第169回国会 厚生労働委員会 第9号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様、わざわざ国会においでいただき、貴重な御意見を述べていただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず最初、岡部参考人にお伺いをしてまいります。

 先日、与党のプロジェクトチームにおきましても、WHOの尾身さんをお招きいたしましていろいろと御意見をいただきました。その中でも、ともかく最初の危機管理が重要である、高目の危機管理をして封じ込めをしていく、その体制づくりが非常に重要だというような講演をしていただきました。

 WHOは新型インフルエンザが発生してからどのくらいの時間でフェーズ4宣言をするということを予想されているか、お聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

○岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 尾身さんなんかともよく話をすることはあるんですけれども、WHOというメカニズムの中で、現在フェーズ3にあるわけですけれども、そこからフェーズ4に切りかえるというのは、恐らくは、その国に対する問題、ある国で起きたときに、そこはフェーズ4かどうかということを認定するのは、現象だけではなくて科学的な部分、それから国対国のこと、そこのところの経済事情、あるいは全体に波及する力、いろいろなディスカッションをするので、直ちにというわけには恐らくいかないだろうというふうに考えております。

 また、WHO自身も、それを直ちに宣言するのではなくて、やはりいろいろな意見をやりながら調整をするということで、時間がかかる可能性はある。それは何週間も、何カ月もかかるというほどではないですけれども、時間がかかるということははっきり申しています。

 したがって、私たちの方としては、往々にして行政機関はある数字をつけると、その数字に達していないから動かないんだ、あるいは、ある数字に達したから動くんだという判断をしばしばしがちだと思うんですけれども、この場合には、いろいろな情報を得た上で、その可能性があるならば動き出す、あるいは動く必要がないというようなことを、ある程度柔軟に我が国としてはやっておく必要があるというふうに思います。

○古屋(範)委員 今のお話ですと、WHOの判断は、総合的にさまざまなものを勘案するために多少時間がとられるだろう、その手前にといいますか、やはり、我が国ができること、これを迅速、柔軟に対応していく、そのことが重要なんだというふうに思います。

 続けて、岡部参考人にお伺いいたします。

 新型インフルエンザの患者を診療するために、やはりその医師は特別な教育を受けた者でなければならないのか、特別な訓練も必要なのか、また、医療機器、また設備についても、これに対する特別なものが必要なのか、それについてお伺いいたします。

○岡部参考人 ありがとうございます。

 例えば、コレラであるとかペストであるとかいう病気は非常に特殊な病気でありまして、その広がりも、そんなに広がらないものであるので、やはり感染症の専門家ということが必要になってくると思います。しかし、仮にパンデミックというような形になると、パンデミックというのはいろいろな人に感染をするという意味ですから、患者さんの広がりが多くなるので、すべてに専門家が当たるということは、これは無理であります。

 したがって、ではどうするか。これは我々の方の責任もあるわけですけれども、医療、医学の常識ということを、感染症に関してレベルアップしていく必要があると思います。それは多少時間の要ることでありますけれども、そんなに難しいことではないので、きちんとした常識を私たちも含めて医療関係者がレベルアップできるような形を考えていく、あるいはやっていく必要があるというふうに思います。

○古屋(範)委員 今、岡部参考人がおっしゃいましたように、国としても、こうした医療関係者への意識啓発といいますか教育のレベルアップというものをしっかりと図っていかなければいけないということだろうというふうに思います。

 次に、清野参考人にお伺いをしてまいります。経鼻ワクチンの開発に関する貴重な御説明を先ほどいただきました。

 私たち与党、自民、公明の有志で、昨年来、ワクチンの将来を考える会という会を立ち上げまして、坂口元大臣が会長となりまして、さまざま勉強会も重ね、提言も取りまとめたところでございます。

 先ほどの御意見にもございましたけれども、我が国における、新型インフルエンザ対策のみならず、ワクチン行政、ワクチン施策全体にわたる御意見がさらにございましたら、お聞かせいただきたいと思います。

○清野参考人 私、免疫を専門とする学者でありまして、その中で、インフルエンザに対するワクチンということで、最近こちらの領域にかかわるようになってきたんですけれども、それで、ちょっと驚いたのは、国内においては、インフルエンザウイルスに対するワクチンは、少なくとも過去三十年以上新しいものができていないわけですね。要するに、昭和の時代のワクチンをいまだに使っている。

 繰り返しになりますけれども、鶏卵でつくる技術でやっていて、いまだにといいますか、注射でやるというのが常識となってきたわけですけれども、二十一世紀になって、ワクチンは人々の健康を守るために非常に大事なものですから、そこに、これまで二十世紀後半にいろいろ蓄積されてきた新しいテクノロジーを入れて新しいワクチンをつくるという段階に来ているんじゃないかな、これはインフルエンザだけではないですけれども。

 しかし、インフルエンザは多くの国民が関与する非常に重要な疾患ですから、まずこれをターゲットにして新しいワクチン開発をする、ワクチンづくりに新しい考え方を日本において根づかせるということが大事かなというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 やはり、まだまだ我が国のワクチン政策は立ちおくれているのかなというふうに感じます。

 次に、藤井参考人にお伺いをしてまいります。

 こうした新型インフルエンザの水際対策をとっていく上で、検疫所の存在は最重要であるというふうに考えます。参考人はその最前線にいらっしゃるわけでございますけれども、まず、フェーズ4になった場合、この重要な検疫にかかわる人員の確保というものが十分かどうか。また、この新型インフルエンザ対応時の検疫官の感染防御、これが非常に重要だと思いますけれども、これについてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

○藤井参考人 御質問いただきました、まず、フェーズ4となった場合に検疫に係る人員が十分かというお話でございます。

 今想定されておりますのは、先ほど御説明申し上げましたように、発生国からの直行便につきましては、四つの空港と三つの海の港の方に集約をするということになっております。そこで重点的な検疫を実施するということで準備がされているわけでございますけれども、その体制につきましては、検疫所は今、全国で十三カ所、支所等も入れますと百以上あるんですが、そこに八百人以上の職員がおります。その職員をこれらの集約空港あるいは集約港に応援派遣をして応援体制を組むということが今想定されておりまして、実は、成田空港を例に申し上げますと、現在五十人程度でございますが、それが約倍の体制で検疫に当たるということが想定をされております。

 それで十分かということにつきましては、それは現場の人間といたしましては、十分でしょう、あるいは大丈夫ですということはなかなか申し上げにくいのですけれども、現在、訓練等を通しまして、この人数で何とか対応できるということを前提といたしまして、マニュアルの整備ですとか体制整備をしているところでございます。

 ただ、今回の法改正で、そのほかに、ホテルで停留をさせていただく、あるいは健康監視のために自治体さんに情報を送っていくといったようなことをまた想定して作業しなきゃいけないんですけれども、そちらの方につきましては、現在、恐らく厚生労働省本省でも検討課題として検討していただいているというふうに考えております。

 まとめて申し上げますと、検疫業務についての人員確保についてはかなり見通しがついていて、これで頑張りたいというふうに感じているところでございます。

 それからもう一点、感染防御の点なんですけれども、これは、検疫官の健康はもちろんなんですが、検疫官が感染をして、通っていかれるお客様におかけしてしまうとか、あるいは検疫官も生活をしておりますので、その検疫官が地域の中で感染を広げてしまうといったようなことは非常にあってはいけないことだというふうに思っております。

 現在とり得る方法としては、PPEといいまして、個人の感染防御の方法、例えばゴーグルをするとかマスクをするとか防護服を着るとかいったような方法につきましては、十分その備蓄等も行って、その着脱の方法なども繰り返し訓練などを行っているところであります。

 あるいは、感染が起こりにくいフォーメーションみたいなことも検討しているんですけれども、でも、やはり万が一を考えますと、先ほどから話題になっておりますけれども、効果的なワクチン等を事前に打っておきたいといったようなことは私たち自身としても考えておりますし、あるいは、例えば組織として、一番最初の、まだ有効なワクチンが開発される前に、最前線で検疫をみんなでやろうと、その職員を最前線に送り出す立場から考えても、まさしくそのワクチン、プレパンデミックワクチンの安全性のこともありましたけれども、その有効性ですとかあるいは安全性等につきましてもきちんと確認がなされた段階で、私たち、打つことができたらというふうに考えている次第であります。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 四つの空港、三つの港に人員を集中して管理体制に当たっていくということでございましたけれども、やはり、いざ危機が発生したときには、この人員の確保というものも、また今後さらに厚くなるよう検討していかなければならないのかなという気がいたしました。

 続けて藤井参考人にもう一つお伺いいたします。

 今回の法改正によりまして、航空会社に対する要請が明記されることとなりますが、具体的にどんなことを要請されるのか、教えていただきたいと思います。

○藤井参考人 お答えさせていただきます。

 法律で、航空会社についての要請を明記していただくということでございます。実は、これまでも、航空会社につきましては、検疫法に基づきまして、例えば飛行機でございましたら、空港に到着する前に、その飛行機の中に感染症の疑いのある乗客の方がいるかいないか、いない場合でも、いないという旨を事前に連絡してくださいということで、飛行機が着く前に私たちの検疫体制を整えるということをしております。

 ただこれも、近年航空会社さんに非常にお願いを申し上げて、ようやく一〇〇%に近くその通報をしていただいている状況なんですけれども、今回の法改正で、そのほかにも御協力いただくということを法に基づいてきちんと要請できるというのは非常にありがたいと思っております。

 具体的なお話は、やはり、飛行機の中で発症された場合には、ほかのお客様に感染を広げないといったようなことをなるべく早く開始したいというふうに思っておりますので、当然、乗客、その有症者の方も含めて質問票を配付していただいたり、それへの記入の指導をしていただいたりということから始まり、空港到着後に検疫の手順というのはこうなるんですよといったようなことを御説明いただいて、多分、着いてからすぐおりられないというとパニックが起きてしまうと思いますので、そういったことをきちんと説明していただくといったようなことについてはまず御要請させていただきたいと思っておりますし、あるいは、ほかのお客様等も含めて、マスクの着用ですとか、患者さんに移動していただくとか、まさにこれは航空会社さんの職員としてやるものではないとは思うんですけれども、そういうことがどうしても必要ですので、そういうことをお願いしたい。

 あるいは、先ほどから問題になっておりました、直行便でない便に発生国からお客様が乗っていらっしゃったといった場合には、やはり、航空会社が有していらっしゃる乗客情報等を御提供いただいて、到着したら確実に検疫所に御連絡をいただくといったようなことについても御要請させていただきたい事項かなと。

 また、何より、これは在留邦人の方が帰ってくるということもありますが、極力、観光客の方が航空機で日本に入ってくるようなことがないように、運航自粛等々につきましても協力要請をさせていただければいいのかなといったようなことを今想定させていただいております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ただいまの御説明で、航空会社の協力が不可欠であるということがよくわかりました。ありがとうございました。

 次に、光石参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの意見陳述の中で、感染症の制御について、人々が正確な情報を受け、理解すること、及び、人々が任意に健康診断に受診をし、任意に家族を含む他者と別となること等、人々の協力が原則であり、第一義的に重要であるという御意見でございました。

 伺っておりまして、感染の疑いがある、感染の可能性がある者の人権、こうした側からの御意見が主であったかというふうに感じます。感染の疑いがある者が移動して、それによって他の者が感染をする、そうした感染をさせられる側の人権についてはどのようにお考えでしょうか。

○光石参考人 御質問ありがとうございます。

 私が申し上げているのは、このような法律を、いわゆる健康者、あるいは大勢おられるそういう方をとにかく守らなくちゃいけない、それは大事なんです。大事なんですけれども、それと全く同じレベルで、感染してしまった方、あるいは疑われる方、その方々の人権というのも同じように大事なんだと。

 今の法律のままいきますと、読みますと、何か怖いことがずっと書いてあって、これは一体私どもは何をすればいいんだろうかということで、非常に戸惑うんですね。

 だから、そういう意味では、私、前にも、小委員会のときにも申し上げたんですが、要は、両方が大事なんだと。特に、効率的に言えば、人々が、どんな人々でも任意に協力するということが一番効率性があるんですよ。だから、そのことを法律の一番前のところに書いておいて初めて皆さんが理解できるんじゃないか、こういうふうに思います。

    〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 また、岡部参考人にお伺いをしてまいります。

 先ほどの意見陳述の中で、最も重要なこと、それは判断者、政治、行政、医学がパニックに陥らぬことという御説明がございました。

 パニックに陥らないためには一体何が必要というふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

○岡部参考人 ありがとうございます。

 申し上げている側もなかなか難しい部分なんですけれども、しかし、パニックというのは、何にも知らないときにどんというものが起きたときに、何事でも、よく頭が真っ白になるというふうなことが言われるわけですけれども、そうならないために、パニックは恐らくゼロにならないと思うんですね、発生したときには。社会的にもいろいろな騒ぎになりますから、パニックがゼロということではないと思うんですけれども、頭が真っ白になるようなことは避けなくてはいけない。

 そのためには、ある程度のことを想定しながら、そのときにどういうふうに対処するか。それは、考え方だけの問題ではなくて、実際のツール、道具としてのものも我々持っていないとできないものですから、そういうことを持っている。

 それから、特にメディアの方々は一般の方々に話をする一番前線におられるので、その方々が現象だけではなくてその背景にあるものを理解していただくというような形での、通常からのコミュニケーションが大切だろうというふうに思っています。

 これは、思っているだけではなくて、常々実行していかなくちゃいけないわけで、できる範囲のところから進めているところであります。

○古屋(範)委員 そうした情報提供などなど、国立感染症研究所の存在というのは非常に大きいというふうに思っておりますし、また、その他のこうしたインフルエンザ対策ワクチンに関する研究機関の存在というものも重要であるというふうに感じます。

 こうした研究機関に対する国の施策への御要望などありましたら、お伺いしたいと思います。

○岡部参考人 ありがとうございます。

 研究も、純粋的な研究と、それからかなり実際的な部分に関する研究もあるわけですけれども、ともに重要でありまして、例えば、清野先生のように基礎的なところからやっていくということは、時間がかかりながらも、サポートしていかないとなかなか進まない。それから、私たちのように実行を目の前にしなくちゃいけないというところでは、今やっていることで手いっぱいなところにもう一つ加わってくると、もうにっちもさっちも出ないということもありますので、そういうところの理解をいただいて、現在の研究機関は、やはり技術的に、先ほどの正しい情報というのは、科学的な背景に基づいた正しい情報という意味なんですけれども、それが日常からできるような体制、これをぜひお考えいただければというふうに思います。

 ありがとうございました。

○古屋(範)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。皆様の御意見を踏まえ、これからも対策に全力を挙げてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

Follow me!