低髄液圧症候群の治療推進に関する質問主意書

平成十六年三月三十日提出 質問第五二号 提出者  古屋範子

低髄液圧症候群の治療推進に関する質問主意書

 近年、日本の交通事故発生件数は、九十万件を突破し百万件に上る勢いで増えており、これに伴い、むち打ち症患者数は二十万人以上いるといわれている。交通事故後、長い間、頭痛、首の痛み、背中の痛み、腰痛、手のしびれ、めまい、耳鳴り、激しい疲労感などで悩んでいる多くの患者は、様々な病院を受診してもその検査結果に異常がないため原因が特定できず、「怠け病」あるいは「精神的なもの」として判断され、痛みの身体的苦痛はもとより、症状を誰にも理解してもらえない精神的苦痛は計り知れないことが指摘されている。
 最近の画像診断技術の進歩によって、こうした症状は頭部や全身への強い衝撃により、脳脊髄液の持続的な漏出に起因する髄液圧の低下が引き起こしている可能性が示唆されている。髄液圧の低下による多様な症状が出現する病態は、「低髄液圧症候群」(脳脊髄液減少症)とよばれ、注目を集めているところである。また、この「低髄液圧症候群」は「むち打ち症」のみならず、慢性疲労症候群など、現在の医学において原因が明らかでない疾病の原因である可能性も同時に示唆されている。
 そして、脳脊髄液の持続的な漏出に由来する「低髄液圧症候群」に対して、いわゆる「ブラッドパッチ」療法が開発され、一部の医療機関で実施されるようになっており、臨床的な研究報告もなされている。
 「ブラッドパッチ」療法で症状が改善することが明らかになっているが、現在、国においては「むち打ち症」の治療として「ブラッドパッチ」療法は認められていない現状がある。
 むち打ち症患者が一日も早く、治療を受けて症状の改善が図られるよう、「低髄液圧症候群」の実態の究明ならびに「ブラッドパッチ」療法などの治療の推進は緊急を要するものと考える。
 従って、次の事項について質問する。

  1.  「むち打ち症」の原因と強く示唆される病気、すなわち「低髄液圧症候群」の調査研究を早急に行うべきと考えるがどうか。
  2.  慢性疲労症候群の原因が明らかではないが、「低髄液圧症候群」との関係が示唆される疾病についても、関係の調査研究を進めるべきと考えるが、政府の見解を伺いたい。
  3.  低髄液圧に由来するむち打ち症の治療法である「ブラッドパッチ」療法の有効性について調査研究を進め、必要であれば、医療保険適用をすべきと考えるがどうか。

 右質問する。
平成十六年五月十一日受領
答弁第五二号

  内閣衆質一五九第五二号
  平成十六年五月十一日

内閣総理大臣 小泉純一郎

衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員古屋範子君提出低髄液圧症候群の治療推進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員古屋範子君提出低髄液圧症候群の治療推進に関する質問に対する答弁書

一及び三について

 お尋ねの「「低髄液圧症候群」の調査研究」とは、いわゆる「むち打ち症」と低髄液圧症候群との関係についての調査研究を指すものと考えるが、厚生労働省としては、一般にむち打ち症と診断されている交通事故後の慢性的な頭痛等の症状が実際には髄液圧の低下に起因するものであることを合理的に疑わせるに足るデータ等にこれまで接したことはなく、かかる調査研究やお尋ねの「低髄液圧に由来するむち打ち症の治療法である「ブラッドパッチ」療法」の有効性等に関する検討の実施については、今後の学術的な研究の成果を踏まえ考えてまいりたい。

二について

 厚生労働省としては、慢性疲労症候群の原因が一般に髄液圧の低下であることを合理的に疑わせるに足るデータ等にこれまで接したことはなく、慢性疲労症候群と低髄液圧症候群との関係に関する調査研究の実施については、今後の学術的な研究の成果を踏まえ考えてまいりたい。

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