対談 支え合う共生社会へ~介護のあり方を巡って~(公明新聞 2018年2月18日付)

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公明党副代表 古屋範子さん(左)、フリーアナウンサー 町亞聖さん

フリーアナウンサー 町亞聖さん×
公明党副代表 古屋範子さん

ありのまま受け入れ、当事者の意思を最大に尊重して 町さん

町亞聖さん 親の介護を支える家族は、どうしても元気なころと比べてしまいます。私自身、はつらつとして姉のような存在だった自分の母親が、病気で半身まひになり、言葉が思うように話せなくなったのは本当にショックでした。

介護を支える家族は、当事者の、ありのままを受け入れ、「今できること」を数えていくことが大事です。そして「よくやっている」と自らを褒め、介護をしながら自分の人生も大切にしてほしいです。

古屋範子副代表 公明党は2009年秋、全国約3000人の議員が、自治体、介護事業者、介護従事者、要介護認定者・介護家族に、街角アンケートを加え約10万人に聞き取り調査をしました。その結果からは、介護が必要な家族を抱えた人の精神的、肉体的、経済的な負担の重さが一層浮き彫りとなりました。

 介護を理由に仕事を辞める「介護離職」は年間10万人にも上ると言われています。このうち8万人が女性であることを忘れてはいけません。「柔軟に働けること」と「周囲の理解」の二つがあれば離職は防げるはずです。それには、企業などのトップの意識改革が欠かせません。

古屋 子育てと介護が重なる「ダブルケア」という問題もあります。介護休業を分割取得できるよう育児介護休業法を改正しましたが、育児・介護休業を取る人は少ない。

 その通りです。特に働く男性の育休取得率はわずか3%にすぎません。

さらに言えば、介護する人にとって長く休むことだけが解決方法ではありません。先ほど言ったように一人一人に合わせた幾通りもの柔軟な働き方ができるようにすべきで、気分転換のため、あえて短時間でも働きたいと望む人もいます。こうした人たちをサポートする環境整備が求められています。

古屋 長期にわたる介護による“介護疲れ”の問題も深刻です。

 特に、男性は厳しい現実を受け入れるのに時間がかかる方が多いですね。他人のサポートを受けることは当たり前と捉え、「助けて」という声を一日でも早く表に出してほしい。弱さを見せることは決して悪いことではありません。とりわけ、介護サービスは、家族が社会とつながる「糸」と言えますので、積極的に活用してください。

包括ケアをさらに強化し、誰一人孤立させない地域に 古屋さん

古屋 公明党は、高齢者が住み慣れた地域で医療、介護、生活支援などのサービスを一体で受けられる「地域包括ケアシステム」の構築に向けた取り組みを、全国の国・地方議員で進めています。

昨年5月には、持続的に介護サービスを提供し続けていくため、地域包括ケアシステムの深化などを柱とする改正介護保険関連法の成立を推進しました。今後は、医療を提供しながら生活の場を確保する「介護医療院」という新しい仕組みもつくっていきます。

 介護を語る上で認知症の問題は避けて通れません。そこで、認知症の治療とともに、ケアも重視してほしいと思います。

古屋 公明党は認知症の人や、その家族を支える国家戦略と施策の重要性を重ねて訴え、政府は15年に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を策定しました。その施策の一つとして、「認知症初期集中支援チーム」が全国に展開されています。

群馬県前橋市の同支援チームによる会議に同席させていただいたことがありますが、介護関係者や作業療法士、医師、看護師、保健師、歯科医師など、幅広い職種の人が連携して、一人を守っていく現場を目の当たりにしました。

 私にとって、認知症ケアを考える上で原点となる思い出があります。00年ごろ、認知症の人が暮らすグループホームのモデルとなる施設を取材した時のことです。関係者から、認知症ケアは「その人の人生を知ること」だと教えてもらいました。この実践こそが、ケアにとって最も大事なことでしょう。

古屋 公明党は昨年12月、認知症の総合的な施策の推進に関する提言を発表しました。認知症については、介護や医療以外にも、まちづくりや教育、生活支援、消費者被害防止、権利擁護、住まいなどに関わる、あらゆる機関が協力して支える施策が必要です。

それらをうまくつなげていく役割が政治に求められています。当事者も家族も孤立させない地域社会をめざし、全力で取り組みます。

まち・あせい

1995年、日本テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、天気情報、ニュースなどさまざまな番組を担当。その後、報道局に活動の場を移し、記者、キャスターとして活躍。主に、厚生労働省担当記者として、がん医療、薬害肝炎、不妊治療、難病、年金などをテーマに取材。2011年に同社を退社し、フリーに。

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