第162回国会 衆議院 本会議

○議長(河野洋平君)古屋範子君。    〔古屋範子君登壇〕

○古屋範子君 公明党の古屋範子でございます。
 私は、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました障害者自立支援法案について、厚生労働大臣に質問してまいります。(拍手)

 議題に先立ちまして、昨日発生いたしましたJR西日本福知山線列車脱線事故によりお亡くなりになり、図らずもとうとい人生を奪われてしまった方々、そして御遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げますとともに、事故に遭われた多くの方々に心からお見舞いを申し上げます。

 鉄道事故として過去四十年間で最悪の大惨事となってしまった今回の事故に対して、自民、公明両党は、昨日、事故発生直後、直ちに緊急対策本部を設置し、いち早く現地調査団を派遣し、事故現場を調査いたしました。政府と一丸となって、一日も早い原因究明、復旧に全力で取り組んでまいりたいと存じます。

 政府におかれましても、国土交通省を中心に、目下、不眠不休の懸命の救援活動を展開されておりますが、引き続き、関係省庁が連携し、迅速かつ的確な復旧、万全な対応を講じられますよう強く要請いたします。

 初めに、今回の事故原因の徹底究明と再発防止について、北側国土交通大臣の御所見をお伺いいたします。

 では、障害者自立支援法案について質問いたします。
 現在、世界で例を見ない速さで我が国の少子高齢化は進行しており、多くの国民が社会保障制度の将来に不安を抱いている中で、公明党は、立党の原点である福祉の党という理念を堅持するとともに、将来にわたって国民の安心を確保するための道筋を明確にし、着実に改革を進めていく必要があると考えております。そして、だれもが、障害や疾病の有無にかかわらず、生涯にわたって安心して生活することのできる社会こそが私たちの目指すべき社会であると考えます。

 障害者の施策について、公明党は昨年十二月、尾辻大臣に要請を行い、その中で、障害の種別を超えた普遍的な制度の構築などを目指すべきと提案しております。また、障害者福祉施策の抜本改革では、地域的なばらつきがない一定の水準が確保できるよう求めてまいりました。

 障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、これまで縦割りだった身体・知的・精神障害の福祉サービスを一元化する本法案は、市町村を主体として国と都道府県が重層的に支える仕組みを整え、障害者が地域で生活するための基本的な枠組みを構築しようとするものであり、画期的な法案であると評価できるものと考えます。

 そこで、障害者の福祉施策全般の向上を図るものとして注目されている本法案について、これまでの流れの中での位置づけ、重要性についてお尋ねいたします。

 また、今回の自立支援法案は、障害者別ごとに対象者を定めている既存の法律を前提として、その対象となる方々に対して一元的にサービスを提供する新たな法律となっております。従来から法体系の谷間に置かれている障害者の方々の存在を考えますと、昨年の臨時国会で発達障害者支援法が成立しておりますが、この発達障害を含め、将来はより包括的な制度への転換が要請されるものと思います。

 そこで、今後どのように障害者保健福祉施策を改革していくべきなのか、目指す方向性について、尾辻厚生労働大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 次に、法案の中身についてお尋ねしてまいります。

 まず、利用者負担の見直しについてお伺いいたします。
 本法案では、公平な費用負担と配分の確保を図るため、これまでの応能負担から、サービスの利用量に応じた定率負担の導入を盛り込んでおり、低所得の方が多いとされる、障害者福祉サービスを利用する障害者の方々に大きな影響を与えることが懸念されております。

 そこで、利用者負担の見直しに当たっては、障害者の所得実態を踏まえた十分な配慮を行うとともに、就労支援策の一層の充実を図るなど、所得保障を確立するための方策を一体的に進めるべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。

 また、低所得者の負担上限額の設定や減額措置については、世帯単位の収入に基づくものとなっておりますが、これについては、扶養義務の撤廃の趣旨を踏まえ、障害者本人の所得を基本としつつ上限設定、減額措置が図られるよう検討すべきであると考えますが、きめ細やかな御配慮をお示しいただきたいと思います。

 さらに、就労支援策の推進は障害者施策の大転換となるものであり、働く意欲のある障害者の方々からも期待されている大変評価できるものであると思います。一方で、福祉工場などで働いた場合にも利用料が自己負担として求められるという問題も指摘をされております。

 そこで、雇用型の就労継続支援事業については、雇用という一般企業と同様の関係があること等を踏まえ、事業主の負担による減免措置の導入を検討するなど、障害者の就労促進の観点から十分な配慮を行うべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。

 次に、自立支援給付の支給決定のあり方についてお伺いいたします。
 市町村がサービス量等を決定する際の評価尺度、基準については、障害者の多様な特性とニーズを踏まえ、障害者の地域生活を可能とする適正な基準の設定が重要であります。

 そこで、市町村審査会のあり方については、その客観性、公平性は確保した上で、障害種別や特性の知識を有し状況を判断できる者を審査会委員に任命するなど、障害者の心身の状態や生活状況が十分反映されるよう配慮が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 また、最重度障害者については、長時間介護サービスの確保など、支援水準が低下しないよう配慮されるべきでありますが、御見解をお伺いいたします。

 次に、自立支援医療についてお尋ねいたします。
 今回の改正で、精神障害者通院医療費公費負担制度の利用者負担については、定率負担の見直しが行われることとなっております。この制度については、現在、自己負担分についてそれぞれの都道府県単位では補助の仕組みをつくるなど柔軟な対応をしております。

 そこで、精神障害者の所得の実態や、地方自治体の行っている単独事業の実態も踏まえ、低所得者に十分な配慮を行うとともに、継続的に医療費負担が生じることから利用者負担に上限が設定される、重度かつ継続に該当する疾病等の範囲についても、実態に応じ弾力的な対応をお願いしたいと思いますが、きめ細やかな取り組みについて具体的にお聞かせください。

 また、精神障害者の社会的入院の解消、地域生活の具体化を早急に図るため、必要な法整備及び社会資源の整備を行うことが重要となっておりますが、この点についてのお考えもあわせてお聞かせください。

 次に、移動介護サービスについてお伺いいたします。
 移動介護サービスについては、今回の見直しの中で基本的に地域生活支援事業の中に位置づけられることとなっており、適切な給付の確保が心配をされております。

 そこで、移動介護サービスが障害者の地域生活や社会参加を促進するために重要な役割を果たしている実情を踏まえ、サービス水準の後退や市町村格差が拡大することのないよう必要な財政措置を講ずるべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。

 今まさに、国全体としても、年金、医療、介護、子育てにわたる社会保障制度の一体的な見直しが極めて重要な問題として論議をされておりますが、私は、この中で、障害者が自立して地域生活を送るための福祉と雇用の連携、就労支援策の充実を大きな課題として位置づけ、政府が一丸となって取り組むべき問題であると思います。

 本法案は、当事者の方々にとっては厳しい要素も含まれており、運用の面できめ細やかな配慮を必要とするものが多くありますが、障害を持つ方々が地域社会において胸を張って生きる、自立と共生のまちづくりに寄与するものとなり、地域で普通に暮らすための第一歩になることを求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣北側一雄君登壇〕

○国務大臣(北側一雄君) 昨日、JR西日本福知山線におきまして、甚大な被害を生じる列車脱線事故が発生をいたしました。

 多くのお亡くなりになられた方々の御冥福を心からお祈りし、御遺族の皆様にお悔やみ申し上げる次第でございます。また、重体となっている方々も大勢いらっしゃいます。負傷された方々の一刻も早い御回復を心からお祈り申し上げる次第でございます。

 安全は運輸サービスの基本でございます。安全性の確保こそが利用者に対する最大のサービスであります。今回このような甚大な被害が生じる事故が生じたことは、まことに遺憾であると言わざるを得ません。

 政府といたしましては、この重大事故に対しまして、今懸命な取り組みを行っているところでございます。現在も、昼夜を徹しまして、消防、警察、自衛隊また医療関係者の方々等、被害者の方々の救出、救援に全力を挙げているところでございます。

 また、官邸を中心に関係省庁が一丸となりまして、被害を受けられた方々の救助を最優先とした事故への対応を行っているところでございます。

 昨日、JR西日本の会長また社長に対しまして、私から直接、被害者の方々への対応に万全を期すこと、原因究明に全面的に協力すること、この二点を強く要請したところでございます。

 また、国土交通省といたしましても、公共交通機関に係る安全対策の徹底を図る観点から、昨日、公共交通事業者に対しまして、安全対策の徹底を強く要請する文書を発出いたしました。これに基づいて、交通機関への安全を確保する取り組みをさらに徹底してまいりたいと思います。

 私自身、近々、航空事業者も含めまして、主要な公共交通事業者のところに出向きたいと思っております。こちらから安全総点検の指示をしているところでございますが、どのような対策をとっているのか、どのような活動をしているのか、報告を現場で直接受けさせていただきたいと思っております。

 また、航空・鉄道事故調査委員会は、昨日、委員二名と調査官五名を派遣しておるところでございますが、本日、さらに追加で委員二名を派遣いたしまして、総勢九名で全力を挙げて事故原因を調査しているところでございます。

 事故原因につきましては、予断は排さないといけないと思っております。徹底した客観的な事故原因の調査をしてもらいたいと思っております。事故原因の調査には少し時間がかかるかと思いますが、適宜、国会の議員の皆様に御報告をさせていただきたいと思っているところでございます。

 今後は、まずは被害を受けられた方々への対応に万全を尽くすのは当然でございますが、事故原因の徹底究明、さらには事故再発の防止に向けまして、全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕

○国務大臣(尾辻秀久君) 障害保健福祉施策の今後の目指すべき方向性についてお尋ねがございました。

 障害者自立支援法案は、支援費制度の自己決定と自己選択や利用者本位の理念を継承しつつ、これまで制度の対象となってこなかった精神障害者も含め、障害の種別にかかわらず、一元的にサービスを利用できる仕組みを構築するなど、障害保健福祉施策の抜本的な見直しを行うものでございます。
 本法案は、包括的な制度への大きな一歩になるものと考えております。

 利用者負担の見直しと所得保障の確立についてのお尋ねがございました。
 今回の制度改正においては、サービスの利用者がふえ、増大する費用を皆で負担し支え合うという考え方のもと、国の負担を義務的なものとするとともに、サービス量と所得に応じた負担をお願いすることとしております。

 その際、所得の低い方がおられることに配慮して、各般の利用者負担を減免する仕組みを設け、きめ細かく配慮することといたしております。

 また、障害者の所得保障につきましては、福祉と雇用が連携した就労支援を進めますとともに、今後とも所得保障のあり方について検討してまいります。

 利用者負担についてのお尋ねがございました。
 利用者本人の負担につきましては、その限度額を定めるに当たり、介護保険制度などと同様、生計を一にする世帯全体で負担能力を判定することを提案しております。

 しかしながら、この点につきましては、先ほども申し上げましたとおり、本人の所得のみに基づいて判定すべきとの御意見があります一方で、被扶養者などとして事実上の経済的な恩恵を受けている場合には、本人の所得のみに基づくことに国民の理解が得られるかなどという意見もございます。

 今後、生計を一にする世帯の範囲については、これらの御意見を十分に踏まえながら検討してまいります。

 就労継続支援事業における利用者負担の減免についてのお尋ねがございました。
 障害者自立支援法案においては、就労継続支援事業を含め、障害福祉サービスの提供を受けた場合には、利用者負担をお願いすることとしております。

 しかしながら、議員御指摘のように、雇用関係にある就労継続支援事業につきましては、他の福祉サービスと異なりまして、事業者と利用者が雇用関係にありますことから、事業者の判断で事業者の負担により利用料を減免できる仕組みを導入したいと考えております。

 市町村審査会についてのお尋ねがございました。
 今回の改革におきましては、市町村の支給決定がより透明で、客観的かつ公平なものとなるよう、障害者の保健福祉に関する専門的な知見を有する中立、公正な第三者から成る市町村審査会を設置することとしております。

 こうした趣旨を踏まえて、市町村審査会の委員は、障害者の生活実態などにも詳しい中立、公正な方が市町村に任命されるよう、地方自治体に助言をしてまいります。

 最重度障害者の支援についてのお尋ねがございました。
 最重度の障害者を含め、障害者を適切に支える体制を整備することが重要だと考えております。
 このため、今回の改革におきましては、地域で暮らす重度障害者を対象に、サービスを適切かつ柔軟に確保する仕組みとして、重度訪問介護、重度障害者等包括支援等のサービス類型を設けることといたしております。

 こうした重度障害者への新たなサービスの具体的な内容や基準につきましては、ばらつきがあると言われている現在のサービス利用の実態を把握しつつ、今後、必要なサービスを効率的に提供する観点から検討してまいります。

 障害者に係る公費負担医療についてお尋ねがございました。
 障害者自立支援法案におきましては、障害者に係る公費負担医療につきまして、自立支援医療として再編し、必要な医療を確保しつつ、費用を皆で支え合う制度とするため、医療費と所得に応じた御負担をお願いすることといたしております。

 その中で、低所得の方や、障害の程度が重度でかつ継続的に医療費負担が生じる方など、家計への影響の大きい方については、所得に応じた負担の上限額を設定し、配慮することといたしております。
 また、重度かつ継続の範囲については、臨床実態に関する実証的研究結果を踏まえ、対象の明確化を図ることとしており、結論を得たものから順次実施してまいります。

 精神障害者の地域生活支援についてお尋ねがございました。
 障害者自立支援法案におきましては、住民に身近な市町村が中心となって障害福祉サービスを障害の種別を超えて一元的に提供する仕組みといたしますとともに、各都道府県は入院患者の退院促進に向け、社会資源の整備を含め、施策を総合的、計画的に進め、精神障害者に対する社会復帰や地域生活の支援を抜本的に強化することといたしております。

 今後とも、入院医療中心から地域生活中心へという基本的な考え方に基づき、この新たな仕組みのもとで、精神障害者が地域で安心して暮らせる社会を目指して取り組んでまいります。

 移動介護についてのお尋ねがございました。
 外出時の支援を行う移動介護につきましては、地域の特性や利用者の状況に応じた柔軟な形態での実施が可能となるよう、障害者自立支援法案では、市町村の地域生活支援事業に位置づけております。

 その際、市町村が必ず実施しなければならない義務的な事業とするとともに、その費用について、国、都道府県が補助することができる旨の規定を設けております。適切に事業が実施されるよう、十八年度予算において必要な予算が確保できるよう最大限努力をしてまいります。(拍手)

○議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

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