第162回国会 衆議院 厚生労働委員会 第17号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
 平成九年十二月にこの介護保険制度を導入されました。それまでは、介護は家族が支えるもの、特に介護の負担というものは女性の側に肩の荷が重くかかっていたと思いますし、また、平均寿命を考えますと介護をされる側も女性が多いということで、非常にこの介護の問題は女性にとって深刻な問題であったと言うことができると思います。それを、この介護を社会全体で支えるものとして、介護の社会化が大きく進展をしてきたと思います。

 また、高齢者は、支えるだけの立場ではなくて、保険料を払う制度の担い手としても位置づけられ、措置制度からサービスを選択できる制度として意識されるなど、制度に対する国民の評価も高まっていると考えております。

 要介護認定者数、介護サービス利用者数の飛躍的な増加に見られますように、介護保険制度は国民の間に定着しており、介護の社会化を進め、社会的支援を受けることへの抵抗感を少なくしたことなど、評価できると考えております。ですが、今後さらに高齢化が進み、要介護者が増大をする中で、この介護保険制度の安定運営が大きな課題となっていることも事実でございます。この制度の課題について、さまざま質疑がされた部分もございますが、確認の意味も込めまして順次質問させていただきます。

 今回の見直しでは、目的に尊厳の保持と、高齢者介護の基本に置かれるべき大切な理念としてこの尊厳の保持が位置づけられ、明確に規定をされております。人生の最後まで個人として尊重され暮らしていくことは、だれも望むことでございます。自分にとってもそうであります。認知症を含め介護を必要とする状態になったとしても、尊厳を持って生活を送ることができる社会の実現を目指していかなければいけないと考えております。

 そこで、この改正案では法律の目的として要介護状態となった高齢者の尊厳の保持を明示することとなっておりますが、この意義につきまして副大臣にお伺いいたします。

○西副大臣 お答え申し上げます。
 そもそも、介護保険制度の目的は、介護を必要とする状態になっても、残された心身の機能を保持しながら尊厳を保ってそして自立した生活を送っていける、そういう社会を実現するためにできた、こういうふうに理解をしておりまして、そういう意味では、介護保険ができたときから、尊厳の保持ということにつきましては、もともとこの保険制度そのものに入っていたという考えでございます。

 ただ、これからさらに高齢化が増してまいります。また、その上に特に認知症の方も大勢これからまたふえてくる、こんなことを考えますと、本人の人格を尊重して、そしてその人らしさを支えていく、そういういわゆる尊厳の保持ということがケアの面でも大変大事になってくるということから、また、認知症高齢者だけではなくて高齢者介護全般についてこの考え方は大変基本となるものであるということで、今回、介護保険法の目的としてはっきりと尊厳の保持ということを明示したということでございます。

○古屋(範)委員 確かに、この尊厳の保持ということがこの法の基本にあるということであると思います。
 その人がその人らしく、また生きがいを感じてこの高齢の社会を生きることができる、これが尊厳のある生き方であると思うわけですが、この介護保険制度が導入をされまして、家庭の中に介護のヘルパーさんが入る、あるいはデイサービス、さまざま、施設へ高齢者が行く、こういう中で高齢者の虐待というものが顕在化してまいりました。それまで家庭の中に閉じ込められた、潜んでいた問題が表面に出てきたということだと思います。高齢者の尊厳を支える社会の実現に、この虐待の根絶というものが欠かせないと思っております。

 高齢者に対する虐待には、介護疲れからストレスがたまり、したくなくともどうしても虐待に至ってしまうというケース、また疾病や障害など介護をする側が既になかなか大変な状態になっている、いろいろなケースが考えられ、また人間関係、経済的な問題、また今少子社会を迎えておりますが、非常に非婚の方々が多くなっているわけでありまして、家にいて、パラサイトシングルというような言葉もありますが、親が家事をしてくれている、長年そういう生活の中で、ある日親が体が動けなくなるあるいは認知症になってくる、そういった逆転の中で、密室といいますか、親と子、そういう中で、そういう高齢者を抱えたときにどうしても虐待という問題、これからますます多くなってくるのではないかと考えております。

 ことしの二月には石川県で八十四歳の女性が職員に虐待を受け死亡するという事件もございますし、また最近横浜市でも、娘が親を虐待する、そして死亡に至るというような事件も起きております。

 私たち公明党は、この高齢者虐待防止対策につきまして、昨年より取り組みを開始いたしまして、いち早くこの法案の作成に着手をしてまいりました。現在、与党プロジェクトを創設いたしまして、さらにこの法案の成立を目指し取り組んでいるところでございます。ぜひ、副大臣初め皆様にも御支援をちょうだいしたいと考えるところでございます。

 高齢者虐待は、身近なところで現実に起きている問題であり、どこの家庭でも起こり得る、我が身にも起こり得る問題でございます。こうした虐待防止の課題に、地域が、やはりコミュニティーといいますか、一丸となって取り組んでいかなければいけないのではないかと考えております。

 そのために、高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて、さまざまな新しいサービス体系を導入することとなっている今回の介護保険法の改正を、一刻も早く成立させるべきと考えますが、これについて副大臣にお伺いいたします。

○西副大臣 確かに、委員御指摘のように、今家族構成が随分変わっていまして、親一人子一人といういわば閉鎖された社会の中で日々向き合っていくことによって、お互いが感情的にも随分ストレスが多くなってというケースも多かろうと思います。

 そもそも、今回の法律のねらいの一つでもあるんですが、できる限り住みなれたところで、その地域で暮らし続けるような仕組みをつくるというのが一つの今回の方向でございますが、その基本として、やはり一人一人が尊厳ということをきっちりと保った上でできるだけ自立をしていただく、こういうことが肝要かと思います。

 そういう意味で、今回の改正においては、一つは、地域密着型のサービスを提供する。特に、小規模多機能型サービス、それから、夜間も対応できる訪問介護というようなことを通して、できるだけそういう身近なところで過ごしていただく。それから、特に虐待防止に関しては、介護という仕事の側面からも非常に解決が難しい、困難な事例が多かろうと思いますが、そういうことに対しては、総合的な相談窓口として、今回、地域包括支援センターを通して解決を図っていくという仕組みも創設することになっております。こんなことの見直しをすることによって、日常的な生活圏域で小規模で柔軟なサービスを提供していけるようにということでございます。

 この改正法案につきまして、早期に成立をお願いするとともに、今後ともに、高齢者が尊厳を持って生活をすることができる社会を目指して、我々も全力で頑張っていきたい、こう思っております。

○古屋(範)委員 副大臣の方からも、今、虐待防止に関しましても、地域包括支援センターの役割のことが出てまいりました。

 家族の介護負担の軽減策は急務であります。また、今地域密着というふうにおっしゃいましたけれども、やはりその人の生活をしている家庭、地域というものが非常に大切になってくると思います。そこの住みなれた地域での生活を二十四時間支えていく、これは実際には大変なことであると思いますけれども、この地域密着型サービスの創設をうたった改正案が成立することによりまして、介護者の負担やストレスが軽減をされ、虐待の防止また根絶につながることを大いに期待しているわけでございます。

 また、この虐待防止に関しましては、やはり地域の連携体制が大切であるというふうに感じております。私も現在横須賀市に住んでおりますが、横須賀市では既に高齢者虐待防止の事業がかなり整備をされておりまして、保健センターの中に高齢者虐待防止センターといって、担当者がお二人いらっしゃるんですが、ずっと家庭訪問事業を続けてきた。その上に立って、虐待防止の体制、マニュアルもしっかりとしたものができていまして、非常に、そういった相談がある、そうすると緊急性に応じて関係者がすぐにネットワークミーティングというものも開きまして、どうしていくことがこの方にとって、この家庭にとっていいことなのかというようなことをしっかり協議し、その対応をさまざまな形でしていらっしゃる。その事例も、年間相談件数も相当たくさんありまして、非常によくやっていらっしゃる。

 また、同じ神奈川ですが、大和市におきましては、保健センターが中心となりまして、在宅介護支援センターがそれぞれの地域の中心となりまして、やはり同じように専門家、関係者が集まりまして、それぞれの事例に対してしっかりとした対応を行ってくださっている。このような先進的な取り組みをしている地方自治体も既にございます。

 そこで、今回の改正案に盛り込まれております地域包括支援センター、この機関が、高齢者虐待防止の中核機関としての役割を位置づけていただきたい。これは大いに期待をし、また希望するところでございますけれども、この地域包括支援センターというのは、在宅生活全体のマネジメントを行う地域のセンターとして、従来の在宅介護支援センターの機能を強化したものであると理解をしております。

 社会福祉士またケアマネジャー、保健師等専門職の人材確保の問題、また、全国に約五千カ所の配置を予定しているこの地域包括支援センターと、全国に八千七百カ所実在をしている在宅介護支援センターとの兼ね合いをどうするかなどの課題があると思います。これらの点について御見解を伺いたいと思っております。

 またさらに、既存の在宅介護支援センターが包括的支援事業の実施の委託を受けるためにはどのような体制の整備をしていったらいいか、この点もあわせてお伺いをしてまいります。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 地域包括支援センターにおきましては、介護保険のみならず、介護保険の外のサービスを組みまして、高齢者や御家族に対します総合的な相談、支援を行うことといたしており、こういった観点から、高齢者虐待の問題にも大きな役割を果たすと考えております。地域の高齢者の方の実態把握、適切な支援機関との連絡調整を図るなどの援助になるわけでございまして、在宅介護支援センターとの関係で申し上げますと、その関連機関ということで、実態把握あるいはさまざまな連絡調整等、地域包括支援センターが中核になるというネットワークも組めるのではないかと思っております。

 いずれにしても、地域包括支援センターが高齢者虐待防止に関し中心的な役割を果たすことを、私どもも期待しているところでございます。

 二番目に、在宅介護支援センターが地域包括支援センターとなるべき要件のお話がございましたけれども、地域包括支援センターが担うべきただいま申し上げました総合相談、支援に加えまして、介護予防事業のマネジメント、それから、支援困難ケースへの対応などにつきましてケアマネジャーへの支援、この三事業を総合的に行うセンターでございますので、在宅介護支援センターには、この三事業に対応していただく専門職などの配置をお願いしなければならないと考えております。

 また、委託を受ける場合、どのような地域包括支援センターにつきましても市町村に運営協議会が置かれますので、その運営協議会のもとで公平中立な設置、運営を行っていただくということが必要になると考えております。

○古屋(範)委員 そのようなさまざまな重要な事業を担う地域包括支援センター、自主的に、しっかりと充実をさせていただきたいと強く要望をいたします。

 次に、ケアマネジャーの見直しについて質問してまいります。
 高齢者それぞれにどんなサービスが必要か、その見きわめをするケアマネジャー、その対応次第で高齢者の生活も大きく変わってまいります。この重要な役割を担う、介護保険制度の根幹を支えるのがケアマネジャーではないか、そのキーパーソンであると考えております。

 現在、予防また予測を考慮したケアプランがつくられにくいのは、ケアマネジャーの研修が不十分なのではないかとの指摘もあります。ケアマネの力量また資質を磨くために、研修医のようなインターン制度を設けてはどうかとか、あるいは看護学校に通うような年単位の教育が必要ではないかというような意見もございます。専門性の高い職業として、教育訓練体制の確立を求める意見もあります。

 現場で役に立つケアマネジャーを育成する実習教育、また人材育成システムの充実について、具体的な取り組みをお伺いいたします。

○中村政府参考人 ケアマネジャーの資質の向上は極めて重要だと考えております。
 ただいま御指摘のありました研修について申し上げますと、今度の改正によりまして、ケアマネジャーのいわば資格の更新制、五年を導入いたします。五年ごとに定期的に、資格更新する際に、専門知識の向上を図るための研修が義務づけられるということになります。もちろん、働きながらこういう研修を受けていただくということになりますので、働きながら研修を受けることの無理のない研修方式等は、私ども工夫してまいらなければならないと思っております。

 第二点は、ケアマネジャーさんは今一種類しかございませんが、次第にキャリアを積んでこられる方々、そういった方々の支援を図るため、事業所や地域包括支援センターなどにおいて中心的な役割を担うケアマネジャーさんを養成する制度、主任ケアマネジャーと私ども今仮称で呼んでおりますが、そのための研修制度の実施など、現行の研修体系全体の見直しを行ってまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 そのように今力量のばらつきが指摘をされているケアマネジャー、五年ごとの更新制度を導入し、また主任ケアマネジャーというような制度も導入されると今伺いましたけれども、今回の見直しによる資質向上の効果をぜひ明らかにしていただきたいと思っております。

 昨年秋、公明党におきましても、列島縦断フォーラム、全国主要都市におきまして、この介護保険改正に向けて多くの関係者の方々から御意見を伺うという場を設けまして、そこにもケアマネジャーの方に来ていただいたのですが、やはり勤務の状態、労働条件も非常に厳しい、どこの都市でもその意見は聞かれたところでございます。このケアマネジャーを含めた介護労働者全般にわたる労働条件にもやはり課題があるということは言わざるを得ないと思っております。

 そこで、ケアマネジャーの担当件数の見直し、また介護報酬等について、その具体的な見直しの方向性をお伺いいたします。

○中村政府参考人 ケアマネジャーの介護報酬関係として指摘されておりますのは、一つは、今お話にございました担当件数の問題、もう一つは、中立性、公正性を高める、そういったことを可能とする介護報酬の設定ということが課題になっております。

 現在、私どもは、ケアマネジャー一人当たりの標準担当件数、これは現在五十人でございますが、審議会でも三十人程度というような議論も出ておりますので、標準担当件数は当然少なくする方向で見直しを行うとともに、独立性を高める方向、これにつきましては、ケアカンファレンスの実施でございますとか関係者との連絡調整、そういったことなどを行っていただいた場合により評価できるような方向での報酬の見直しを検討してまいりたいと思っております。

○古屋(範)委員 担当件数、そのほか透明性、公平性も含めまして、ぜひ改善の方向をよろしくお願い申し上げます。

 次に、施設から在宅への流れについて質問してまいります。
 介護保険制度がスタートをいたしまして、施設から在宅へ、自分が住んでいる地域、家庭という流れが示されたわけでありますが、この在宅生活を継続していくためのサービス体制がまだまだ十分ではないのではないか、施設重視のあり方が変わっていないとの指摘もございます。

 厚生労働省が特養の待機者を調査するのは、二〇〇〇年度、介護保険を導入してから初めてということでありますが、報道によりますと、特別養護老人ホーム、特養の入所待機者が全国で延べ約三十三万八千人に上ることが、この二月二十一日、厚生労働省の全国調査で明らかになっております。老夫婦二人で、介護する側も高齢である、そういうところに関しましては、確かに施設に入れたいというような希望もわからなくはないわけでありますけれども、介護保険は施設から在宅へを目標に導入したものですが、この調査からは、依然として施設への入所を希望する家族が多いということが明らかになっております。

 こうした現状についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

○中村政府参考人 まず、現状についてでございますが、要介護度四の方の五一・二%の方が介護三施設に入所されております。また、要介護五の方の六〇・五%の方が介護三施設に入所されているということで、要介護度四、五、重度の方は半数以上、要介護五でありますと六割の方が施設サービスを利用されている。今、施設の利用の方は非常に重度の方の割合が高くなっているということでございます。

 一方、内閣府が調査いたしました世論調査によりますと、介護を受けたい場所としては、一番希望が高いのは、可能な限り自宅で介護を受けたいとする方が四割強、それから、自分の家族が介護が必要となった場合にどこで介護を受けさせたいかという問いに対しては、六割弱の方が可能な限り自宅で受けさせたいというお答えになっておりますので、重度の方は半分以上施設におられるわけですが、在宅希望も高いということでございますので、私ども、今後の高齢者介護の課題としては、中重度の要介護状態になっても、御希望される方についてはできる限り住みなれた自宅や地域で暮らし続けられるようにする、そのためにここの部分についてのサービスの充実が求められるのではないかと考えております。

 具体的には、夜間緊急時の体制の確保でございますとか、介護のほかに医療的ケアもございますので、そこの充実などが求められるということで、今回の改正でも、地域でできるだけきめ細かいサービスがお届けできるような地域密着型サービスの創設、それから、御自宅か施設かという二者択一ではなくて、今の御自宅で住み続けられなくなった場合でも、さらに新しい住まいというようなことで自宅生活が継続できるようなことができないか。繰り返しになりますが、中重度の方が自宅で暮らせるような医療と介護の連携を一層推進するということが課題ではないかと思っております。

○古屋(範)委員 確かに、今の局長の御答弁にもありましたように、在宅で介護をしたいんだけれども、実際にはできないので施設を希望せざるを得ない、家族とすればそのような心情かと思います。さらにさまざまな、きめ細やかな、ソフトなサービスの体制というのが必要になってくると思っております。

 次に、この施設から在宅へという流れを加速させるために、また、今後の認知症高齢者の大幅な増加を踏まえ、今回、小規模多機能型居宅介護、また、認知症高齢者グループホーム、夜間対応型訪問介護など在宅介護支援サービス、また、施設と在宅の中間的なサービスを地域に整備することとなっております。この地域密着型サービスについてもお伺いをしてまいります。

 この地域密着型サービスは、新予防給付の創設とともに、介護保険法、制度改正の柱の一つとなっております。そして、介護が必要になっても住みなれた地域で暮らし続けたい、これが高齢者の切実な願いを実現するためのサービスとして注目を集めております。

 現在、保険料については、地域別にして最大三・三倍の格差があります。また、給付については、都道府県では一・七倍、市町村別では何と八倍もの差があると言われております。負担と給付をめぐってかなり地域間格差というものが大きいわけであります。この主な原因は、特別養護老人ホーム、老健、老人保健施設、また介護療養型医療施設など施設整備率の差、あればあるほど確かにこのサービスを受ける率が高くなってしまうということであります。この地域密着型サービスの創設により、市町村が計画的にサービス基盤が整備できるようになり、施設が所在する市町村の介護保険料が増加をするという問題の解決が期待されるところであります。

 この地域間格差の是正について、御見解を伺ってまいります。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 地域密着型サービス、これは、委員御指摘のとおり、今回の法改正で導入されるものでございますが、地域密着型サービスの指定は都道府県知事ではなく市町村長が行う、こういうことで、より地域の実情に応じた基盤整備が進むのではないかと考えております。

 それぞれ、市町村の方は、介護保険事業計画の中で地域密着型サービスを初めさまざまなサービスの見込み量を定めて整備をしていただくということになりますが、今回、私どもが期待しておりますのは、今御指摘のございました基盤整備がおくれているサービスについて、市町村が自分で判断できるわけでございますので、計画的な整備をさらに進めていただく、そういったことがございますし、他方、非常にサービス量が多くてこれ以上はもう市町村としては計画できないというところにつきましては、この地域密着型サービスについては計画の範囲内で、それ以上は指定もお断りできる、こういう制度をつくりましたので、かなりこのことで地域間格差の是正に役立つのではないかと考えております。

 また、このような市町村の取り組みを、国としても、先般可決していただきました地域介護・福祉空間整備等交付金の交付によりまして支援してまいりたいと思っておりまして、各地域におけるバランスのとれた介護基盤の整備を促進してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 次に、小規模多機能型サービス拠点の、質を確保しながら、自宅で暮らすための中心的なサービスとして発展するその取り組みについて、お伺いをしてまいります。

 現在、介護保険サービスの一つとして提供されている認知症の高齢者が入居するグループホームは、それぞれのプライバシーもある程度それぞれの部屋で確保されながら、家庭でいう居間といいますかリビングルームのようなものがあって、そこで集って食事をしたりいろいろなことができる、そういった家庭的な環境、また、顔なじみの職員の支援が受けられ、症状の改善が図られるとも言われております。実際、家庭的なケアにより症状が改善した入居者も少なくないと言われております。

 私は、重症の認知症の方であっても地域での普通の生活ができるようになるためには、この小規模多機能サービス拠点が、在宅生活を支える拠点として、二十四時間三百六十五日の安心を提供することが大事であると考えております。また、市町村がしっかりとかかわり、暮らしやすい地域を自分たちでつくろう、このような住民の自治にもつながり、地域発展の原動力にもなり得ると考えております。

 このように、今後の介護の改革に重要な意義を持つ小規模多機能サービス拠点が、質を確保しながら、また自宅で暮らすための中心サービスとして発展するためには、どのような取り組みが必要とお考えになるか、この点、お伺いいたします。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘の小規模多機能型サービスでございますが、先ほどの地域密着型サービスの一つと位置づけております。これは、現在は介護保険の制度ではございませんが、各地で制度外の宅老所とか先駆的な取り組みがございまして、そういった取り組みが介護保険の中で取り込んでやっていけるようにというものでございます。

 しかしながら、課題もかなり多いと思います。小規模であるがゆえに、閉鎖的な運営とならないような情報の開示あるいは外部の評価といったことも必要だと思いますし、それから、小規模でございますので、全部自分でサービスを、フルメニューを備えるということはできません。医療系のサービスを初めさまざまな他のサービスとの連携が図られる必要があると思います。そのためにもケアマネジメントの面の工夫が必要でございますので、適切なケアマネジャーによるケアマネジメントが求められると思います。

 また、こういった運営を可能とする運営基準や介護報酬の設定が当然課題になってまいると思いますので、これらの点について誤りのなきよう努めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 ぜひともこの小規模多機能型、使い勝手がいい反面、また、そうした質の確保でありますとかその中身に関しまして、ぜひ拡充をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、医療と介護の連携強化について伺ってまいります。
 昨年の十一月ですが、公明党の厚生労働部会におきまして、群馬県の訪問看護ステーションきらくな家という、気楽に来てくれというような意味があるそうなんですが、ここを視察に参りました。大変情熱を持って職員の方も取り組んでいらっしゃいまして、必要な方には本当に頻繁に御家庭を訪問してさまざまなケアをする、また、必要なときにはそこに来ていただくこともできるというような、非常に家族からも感謝をされている、そういうところでございました。

 ここでは、医療ケアが必要な高齢者を対象に、訪問看護ステーションを多機能化して、通所、短期入所も提供しているところでございます。いわば、高齢者が施設を訪れ、入浴や食事などのサービスを受けるデイサービスの看護版とも言えるところでございました。また、医師ともしっかりと連携をとっていまして、医師会の方も非常にバックアップをしてくれ、また、主治医との連携もしっかりあるということで、訪問看護の延長線上で顔なじみの看護師が対応するために、高齢者本人はもちろん家族も非常に安心をしていられると大変に好評でございました。そして、看護疲れなど家族の負担も軽くなると大変に喜ばれているところでございます。

 在宅で医療ケアを常時必要とするという人はたくさんいると思います。医療職の少ない通所介護や短期入所では受け入れてもらえないことが多く、また医療行為ができない。この訪問看護にも頼れず、介護する家族には大変大きな負担がかかっているという現状があります。

 在宅継続のかぎとしては、二十四時間対応とともに、やはり医療ニーズへの対応が必要ではないかと考えます。そのためには、在宅医療における訪問看護等に加え、通所機能を加えた看護サービスは極めて重要ではないかと考えますが、このような形での医療型の多機能サービスの必要性についてはどのようにお考えになるか、お伺いしたいと思います。

○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のありました医療型多機能サービスにつきましては、昨年の七月三十日の社会保障審議会介護保険部会の意見書でも、難病など医療ニーズと介護ニーズをあわせ持つ重度者への対応、また、在宅におけるターミナルケアへの対応の観点からは、訪問看護ステーションや地域に密着した医療機関を主体として、訪問看護や居宅療養管理指導といった訪問系の医療サービスに家族などの介護負担の軽減を兼ねた通所機能などを付加し、在宅療養をより一層支援していくことも一つの方向性として考えられるというふうに指摘されております。

 また、委員御指摘のとおり、先進的な事例も報告されているところでございますので、こうした現場における先駆的取り組みも踏まえながら、医療と介護の連携に留意して、医療ニーズの高い在宅重度者の方々のためのサービスについて、介護報酬改定での対応も含めて検討してまいりたいと思います。

○古屋(範)委員 まさに介護と医療というのは、一人の高齢者にとってはどこからどこまでと、非常に密接な関係があるところでございます。

 厚生労働省は、平成十五年度から、各地の訪問看護ステーションでの国のモデル事業として、症状の重いケースの人を対象に医療型多機能サービスに取り組んでおられますが、適切なサービスの提供や家族負担の軽減などのメリットが多く、ニーズが高いということが予想されます。

 残念ながら、今回の改正の中に、法案の中に明記されるには至りませんでしたが、平成十八年度の介護報酬改定時にはぜひとも反映をさせていただきたいと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
○中村政府参考人 お答え申し上げます。
 在宅の医療ニーズの高い方に対する医療型の多機能サービスの必要性については、指摘されておりますので、今御指摘の次期介護報酬改定での検討もさせていただきたいと考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございます。
 現在、脳血管障害の後遺症、また、慢性的な複数疾患を抱え、医療器具を使いながら療養生活を送っている、また、生活の中で医療的ケアをする人がふえており、医療と介護の連携強化が緊急の課題であると思っております。特に、重度要介護者への対応、また、末期がん患者に対応した医療型多機能サービスは極めて重要な課題であると考えております。

 そこで、医療と介護の連携強化に向けた施策の一つとして、医療型多機能サービスについて、今後の議論の中でさらに検討を深め、早急に結論を出していただきたいと思います。

 現在、グループホームや特養などの施設には、訪問看護は入ることはできない仕組みとなっております。また、ターミナルケアの問題につきましても、病院のベッドで最期を迎えるよりは、生活をしてきた施設の方で最期を迎えたいというような希望をする方々もいらっしゃるわけでございます。

 そこで、施設における医療との連携強化に向けた政策について御見解をお伺いいたします。

○中村政府参考人 グループホームのお話は先ほど委員から御指摘がございまして、グループホームに訪問看護をどう組み合わせるかというのは、かねて課題になっておりますので、今回も鋭意検討させていただきたいと思います。

 また、二点目の介護施設のターミナルケアの問題でございますが、特別養護老人ホームなど、入所者の方の重度化が年々進んでおられまして、特別養護老人ホームでは死亡を理由とする退所が七割を超えるということで、実質的なターミナルケア施設になっております。

 そこで、昨年取りまとめられました介護保険部会の報告におきまして、入所者の重度化への対応という観点から、ターミナルケアも含めた医療との連携を図っていくことが重要、こういうふうにされております。次期介護報酬改定は診療報酬改定と同時期に行われますので、そういった意味でも、介護と医療の連携が図りやすいタイミングではないかと思っておりますので、重要な課題として検討をさせていただきたいと思います。

○古屋(範)委員 ぜひそのタイミングで、医療と介護の連携強化を強く要望したいところでございます。

 最後になりますが、施設給付の見直しにおける低所得者への配慮についてお伺いをいたします。
 施設における居住費また食費の見直しに当たりまして、施設入居者が必要な介護サービスを受けることができなくなるような事態を避けるよう、これまでも公明党としても、低所得者への軽減等、適切な運用を求めてまいりました。

 今回の改正では、所得に応じた低額の負担の上限額を設け、補足的給付を行うなど、その負担の軽減を図ることがうたわれております。また、こうした措置に加えまして、特に、低所得者の方については、月々のサービスの利用料一割負担についても、その負担上限額をより低くすることとしており、これにより、居住費、食費を含めた利用者の負担の合計額が従前よりもまた低くなる、そういう配慮もされております。

 しかしながら、本年度の税制改正において、住民税における高齢者の非課税限度額が廃止をされ、平成十八年度からは、これまで住民税が非課税であった高齢者の方々が課税になるという場合が出てまいります。

 介護保険料の保険料区分は、住民税の課税、非課税により変わりますし、また利用料についても、負担の上限額が保険料の区分と連動をしているため、この税制改正における影響は保険料また利用料双方に生ずることになります。

 今回の税制改正においては、税制の方でも、平成十八年度、平成十九年度の二年間の激変緩和措置が講じられております。介護保険制度においても、税制改正の結果影響を受ける方々に対して、保険料、利用料それぞれについて何らかの激変緩和措置が行われるべきと考えますが、この点、いかがでございましょうか。副大臣にお伺いいたします。

○西副大臣 委員御指摘のように、今回の税制改正によりまして、個人住民税で高齢者の非課税措置が廃止されるということに伴いまして、非課税であった人が課税対象になるというケースは確かにございます。御指摘のとおりだと思います。

 その御指摘を踏まえまして、地方税上においては、これも御指摘のように、十八年、十九年と激変緩和措置が講ぜられるということでございますので、この介護保険の制度におきましても、保険料及びそれと連動している利用料について、それぞれ同様の二年間の負担軽減措置を講ずることとしたいと思っております。

 具体的に申し上げますと、保険料につきましては、個人住民税において経過措置の対象とされた方について激変緩和措置を講ずる。それから利用料につきましては、税制改正で生じる影響が保険料の段階と連動しているということでございますので、利用者の負担段階が一挙に二段階上昇する、こういう人につきましては、その上昇が一段階にとまるようにまず激変緩和措置をとらせていただく。それから利用者の負担段階が一段階上昇する方につきましても、これは社会福祉法人による減免措置を適用してその負担軽減を図るということを検討してまいりたいと思っているところでございます。

○古屋(範)委員 時間でございますので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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