第159回国会 衆議院 厚生労働委員会 第9号

○古屋(範)委員  公明党の古屋範子でございます。
 本日、初めてこの厚生労働委員会で質問をさせていただきます。冬柴幹事長の後で多少緊張しておりますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 さて、今回の年金制度改革関連法案の最大の特徴は、何といっても年金制度で最も大事な将来の給付と負担を明示した点にあると思います。これまでの年金改革は、五年ごとの財政計算のたびに給付や負担を見直してまいりました。本来であれば、改革が積み重なる中で公的年金の基盤は強くなっていくべきであると考えますが、なかなかそのような方向には向かわず、国民の年金不安は高まってきているという側面もございます。また、我が国の年金制度は世界でも例を見ない急速な少子高齢化の進行により大きな危機に直面するという事態を迎え、このままでは際限ない保険料の上昇、また給付の切り下げが避けられず、国民の年金不安の大きな要因となっております。
 こうした不安や不信を取り除くためには、年金に対して正面から向き合い、問題を発見し、解決の方策を導くことが必要でございます。その点、今回提案されております年金制度改革法案は、公的年金制度を持続可能で安定的なものにする内容となっており、私たち国民の安心につながる改正であると考えます。
 将来にわたって年金制度を維持できる抜本改革は、まさに待ったなしであります。徹底討議の中で一日も早く年金改革の社会的合意を形成するためにも、民主党は審議の場にすぐ参加すべきであり、国民の前で正々堂々と論議すべきであると最初に申し上げておきたいと思います。
 そこで、今回の制度改革がもし行われなかった場合、将来の給付と負担はどうなるか、まずこの点についてお伺いをいたします。

○吉武政府参考人 制度改革をいたしませんで、現行制度を維持いたしますので、給付は下がらないということになります。その場合の保険料率でございますが、厚生年金で申しますと、毎年〇・三五四%ずつ保険料を引き上げるということで試算をいたしますと、国庫負担三分の一の場合で平成五十年、二〇三八年度に二五・九%でございます。それから、国庫負担二分の一の場合に平成四十二年、二〇三〇年度に二二・八%という形でございまして、いずれも二〇%を相当超える水準となってまいります。
 それから、国民年金について申し上げますと、今回の改正案では、毎年二百八十円という少し小幅に引き上げをさせていただくという案を提案させていただいておりますが、二百八十円の引き上げで現行制度を維持いたしますと、平成三十五年、二〇二三年に積立金が枯渇をいたしまして、一定の保険料水準で財政の均衡を図ることができなくなってまいります。完全な賦課になりますので、必要な費用を毎年保険料を引き上げて賄うという形になりまして、年金制度としてはもう長期的な安定は図れないという状態になってまいります。
 仮に、毎年の保険料の引き上げ幅を六百円という形にいたしました場合で申し上げますと、国庫負担三分の一の場合で平成四十三年、二〇三一年度に二万九千五百円、国庫負担二分の一の場合に平成二十九年、二〇一七年度に二万七百円という相当高い水準の保険料になってまいります。

○古屋(範)委員  かなり厳しい数字であるという御答弁でございます。
 今回提案の年金制度改革法案には、我が公明党が訴えた年金改革プランの内容が大きく盛り込まれております。例えば、厚生年金の給付では、働いたときの平均収入の五〇%以上を確保するとしておりましたが、改革案にも、現役世代の平均的収入の五〇%を上回る給付水準を維持しつつ、年金を支える力と給付との均衡がとれる仕組みとすると明記をされました。
 また、課題であった基礎年金の国庫負担割合の引き上げの道筋を示し、さらに保険料についても上限を設けるなど、将来の給付と負担を明確にしたもので、年金制度の根幹にかかわる問題について見直しが行われることになりました。これは、まさに文字どおり国民に安心を与える大改革案であると考えておりますが、坂口大臣の御認識をお伺いいたします。

○坂口国務大臣  年金と申しますのは、これは継続こそ命だというふうに思っております。継続のできないものでありましては、どんな立派なものをつくりましても、それは価値がありません。将来にわたって継続されて初めて値打ちのあるものでございます。
 したがいまして、今回のこの改正案、一方におきましては、ある程度保険料を今後も負担をしていただかなければなりません。一八・三〇%という上限をつくりましたけれども、それまでは徐々に上がっていくわけでありますし、今度は、受けていただきます年金の額は五〇・二という、五〇%を確保しましたけれども、現在の五九%から見ると徐々に下がっていかざるを得ません。一定の保険料と一定の年金額、両方をにらみながら、そして皆さん方に御理解を得なければならないわけでございます。
 保険料は低い方がいい、年金額は高い方がいい、そう思われる皆さん方からすれば、それは逆の方向を向いているではないかという御批判もあるわけでございますが、少子高齢社会という社会の中で継続をさせていくという大前提の中で考えれば、やむを得ない今回のこの法律でありまして、これを行う以外に方法はないとかたく信じているところでございます。
 そうしたことを国民の皆さん方にもよく御理解をいただいて、ぜひともこの案を成立させていただきたいというふうに思っている次第でございます。

○古屋(範)委員  まさに継続と安心の今回の年金改革案というふうに御答弁で受けとめた次第でございます。
 本日、質問者、女性は私一人でございますので、これから女性と年金をテーマに質問を行ってまいります。
 今回の法案の特徴の一つは、女性の年金が大きく前進したことにあります。女性の年金が語られるとき、サラリーマンの妻である専業主婦がなぜ得をするのかと、専業主婦の保険料免除をめぐって、とかく女性同士の対立になりがちでありました。私は、そのような女性同士の対立ではなく、広く女性全体、また社会全体の問題としてとらえ、だれが、どのような生き方を選んだとしても、制度は中立であり、そして一人でも生きられる年金制度であることが望ましいのではないかというふうに考えます。
 女性の年金問題について、私たち公明党は、世帯単位から個人の単位へと、年金制度の転換を進めることを政策に掲げております。働き方の多様化、社会進出をする女性がこれほどふえた時代、またライフスタイルの変化、シングルを通す女性も多いですし、また離婚も増加をしている。このようなライフスタイルの変化に対し、老後に安心感の持てる制度にするためには、世帯単位での給付ではなく、国民一人一人が制度の支え手となり、個人が尊重される明確なビジョンを持つことができる制度が確立されるべきというふうに思います。そのような観点から、私は、世帯単位から個人単位への転換を図ることが重要であると考えます。
 女性と年金のあり方も含めまして、坂口大臣の御所見をお伺いいたします。

○坂口国務大臣 
 個人単位か、それとも世帯単位かというところは、いろいろ御意見のあるところでございます。
 現在は、国民年金の方は個人単位になっておりますし、いわゆる職域年金の方は世帯単位になっております。また、国民健康保険を見ますと、これは世帯単位になっております。それから、先ほど忘れましたけれども、介護保険は、これは個人単位になっている。
 したがいまして、これからの社会保障全体を考えていきますときに、さまざまな面を持っているわけでありまして、やはりそれぞれにその機能を果たしているのが現状でございます。
 こうした問題を今後どういうふうに整理をしていくのかということは、私は、大事な論点の一つだというふうに思っておりますので、いろいろ御議論をいただきたいというふうに思っておりますが、例えば医療保険などを個人単位というふうにいいますと、それはなかなか難しいんだろう、お子さんの問題もありますし、配偶者の皆さんの問題もあってなかなか難しいんだろう。そういうことになりますと、医療保険の方は世帯単位で、では年金は個人単位にするのかといったような話もありますし、やはり世帯単位というものをより大事にしていかなきゃならないという考え方もあるわけでございますので、ここはよく議論を尽くさなければならないところだというふうに私は思っております。
 年金の場合に、もし仮に個人単位の方向に向けていくということになりますと、その前にいろいろ考えなければならないことがあります。一つは、男女の賃金格差などを一体どうしていくのか。もし個人単位になって、賃金格差が現状のままでありますと、女性の年金は常に低いということになってしまいます。そうしたことも今後整理をしていかなければならない問題でございまして、この年金制度だけの中で考えるよりも、もう少し幅広い、さまざまな制度との関係におきましても議論を尽くさなければならないことだというふうに思っている次第でございます。

○古屋(範)委員 幅広い、制度全体を考えながらのこれからの議論が必要だという御答弁であったかと思います。
 今回の本法案の中で、女性と年金の問題について、特に注目すべきことは、離婚時に厚生年金を分割できる新たな制度の導入が盛り込まれたことでございます。これは今回の改革の目玉の一つであり、また公明党がマニフェストの中で実現を約束していたものでもございます。
 そこで、まず、離婚時の年金分割の仕組みについて御説明をお願いいたします。

○吉武政府参考人 離婚時の年金分割、今回御提案を申し上げておりますのは、二つございます。
 一つは、第三号被保険者の期間に係ります厚生年金の分割制度でございます。この場合は、その事由は、離婚をされた場合、あるいは離婚とほぼ同等で分割を適用することが必要な事情がある、家庭がいわば一緒に住まれる状態じゃないということでございますので、例えば行方不明なんかを想定しております。それから、第二点目でございますが、これは第三号被保険者の方の請求によって決まるということでございます。ですから、第三号被保険者の方が分割は請求しないということであれば、それは分割にはならない。それから、今回の改正法の分割の規定の施行後の期間について適用する、過去についてはさかのぼらないという点でございます。その結果としまして、配偶者の厚生年金の標準報酬の記録、例えば、三十年間平均給与で三十万で勤めておられたというこの記録は半分その配偶者の方に分割をされる、記録が分割をされるということでございまして、年金額を分割するということとは違います。
 それから、第二点でございますが、離婚した場合に、当事者間の合意、通常は協議離婚でございますので、当事者間の合意あるいは裁判所の決定がありました場合に、この場合には、共働きのそれぞれの期間でございますとか、今申し上げました第三号分割の法律の施行前の期間についても、当事者の合意を基本としながら、必要な場合には裁判所の決定を加味いたしまして、二分の一を上限として、やはり標準報酬記録を分割できるということでございます。
 標準報酬記録を分割できるという仕組みにしておりますのは、年金額の分割でございますと、例えば、配偶者が亡くなられるとそのことによって年金額は支給がなくなりますので、配偶者の年金の権利が消失をしますと、離婚された場合にも、その方のもう一方の配偶者が現実に年金を受け取ることができないということでございまして、御自分の年金の記録の中にそれを入れていただいて、例えば、御自分が老齢年金の支給開始年齢になれば、その時点以降これの支給を受ける、そういう仕組みにしてございます。

○古屋(範)委員 女性は男性に比べて平均寿命が長く、これは予測によりますと、さらにさらに平均寿命が延びていくようでありますけれども、さらに核家族化の影響や中高年夫婦の離婚の急増など、女性が人生の最後を単身で過ごすというケースが非常に多くなっております。離婚時に厚生年金を分割できるということは、女性の老後に新たなセーフティーネットが張られ、生活保障が前進するという大きな意義があるというふうに考えます。
 一部には、この制度によって離婚が奨励されるのではないかという意見もございますけれども、そうではないというふうに考えております。離婚時に限って夫婦間の所得分割を認めていた当時、ドイツでは、離婚されることを恐れる夫たちが妻に対する理解を一段と深め、従来と比べて家事も積極的に分担をし、家庭を大事にするようになったという話も聞いております。
 また、法案には、厚生年金の分割に際して、基本的な認識として、「被扶養配偶者が共同して負担したものである」、すなわち、配偶者を持つサラリーマンが負担した保険料は夫婦が共同して負担したものであると明記をされています。
 これは、サラリーマンの夫に扶養されている専業主婦の妻に今までなかった年金受給権を明確に規定した大変画期的なことであり、有識者の検討会では、女性自身の貢献が実る年金制度にとの提案が取り入れられたものであると考えます。さらに、内助の功を社会的に認めるものであり、専業主婦の方々からも、家事や育児の貢献を認めてもらえるとの声も伺っております。
 まさに、年金制度の中で女性の地位向上が大きく前進し、個人単位の方向へと確かな一歩を踏み出した画期的な制度であると認識をしております。この点につきまして、坂口大臣の御所見をお伺いいたします。

○坂口国務大臣  そういうふうに認識していただいて大変ありがたいというふうに思っているわけでございますが、余り離婚時の話を大きく言いますと、私などは何となく離婚を奨励するのではないかというふうにとりがちでございまして、小さな声で言うておるわけでございますけれども、やはり立場が違い、年齢が違うとかなりとり方も違うなと思って先ほどから聞かせていただいたところでございます。
 いずれにいたしましても、家庭におみえになります奥様に対しましてそれなりの評価をしていくということは大変大事なことでございますし、年金の上におきましても、そういうことはやはりしていかなければいけないというふうに考えている次第でございます。そうした点を踏まえて、これから先、年金の問題をさらに検討していきたいと考えております。

○古屋(範)委員  先ほど御答弁いただきましたように、離婚時の厚生年金を分割できる制度の導入は、私は、大きな前進だというふうに評価をしておりますが、離婚しない場合の年金分割についてさらに検討し、実現すべき課題と考えております。この離婚しない場合の年金分割こそ、女性の尊厳、自立にとって不可欠な要件と言えます。
 大臣、この問題について大いに検討されながら、政府・与党の協議においてまとまらなかったというふうに聞いておりますけれども、将来、ぜひとも実現をしていただきたいというふうに考えております。大臣に、この点について御所見をお伺い申し上げます。

○坂口国務大臣 企業を定年退職されて、そしていよいよこれからいい老後を送りたいという夫婦にとりまして、先ほどは離婚の話でございましたけれども、今度は円満な家庭の話でございますから、それは円満にそれからいっていただくわけでございます。
 そのときに、それでも年金を二つに割るかどうかというのはいろいろ議論のあるところでございますが、割ってふえるのだったらいいんですけれども、割ったところでふえるわけではないわけでございますので、そこは気分の問題と申しますか、気持ちの上ではそういうふうにしたいという女性からの御意見があることは私も十分にお聞きをいたしておりますけれども、いずれにしましても、奥様にはほとんど財布を渡しているわけでありますから、二つに割ると言いましても、二つに割るどころではなくて、全部渡しているわけでございますので、そこまで言うかどうかということは今後の課題であると私は思っております。
 ちょっと歯切れが悪うございますけれども、お許しください。

○古屋(範)委員 最大限努力をされた御答弁かというふうに思っておりますが、次に、第三号被保険者、いわゆるサラリーマンの妻の届け出の特例についてお伺いいたします。
 今回の改正案の中で、第三号被保険者として届け出を忘れた人たちの救済策が図られたことは、大臣の英断のたまものであるというふうに思います。年金空白期間が生じてしまった人は少なくとも十九万人いるとも言われており、この方々は無年金になるおそれがあります。
 私は、以前より、紙一枚の届け出を出すと生涯通算で千六百万から千八百万円の基礎年金を受給することができる人と、その届け出を忘れて無年金になる人との不公平は是正すべきと考えておりました。ですから、無年金者を出さないためにも、第三号被保険者としての要件を満たしていることが確認されるのであれば、いつでも過去にさかのぼって認定するとした今回の措置は大いにアピールすべきであると思います。
 厚生労働省に、この特例の詳細についてわかりやすい御説明をお願いいたします。

○吉武政府参考人  第三号被保険者の方は、御自分自身で保険料負担は行っておられませんが、その配偶者も含めまして、第二号被保険者全体で負担をしていただき、そのことによりまして基礎年金の給付が支給される。
 そういう意味で、第三号被保険者であるかどうかという届け出につきましては、通常の被保険者は保険料納付をしていただくのと同じような機能を持っておりますので、通常の保険料納付の消滅時効は二年でございますので、おくれて届け出がありましたときには二年まではさかのぼることができるというのが現行の仕組みでございます。
 ただ、例えば、生命保険会社なんかでも幾つかの事例が生じましたけれども、御自分が生命保険会社に勤めておられて、御本人が厚生年金、健康保険の適用があるということ自体を認識されていなくて、会社側がそういう手続をとっておられた。それで、その後、実は第二号までは事業所の確定で確定をいたしますけれども、やめられた後に第三号被保険者の届け出が必要でございまして、それができなかったというような事例がございます。
 それで、平成十四年の四月以降は、それまで市町村に届け出をお願いいたしておりましたものを、事業主の御協力を得まして事業主に届け出をしていただいて、それを社会保険事務所に提出していただくというふうにいたしました。これは、健康保険の被扶養者と、それから厚生年金の第三号被保険者というのは基本的に同じ状態の方でございますので、健康保険の扶養者の届け出は通常出されますので、それと同時に第三号被保険者の届け出をやろうということで、よっぽどの例外がない限り、基本的には届け出漏れが生じない体制をつくっております。こういう体制ができたことにかんがみまして、過去の届け出漏れにつきましても、第三号被保険者であったということを客観的に証明していただければ、さかのぼって保険料納付済み期間とすることにしたところでございます。
 今後の問題でございますが、非常にまれな事例でございますけれども、事業主を通じて届け出がありますので基本的には漏れがないはずですが、非常に極端なことを申し上げれば、その配偶者の方が事業所にきちんと届け出をされなかったというような、そういうケースも考えられないことはありませんので、そのことについて、第三号被保険者の責任に帰することができないやむを得ない事由がある場合には、今後につきましても、今申し上げましたような、さかのぼりの届け出は恒常的にすることができるという状態の改正を提案申し上げております。

○古屋(範)委員 大変にありがたい救済策であるというふうに思います。
 次に、今回の年金制度改革法案に対するマスコミ報道、また、私の周りでもさまざまな意見が寄せられております。
 例えば、給付水準五〇%以上の確保と年金の下限が明記されたことについて、五〇%の確保は将来の合計特殊出生率が一・三九で推移するということが前提となっております。過去の推計からしてもこれは楽観的過ぎるという意見もございます。
 確かに、出生率を上げることは大変に困難であると思います。私の周りでも、働きながら子育てをしている方が大変に苦労をされております。そのためには、子育て支援策をさらに充実し、大きく推進していくことが重要となってまいります。
 今回の改正案の中で、その一つとして、次世代育成支援拡充の観点から、子育て世帯について、現在の一歳までの育児休業中の保険料免除制度の取り扱いを三歳まで拡充する、また、勤務時間を短くするなどして働いている場合、子供が生まれる前の賃金に基づき給付額を算定するなど、子育て世帯に対する配慮が拡充されることになっておりますが、さらなる対策の充実を図るべきと考えております。
 そこで、少子化対策につきまして、今回の保険料免除の取り扱いでも、育児休業期間であるないにかかわらず、子育て期間中の一定の間の年金保険料を免除する制度を拡充する、また、年金資金を活用した教育資金の貸し付けなど、子育ては社会全体で支えるべきとの観点から、このような幅広い支援策を考えるべきではないかと思いますけれども、この点について大臣の御所見をお伺いいたします。

○坂口国務大臣  確かに、今後の合計特殊出生率一・三九というのが維持されるのかどうか、多くの皆さんが、難しいんではないかということを言われる方がございます。
 しかし、結婚された方が二人ずつ、平均して二人お子さんをお産みいただくということになりますと、それで一・五でございます。したがって、本来一・五ぐらいを目指していかなければならないんですけれども、それを少し控え目に見まして一・三九という現在のいわゆる統計の中位をとらせていただいているところでございまして、少子化対策なるものも十分に行いながら、一・三九というこの出生率は何とか維持をするように努力しなければならないというふうに思っております。これは、維持をできなければ年金が崩壊する前に日本社会が崩壊してくるというのが私の持論でございまして、そうした意味で、ぜひともこの数字は維持をするようにしたいというふうに思っております。
 今、いろいろと少子化対策についての御意見をいただきましたが、今回も三歳までということで一歩前進をさせていただきました。
 この奨学金等の問題は、現在やっております奨学金等との整合性の問題もございますし、他の制度との整合性も図りながら考えていかなければならない問題でございますので、すべてが年金の中でやらなければならないということではないだろうというふうに思っております。全体として少子化対策が前進をしていきますようにさらに努力をしなければならないという決意は持っておりますので、その中でどの分野で何を行うべきかということを明確にしたいというふうに思っているところでございます。

○古屋(範)委員 女性と年金をテーマに質問してまいりました。
 最後の質問になりますけれども、女性と年金の基本的な問題は、女性が受給する年金額の低さにあると思います。被保険者期間が二十年以上である男女を比較すると、受給額に大きな格差があります。女性は、勤めていても、子育てのためにやめざるを得なくなる例が依然として多いため、厚生年金の加入期間も短く、また、男女間の賃金格差も大きいというふうに思います。この問題を年金の問題として認識し、今後さらに女性の生き方が多様化した時代に合った年金制度を構築すべきであると思います。
 また、最後になりますが、やはりこうした年金に関しまして、子供のころからの年金教育、学校を卒業し、仕事をして、どのように年金を納め、納税をし、そして仕事をやめてから、どのような人生設計でもって生涯を送っていくかというような教育が必要ではないかというふうに思っております。まさにそのような個々の生き方の集積が一つの国を形づくるというふうに考えるわけでございますけれども、坂口大臣の二月の小泉内閣メールマガジン「ほんねとーく」の中で、どのような年金をつくるかは、どのような国づくりをするかということであり、近い将来日本に訪れる少子高齢化社会をどのように乗り切るかが問われていることになる、このような一文がございます。この大臣の描かれる日本の将来のあるべき姿について、最後に御質問をいたします。

○坂口国務大臣 時間が参っておりますから、もう簡単に申し上げさせていただきたいと思いますが、年金制度を成立させることができ得るかどうか、それはその周辺の政策をどう実現していくか、大きく言えば日本の国づくりをどういうふうにしていくかということとセットの話であるということを申し上げたわけでございます。
 その中で特に重要なことは、やはり、女性だけではありません、女性を含めたすべての人の働き方というものをどのようにしていくかということは少子化社会にとりまして非常に大事な問題でございますので、働き方をどのようにこれからしていったらいいか、これは企業にだけお願いをするというのではなくて国全体で考えていかなければならない問題であるということを中心に述べた次第でございまして、そういう覚悟でこれからもやっていきたいと思っております。

○古屋(範)委員  以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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