心理職が国家資格に(公明新聞 2015年10月16日付)

心のケア”充実へ
18年までに試験実施 質の高い人材確保に期待

学校や職場などで心のケアを必要とする人が増える中、先の国会で新たな国家資格「公認心理師」を創設する法律が成立した。2018年には試験が行われる見通し。スクールカウンセラーなどの心理職の現場を追うとともに、日本臨床心理士会の村瀬嘉代子会長に話を聞いた。
 『教育や医療現場、被災地などで活躍の場広がる』
 「教員は授業以外にも業務がたくさんあり、何かと忙しい。だからこそ、心のケアや不登校などに対応するスクールカウンセラーの存在は大きい」。こう強調するのは、神奈川県でスクールカウンセラースーパーバイザーを務める大草正信さん(66)。現在、県内の公立小・中・高校に配置されているスクールカウンセラーに対し、助言や指導などを行っている。
 スクールカウンセラーは一般的に、臨床心理士や精神科医などの子どもの心理に詳しい専門家が担っている。業務内容は、児童・生徒へのカウンセリングのほか、教員との協議、保護者への相談や助言など多岐にわたり、その重要度は増している。
 また、近年では、うつ病など心の病を抱える人が100万人を超え、自殺原因の一つとされるなど深刻な社会問題になっており、心理職の役割は日増しに高まっている。
 香川県臨床心理士会の会長で、私設の心理相談オフィスを開設している黒河内美鈴さん(56)は、「子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の人から相談を受けている。心のケアを必要とする人は本当に多い」と話す。
 このほかにも、心理職が活躍する場は、(1)病院や保健センターなどの医療・保健(2)児童相談所やDV相談支援センターなどの福祉(3)家庭裁判所や少年院などの司法・矯正(4)企業内相談室などの産業(5)被災者支援――など多くの分野がある【イラスト参照】。
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 このように各現場で活躍する心理職だが、医師や看護師らのように法的な専門職として認められていない状態で働いているのが現状だ。このため、雇用も不安定で、神奈川県のスクールカウンセラーである一色千恵子さん(53)は、「非常勤職員としての採用なので、更新の時期になると不安」と話す。教育現場で必要とされているにもかかわらず、スクールカウンセラーの多くは非正規雇用のために「将来の見通しを持てない」との声が寄せられてきた。
 また、心理職に関する民間の資格が多く存在するため、「どの資格者に相談すればいいのか分からない」という利用者の声もある。実際、国内には、臨床心理士や認定心理士など多数の民間資格があり、専門職として豊富な知識が要求される資格から、簡単に取得できる資格まで、難易度に差がある状態となっている。
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 こうした中、先の通常国会で、新たな国家資格「公認心理師」を創設する法律が成立した。公認心理師が誕生すれば、法的な専門職として認められることになり、心理職の社会的評価の確立や待遇向上が進み、専門的な知識や技術を持った質の高い人材の確保につながると期待されている。一方、国家資格のない人は「心理師」の名称は使用できない。ほかの民間資格と区別されることで、資格の価値が保たれることになる。
 公認心理師になるには、国家試験に合格する必要がある。受験資格は、大学で心理学などを学んだ上で、卒業後、大学院で必要な課程を修了した人や、一定期間の実務経験を積んだ人などに与えられる。試験内容などの詳細は、厚生労働省と文部科学省を中心に検討されるが、遅くとも2018年には試験が行われる見通し。
 公明党はこれまで、長年にわたって、心理職に関係する団体と意見を交換し、国家資格化の要望を受け止めてきた。また、古屋範子衆院議員が国会質問で法整備の必要性を訴えてきた。
 『公明党の長年の協力に感謝/日本臨床心理士会/村瀬嘉代子会長』
 心理職の国家資格化に当たり、公明党の古屋範子衆院議員には長年にわたって協力いただき、本当に感謝している。
 国内には年間3万人近い自殺者がいるほか、被災者の心のケア、学校、医療機関、福祉機関、司法・矯正機関などさまざまな面で、心理専門職の活用が喫緊の課題と言える。
 心の問題は、心理的な問題だけではなく、多次元の問題が重なっていることが多く、関係する団体や専門職と連携して、共同で対応していければと思う。
 公認心理師は、法的な専門職として、利用者により良いサービスを受けてもらえるようになり、世の中に役立つものになると思う。
 公認心理師が社会に役立つ存在となるよう、さらに研さんし努力していきたい。

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