第162回国会 衆議院 決算行政監視委員 第5号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
 きょう、中山大臣に質問してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 近年、全国の幼稚園、学校などで、建材、塗料などに含まれます化学物質により、子供たちが頭痛、腹痛、吐き気、のどの痛み、疲労感などに襲われるといういわゆるシックスクールが報道、報告をされております。校舎の新築改築、また床のワックスの塗料、こういった化学物質過敏症となり、それが慢性になっていく、こういうことに悩まされる例も少なくないと伺っております。また、これが不登校の原因になると指摘する専門家もおります。

 学校に通う児童生徒の安全や命が脅かされる事件が今各地で相次いでおりまして、社会問題化しております。このシックスクールの問題は、子供たちが安心して学べる環境づくりという観点からも大変重要な問題であると考えております。本日、この問題について質問させていただきます。

 私、神奈川が地元でございますが、神奈川県立保土ケ谷高校で、教職員また生徒約百人が、建材などに含まれる化学物質の影響でシックハウス症候群と見られる症状を訴えているという記事がございます。五月十三日付神奈川新聞、また各紙に報道をされております。

 この保土ケ谷高校では、四月下旬から五月の上旬にかけまして、生徒、教職員がシックハウス症候群と見られる症状を訴え、不安を訴える保護者の意向を受けて、現在、事実上休校が続いているということでございます。私も、この関係者からお話を聞く機会がございました。

 この始まりと申しますのが、雨漏りの工事、屋根の工事でございまして、これが昨年九月に行われまして、神奈川県教育委員会が、国の基準、学校における室内空気汚染対策というものに基づく揮発性有機化合物の正式な検査を定期的に始めたのが、何とことし一月以降ということで、その間ほっておかれたということでございます。

 今回、シックハウス症候群に見られる健康被害、また休校という事態にまで発展したのは、この社会問題化しているシックスクールへの認識の甘さ、県教育委員会の対応のおくれが大きな原因ではないかと考えます。この対応のおくれは、県教育委員会の認識の甘さではないか。また、問題の重要性を全く感じていなかった、どうにかなるのではないかというような感覚があったのかもしれません。危機管理能力が欠けていたと言えるわけであります。そのために、対応が後手後手となってしまった。

 こうした経緯につきまして、大臣、この県立保土ケ谷高校の問題についての御見解をお伺いいたします。
○中山国務大臣 お答えいたします。
 このシックハウス症候群、一時大問題になりまして、いろいろな対策がとられてきたんですけれども、またここに参りまして、今古屋委員から話がありましたように、事もあろうに学校でそういうふうなことが報道された、ショックだったわけでございます。

 学校というのは、多様な教育活動の場でありまして、特に児童生徒が一日のほとんど大半を過ごす場でありますから、その環境というのは安全でかつ快適なものでなければならない、このように考えているところでございます。

 御指摘のありました神奈川県立保土ケ谷高校におきますシックハウス問題につきましては、これは県の教育委員会からの報告があるわけですけれども、これによりますと、今お話がありましたように、平成十六年九月に屋上の防水工事を実施したところ、教師、生徒数人が身体的症状を訴えたことから、十二月から、北の棟の最上階の音楽室及び書道室、平成十七年四月下旬からは、西の棟の最上階、それから北の棟の最上階全体を使用中止にしたということ。

 それから、平成十七年五月でございますけれども、全校生徒を対象にアンケート調査を実施したところ、三百八名の生徒が何らかの症状を訴えたことから、専門医とかあるいは学校医による診療相談を実施するとともに、スクールカウンセラーを配置して生徒や保護者の相談に応じている。そして、対策検討委員会を校内に設置しまして、詳細な調査を行いますとともに、外部の専門家の助言を得ながら、教室使用の再開に向けて、原因の特定、対応策の検討及び実施、再発防止のためのマニュアルの作成を行っていること。原因と考えられる物質をできる限り除去するために対策工事を実施している、こういったことを聞いているわけでございます。

 文部科学省といたしましては、これまで、学校施設整備指針の改定とかあるいはパンフレットを作成いたしまして、都道府県教育委員会など学校の設置者に対しましてシックハウス対策に対する取り組みを依頼してきたわけでございますが、そういった中でこのような事態が発生したということはまことに遺憾であると考えておりまして、今後とも、神奈川県の教育委員会とも十分な連携をとりながら、情報提供とかあるいは技術指導など適切な対応を行ってまいりたい、このように考えております。

○古屋(範)委員 公明党といたしましても、この化学物質過敏症が社会問題化いたしました一九九九年以来、党のアレルギー疾患対策プロジェクトで患者、研究者からの意見を伺うなどして取り組んでまいりまして、政府でも、室内指針値の策定を推進し、治療のためのクリーンルームの設置など、相模原にございますけれども、強く推進をしてきたところでございます。

 こうしたシックスクール症候群、学校環境衛生に対する取り組み、今大臣の御答弁にもございましたように、数年、非常に活発化してきているというふうには思っております。学校環境衛生の実態調査の結果を踏まえた学校環境衛生の基準の改定、また有害化学物質の室内濃度削減に向けた啓蒙パンフレット、シックハウス対策参考資料の作成など、より具体的な取り組みが行われていると思います。しかし、今回の保土ケ谷高校の問題を考えますと、そのようなさまざまなものができているとはいえ、政府の取り組みが学校の現場にまだまだ浸透、認識されていないのではないか。

 例えば、一昨年七月に全国の教育委員会等に通知されました学校における室内環境汚染対策につきましては、室内空気を汚染する化学物質が発生しないまたは少ない建材の採用について配慮するとか、また、工事発注の際には十分な養生及び乾燥のための期間の確保、そして竣工建物の適切な引き渡し、定期環境衛生検査の実施などが既に周知をされております。

 しかし、保土ケ谷高校では全くこの認識がなく、適切な対応どころか、屋根の工事だから室内空気とは関係ないのではないかと考え、生徒のいる間に工事を行っていた。できれば夏休みの間とかにすべきではなかったのか。この事実は、やはり子供たちの命を預かっているという認識が非常に欠けていると思います。

 この政府の指針、通知が現場では徹底されていない、機能されていない現状をどう思われるのか。また、今後のこうした事故を防ぐために、シックスクール事故発生現場からの報告を義務づけるとか、またシックスクール危機管理対応マニュアルなどを作成して現場に研修機会を設けて徹底するなど、このような強力な指導が大事なのではないかと思いますが、この点、いかがでございましょうか。

○中山国務大臣 今委員から御指摘ありましたように、このシックハウス症候群への対策といたしまして、まず、学校環境を衛生的に保つためのガイドラインということで、学校環境衛生の基準というのを改定いたしまして、この基準値を超えた場合には換気など適切な措置を講ずるように、これは都道府県教育委員会等に通知して指導に努めてきたところでございます。

 また、学校の施設あるいは設計上の留意点を示しました学校施設整備指針というのも改定いたしまして、今御指摘ありましたように、建物等の受け渡しをする場合には、シックハウス対策の観点から、学校施設について配慮する事項等についてパンフレットを作成する、そういったことで都道府県教育委員会等に対して周知を図ってきたところでございます。

 まさに今、話がありましたように、保土ケ谷高校みたいな事件が起こるわけで、これはちょっとした工事だからまあいいのかな、そういう安易な気持ちもあったのかもしれませんが、まだまだ周知徹底がしっかりしていなかったのではないか、このように思うわけでございまして、御指摘を踏まえまして、文部科学省といたしましては、学校におきますシックハウスの発生という事態を未然に防ぐために、今後とも研修会などの機会を通じまして一層指導の徹底を図ってまいりたい、このように考えております。

○古屋(範)委員 ぜひ、このような事故が二度と起こらないような対策、よろしくお願い申し上げます。

 建物の化学物質だけではなく、床のワックス剤ですとか、あとは害虫などを駆除するための農薬の散布、薬の散布、またプールの塩素、改修改築、増築工事など、学校内での化学物質の制限をさらに進める、また教師、関係者の理解を深める、登校可能な環境というものを目指すべきではないかと思っております。化学物質過敏症は確かに個人差があるものでございますが、過敏症の子も含め、やはりすべての子供たちが安心して通える環境づくりというものの整備が急務であると考えております。

 こうした子供また教職員の健康を守る観点から、まず、現行の学校環境衛生の基準を踏まえた検査を実施し、基準を超えた場合には、換気の励行、原因究明、原因物質の低減などの迅速、適切な措置が講じられますよう、国として各都道府県の教育委員会また学校等へ指導することが肝要ではないかと思いますが、これについての大臣のお考えを伺いたいと思います。

 また、あわせまして、原因物質の空気中の濃度を低減するために、校舎を改修したり、換気設備を設置する場合も出てくると思います。この費用の負担は少なくなく、やはり国庫補助を充実させることも不可欠ではないかと思いますが、この国庫補助充実についてもあわせて文部科学省のお考えを伺いたいと思います。

○素川政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどから御指摘にあります学校環境衛生基準でございますけれども、これにつきましては、先生御指摘もございましたように、基準値を超えた場合には適切な事後措置を講ずるということが書かれておるわけでございまして、御指摘にありますように、換気の励行、そのための設備の整備というものが重要でありましょうし、また、発生源を特定して、除去が可能であるならば直ちにそれを除去する、それに対する対応をする、適切な措置を講ずることが必要だろうと思います。

 都道府県教育委員会に対して、今までも通知等で指導しておりますけれども、いろいろな研修の機会等を通じまして、適切な事後措置が一層図られますように対応してまいりたいと思っております。

○大島政府参考人 工事の支援についてお答えをしていなかったので、補足させていただきたいと思います。

 学校施設、その安全性の確保、先生御指摘のように極めて重要な課題と認識しております。そういった学校施設の整備の際における経費ということについては、これを国庫補助の対象ということで、化学物質が発生しないあるいは少ない建材の採用とか、換気設備の設置、こういったものについての配置を促すような形をとっておりますので、今後とも、設置者の適切な対応を促しつつ、安全、安心の学校づくりの実現に向けまして努力してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 子供たちが長時間過ごす学校の環境衛生、こういうものに関しまして、ぜひ今後とも強力に推進をしていただきたいと思います。

 私もアレルギーに関しましてはみずからの課題といたしまして取り組んできたところでございますが、次に、アナフィラキシーの自己注射について確認をしてまいります。

 食物アレルギーによる重いアナフィラキシー、この救命用の自己注射というものが三月に承認をされまして、この五月中にも実際に処方できるようになり、これは、家族それからアレルギーを持つ方々からも非常に関心が高まっているところでございます。これも、公明党のプロジェクトチーム、特に江田康幸議員が中心となって、粘り強く取り組んできたところでございます。

 この食物アレルギーによるアナフィラキシーというものは、予測できない場面で死に直面するという、非常に厳しいわけでありまして、発症から三十分以内にこの注射をすることが不可欠である。ですから、発見がおくれたり、あるいは救急車を呼んだり病院に搬送する、そのようなことがおくれますと、その間で命を落とすというケースが非常に多いわけでございます。

 この注射でございますが、これは見本でありますけれども、このようなものでありまして、これを太ももに刺しますと自然に液、薬品が注入されるということで、緊急の場合には服の上からでも、ばんと強く刺せばいいというものでございます。

 この自己注射でございますが、緊急時に、一刻を争うというような必要性があるわけでございますけれども、子供たちが学校に行っている間にこのようなことが起きるという場合もございます。やはり保護者また周りにいる先生方の迅速なサポートが求められているところでございます。

 この注射の認可と同時に、日本学校保健会より、食物によるアナフィラキシー学校対応マニュアル、このようなものが各学校に五部ずつ、公立小中学校に配付をされまして、その中には、こういった緊急対応ですとか学校に携帯してくる際の対応というようなことがきちっと盛り込まれております。このマニュアルが実際に生かされるよう、学校での薬剤の保管、教職員による援助、家族からの申し出があったときなどの環境整備というものが大事、本当にこれが初めでありますので、初めの対応というものが非常に大事ではないかと思っております。

 学校現場での理解が得られるよう周知されることが重要でありますけれども、学校現場での環境整備につきまして、御所見をお伺いいたします。

○素川政府参考人 食物のアレルギーによるアナフィラキシーショックでございますけれども、養護教諭等を対象とする研修会におきまして、アレルギー疾患の研修課題の中でもアナフィラキシーショックについての知識の普及に努めているところでございますが、先生今御指摘ございましたように、日本学校保健会からのパンフレットの中に、具体的に細かく記述がございます。これを通じまして学校での校内研修をしていただくことが必要かと思いますけれども、私どもにおきましても、今御指摘のございましたアナフィラキシーに係る自己注射器につきまして、学校でどのようなサポートができるか、環境整備はどのようにすべきかということについても調査研究をし検討して、各学校において適切な対応ができるように考えてまいりたいと思っております。

○古屋(範)委員 まだまだ知らないという関係者が大変多いと思います。この注射使用のための学校の環境整備に、まず各学校長また養護教諭、校医に対する研修が重要であると思います。この研修には、アナフィラキシーをよく知っている専門医である日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会に講師をお願いするなど、食物によるアナフィラキシーの対応についてしっかり理解を深める研修を行うことが重要ではないかと思います。

 この小児アレルギー学会の専門医の要請についてのお考えをお伺いいたします。

○中山国務大臣 御指摘ありましたように、このアナフィラキシーなどのアレルギーに関します理解促進のための研修というのは極めて大事である、このように考えております。

 このため、これまでも独立行政法人教員研修センターにおきまして、文部科学省の指示によりまして、各地域の教育センター等で研修の企画等を担当いたします指導主事、学校栄養職員、養護教諭等を対象とした研修会を実施しまして、アレルギーについての周知を図っているところでございます。

 その際、アレルギー学会、今御指摘ありましたけれども、学会等の専門家を講師として要請するなど、その内容の充実に努めてきたところでございまして、今後とも、アレルギー対策の重要性にかんがみまして、その内容がより充実したものとなりますように、研修内容とかあるいは講師等について検討を進めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 もう時間でございます。
 アレルギーのお子さんは、ただでさえ学校へ行けない、あるいは、学校へ行ってもいじめやそういったことから不登校になり、非常に苦労されているわけでございます。この対策。また、これからは、できれば患者本人が意識を失っている場合にはかわって第三者が注射できるとか、それも保護されるための環境整備、また救急救命士が自己注射を打てるような法整備も急がなければいけないのではないかというふうにも考えているところでございます。

 まずは、学校の現場におきましてこの周知徹底をよろしくお願い申し上げます。
 以上で、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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