが、就労支援にかかわる、生活支援にかかわる人たちのレベルを上げるといいますか、処遇を上げるということももう一つ必要なんだと思っています。
 ありがとうございます。

○古屋(範)委員 大変ありがとうございました。
 本日の御意見を踏まえまして、さらに審議をしてまいります。ありがとうございました。

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