和解合意から5年 B型肝炎訴訟の“その後”(公明新聞 2016年8月22日付)

B型肝炎訴訟の早期解決へ原告団と意見交換する公明党の山口那津男代表(左から2人目)、古屋衆院議員(左隣)ら=2010年12月

患者救済は5%未満
原告団代表「根深い偏見も障害に」

乳幼児期に受けた集団予防接種で注射器を連続使用したことが原因で、B型肝炎ウイルスに感染した人々が国に賠償を求めた集団訴訟は、2011年6月に国との間に和解へ向けた基本合意が結ばれて5年が過ぎた。今年5月には、患者救済のために国が支払う給付金の請求期限について、22年1月12日まで5年間延長する法律が成立したが、当事者が抱える課題も多い。B型肝炎訴訟の“その後”を考える。

基本合意では▽賠償額は症状に応じて最大3600万円▽発症後、提訴まで20年以上経過した原告には150万~300万円▽国による謝罪―などが盛り込まれ、感染拡大の経緯や原因究明を行う第三者機関の設置を確認している。

給付金を受け取るには、病院の記録や検査結果などの証拠書類を集めた上で裁判所に提訴する必要がある。厚生労働省の肝炎対策推進室は、「合意当初は対象者を45万人余りと見込んでいた」と話す。だが合意から5年が経ち、和解に至った人は2万1641人(6月末現在)と、想定の5%にも満たない。「給付制度が十分に知られていないことや、訴訟手続きが煩雑なことなどが理由として考えられる」と説明する。

集団予防接種は1988年まで約40年間続いた。厚労省はウイルス検査を受けるよう、広く呼び掛けている。

「全てのウイルス性肝炎患者、とりわけ肝硬変、肝がん患者への医療費助成制度の創設を」―。7月23日、都内で開かれた肝炎患者らの集会で、全国B型肝炎訴訟原告団の田中義信代表(58)は、力を込めた。

幼少期の予防接種で肝炎ウイルスに感染した田中代表は、2009年1月、肝臓に6センチのがんが見つかった。5年後生存率は50%、10年後は10%と医師から告げられた。間もなく原告団に加わり、闘病を続けながら訴訟を戦い抜いた。その間にがんを切除し、自身の裁判も和解に至った。現在は薬の服用でウイルスの活性化を抑え、症状も安定しているという。

和解が進まない現状について、田中代表は「感染が分かっていても差別・偏見を恐れ、家族や職場などに事実を話せない人もいるのではないか」と話す。田中代表は約3年前に原告団代表を引き継ぎ、全国でウイルス検査の啓発を行うとともに、講演などを通して感染者に対する偏見をなくすための活動に奔走している。

田中代表は訴える。

「患者の支援体制は少しずつ前進しているが、血液製剤による薬害C型肝炎も、予防接種が原因のB型肝炎も、ともに医療行為が原因の“医原病”だ。250万人ともいわれるウイルス性肝炎の患者もいる。そうした人たちの医療費助成は強く求めていきたい」。

B型肝炎訴訟をめぐり公明党は、早くから原告団と緊密に連携し、政府に患者救済を粘り強く要請。一日も早く治療に専念できる環境を整えるために、問題の早期解決に向け国と地方で力を合わせ、共に汗を流している。そうした公明党の姿勢に対し、田中代表も「福祉の党として、この問題にずっと向き合ってくれた。今回、一緒に取り組んできた古屋範子副代表が、厚生労働副大臣に就任した。肝炎対策のさらなる前進と、医療費助成の実現に期待したい」と語っている。

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