第171回国会 衆議院 環境委員会-3号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様、国会においでいただき、貴重な御意見を賜りました。大変にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。

 まず、松本参考人にお伺いをしてまいります。

 松本参考人におかれましては、昨年から、中央環境審議会の土壌制度小委員会の座長として、土壌汚染対策に関する検討及び提言の取りまとめをされてこられました。これら土壌汚染対策に関する検討及び提言の取りまとめをされるに当たりまして、大変御苦労されたのではないかというふうに思いますけれども、その取りまとめに当たって一番御苦労された点をお教えいただきたいと思います。

○松本参考人 冒頭で申しましたように、この小委員会は九回行っておりますが、最初二、三回の間は、特に産業界から、土壌汚染による問題事例は極めて少ないと。当時提出しました資料は、土壌汚染問題で出ておりますのは十一例でございました。この数字でもっては非常に少ないのではないかという御指摘で、しかも健康被害が出ていない、また、自主的な取り組みも適切に行っているので、あえてここで法案の見直しをやる必要はないのではないかという非常に強い意見が出て、委員長である私は、大変その点は苦労をいたしました。

 しかしながら、審議が進行するうちに、汚染土壌が法律の枠外で大量に移動していることの問題に対する認識が深まりまして、まず、適正な処理の確保をやらなければいけない。次に、それが空転しないように調査の契機を拡大することと、それに加えて、現場のリスクに応じたより合理的な対策を進める方向で委員会全体が一致した、そういう点でございます。

 終わります。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 産業界、経済界の意向も踏まえながら、そことの意見の一致を見たということで、大変御苦労されたこと、よくわかりました。

 次に、続いて松本参考人にもう一つお伺いいたします。

 子供たちが健やかに育つためには、子供たちが安心して遊んだり学んだり、そういう環境整備が非常に大事かと思います。私も母親の一人としてそのことは非常に重要ととらえております。

 そのためにも、子供たちが学んだり遊ぶ学校、公園、また食を扱う市場などが設置される場所、これも、人の健康の観点からも安全でなければならない、これは当然のことと思います。

 今回の改正案では、学校や公園のグラウンドあるいは砂場に土壌汚染の恐れがある場合には、改正後の第五条、改正前の第四条でありますけれども、これによりまして土壌汚染の調査を命令できる仕組みがございます。しかしその一方で、過剰な対策を求めて過剰なコストを必要とした場合には、そうした施設整備というものが推進できない、こういう側面もあろうかと思います。

 今回、政府が提出した改正案では、掘削の対策が不要な区域とまた対策が必要な区域に分けて指定をする。こうした過剰な対策を防止するためのものではないのか。私たち責任与党として、やはり土壌汚染というものが人の健康被害にどのような影響を与えるのか、またその対策としてどのような措置を行えば健康の観点から大丈夫なのかということは、科学的な見地からも正確に理解をして、必要十分な措置を講じつつ国民が安心できる環境を整備する、この促進が必要ではないかと考えております。

 そこで、土壌汚染の影響とその対策につきまして、土壌汚染があれば直ちにそれが健康被害を生ずるということを私なども、専門知識のない者はそう考えがちでございますけれども、自然科学の御専門家として、この考え方について科学的見地からどのようにお考えか、お教えいただきたいと思います。

○松本参考人 土壌汚染といいますと、一般には、土壌汚染されますと、先生が今御指摘のように、直ちにそれが人の健康に影響を及ぼす非常に危険な状態に陥ったと考えられるようでございますが、私は、それはかなり大きな誤解があると思います。

 土壌汚染といいますと、その土壌の危険性がどのように人の健康あるいは生物の健康に影響するか、その拡散を調べてみますと、まず、汚染された土壌が風とかそうしたものであおられて、土砂が空中に舞って、そのものが、汚染された粉じんが人の衣服についたり、あるいは子供たちの皮膚そのものに砂場等で接触したり、そういう家庭内への持ち込み、そういう場合と、それから雨等で汚染物質が水質を汚濁する場合、汚染の拡散にはこの二通りがあろうかと思います。

 風等による粉じん、こうしたものは、これを被覆、盛り土でございます、あるいはアスファルトで完全に覆う。砂の遊び場であれば、その上に新鮮な、全く汚染のない安全な土を盛ることによって子供たちの遊び場に提供することができますし、水質汚染を行うような危険性がある場合には、遮水層を設けて、その水がほかに拡散しないような技法は現在普通にとられているところでございまして、私は、いたずらに土壌汚染という状態をあおらない方がむしろ自然な状態ではないかな、そういうふうに考えます。

 以上で終わります。

○古屋(範)委員 わかりやすい御説明をありがとうございました。

 土壌汚染については、そうした対策がとられることによって健康被害を招かない、このような方向をつくることができるという御説明であったかと存じます。

 次に、松本参考人、大野参考人、お二人にお伺いをしてまいります。

 たとえ土壌汚染があっても、先ほどおっしゃられましたように、盛り土あるいは舗装といったような十分な対策を講じれば、その土地の上で人が生活しても全く健康の被害が生ずるおそれがないということでございます。しかし、例えば、土壌汚染がある土地であっても十分な対策を講じれば、その上で子供たちが遊んでも本当に健康に被害がないのかどうか、再度確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○松本参考人 先ほど申し上げました土壌の汚染の拡大の観点から申しますと、要するに、汚染された土壌の粉じんが外に舞い上がらないように、中に封じ込める、あるいは盛り土をして完全にそれが人の生活空間に入らないような処理をすることで、そのリスクを大幅に軽減し、ほとんどリスクのない状態にすることはできる、私はそういうふうに考えます。

 以上で終わります。

○大野参考人 今の件については、松本先生と全く同じでございます。

 ただし、一つちょっと補足をいたしますと、現行法では、盛り土とか封じ込めをやるときには、それなりの土壌の濃度の基準以下でないとだめなようになっています。それで、仮にそれが漏れ出たとしても、物すごく急性の毒性でもって問題が起きるとか、そういうことはないと思いますし、ちょっと触れたぐらいであったとしても、それが将来的に大きな問題を引き起こすというようなことは、まず考えにくいのではないかというふうに思います。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 かなりリスクは軽減できるというお話でもございました。また、長期的な観点からさらにフォローする必要があるのかなというふうにも考えます。

 次に、松本参考人、大野参考人、またお二人にお伺いしてまいります。

 こうした土壌汚染がある土地につきまして、健康被害が生じないように適切に管理することが必要ということでございます。土壌汚染の対策につきましては、中小企業等から、その対策費用が高額となる、負担ができないという声も上がっているかと思います。こうした声にこたえるために、対策費用が大きな負担とならないよう、対策技術の高度化とともに低コスト化が必要と考えますけれども、そのためにどのような施策が必要か、お教えいただきたいと思います。

○松本参考人 御指摘のとおり、現在の土壌の修復技術というのは、日進月歩の非常に速い速度で、より高度の技術が浸透しております。

 例えて言いますと、難分解性の有機化合物、これは非常に難しい問題を含んでおりますが、こうした、要するに水にある程度溶け、なおかつ非常に土壌微生物による分解が進まないような物質に対しては、封じ込め、長期間にわたって我々の通常のライフサイクルでは劣化しない程度の非常に強力な、そういった無機資材でその場で固化する。これは従来の掘削除去に対する費用よりもはるかに低コストで修復ができますので、中小企業の方にとっても非常に朗報ではないかなと私は思います。

 以上で私からは終わります。

○大野参考人 ただいまのお話につきましても、基本的に松本先生と同じでございます。

 たまたま、我々は業界の中におりますけれども、まず、有機溶剤系の地下水汚染にかかわるような技術に関しましては、これはまさに市場があるわけですね、競争があるわけです。非常に競争が激しいです。きちっとした提案をして、安い値段で提案していかないと仕事はいただけないという世界になっております。そういう意味で、業界の中でもそういう低コストのための努力というものが熾烈に行われているというのが実態でございますので、今後とも、そういうようなことで、安い、できるだけリーズナブルなコストで提供できるようなサービスというものが我々の会員の中から出てくるのではないかというふうに思います。

 もう一点、重金属類というのは、要は含有量の問題ですね。そういったもので問題があるところにつきましては、先ほど松本先生がおっしゃったように、掘削除去するというのは非常に高くなりますので、それなりにきちっと押さえた状況の中で管理していくというような対策のとり方とこれからうまく折り合っていただくということが大事ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 掘削というような高コストな方法ではなく、また、非常に新たな技術が開発をされているということ、現実的にはそういったものを活用しなければなかなか進まないんだろうなということがよくわかりました。

 次に、三人の参考人の先生方にお伺いいたします。

 今回、政府が提出いたしました土壌汚染対策法、本来、十年後の見直し規定があったものを、施行五年で見直しを行うということでございます。国、自治体、経済情勢等の現状を踏まえまして、現時点においてはベストに近い案となっているというふうに認識をいたしておりますけれども、それぞれの参考人の方々の御意見を伺いたいと思います。

○高橋参考人 陳述の最後に申し上げましたが、将来的には、例えばいわゆる売買時に調査を義務づけるとか、さらには利用の形態に応じた形でリスクマネジメントの基準をきちんと定めるということも考えられると思いますが、まずは、やはり売買取引については、現状でそういうものをかけるというのは売買に対する影響が非常に大きいだろうということがございます。さらにはリスクマネジメントのやり方についても、ほかの法制との兼ね合いというのもございますので、なかなかここだけでやれるものではないというところがございます。

 そういうことを考えれば、現在のところではベストに近いものだというふうに私は思っております。ただ、この分野は日進月歩でございますので、また近い将来、何らかの手直しが必要になるかどうかわかりません。とりあえず、現状ではベストだというふうに私は思っております。

 以上でございます。

○松本参考人 法の専門家でもない私がこのようなことを申し上げるのは大変僣越かもしれませんが、法というのは、やはり現実の社会に一たん適用して、おろして、それにいろいろな不備が出てきたときにはまた考え直す、そういった格好で、より完成度の高いものに向かって法改正というのはあるのではないかな。これは私のあくまでも私見でございますが。そういう観点から見ますと、現在の時点では、私は、高橋先生と同じように、極めてベストに近い状態にある、そういうふうに考えます。

 以上です。

○大野参考人 この点は私も両先生方と同じような考え方でございますけれども、一つ、今回の政府の方の法改正案の中身で、やはり、仮に汚染地が発見されても、直ちに健康に影響があるおそれのある場合とそうでない場合によって、措置実施区域という話と形質変更届出区域というふうに二つに分けたということについては、これは非常にいいのではないか、現実的ではないか。それによって、対策の弾力性、それから行き過ぎた対策の抑制ということができるようになったのではないかということで非常に評価されておりますし、また、場外搬出関係についても適切に管理することができるような案になっておりますので、以上によりまして、法律における穴といいますか、抜け穴みたいなところがかなり埋められたのではないかというふうに評価しております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 ほぼベストに近い形の改正案になったのではないか、そのような評価をちょうだいできたのではないかと思っております。本日の参考人の皆様の貴重な御意見を踏まえまして、しっかりまたこれから国会で審議をしてまいりたいと思います。本日は大変にありがとうございました。

 以上で終わります。

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