第168回国会 厚生労働委員会 第2号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 大臣、また両副大臣、このたび御就任になられましたことを心からお祝いを申し上げさせていただきます。

 本日は、私からは母子家庭の問題につきまして質問してまいりますので、よろしくお願いいたします。

 少子化対策が叫ばれる中でございますが、こんな過酷な状況に置かれる母子家庭があっていいものかと思われるような、母子家庭を取り巻く厳しい状況でございます。

 先日発表されました平成十八年度全国母子世帯調査によりますと、母子世帯の就業状況、平成十五年度の前回調査に比べまして一・五%ふえた、八四・五%。常用雇用者はその中で四二・五%、前回の三九・二%と比べ、ややふえてはおります。しかし、その中で臨時、パートの方は四三・六%。まだまだやはり雇用の安定化とはほど遠い状況にあると言えます。

 また、母子家庭の平均就労年収百七十一万円。前回調査よりも九万円ふえておりますが、児童扶養手当などを含めた平均年収、前回より一万円増、二百十三万円。やや上向いたとはいえ、一般の平均年収五百六十四万円の四割にも満たない。八年前の水準も回復できておりません。全体的には改善が見られず厳しい状況にあるということが明らかになりました。

 こうした、なかなか厳しい状況から抜けられない、いわばワーキングプアが多いとされる母子家庭、この状況につきまして、まず副大臣の御認識をお伺いいたします。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

○岸副大臣 この十八年の調査でございますが、これは、平成十四年に、母子及び寡婦福祉法、それから児童扶養手当法、この法律に基づいて、五年に一回調査をしていこう、こういうための調査でございます。いろいろ母子家庭の問題が国民的な関心を喚起している中で、この調査は、本当ならば十八年じゃなくて二十年に行うことになっておりましたが、前倒しで調査を行ったものでございます。

 そこで、この結果でございますが、先生おっしゃるように、一定の成果というんでしょうか、それは見られた。けれども、決して上々の結果だというふうなことにはならないのではないかなという私の認識でございます。

 ここで、なぜなのかということになるわけでございますが、これは、雇用環境などが悪化した時期でもあったし、そういった経済社会の状況も非常に大きいわけでございます。しかし、もう一つは、これらの自立を支援する事業について、やはりもうちょっと、私たち、広く企業に対しPR、広報、こういったものを強めていく必要があるのではないか、こういうような感じを強くいたしております。

 例えば、臨時というんでしょうか、有期で勤めておられる寡婦、母子家庭の方が常用化されるとなると、三十万でしたか、会社に対して補助がつくわけでございますけれども、これについて調べてみると、わずか二十何件しかない。そういうことを見ますると、やはりもうちょっとPRする必要が、もうちょっとというよりもかなりあるのではないか、こういうふうに思っています。

 同時に、だからといって、政策そのものは、支援策そのものは非常にきめ細かいものなんですね。私も、マザーズハローワークですか、渋谷にありますけれども、そこに行ってまいりました。行ってまいりまして、非常にゆったりとして、また気兼ねなく職探しをできる、御相談もできるということで、いらっしゃっている方から直接お聞きして、非常に評判もいい。そういうものもあるものでございますので、こういったことを両々相まって、ひとつ、今後一層その対策を充実していかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。

○古屋(範)委員 上々の結果ではない、反省点もあるというお話だったと思います。

 母子家庭にとって、児童扶養手当、非常に大きな支えとなっているわけでございます。この児童扶養手当、来年四月から一部削減が予定をされているわけでございます。この経緯、平成十四年の母子寡婦福祉法改正の際に、児童扶養手当につきまして、離婚後等の生活の激変を一定期間緩和し、自立を促進するという趣旨から、就労支援策等の強化を図る目的で、平成二十年四月から支給期間と手当額の関係を見直すこととなったものでございます。

 こうした改正が検討されていた当初、厚労省は、支給総額を抑制する立場から、手当の平均受給期間五、六年であることを理由に、支給開始から五年で手当を打ち切る案を検討しておりました。しかし、公明党は、支給期間の短縮は、受給者の生活状況によって大きな負担を強いることになると、この支給期間を安易に短縮することは一貫して反対をしてまいりました。また、児童扶養手当制度を見直すのであれば、母子家庭の生活に急激に変化を与えないよう配慮する必要がある。当時、浜四津代行、福島部会長を中心に、この激変緩和措置の具体策を示して当時の大臣に要請を行いました。こうした強い主張によりまして、現行の支給期間を維持することが決着したわけでございます。

 この厳しい財政状況を考え、支給期間が五年以上となれば一定の割合で支給額を減額する、この点についても、公明党の主張に沿って、実施期間を平成二十年度以降とするなど、早急な実施が見送られました。減額率についても、各種自立支援策の進捗状況、母子家庭の自立状況を総合的に判断して決めるとされたものでございます。

 先日、団体から御意見を伺いました。全国母子寡婦福祉協議会、吉村マサ子会長等より、この減額、生活実態を把握し、慎重に検討してほしい、このような要望を伺いました。母子家庭の母の就労に関する特別措置法の延長など、切実な内容でございます。

 ただいまありましたようなさまざまな支援策は講じられているものの、やはり、就労に対する施策というものは緒についたばかりではないかと思います。ましてや、地方におきましては、全体の雇用状況そのものが厳しいわけでございますので、そうした中で、正社員になれない、あるいは、児童扶養手当はやはり欠かせないじゃないか、また、減額されたら生活できない、このような声を伺っております。

 また、二十二日の報道によりますと、朝日新聞が実施した母子家庭の就業支援事業の調査、常用雇用転換奨励金事業、この予算見込み、約一割しか使われていない。予算を組んだ三十一都道府県のうち二十二都道府県が実績ゼロ。自立支援教育訓練給付金も、半分以下しか使われておりませんでした。

 このような現状を考えますと、児童扶養手当の見直しはやはり凍結し、さらに就労支援を進めるべきではないか。このように考えますが、大臣、いかがでございましょうか。

○舛添国務大臣 今、古屋先生御指摘のように、現実にこの母子家庭の生活実態を見ると、地域差もありますけれども、非常に困った状況にある方々がおられる。一生懸命就労支援をするということは本当にやらないといけないと思いますが、連立政権の与党の中で、今御議論がプロジェクトチームで始まっておりますので、それを見守りながら、どういう形できめの細かい対応ができるか。もちろん経済的支援もそうですし、今御指摘のように、就労支援、これにも全力を挙げていきたいということでございますので、きめの細かい施策をとって対応してまいりたいと思っております。

○古屋(範)委員 私たち与党もしっかりと取り組んでまいりたいというふうに決意をしているところでございます。

 また、この母子家庭の就労支援施策の充実ということに関しまして、この六月に発表されました母子家庭白書によりますと、母子家庭の母を正社員に転換した事業所に奨励金を支給する事業、これを実施いたしましたのは昨年度で二百十九自治体、割合はわずか二六%でございます。また、教育訓練給付金の支給、介護福祉士など経済的自立が比較的可能になる資格を取ることができる、こうした高等技能訓練促進事業の件数も伸び悩んでいるのが現状でございます。

 現行の就業支援策の一層の充実というものが求められているというふうに考えますが、この件に関しまして、厚労省の取り組みをお伺いいたします。

○大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありましたように、母子家庭のお母さん方の経済的基盤について、就労されている割合は高いですけれどもなお低所得の方々が多い、こういったことで、その経済基盤をさらに安定させるということで、例えばスキルアップをするであるとか資格の取得を促進するとか、常用雇用の促進が重要であるということで、事業のメニューといたしましては、一つは、パソコンやホームヘルパーなど教育訓練講座の受講に要した経費の一定割合を支給する自立支援教育訓練給付金であるとか、また、資格という意味で、看護師や介護福祉士等の経済的な自立を図る上で効果的な資格を取得するための受講期間中の生活費を支援する高等技能訓練促進費、こういった政策を展開してきたところであります。

 今御指摘ありましたように、地方自治体についてもさらに取り組みをお願いしていかなければなりませんし、また関係者にこういう制度があるということを周知して御利用いただくということで、さらなる自立を支援してまいりたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 やはりこの就労支援も使い勝手のよい制度でなければならない、このように考えます。地方自治体の課題も多いわけですので、私自身も、地方議員と連携をとりながら就労支援をさらに進めていきたいと決意をしているところでございます。

 次に、母子家庭のお母様の就労支援を行う上で私が特に進めたいと思っておりますのがテレワークでございます。

 通勤時間もない、あるいは生活スタイルに合わせて、自分の時間帯に合わせて仕事ができるこのテレワーク、母子家庭の収入アップ、また昼夜のかけ持ちなどの仕事から在宅就労になる、副収入としても期待ができるのではないかと考えております。

 そのテレワークを進める上では、パソコン機器の貸与、また技術がなければなりません。また、そのための指導者の確保などさまざまな課題があるところでございます。

 先日、私たち公明党で、NPO法人あごらの久保理事長より、母子家庭の母親にテレワークの就労支援をしている事業内容、国への要望なども伺いました。そこでは約五百人が登録し、二百五十人が常時働いているそうです。発注を確保するために、もっと母子家庭の母親の就労支援をしている企業、団体に支援をしてほしい、メリットを与えてほしい、あるいはテレワークに必要なパソコン、高速回線の費用の補助、またテレワークという就労形態、新しい就業形態ですので、それに対する制度設計の整備など、具体的な要望をお伺いしたところでございます。

 そこで、この母子家庭を対象としたテレワークを進める取り組みについてお伺いをしたいと思います。

○大谷政府参考人 今御指摘ございましたように、パソコンなどを活用して在宅で就業する、こういう形は、母子家庭のお母さん方の就業を図る上で非常に有効な選択肢の一つとなり得るということから、こうした就業形態を支援していく、大変重要なテーマだと考えております。

 しかしながら、その普及については、今少し御言及がありましたけれども、幾つかまだ課題があるということで、現在その先駆的な取り組みがまず進められていくということも重要であろうかと考えておりまして、こうした観点から、現在、母子家庭の母の在宅就業を普及させるために、支援団体に委託しましてそのマニュアルの作成を進めているところでございます。

 また、関係企業との、どうやって推進していただくか、あるいはコストの問題、こういったこともございますので、今現在あります貸付金の活用とか、そういうことも含めて、今後どうした方法がさらにとり得るか検討してまいりたいと思いますが、いずれにせよ、この在宅就業については積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 私、一年前、総務大臣政務官をしておりましたときに、このテレワークを推進しようということで、税制の創設あるいは共同システム開発の推進などに取り組んできたところでございます。既に厚労省におかれましても、なかなか後ろ向きだったような印象はあるんですが、厚労省におきましても前向きに取り組んでいかれているということでございます。

 舛添大臣、このテレワークの普及につきまして、厚労省でも試行実験をされているということでございますが、ぜひ今後、労働を所管する厚労省におきまして本格導入を目指していただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

○舛添国務大臣 このテレワークのメリットというのは、古屋委員おっしゃるとおり、私も非常に高く評価しております。

 昔は、SOHO、スモールオフィス・ホームオフィスなんて言われていましたけれども、これだけITが進んでいる、そうすると、母子家庭にとって御家庭にいながら仕事をできるということは非常にいいことでありますし、厚生労働省、女性の職員もたくさんおります。

 そういう意味で、まず隗より始めよということでございますので、この七月から、現実に育児をなさっている職員を中心に試行実験を今やっております。そして、これが軌道に乗って、いろいろな問題点もまた出てくると思いますが、そういうことを踏まえた上で、本格実施をぜひやりたいなと思っております。

○古屋(範)委員 大臣の御決意を伺うことができました。ありがとうございます。

 母子家庭の問題、非正規雇用あるいはパート労働の問題、また最低賃金あるいは地方の問題、そうしたいわば我が国で一番切実な問題が凝縮をしている母子家庭、この母子家庭に対します支援、また就労支援、今後とも拡充することを強く要望いたしまして、質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。

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