第211回国会 衆議院 厚生労働委員会-16号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、旅館業法等改正案について質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 本法案の改正に向けての検討は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が問題となって、感染防止や宿泊施設従業員の安全確保が重要な課題となったことから始まったというふうに認識をいたしております。

 改正案は、宿泊拒否禁止の例外を緩和する、また、理不尽な苦情や要求をするカスタマーハラスメントへの対応も念頭に置いて、負担が過重な要求を客から繰り返された場合も例外に加えるなど、宿泊拒否を可能とする裁量を広げるものとなっております。

 昨年秋の臨時国会でこの改正法案が提出をされましたけれども、継続審議となっておりました。初めに、本法案改正の背景と意義、早期成立の必要性についてお伺いいたします。

 また、本年五月八日以降、新型コロナウイルス感染症が五類感染症に位置づけられました。元々のタイトルが、新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案ということになっておりまして、本改正法案の提出時とは状況が異なっている。

 二類から五類への変更が改正案に与える影響はないのか、この辺についてもお伺いしたいと思います。

○佐々木政府参考人 お答えいたします。

 旅館業の営業者は、旅館業法により、宿泊を拒んではならないとされており、拒むことができる事由は制限されております。これは、先ほど委員から御指摘いただいたとおりです。

 現行法では、宿泊者が感染防止対策に協力しないことは、基本的に宿泊拒否事由に当たらないと解されております。

 このような中、新型コロナウイルス感染症の流行期に、旅館業の現場から、宿泊者に対して感染防止対策への実効的な協力要請を行うことができず、宿泊者や従業員の安全確保も含め、施設の適正な運営に支障を来したとの意見が寄せられたところでございます。

 こうした中で、新型コロナウイルス感染症は、本年五月八日から五類感染症へと位置づけが変更されており、そのため、本法案における特定感染症には該当しないものの、新型コロナウイルス感染症への対応において顕在化した課題を踏まえ、次なる感染症の発生に備えるため、旅館業の施設において適時に有効な感染防止対策を講ずることができるよう、環境を整備しておく必要があると考えております。

 また、旅館、ホテルの関係団体や労働組合等から、いわゆるカスタマーハラスメントへの対応も含めて本法案の早期成立が求められており、本法案による改正を早急に行っていただきたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 今回の新型コロナウイルス感染症は五類に変更になったというものの、これまでの経験を踏まえた上で、次なる新たな感染症に備えて環境整備を図る法律案であるということを理解いたしました。

 次に、本法案で特に注目されるのが、旅館業法第五条の見直しであります。

 一部関係団体からは、現行法第五条の見直し法案に反対するという意見書が提出をされております。

 現行法第五条第一号の伝染性の疾病を、感染症予防法上の一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症、指定感染症に改めるとの範囲にとどめるべきであり、宿泊を拒否し得る場合の拡大については反対である。また、発熱等の感染症の症状を呈する者について法律上宿泊拒否を可能とすることは、感染症法上の理念や趣旨にそぐわない上、感染症の患者に対する差別的な意識を醸成し、社会的な偏見、差別を助長する危険性につながる。また、感染症患者への差別や偏見を助長する。差別的な宿泊拒否が横行するのではないか。障害者等への宿泊拒否など差別的な扱いにつながるのではないかとの懸念の声が出されているところであります。

 これに対しまして、本改正案では、差別防止の徹底として、感染症の蔓延防止対策の適切な実施、高齢者、障害者等、特に配慮を必要とする宿泊者への適切なサービスの提供のため、従業員に対して必要な研修の機会を与える努力義務を課しているんですけれども、果たしてこれで十分なのかどうか。

 現在でも、障害者が一人で宿泊しようと訪れたり、あるいは盲導犬を伴って訪れた際に、人手不足とか安全上の理由という曖昧な説明で宿泊を拒まれるケースがあります。

 現場の誤った判断で不当な宿泊拒否が行われないよう、関係者の方々の懸念を払拭するため、更なる対応が必要だと考えます。

 例えば、宿泊拒否等に関して適切に対応するためのガイドラインを関係者等の意見を聞きながら策定をしていく。さらに、宿泊を拒む場合は、このガイドラインにのっとって客観的、的確に判断し、第五条のどれに該当するのか、その理由を丁寧に説明する。そして、拒否した際の記録をしていく、どんな事案が起きたのか検証する仕組みを構築すべきと考えます。

 本来は拒否できない場合まで宿泊拒否が拡大することがないよう、これらの取組を徹底すべきと考えます。これについての厚労省の見解を伺います。

○佐々木政府参考人 お答えいたします。

 この法案をお認めいただいた場合は、先ほど伊佐副大臣から勝目委員にお答え申し上げたところですが、検討会を立ち上げてガイドラインをしっかり策定し、周知しようと考えております。

 具体的には、まず検討会ですけれども、旅館、ホテルの利用者、また旅館業の業務に関して専門的な知識経験を有する方、さらには感染症に関して専門的な知識を有する方、こういった方で構成される検討会で御検討いただいた上で、旅館業の営業者が感染防止対策への協力要請や宿泊拒否等について適切に対処するためのガイドラインを策定したいと考えております。

 今度はガイドラインの方ですけれども、例えば、営業者は、宿泊しようとする者の状況等に配慮し、みだりに宿泊を拒むことがないようにすること。また、営業者は、宿泊を拒む場合には、旅館業法第五条に定める宿泊拒否事由に該当するかどうかを客観的な事実に基づいて判断し、宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにすること。また、営業者は、宿泊を拒んだ場合には、都道府県から報告を求められる場合等に備え、その理由等を記録すること。こういった内容を盛り込みたいと考えております。

 加えて、本法案においては、旅館、ホテルの現場において適切なサービスが提供されるよう、従業員に対して必要な研修の機会を与えることを旅館業の営業者の努力義務とする規定を新たに設けることとしております。この研修においてもガイドラインの内容を周知していただくなど、ガイドラインを踏まえた適切な対応がなされるようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 関係者、特に宿泊業の関係者、また感染症の専門家を入れた検討会を立ち上げてガイドラインを策定されるということでございます。

 そして、そのガイドラインにつきましては、現場で観光客に対応する従業員にまで徹底をしていただきたいと思います。みだりに拒むことがないよう、何がみだりに拒むことなのか、この判断基準を客観的に適切に選択することができるよう、研修を行っていただきたいと思います。

 次に、今回規定された特定感染症だけではなくて、平時においても、多くの感染症が発生をして宿泊施設に持ち込まれてしまうという可能性があると思います。通常の、例えば季節性インフルエンザ流行時、せき込む、明らかに体調が悪そうだなという宿泊客に対して、医療機関への受診やマスクの着用などを促すなど、普通に起こり得るケースについての対応について不安となったという感があります。

 現行法第五条で想定していた伝染性の疾病、例えば、はしかとかノロウイルスのように集団発生が危惧される伝染病などの対応について、改正案ではどのような取扱いになるのか、これについてお伺いをしたいと思います。

○佐々木政府参考人 お答えいたします。

 現行の旅館業法の伝染性の疾病につきましては、厚生労働省が定める管理要領、具体的には旅館業における衛生等管理要領というものがございますが、この中で、宿泊を通じて人から人に感染し重篤な症状を引き起こすおそれのある感染症との解釈を示しております。これは、逆に言えば、伝染性の疾病の具体的な範囲につきましては、この病気、この病気という形では具体的には明確には定めてはおりません。

 この法案においては、伝染性の疾病を特定感染症へと改正し、感染症の感染力や重篤性等に鑑み、対象となる感染症について、感染症法における一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症のほか、指定感染症のうち入院等の規定が適用されるものとすることを法律上で明記をすることとしております。

 このため、感染症法において五類感染症に分類される例えばはしか、麻疹、またノロウイルスについては、改正後の特定感染症には該当しないことが明確になる、こういう法案の内容になっております。

○古屋(範)委員 なかなか、そうした専門的な疾病、感染症の分類というのは、現場で対応するときにも従業員の方々も迷うことがあるかと思います。今、大変、観光の現場も人手不足で悩んでいるときかと思いますけれども、是非、先ほど申し上げた研修の場で、正しい知識、また、対応の仕方というものも徹底をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、第五条の第四号につきまして、これまで五条を悪用、すなわち、法に触れない限り、どんな要求をしても追い出されることはないんだと法律を悪用するクレーマーがいることが宿泊施設を悩ませていたと思います。この項目の追加によって、クレーマー、また、カスタマーハラスメント対策として効果が期待できるのではないかというふうに思います。

 しかしながら、実際の運用は難しいという指摘もあるところでございます。一方、障害のある人の宿泊の機会を不当に制限することを容認するものだという意見も一方でございます。

 先ほども述べました、盲導犬を伴って宿泊しようとする障害者の方、あるいは、電動車椅子の利用者が、対応が困難だということで宿泊を拒否された実例が多数あったという現状を考えますと、この規定の新設というものが、障害のある人たち、また介護の必要な高齢者、こういう方々が旅館、ホテルを利用する機会を制約することになってはいけないというふうに思っております。

 この第五条第四号は、カスタマーハラスメント対策として理解をしているところですが、こうした障害を持った方々などの不安の声を払拭するために、正しい解釈、運用について御説明をいただきたいと思います。

○佐々木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、この法案における五条四号の規定につきましては、片方では、カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラ対策は重要である。その一方で、この規定を根拠に宿泊拒否をされるのではないかという不安を払拭することが大事ですし、これをいわば過剰に適用した場合は罰則規定も営業者にかかることから、これをきっちりと、この条文の考え方が理解される、これは国民の皆さんにとってもそうですし、営業者の方、従業員の方にも周知、分かることが大事だと考えております。その上で、お答えいたします。

 本法案では、宿泊しようとする者が、実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返したときに宿泊を拒むことができることとしております。この規定に関して、旅館やホテルの現場で適切な運用がなされるのかとの御懸念を私どももこれまでいただいたところでございます。

 この法案をお認めいただいた後に、先ほど申し上げたガイドラインを策定する際には、宿泊拒否の対象となる事例として、宿泊者が従業員を長時間にわたって拘束し、又は従業員に対する威圧的な言動や暴力行為をもって苦情の申出を繰り返し行う場合などの具体例を明記するとともに、旅館業の営業者は、障害者差別解消法等を遵守する必要がある、障害を理由として不当な差別的取扱いをしてはならないこと、障害を理由として宿泊を拒むことはできないこと等をこのガイドラインに盛り込むことを考えております。

 また、さらに、この法案では、従業員に対する研修の機会の付与を旅館業の営業者の努力義務としております。先ほどもお答えしましたけれども、ガイドラインの内容等も含め、従業員に対する研修がしっかり行われる必要があるため、私どもとしては、旅館、ホテルの関係団体等にも御協力をいただきながら、例えば研修ツールを策定する、そういった形でこれが進むように取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 法律にありますように、宿泊者の著しい要求、これが一体どういうものを指すのか、今後の検討されていきますガイドラインでそれを明確に定めて、不当な宿泊拒否が起こらないようにしていっていただきたいというふうに思っております。

 三年間のコロナ禍の中で、観光業の方々も本当に経営に苦しんでいらっしゃいました。なかなかその間、持ちこたえることができず、やむなく閉館というような旅館もありました。

 私も、地元は神奈川県なんですが、箱根を始め、観光業は大変重要な産業の一つでございます。今、予約もようやく満杯になって、いよいよこれから景気回復へ反転攻勢をしていこうというときだと思っております。

 その中で、こうした次なる感染症に備えて環境整備をしていくことは、大変重要だと考えております。ポストコロナ、これからいつ起こるか分からない感染症の危機に対して、宿泊する側も、またそれを受け入れていく宿泊施設の側も、共に安心して旅行が楽しめるような環境をつくっていくことが重要なんだろうというふうに思っております。

 この改正案の早期成立を期していただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

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