第171回国会 衆議院 環境委員会-7号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。きょうはよろしくお願い申し上げます。

 我が国は、北は流氷が訪れる北の海、また南はサンゴ礁の海までということで、大変多様な海の姿を見ることができる、そういう国でございます。我が国の環境は、取り巻く海域を抜きにしてはやはり語ることはできないと思っております。

 漁業を初めとする産業を支え、そして海洋レクリエーション、また自然との触れ合いの場、さらには私たち日本人の心のふるさととして、また人類共通の財産として、その恵みを将来にわたり享受するためにも、海の自然環境を守ることは大変重要であると考えております。海の環境を保全し、また海の生物多様性保全を進めるためにも、我が国における生物多様性の確保を実現するためにも、大変重要なことであると考えております。

 このような状況のもとで、今回、自然公園法及び自然環境保全法の改正におきまして、海の自然環境保全の問題についてどのように対処していくのか、また、今回の改正内容のうち、特に海域保全にかかわる内容を中心に確認をしてまいりたいと思います。

 私も、神奈川県の横須賀市に住んでおります。小高い山の上に住んでおりますので、東京湾、お天気がいいときは千葉まで見ながら毎日生活をしているわけなんですが、我が国を代表する自然のすぐれた地域を指定する国立また国定公園は、海域の保全の上でも最も重要な役割を果たすものと考えております。

 そこで、まず初めに、海域を含む国立・国定公園は現在どのくらいあるのか、またその中で、海中公園地区として保護されている海域はどれほどあるのか、これについてお伺いいたします。

○黒田政府参考人 今全国では二十九の国立公園、それから五十六の国定公園が指定されておりまして、このうち、国立公園では十五、国定公園では二十五の公園が、海域をそれぞれの区域内に含んでおるところでございます。面積にいたしますと合計およそ百七十万ヘクタールの海域が国立・国定公園に含まれている、こういうことになります。

 また、国立公園などに含まれます海域のうち、熱帯魚やサンゴ、海藻などが豊富であったり、あるいは海が清く澄んでいるといった、海中のすぐれた景観を維持すべき区域を対象として海中公園地区を指定しているところでございます。

 国立公園、国定公園合わせまして、現在六十九地区、面積にしますと約三千七百ヘクタールが海中公園地区になっております。この海中公園地区の中では、例えば埋め立てを許可制にするというようなことで、そこに有するすぐれた海中の景観というものを保護しているという実態でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 国立公園で二十九のうち十五、また国定公園で五十六のうち二十五、約半分が海域を有するということでもございます。そうした海域でさまざまな自然を保護する取り組みがなされているというお答えであったかと思います。

 次に、国立公園など自然公園が、海域保全の上で一定の役割を果たしてきたということでございますけれども、海域の生物多様性の保全について、環境省ではどのような考え方で取り組もうとされているのか、この点について古川大臣政務官にお伺いいたします。

○古川大臣政務官 お答え申し上げます。

 海域の生物多様性に関しましては、第三次生物多様性国家戦略並びに海洋基本計画におきまして、幾つか保全の方針が明記されております。例えば、海洋の生物多様性に関する情報の収集、整備でありますとか、自然公園法等に基づく保護地域の拡充でありますとか、干潟、藻場、サンゴ礁等の保全、再生といったようなことが明記されております。

 環境省としましては、これらの計画を受けまして、これまで十分に保全できていませんでした干潟や岩礁域等の海域の自然環境を保全するために、今回の改正によりまして、新たに海域公園地区等を創設することとしたところでございます。今後、必要な施策を推進するために、関係省庁と連携をとりながら頑張ってまいります。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 そうした第三次生物多様性国家戦略、また海洋基本計画に基づき、さまざまな対策をとられているということでもございます。その上での今回の法改正につながっていくんだろうと思います。

 そこで、今回の改正案では、現行の海中公園地区を海域公園地区に改めるということが盛り込まれております。そのことによりましてどのように海域の生物多様性の保全を図ることができるのかということに関しまして、環境省のお考えをお伺いいたします。

○黒田政府参考人 現在の海中公園地区制度でございますが、これは海中の景観のみが保全の対象になっております。したがいまして、干潟であるとか岩礁域など、海中と海上が一体となって美しい環境、景観を形づくり、また豊かな生物をはぐくむ海域全体を保全する、こういう制度にはなっておりません。

 このため、今回の法改正によりまして、海中だけではなくて海上の景観も含めて保全の対象となる海域公園地区制度にしていこうということで、これによって海域の生物多様性の保全が推進できる、このように考えているところでございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 これまでは海中の景観のみであったところを、さらに海上まで含めて保全をしていくということですので、当然海中も海上もつながっているわけですので、さらに強化をされていく、そういう法改正であると考えております。

 次に、小笠原国立公園の話題に移りたいと思っております。国立公園の海域の具体的な話といたしまして、先日も新聞に若干載っておりましたけれども、小笠原国立公園を例にしてお聞きしてまいります。

 関東地方でも、この小笠原諸島が国立公園に指定をされております。東洋のガラパゴスとも言われており、世界でそこだけにしか見られない動植物が生息するような貴重な自然に恵まれている。その小笠原諸島に、日本本土では見られない美しい亜熱帯の自然環境を求めて、若者を中心に非常に国民の人気が高く、多くの利用者が訪れていると聞いております。新聞によりますと、この小笠原には、アカガシラカラスバトであるとかオガサワラオオコウモリ、ハハジマメグロなどなど、貴重な生物がいるということでございます。

 このため、小笠原の自然環境を適切に保全しながら利用を進めるということは、国としても重要な課題であるというふうに考えております。この小笠原国立公園につきまして、環境省におかれましては公園計画を見直す方針というふうに承っておりますけれども、具体的にどのような見直しをされようとしているのか、お伺いいたします。

○黒田政府参考人 小笠原の国立公園につきましては、公園の区域あるいは公園計画に関しまして、自然環境保全上の課題であるとか、あるいは利用の多様化、こういったものに対応するために、小笠原独特の生態系、自然景観等の保護とその適正な利用を推進するために、全般的な見直しを行っているところでございます。

 具体的な見直しの方向でございますが、陸域につきましては、小笠原固有の動植物の生息地等、約百九十ヘクタールを新たに国立公園に編入いたしますとともに、非常に厳格に保護しております特別保護地区を約二千ヘクタール拡張いたしまして、現行の二千九百ヘクタールから四千九百ヘクタールにするという方向でございます。

 また、海域につきましては、幾つかの列島に分かれますが、父島、母島、聟島列島の沖合などでホエールウオッチングなどに利用されている、こういうことでございますので、十万ヘクタールの海域を新たに公園区域にするとともに、海中公園地区を現在の一・七倍に拡大いたしまして、保護の強化を図っていきたいとしております。また、自然再生施設や適切な利用を誘導するための施設、そういうものの追加を検討しておるところでございます。

 現在、こういう中身を盛り込みました環境省原案を作成いたしまして、NGOを初め関係者の意見を広く聞くためにパブリックコメントの募集を実施しているところでございます。この結果を踏まえまして、また関係省庁との協議、東京都への意見聴取を行いまして、夏ぐらいまでには中央環境審議会に諮問をしていきたい、こんなふうに考えております。

○古屋(範)委員 そうした国立公園の指定地域も拡大をする、また特別保護地区も拡張していく、大幅な拡充を考えられているようであります。国民にとっても、そうした自然環境と触れ合う機会を多くつくることは非常に重要であり、また一方で、そうした自然環境の保護、バランスのとれた推進が必要なのかな、そのように感じました。

 そこで、小笠原周辺の海中公園地区の拡大を図られるということを今お伺いいたしましたけれども、具体的に何をどのように保全していくお考えなのか、また、拡張する予定の海中公園地区は法改正によりどのように取り扱われることになるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。

○黒田政府参考人 小笠原の周辺の海域でございますが、委員のお話にもございましたとおり、サンゴであるとか熱帯魚、それからウミガメなどが見られることが特徴でございまして、亜熱帯の海を実感させる、そういう自然体験が小笠原を訪れる利用者の大きな魅力になっているという実態がございます。

 そうした中での今回の海中公園地区の変更案でございますが、先ほど一・七倍と申し上げましたが、細かい数字を申し上げますと、現行の四百五十ヘクタールに、サンゴ礁が発達しているという三百三十ヘクタールを追加することにしておりまして、こういう海中の景観について保全をしていきたいという中身になっています。

 今回の改正法案が施行された場合には、現行法に基づく海中公園地区は海域公園地区に移行する、こういう仕組みを考えておりまして、こういう仕組みに従いまして、将来にわたって海域の景観が保護されるように努力していきたいと考えています。

○古屋(範)委員 そうしたサンゴ礁また希少な生物のいる小笠原国立公園でありますけれども、この小笠原国立公園を含む小笠原諸島は世界遺産の登録に向けた動きがあると伺っております。世界遺産の登録に向けた現状と今後の見通しはどのようなものか、お尋ねいたします。

○黒田政府参考人 小笠原諸島につきましては、世界的に非常に顕著で普遍的な価値を有する地域である、こういう評価をもって、世界自然遺産の登録に向けた取り組みを進めています。平成十九年一月には、世界遺産の暫定リストに既に記載をしております。

 世界遺産の登録のためには、これを遺産として長く残すための保護担保措置が重要でございまして、小笠原国立公園の公園計画の見直し作業が非常に重要になってきますので、これを完成させる。また、課題となっております外来種の問題というのがございます。これの対策について登録の前までに一定の成果を得ることが不可欠だろう、こういうふうに思っています。

 そういうことですので、現在は、平成二十三年夏ごろに開催されるであろう世界遺産委員会での登録決定を目指しまして、関係省庁や地元自治体との連携協力のもとに、必要な作業を進めているところでございます。今後とも、環境省として、関係機関、関係者の協力も得ながら、世界遺産の登録に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。

○古屋(範)委員 現在暫定リストに載っているということで、さまざま外来種の問題ですとか多くの課題はあろうかと思いますが、ぜひともそれをクリアして、世界遺産への登録を目指していただきたいというふうに思っております。私たちもしっかり応援をしてまいりたいと思います。

 再び、先ほどの法改正の内容に戻ってまいります。

 海の利用についてでございますけれども、過去は、やはり海のレジャーといえば海水浴が主流であったかと思います。私の住んでおります近くに三浦海岸などもございます。かつては非常に多くの海水浴客が訪れていたんですが、だんだんその人数も減っているということでもございまして、近年では、海域に生息する動物をボートを使って観察する、またスキューバダイビングなど、こうした海の自然と触れ合う活動がさまざまに多様化をしているというふうに思います。

 豊かな自然環境と触れ合う国立公園の利用は、自然環境への理解を深め、また生物多様性保全を進める上で重要なことであると考えております。一方で、こうした利用によって自然環境への影響が生じているような、そういう状況もあると聞いております。国立公園の目的は保護と利用を図ることでありますけれども、海域利用の状況を踏まえますと、自然環境保全上の問題も懸念されるわけです。海域の利用が多様化している中で、利用の適切なコントロールを行うことも必要ではないかと考えております。

 今回の法改正において、海域利用の適正化に向けてどのような措置を講じていかれようとしているのか、これにつきましてお伺いをいたします。

○古川大臣政務官 海域における適正な利用ということでございますが、先生御指摘のように、旅行業や観光船の運航業者、こういう関係者の方々に法律上の規制をかけるということのみならず、やはり自然環境への影響というものもしっかり理解を深めていただいて、そして質の高い持続できる利用の仕方というものをしていっていただくというように期待するということは大事な視点だと思っております。

 環境省としましては、平成十九年度からエコツーリズム総合推進事業というものを行っておりまして、ここでは、エコツアーガイドあるいは自然学校のインストラクターなどの地域リーダーの養成、あるいは旅行業者そして地域住民の皆様の勉強会の開催などの啓発活動、こういうものに取り組んでいるところでございます。

 このような形で、この美しい国土、自然を大事にする、そういう心を本来私たち日本人は持っておるわけでございますので、そういう規制ということだけではなくて、自然を大事にするという心を大事にしていきたいというふうに考えております。

○黒田政府参考人 今政務官から御答弁申し上げましたとおり、地域で人材を育成するソフトの対策というのは非常に重要だと思っております。また、それと並行する形で、いろいろな問題、課題に対応した規制策というものも、一方でこれを一緒になってやっていくということが大事かなと思っております。

 国立・国定公園の中の海での利用状況というのを見てみますと、残念ながら、例えばモーターボートなどの動力船が野生動物の生息に影響を与えるというような事例が見られたり、特定の海域に利用者が集中して、その海域の環境に悪影響が生ずる、こういうような事例が散見されます。もう少し具体的に申し上げますと、動力船に関しましては、海鳥の繁殖地に例えばウオッチングクルーズの動力船が近づき過ぎて海鳥の生息とりわけ繁殖に悪影響が生ずる、こういうような事例が報告されておるところでございます。

 こういう事態に対処するために、海域公園地区の中では一定の区域で、海鳥というのは季節によってはいない季節もあるというようなこともございますので、必要な期間内に動力船を使用することを規制できるようにしたいと考えております。

 それから、利用の集中ということに関しましては、野生動物のそういうウオッチングツアーが無秩序に行われて、広い意味で、鳥だけではなくて野生動物の繁殖放棄というような影響というものも報告されておるところでございます。

 陸域につきましては、利用者の立ち入りを制限するための利用調整地区を指定することができるとされておるところでございますが、海域におきましては、こういう利用調整地区制度はこれまで設けられておりませんで、こういうような状態に対処をしていく必要がある。

 このため、今回の改正法案におきましては、海域の景観の維持とその適正な利用を図るということのために、ダイビングや船などによる利用をも対象として、海域においても利用調整地区を指定するということができるようにしたい、こう思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 国民にとって、自然と触れ合う機会を持つ、これは非常に重要なことでもございます。また、特に子供たちにとってはそうした環境教育は重要なことであるわけなんですが、それによって環境を破壊してしまう、例えば、今おっしゃったようにモーターボートが動植物を侵してしまう、あるいはさまざま利用者が多くなり過ぎる、こことのバランスが非常に難しいんだろうな、本当にそこは自然を保ちつつバランスをとりながらそうしたことを進めていかなければいけないんだろう、このように考えます。

 次に、今まで自然公園また自然環境保全の視点から海域保全についてお伺いをしてまいりました。しかし、こうした保護施策だけではなく、海域の管理には、関係するさまざまな機関と連携した施策が必要になるというふうに考えます。

 そこで、水産庁にお伺いをしてまいりますけれども、私の近くにある三崎漁港というところは三崎マグロで有名なんです。よく漁業関係の方々ともお話をするんですが、そこのはえ縄漁法というのは、一本ずつ釣って、そしてちゃんと次の世代に漁業資源を残す、そういう非常にすばらしい漁法なんだといつも誇らしげに語ってくださるんですけれども、こちらの干潟ですとかサンゴ礁の沿岸区域は、生物多様性保全の観点からも大変重要な場所でございます。

 こうした日本の沿岸域は、漁業等を含め、さまざまに利用が進んでおります。水産業においても、沿岸域における環境保全を内部化するとともに、自然保護関係の制度と連携した施策を推進することが、海域での生物多様性保全の推進において極めて重要であると考えます。

 そこで、水産業に関係する政策での沿岸域の生物多様性保全に関する考え方、また取り組み状況はどうなっているのか、この点に関してお伺いいたします。

○成子政府参考人 お答え申し上げます。

 水産業は、豊かな海の恵みの上に成り立っております環境依存型の産業でございます。漁業生産力を支える健全な生態系を保つことが必要でございまして、そのためにも生物多様性の保全が重要であると考えております。

 例えば、藻場、干潟でございますが、沿岸域における多種多様な水産資源の生育、産卵場となるほか、海中からの栄養分を吸収して海水を浄化する機能も有しております。また、亜熱帯水域におきまして、サンゴ礁は水産資源の産卵場、えさ場、幼稚仔魚の育成場ともなっております。生物多様性が豊かで生産力の高い健全な沿岸域を実現する上で、このような機能を有します藻場、干潟、サンゴ礁を保全することは極めて重要ではないかと思っております。

 水産庁といたしましては、まず一つとしまして、藻場、干潟造成のための自然石や砂の投入に加え、漁業者等が取り組みます藻場、干潟、サンゴ礁等の保全活動に対する支援ですとか、波や海流の影響等によりまして厳しい条件下にございます海域でのサンゴの増殖技術の確立等、こういった事業を推進しているところでございます。

 こうした事業を通じまして、沿岸域の生物多様性の保全に積極的に取り組んでまいることとしております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 ただいまのお答えを踏まえまして、環境省におかれましても、沿岸域の保全について、そこで生活をして漁業を営んでいる方々と連携して取り組んでいくことが非常に重要であると思います。こうした漁業者との連携、また調整にこれからしっかり取り組んでいただきたい、このように要望しておきたいと思います。

 最後になりますけれども、大臣にお伺いいたします。

 今回の法改正を踏まえまして、海域での自然環境保全に関する大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

○斉藤国務大臣 今回の法改正におきまして、いそ、干潟、岩礁等、命の宝庫を守っていきたいと思っております。

 先日、瀬戸内海の海ごみの調査を今環境省がやっておりまして、そのシンポジウムに参加しましたところ、海ごみを調べてみたら、川の流域全体から集まっているごみが海の底に沈んでいるという実態がわかりました。これは国民全体で海を、我々の命、我々の祖先は海から生まれたわけですけれども、その水の惑星、この生物多様性を守っていくために、全力を挙げて頑張っていきたいと思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 命の宝庫を守る、今そういう御決意を伺うことができました。しっかりまた、今回の改正案が一日も早く成立をし、環境保全に資するものとなりますよう要望して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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