第169回国会 厚生労働委員会 第17号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様におかれましては、きょうはわざわざ国会においでいただき、貴重な御意見をいただきましたことを心から感謝いたします。 まず初めに、大日向参考人にお伺いをいたします。

 大日向先生、私たち公明党の少子化対策本部においでいただきまして、トータルプラン作成の折には講演をいただきまして、私たちも先生の理念を学ばせていただきました。

 先生は、地域子育て「あい・ぽーと」なども主催をされていまして、こうした支援拠点事業、また、一時預かり事業に長年取り組まれてこられたわけでございます。すべての子育て家庭に対する支援の重要性、また、本法案において子育て支援事業を法律上位置づける意義をどのようにお考えになりますでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

○大日向参考人 私は、子育ての基本は家庭であり親である、その家庭であり親が子育ての責任と権利を持つものと考えております。でも、それは、子育ての全責任を家庭、親に託すことではなく、親が親として育っていくことも含めて、社会皆が見守り支えていくことが必要だと思います。

 その意味では、就労の有無を問わず、すべての子育て家庭に対する支援が必要だと考えておりますが、現状の子育ては、私はよく孤独の孤というのを当て字に書きまして、お母さん一人の孤独な孤育てではないかというふうに、常々実態を見て考えております。家族関係がいろいろ変化している、地域のきずなが希薄化している中で、母親が孤立し、育児にさまざまな困難を覚えております。そうした子育て家庭に対して支援をしていく、すべての子育て家庭に対して支援の輪を広げていくことは、重点戦略でも指摘しているとおり、喫緊の課題だというふうに考えております。

 そのためには、子育て支援の基盤を充実していく、多様な主体の参入も今後検討されていくことと思いますが、やはりそこでは一定の質の担保に注力した仕組みづくりが欠かせないと考えております。

 今回の法案では、子育て支援事業を法令上明確に位置づけた、そして、事業実施に際して必要な基準を設ける、行政の指導監督を徹底する、そして、社会福祉事業に対する消費税等の非課税措置の対象とする等、子育て支援事業の普及促進が図られることに大変期待を持っております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 私も、大日向先生、親が親として育つことの重要性、これに対する地域全体の支援、非常に重要だと思います。私も、自分が子育てしている過程では、幸運にも周囲に仲間や多くの先輩がいて支えてもらえたわけなんですが、そうであるとは限らないわけでありまして、そうしたものの体制づくり、非常に重要であるということがわかりました。

 続きまして、もう一問、大日向先生にお伺いいたします。

 女性が子育てを心から楽しいと感ずる、なかなかそう思えない母親が多いわけなんですが、また、子供を産み育てたいと思える社会にしていくために、やはり、母親のパートナーである男性の育児参加は欠かせないと思っております。公明党といたしましても、もっと男性が育児休暇が取得しやすいように、できればパパクオータ制というような制度もつくっていきたい、このように考えております。

 本法案では、一般事業主行動計画の策定、届け出の対象範囲を拡大する等、企業の取り組みを促しております。

 大日向先生は、男性の働き方の見直しを含めた今後の企業の取り組みにどう期待をされているか、お伺いいたします。

○大日向参考人 男性の働き方を見直して、今以上に男性がもっと育児にかかわることができるということは、一つには、母親の心理的安定、夫婦関係の安定につながるでしょう。また、男性自身にとっても、育児にかかわることによって、さまざまな喜びを得ることができますし、子供との関係も充実していく。さらに、男性がもっと育児にかかわるような働き方ができるということは、女性だけが育児負担を担うということではなく、女性の就労促進につながる、こうしたメリットがあります。

 それからもう一つ、保育や地域の子育て支援の充実という観点から考えましても、働き方の見直しは、まさに車の両輪として非常に大切だと思います。

 例えば一例を挙げますと、私は、病児保育とか夜間保育、長時間保育、現状必要性は大変認めますが、一方で、病気のときぐらいは親が休めるような働き方がやはり必要ではないだろうかと。子育て期の親が育児や家庭生活とバランスのとれた働き方を保障されてこそ、子供の発達、最善の利益というものが保障される、そうした保育が可能となるというふうに考えています。

 ただ、従来は、こうしたことを申しますと、企業にとりましては働き方の見直しはコスト高だ、子育て支援は企業にとってリスクだ、そういうようなことを言われてきたと思いますが、それは発想の転換が必要だと思います。安心して人間らしく家庭生活や地域活動ができてこそ従業員はよりよい仕事ができる、働き方の改革は生活者としての質を尊重することだというふうに発想を変えていただくことが必要だと思います。こうした働き方の見直しによりまして、よりよい人材の確保、さらには生産効率にもつながっていきまして、次世代育成支援は企業にとっても必要だというふうに考えていただきたいと思います。

 従来は、三百一人以上の従業者のいる大企業に行動計画策定を義務づけてまいりましたが、今回の法案で百一人以上というふうに変更を出させていただきました。しかしながら、先ほども申しましたように、中小企業にとってはまだまだ厳しいということもあろうかと思いますので、一般事業主行動計画策定に当たりましては、さまざまな人事担当部門の体制が整っていないところには支援をしていく、あるいは各都道府県労働局や次世代センター等で丁寧に個別相談を行っていく、こういう行き届いた支援をしつつ、働き方の見直しをして、経営者、従業員ともに意識改革を図っていただきたいというふうに考えております。

 ありがとうございました。

○古屋(範)委員 私も今、議員立法で仕事と生活の調和推進基本法を作成しておりますけれども、まさに、働き方の改革、また企業の発想の転換というのが非常に重要になってくると思います。そこに対する国の支援がさらに必要となってくるということだと思います。

 ありがとうございました。

 次に、赤石参考人にお伺いいたします。

 先ほども母子家庭の窮状をお述べいただきました。私は横須賀市に住んでおりますけれども、私の周囲にも御苦労されている母子家庭のお母様はたくさんいらっしゃいます。私も、党で母子家庭支援のワーキングチームを立ち上げまして、微力ではございますが、母子家庭の支援に取り組んでまいりました。特に、就労支援ということでテレワークの普及に取り組んできまして、中小企業などにも導入できるような研究開発や税制の創設など、実現をさせてまいりました。

 おっしゃいましたように、日本の母子家庭のお母様は非常に就労率も高く、努力はしていらっしゃる。しかし、なかなかそれが生活の困難とあわせて自立に結びついていきにくいのが現状かと思いますけれども、母子家庭の母の自立支援のあり方について、さらに御要望等があればお述べいただきたいと思います。

○赤石参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほども少し述べさせていただきましたが、就労支援で職業訓練などを行う場合には、本当に元手というものがないわけですので、今ある支援では、例えば入学金とか学校に払う費用を先に払って、今二割になってしまったんですけれども、後から戻ってくるというようなシステムとかございますけれども、やはりそれではちょっと難しいかなというふうに思います。ですので、本当にあれかもしれませんけれども、生活を保障する最低限のものと一緒に、職業訓練が行えるようなことが必要かなと思います。

 今ある高等技能訓練促進費という、保育士とか看護師とか理学療法士とか作業療法士とか、ある程度年数のかかる資格を取る場合に、最後の三分の一の期間、十万三千円生活費を支給するという制度がございますけれども、これも、半額でも結構ですので、初めから支給するようなことがありますと、もうちょっと使いやすいかなというふうに思っております。よろしくお願いします。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、生活の保障と職業訓練、両方両立していかなければいけないという御意見だったかと思います。さらに、現実的に使える、役立てるような制度に改善をしていく必要があるのかなという気がいたしました。

 次に、庄司参考人にお伺いをしてまいります。

 私も川崎市あゆみの会とは交流がございまして、特に西川元会長、また皆様の御意見を伺う機会がございます。養育里親をしていらっしゃる方々、特に難しいお子さんを預かった場合などは三百六十五日心の休む暇がないですとか、あるいは、成人をされても結局相談に来るところはここしかない、それも受け入れてあげなきゃいけない、非常に御苦労されている、そのような御意見を伺っております。

 今回、養育里親と養子縁組を前提とした里親を区別するに当たりまして、養育里親に対する里親手当を引き上げる一方で、養子縁組を前提とした里親に対する里親手当はなくなります。これについて、養子縁組を前提とした里親に対する支援がなくなるのではないかという不安もございます。養子縁組を前提とした里親も、社会的養護の担い手の一つとしてまた重要な役割を担っております。適切な支援とはどのようなものでしょうか、御意見を伺いたいと思います。

○庄司参考人 御質問ありがとうございました。

 御質問の中に川崎市あゆみの会という言葉がありましたが、川崎の里親会ですね。今、私が会長をしています。

 養子縁組を前提とした里親の問題は、これは議論のあるところです。里親同士で話しても賛否両論があります。先ほど申しましたように、私自身は、社会的養護としての養育里親、それから養子縁組を前提とした里親とを区別する必要が現状ではあるというふうに考えています。

 今まで、明確な区別がなかったことから養子制度と里親制度は混同されて、里親制度といっても、養子縁組のイメージが多く持たれてきたというふうに考えます。実際に里親制度というと、乳幼児を長期に預かる者、あるいは、児童相談所との連携をしなかったり里親会活動にもかかわらない、そういった方々がおられます。

 そういった意味では、家庭の状況によりますけれども、社会的養護として十八歳までの子供をすべて預かる者というふうに考えて、養育里親を普及していくことが必要だと思います。

 そういった意味で、この区別は必要で、東京都では、たしか昭和四十七年から、養育里親と養子縁組里親を分けて扱ってきています。ただ、養子縁組を前提とした里親さんであっても、やはり適切な支援というのは必要だと思います。

 ただ、今回の法改正で支援が全くなくなるかというと、そうではなくて、里親手当はなくなりますが、一般生活費は支給されます。それから、相談支援は受けられます。親族里親も里親手当は支給されていません。

 そういった意味では、この整理というのは個人的には適当なものだというふうに考えています。

○古屋(範)委員 明確なお答え、ありがとうございました。

 次に、福川参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの意見陳述の中でも、家庭的保育の資格要件につきまして、保育士資格を保有することが望ましいという御意見だったかと思います。

 私も、先日、足立区のこうした家庭的保育を行っている御家庭にお邪魔をさせていただきまして、実際にその現場を見てまいりました。そばにお母様がついていらっしゃって、一瞬たりとも子供から目を離さないという、非常に緊張して保育をしていらっしゃるなという気がいたしました。

 特に足立区の場合には、独自の研修システムを導入して、それを修了された方がこの事業をされているということでございますけれども、特に都市部におきましては、多様な保育サービスが必要とされております。働く女性が多い、そして、さまざまな形でのそれに対応した保育というのがどうしても必要となってまいります。足立区においても、こうした家庭的保育のニーズは高いようでございました。

 ですので、子供の安全、そして保育の質の確保、片やニーズが高い、量も必要である、このバランスを先生はどのようにお考えになりますでしょうか。

○福川参考人 大変その辺は難しいことだというふうに私も認識しております。しかし、基本的なことを考えれば、やはり、資格要件というのは、子供の保育の質を担保する大変重要な要件としておろそかにできないというところもございます。

 そこで、そのバランスをどうとったらいいのかというところで、現在は、自治体におきましては、足立区なんかは、たしか百二十かそのぐらいの研修時間を課して家庭的保育者の養成をしていらっしゃるということなんですけれども、その辺で研修でいいよというふうに緩めてしまいますと、では、その研修の質はどのくらいになるのか。今でもそういうふうに研修による認定というのをやっていらっしゃる自治体は幾つかあるんですが、その内容はばらばらでございます。もっと短いところもございますし、足立区はそういう意味では長い方に当たるのではないかと思います。その辺では、自治体が研修による認定をするということであれば、そこの研修の質が大変大きな問題になるだろうというふうに思っております。

 今現在、保育を自治体の認定を受けてやっていらっしゃる方が現にいらっしゃいますから、保育士資格だけに限って、その方々はもういいよ、それはとてもとてもできないことでありますので、できれば私は、配付資料にもございますように、ある程度の期間を設けながら過渡的な措置をしながら、新しい方にはぜひ資格を取っていただきたい、あるいは、現にやっていらっしゃる方々もぜひ保育の基本的な知識を学ぶチャンスをつくってあげたい、そのための支援体制を組んでいただきたい。

 保育士資格がなくて始められた方でも、自分で努力をなさって保育士資格を、試験保育士という資格が今まだございますね、そういう制度も利用しながら、バックアップしながらおやりになった方もいらっしゃいます。

 実は、かつて保育所が足りなかったときに、無資格の保母さんといいますか、たくさんいらっしゃいました。その人たちに、やはり子供の保育をする以上は、基本的な知識と技術、専門家としての専門知識、技術を身につけていただきたいということで始まったのが試験保育士の制度だったというふうに思います。現状の家庭的な保育もそうだと思います。

 そういう意味では、実際に家庭的保育をやっていらっしゃるわけですから、実習のところは免除するとか、さまざまな形で容易に資格がちゃんと取得できるような体制も組んで、将来的には、ぜひ資格保有者に統一できるような方向に持っていっていただきたいなというふうに思っております。

 以上です。

○古屋(範)委員 最後に森田参考人、もう時間がないんですが、多数の地方自治体の地域行動計画に携わってこられたとお伺いしております。こうしたPDCAサイクルを導入することになっておりますけれども、現場で携われた立場から、後期行動計画の策定に向け、どのようなことを期待していらっしゃるか、お伺いいたします。

○森田参考人 私は、一番大事なことは、形式的ないわゆるアンケート調査だけではなく、現場にきちんと出向いていって、そして、利用者、とりわけ子供たちの声ですとか、あるいは子育て中の親たち、そういった人たちの声をきちんと聞きまして、その自治体に合った評価をして、そしてそれを次の計画のところに入れ込んでいく、そういったことが一番大事なことではないかと思っております。

○古屋(範)委員 本日は貴重な御意見をありがとうございました。御意見を踏まえ、また法案の審議を行ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

Follow me!