第180回国会 衆議院 厚生労働委員会-17号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、生活保護改革、特に働くことができる人の自立を促す包括的な支援策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 高齢化、また景気の低迷などの影響によりまして、生活保護を受けている人が今年三月時点で二百十万八千九十六人であります。昨年七月以降、九カ月連続で最多を更新しております。高齢者のほか、失業などを理由に働き世代の受給者もふえておりまして、今年度の総給付額三兆七千億円を上回りまして、二〇二五年度には五兆二千億円、四〇%増へと増大をしていく見通しでございます。

 生活保護受給者がふえる要因としては、生活困難な高齢者が増大をしていること、それから、リーマン・ショックを契機に、働けるのに生活保護に頼る働き盛りの人たちがふえた、このように言われております。働ける人たちが自立できるよう、この生活保護制度の見直しを早急に図る必要があると考えます。

 公明党は、二〇一〇年十二月に発表いたしました新しい福祉社会ビジョンの中で、将来における貧困の拡大や格差の固定化を防ぐために、社会保障制度を再構築し、個人の努力や選択に起因しない不平等な社会構造の問題解決に取り組む必要がある、このように主張しております。

 現在の生活保護制度は受給のハードルが高い、その一方で、一度受給者になるとなかなか自立できない、利用しにくく出にくい制度であると言われております。単なる生活保護費の抑制ありきではなくて、私は、入りやすく、また出やすい制度にすることが重要であると考えます。

 そこで、入りやすい政策についてなんですが、虚偽の申請等に対しては厳格な罰則を定めた上で、手続の簡素化、あるいは書類審査による短期救済を実現することが必要なのではないか、このように思いますけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

    〔委員長退席、長妻委員長代理着席〕

○小宮山国務大臣 基本的には、今委員がおっしゃったように、必要とする人にはなるべく早くちゃんと受けてもらえるようにして、そこから出やすい制度にするというのは基本的な考え方だというふうに私も思います。

 そして、お尋ねの件ですけれども、生活保護は、御承知のように、利用できる資産ですとか能力、そのほかあらゆるものを活用していただくことが前提ですので、生活保護の受給を申請した人に対して、生活状況などの聞き取りですとか、収入や資産などに関する書類の提出などを通じて、生活保護の要件を満たしているかどうか、これを確認することは必要です。ただ、できる限り速やかに保護を実施するかどうかを判断できるように、書類などが複雑な部分があれば、まだ検討する余地があれば、そこのところはしていきたいというふうに思います。

 福祉事務所は、保護を必要とする人が急迫した状況にある場合などには、申請を待たずに職権によって保護を決定することができるという仕組みもございますので、そうしたこともあわせて、全体をよい形にしていきたいと思います。

 また、ことし秋に策定予定の生活支援戦略の中では、経済的な困窮者、社会的孤立をしている人を早期に把握することについても検討することにしています。民間の事業者との連携も強化をしながら、地域で支援を必要としている人に着実に支援がより早く届くように、その仕組みを整えていきたいというふうに考えています。

○古屋(範)委員 大臣今おっしゃいましたように、入りやすく出やすい生活保護への改革、これも早急に行っていただきたいと思います。

 次に、子供また若者が将来生活保護に陥らない、そのための施策についてお伺いをしていきたいと思います。

 具体的には、受給者の自立に向けた職業訓練、あるいは働く意欲を促す、その働く手前のボランティア活動、こうしたものを、生活保護を受給しながら、日常生活の再建、就労、地域社会への参加、これがスムーズにできる方向に変えていかなければいけない。

 中でも、貧困の連鎖を防止するために、子供、若者への教育支援が非常に重要です。無業あるいは低所得、将来無年金、その遠因というのはやはり教育にあると思います。やはり、中学卒業あるいは高校中退者、こういう方々への支援というのが非常に重要だと考えております。学業を中断した人、また、職業訓練を受けなかった方、この再起のチャンスをどう与えていくのか、まだまだメニューが足りないのではないかと思います。

 私は、先週、七月の二十四日なんですが、こうした取り組みを行っております横浜の磯子区にある株式会社K2インターナショナルジャパンに行ってまいりました。ここでは、グループ組織のNPO法人などと連携して、若者の自立、生活支援、また、就労支援、不登校支援など総合的に取り組んでおります。二〇一〇年からは横浜総合高校への訪問事業を行っております。二〇一一年からは基金訓練で戸塚定時制高校卒業生が自立に向けたプログラムを実施しています。

 横浜市内の定時制高校に通う、働きながら通学する生徒の半分、五割が自分の収入で家計を支えている。ですから、K2インターナショナルジャパンの方も、やはり今この定時制高校が高校生にとっての最後のセーフティーネットのような存在になっているとおっしゃっていました。そこで、入学時の生徒数が、中途退学によって、結局、最後は半減をしてしまう。キャリアカウンセラーが週一回学校を訪問して個別就労支援などを行っているそうです。

 そこには、児童養護施設を転々として、最後はもうお財布に数百円しかなかったとか、あるいは発達障害を抱えている、あるいは長期間引きこもりをしている。最長二十三年間引きこもりだったという方がいらっしゃいました、ここの相談窓口の受付をしていましたけれども。

 そういう若者に対して、医療機関と相談しながらアドバイスをしていく、カウンセリングをしていく。また、この中に食堂があって、にこまる食堂、全部が二百五十円のメニューでやっている食堂なんですが、そこで働いたり、学童クラブで子供たちの面倒を見たり、また、農場も借りて野菜をつくったりして、その野菜で食堂を経営していく。寮があって、やはり寮に入ってもらって生活を支援しているようであります。

 こうしたNPO、また、企業の自立支援プログラム開発や人材育成について、財政上、制度上の裏づけを行って普及を促進していくべきではないか、このように思いますが、大臣、いかがですか。

○小宮山国務大臣 今委員から神奈川での例をとって御説明をいただきましたけれども、おっしゃるとおりだというふうに私も思います。

 この秋めどにつくります生活支援戦略、これも、生活困窮者の支援を体系的にすることと生活保護の見直しを両輪としてやりたいと思っているんですが、これは、七月五日の国家戦略会議で今回の生活支援戦略の中間まとめも報告をしています。

 その中に、今おっしゃった、NPOとか社会的事業をしている民間と協働、最初、この厚労省の中でも民間を活用してと言っていたので、活用ではない、ともに働くのだ、協働だということをずっと今徹底しておりまして、NPOや民間機関との協働によって、一般的な就労はできないけれども、サポートをすればできるという方に、今おっしゃった、社会的な自立に向けたサポートつきの中間的就労などを含めた多様な就労機会を確保するということを一つの大きな柱として盛り込んでいます。

 今後、社会保障審議会に設置されました特別部会で、制度化に向けてさらに具体的に進めていきたいというふうに考えています。

○古屋(範)委員 二〇一〇年の国勢調査によりますと、若者男性、十五歳から三十四歳の無業者数というのが約二十万二千人、それに対しまして、中年、三十五歳から五十四歳の男性の無業者というのは約三十万人ということで、実は中年の方が一・五倍も多くなっています。これは、中年で約三万二千人も増加をしている。五年間で無業の高年齢化が進行した。この世代が、かつて無業であった方がとうとう中年に至っているということが言えるかと思います。そして、学歴が低いほど無業からの離脱が難しいという研究結果もございます。ですので、そうならないために、まず高校生あるいは若者へ生活支援、就労支援を徹底して行っていくことが将来のためになる、このように思います。

 そこで、病気とか障害を抱えていたり、また育児や介護などで仕事につけないなど、生活困窮に陥りやすい人々がいかに自立をして貧困水準を上回る生活を送れるようにするのかという問題の取り組みも必要だと思っております。必要なのは再教育また職業訓練制度のさらなる拡充であります。

 昨年十月から始まりました求職者支援制度、これは自公政権当時にも予算措置をしていたものを、政権交代をし、法制化したものと理解をしております。しかし、ここの利用を希望しても門前払いになっている人が少なくないというのですね。受け入れるのは就職が期待できそうな人に絞っているという民間機関もあるそうです。訓練期間から三カ月後の就職率が三割を下回ってしまった場合などは対象機関として国の認定が受けられなくなるためだともおっしゃっています。

 また、技能が乏しい求職者にとって職業訓練の役割は非常に大きいんですけれども、すぐに安定した職につくのは非常に難しいというのが現実であります。キャリアアップできるように継続的に支援すること、職業訓練を受けた方々を受け入れる受け皿、就労機会を拡大することが重要であると思います。こうした拡大も含めまして、訓練を受けられる機関、また内容、受講中の生活費の支援など、さらなる検討が必要だと思っております。

 また、専門性の高い技能を身につけることができる高等技能訓練促進費等事業については、現在母子家庭を対象としているんですが、対象者の拡大を検討するなど、こういうことも考えられるのではないかと思っております。

 求職者支援制度のさらなる拡充について、お考えを伺いたいと思います。

○生田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十月にスタートいたしました求職者支援制度は訓練修了者の就職の実現を重視した仕組みとしておりまして、具体的には、これまでの職業訓練の就職率が高い訓練コースから認定するということ、それから、実践コースにつきましては、就職実績に応じて訓練奨励金を上乗せして支給するということ、それから、個人ごとに就職支援計画を作成して、訓練受講中それから訓練修了後に定期的にハローワークへの来所を求めることなどの制度上の対応を行っております。

 就職率の目標は、基礎コースで六〇%、実践コースで七〇%という目標を設定いたしておりますが、あくまでも初期段階の数字ではございますけれども、基礎コースでは六九・七%、実践コースでは七一・八%となっております。

 これからの対応なんですけれども、今後とも、雇用保険を受給できない方を早期に就職に結びつくことができるようにするという必要はあると思っておりまして、これまでの施行状況を踏まえながら、訓練コースの設定について工夫するということや、訓練修了者向けの求人の開拓などを含めまして、ハローワークによる一貫した就労支援にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 次に、出やすい部分の施策として、就労意欲を喚起する仕組みの導入についてお伺いしたいと思います。

 現行制度は、原則として、働いて収入を得ると、その分生活保護の給付額から削られてしまうわけであります。働いても働かなくても同じでは、働かない方が楽だと思ってしまうわけです。生活保護から抜け出そうという意欲がそがれてしまうと思います。さらに、生活保護から抜け出ようと懸命に働いて、抜け出られた途端に、社会保険料ですとか病院の窓口負担を一気にまた背負わなきゃいけない。ここの落差は非常に大きいわけですね。これでは、働く意欲というのはなくなっていくんだろうと推察されます。

 そこで、働く意欲をなくす要因を取り除くためにも、就労に応じて手元に残るお金を少しふやすよう工夫もして、就労意欲を促す改革をすべきではないかと思います。例えば、就労収入の一部を積み立てて、自立時に活用できる制度、就労収入積立制度を創設すべきと思いますが、いかがですか。

○山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の就労収入積立制度でございますが、これは、働く能力のある生活保護受給者に対しまして積極的に就労するインセンティブを与えるものとして意義があるもの、こういうふうに考えてございます。

 そこで、先ほど来紹介されていますが、生活支援戦略の中におきましても、この就労収入積立制度の具体的な制度設計について検討を進めてまいりたい、このように考えている次第でございます。

○古屋(範)委員 今検討していらっしゃるということですので、ぜひ実現をしていただきたいと思っております。積み立て分は減額の対象とならなくて、将来に備えることができる、非常に意欲が湧いてくると思います。就労、自立への意欲が高まる効果が期待できますので、制度設計を急いでいただいて、早急に実現をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、ケースワーカーの増員についてお伺いしてまいります。

 生活保護受給者が増加する一方で、行革で公務員数が抑制をされている。特に都市部では、福祉事務所のケースワーカーが一人百世帯から百三十世帯を担当しているところがあります。ケースワーカーの仕事は非常に負担が重いために、公務員の中でも人気がなくて、数年で異動する人も少なくないと聞いております。ですので、経験のない若い方が担当して、なかなか技能不足になってしまう、また、全体的にも常時人員不足に陥っている、これが現状です。

 ケースワーカー一人が持っているのは平均九十二世帯、二〇〇九年度ですけれども、国の基準八十世帯を上回っています。百世帯を超えている自治体も多くて、人が足りず十分な訪問もできない、多くのケースワーカーからこのような声が上がっております。

 訪問業務を、例えば経験豊富なNPOなど、外部委託をするとか、あるいはデータシステムを全国一律にすることで事務作業を簡略化するなど、負担軽減をするとともに、国庫補助等の支援により標準配置基準八十世帯に一人を実現していく、ケースワーカーの増員を図るべきと思います。いかがでしょうか。

○山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、ケースワーカーでございますが、これは、生活保護受給者の自立支援や不正受給の防止という点で大変大事な業務でございます。

 このため、ケースワーカーの確保に関しまして、これは平成二十一年度以降でございますが、毎年度、この増員のための地方交付税の算定上の人数、これをふやしてございますし、また、ケースワーカーの業務を負担するために、例えば福祉事務所の方に就労支援員等を、そういう方々も配置する、こういうことも進めているところでございます。

 最終的に、今御議論がございましたが、まさに官民協働という体制が大変大事でございますので、今回の生活支援戦略におきまして、まさしくこういうケースワーカーの方と、一方でNPO等の民間の機関の協働という形でいろいろな支援を行っていく、こういう形で進めてまいりたい、このように思っている次第でございます。

○古屋(範)委員 今局長からも、官民協働でというお答えがありました。ぜひ、民間の力を生かして進めていっていただきたいと思います。

 それから、生活保護の受給率を押し上げている要因として忘れてならないのが精神疾患患者の増加だと思います。実は、生活保護費の約半分が医療費で、その三分の二が入院費、そして、その半数を占める疾患が精神関連であることは意外と知られていないと思います。

 過去十年間で、日本の精神疾患の患者数、九八年の二百十八万人から、〇九年には三百二十三万人へと、約一・五倍となった。また、うつ病など、就労に困難を伴う気分障害の患者数は四十八万人から二倍以上の百四万人となっているということであります。

 厚生労働省、一昨年九月に、自殺、うつによる社会的損失、試算を公表されましたね。二〇〇九年における社会的損失の合計額が、自殺、休業による所得の低下、うつ病による生活保護支給費、医療費の増加など、合わせて約二・七兆円に上ると言われております。この中で、うつが原因の生活保護受給者への給付金、三千四十六億円と見積もって、医療費では二千九百七十一億円節約ができる、ここを改善すればですけれども。ですから、うつで休んでいる方々にいかにスムーズに職場復帰をしてもらえるか、ここが大きな課題だと思います。

 厚生労働省も、うつの早期発見、また早期対応のためにストレス検査を事業者に義務づける、労働安全衛生法の改正案を提出されています。早期発見から社会復帰まで、一貫した支援体制を拡充すべきと思います。まず、この点についてお伺いしたいと思います。

 また、これまでも何度か質問してまいりました、うつに有効な認知行動療法の普及でありますけれども、二〇一〇年の四月から保険適用になったんですが、まだまだ人材が不足をしております。

 認知行動療法センターのサテライトである高田馬場の研修センターに行ってきたんですが、センター長の大野先生も非常に一生懸命やっていらして、精神保健福祉士ですとか看護師とか、多くの方が意欲的に研修に来ていらっしゃいます。仕事帰りにここに来て、専門研修を受けて、認知行動療法を実施できるようになる、この裾野が広がることが期待されております。

 しかし、なかなか予算が少なくて、ここの研修センターも、ぜひ常勤職員も配置していただきたい、このように思っております。教材も全部大野先生が自前でつくって、苦労しながらやっていらっしゃいます。ぜひ、この研修会を全国レベルで展開できるよう、十分な予算確保をしていただきたいと思います。これはいかがでございましょうか。

○西村副大臣 委員今御指摘の、うつ病についてでありますけれども、働き盛りの方がうつ病にかかりますと、重症化して、就労が困難となる場合もあるというふうに伺っております。したがって、うつ病を早期に発見し、適切な診断や治療によってなるべく早く社会復帰できるような体制づくりをしていくことは重要であろうと思います。

 しかし、働き盛りの方といいますと、うつの症状があってもなかなか気づかないという方もいらっしゃって、初めは体の症状を訴えて、かかりつけ医を受診することが多いんだろうと思います。うつ病の早期発見、早期治療のためには、内科医などかかりつけ医の役割と精神科での適切な対応がこの点からも重要だと考えられます。

 こういった観点から、かかりつけ医がうつ病の適切な診断をできるように、平成二十年度から、かかりつけ医うつ対応力向上研修といたしまして、内科医等に対するうつ病に関する研修を実施するとともに、地域自殺対策緊急強化基金の活用によりまして、各自治体で、かかりつけ医から精神科医へ紹介するための取り組みを実施してきております。

 そこで、このうつ病についての治療法ということでありますけれども、薬物療法とあわせて、面接を通じて治療を行います認知行動療法、これも有効であるということが明らかになっています。

 認知行動療法を普及させるために、認知行動療法を実施できる人材の養成が重要であるということですので、平成二十二年度から全国的な研修を開始いたしております。

 それぞれの大学などもお借りして行ってきておりますけれども、今後とも、こうした実践的な研修を行って、認知行動療法を行うことができる医療関係者の確保と質の向上を図っていきたいというふうに思います。

○藤田大臣政務官 職員配置のことについてお尋ねでございましたので、私から一言お答えをさせていただきたいと思います。

 認知行動療法の普及や人材育成というのが大変重要だということ、これはもう委員御指摘のとおり、厚労省としてもそのように認識をいたしているところでございます。そして、高田馬場に開設されたこの研修センターの役割というものも大変重要だというふうに思っておりますが、細かいことは省略をいたしますけれども、残念ながら、今、独立行政法人に対しては総人件費の抑制ということが求められておりますので、直ちに常勤職員の増員ということは難しい状況があろうかと思いますけれども、しかし、センター内の状況については理事長の判断でいろいろと行われているというふうに思っておりますので、必要な支援についてはしっかりと厚労省としても行ってまいりたいと思います。

○古屋(範)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

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