第174回国会 衆議院 厚生労働委員会 21号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 前回に引き続きまして、児童扶養手当法改正案について質問させていただきます。

 今回の改正で、支給対象の拡大を父子家庭に限定している点についてお伺いをしたいと思っております。

 平成十八年の国民生活基礎調査によりますと、全世帯の一世帯当たりの平均所得は五百六十四万円となっております。一方で、全国母子世帯等調査では、母子家庭の平均所得は二百十三万円、父子家庭の平均年収が四百二十一万円ということであります。また、父子家庭の困っていることの第一位は、平成十五年までは家事ということでありましたが、平成十八年には家計を挙げる割合が四〇%で第一位になったということでございます。

 こういうことからも、経済的に困窮をしている父子家庭が現実には多いということが明らかとなってまいりました。しかしながら、所得金額が世帯全体の平均額より低い世帯というのは六〇・七%もありまして、一人親だけではなく、両親がそろっているけれども実際には経済的に困窮している家庭があります。この公平性の確保を一体どうするのかということが大きな問題であると思っております。

 今回の児童扶養手当が所得制限を設けた上で支給されるのであれば、生活保護制度との違いをどのように考えていらっしゃるのか。また、経済的に厳しい状況に置かれているのは、母子家庭、父子家庭だけではない、両親はいるけれども経済的に困窮している家庭も現実には存在をするわけです。両親ともに非正規雇用等々、そういう家庭もございます。この公平性の確保について、大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

○長妻国務大臣 今、公平性の確保のお話がありましたけれども、まず、一人親家庭というのに着目すると、これは言うまでもないことでありますけれども、育児と家計、生計を一人で担わなければいけない、就業時間等が制約されるために正規雇用につくことが難しい、あるいは、うつ病など精神疾患の問題もございます。

 両親のいる御家庭は、それは家計が苦しい御家庭もありますけれども、ただ、家計と育児を一人で担わなければならないといった就業上のものは一人親よりは少ないのではないか、こういうようなことでありまして、いずれにしましても、これだけではなくて、職業能力開発や雇用の下支え、あるいは雇用のパイの拡大という政策も組み合わせて取り組んでいきたいと思います。

○古屋(範)委員 子供の貧困というものに着目をいたしますと、日本においては、こうした両親がそろっている家庭での貧困率の高さということが非常に問題であるということを指摘する有識者もおります。

 今大臣がおっしゃいましたように、やはり若年層あるいは子育て世代に対します就労支援ですとか、また能力開発等々、こうしたものはきめ細やかに行っていく必要があると思っております。事業仕分けで、特にこうした雇用、積極的な雇用政策ですとか能力開発、こうしたものを切り捨てるというようなことが絶対にあってはならないと私は思っております。

 また、所得再配分の機能強化ということになりますと、日本における子供の貧困率、これは所得再配分後はさらに貧困率が高まるという、OECD諸国の中でも特異な現象が起こっております。こうした所得再配分の機能強化についても、私たちも給付つきの税額控除というようなことを掲げておりますけれども、総合的にこうした問題をこれからもさらに検討していく必要があるのではないか、このように考えております。

 また、子ども手当、児童扶養手当も、こうした子育て家庭の経済的負担を軽減するという趣旨で、ある意味では同じ方向であるというふうにも考えることができると思います。しかし、根本的な違いをどのように考えていらっしゃるのかということであります。

 やはり、子ども手当のみに財源を集中することなく、児童扶養手当のようないわば低所得層に対する給付、ここを重点的に拡充していくということが実際には有効であると考えております。

 平成二十二年度における子ども手当については、いろいろ論議はございましたけれども、所得制限はない、子供の数に月額一万三千円を乗じた額が全部支給されるということになっているわけです。

 その一方で、現行の児童扶養手当制度においては、子供が一人の場合は全部の支給額四万一千七百二十円、二人目が五千円、三人目以降が三千円となっており、二人目以降の加算額を見ると、子ども手当に比べるとやはり少額にとどまっております。ここは子ども手当と同様に、子供の人数に応じた加算を設けてもよいのではないかということも考えられます。

 子育てに係る費用は、必ずしも子供の人数に比例して増大するわけではないとは思います。また、児童扶養手当と子ども手当では、制度の趣旨、目的が異なるということも承知をいたしております。では、この児童扶養手当制度においては、子育てに係る費用とまた加算額との関係においてどのように考えていらっしゃるのか、この点について大臣のお考えをお伺いいたします。

○長妻国務大臣 今、子ども手当と児童扶養手当の、これは趣旨の違いにもかかわるところでございますけれども、子ども手当につきましては、お子さんの子育て、子育ちを社会全体で支援していくということであります。これは、控除から手当への流れということでもありますので、若年者扶養控除、十五歳以下のものは廃止をするというふうに平仄を合わせているところで、所得制限は入っておりませんけれども、実質的な手取りで見ると、年収の高い方ほど扶養の控除がなくなりますので、手取りは下がっていく。

 そして、児童扶養手当は、育児と生計を一人で担うというハンディキャップに着目して世帯の家計を支援する、世帯単位ということで考えられている制度でございます。そういう意味では、児童お一人の場合は全部支給で四万一千七百二十円ということで、二人目、三人目はそれよりも少ない数字になっておりまして、一定の金額をお子さんが一人でもおられる家庭に支給することで、世帯を単位として、一人親の方が家計と育児をできる限り両立できるような、そういう御支援をするということで考えた制度でございます。

○古屋(範)委員 では、子ども手当について確認をしたいと思っております。

 最近、報道によりますと、子ども手当満額見送り、あるいは子ども手当全額現金断念とか、二十三年度以降の子ども手当の取り扱いについてのさまざまな報道がなされております。党内あるいは閣僚の間でもさまざまな議論が今行われている最中かとは思います。引き続きこの二万六千円という額で通すのか、半分現物支給であるとの報道もありますし、あるいは、国が最低限度額を設定した上で、その上は地方が自由に給付額を決めるという、いろいろな考え方が報道されております。

 まず、大臣に確認をしたいのですが、昨年の衆議院選挙の公約、マニフェストのまさに目玉でありました子ども手当月額二万六千円、これは取り下げられたんでしょうか。

○長妻国務大臣 これについては、基本的には、このマニフェストを実現するべく努力をするという私は立場でありますけれども、与党の方から、来年度の子ども手当一万三千円の上乗せ部分について、全額現金でいくのか、あるいは一部を保育所などの現物給付にするのか、そういう考え方が示されたわけでありまして、我々としては、それを政務三役で議論いたしますということで、まだ何か決めているわけではございません。

○古屋(範)委員 党から出た意見をこれから政務三役で検討するということでありますけれども、子ども手当について、一万三千円を超えるところは現金でいく方法、あるいは、給食費、保育所整備などいわゆる教育にかかわるところは現物でいくという考え方、総額二万六千円を支給することを盛り込む方向で検討が進んでいたということがございます。

 そこで、仙谷国家戦略担当大臣が、政府側も入った十四日のマニフェスト企画委員会では、地方や国民から満額支給でなくてもよいなどの意見が寄せられていることを理由に、財源が足りない場合は総額自体を減らす方向で一致したという報道がございます。一部現物で給付になるだけでなく、減額ということにも含みを持たせた表現となっております。満額を現金で支給するということを掲げたわけですけれども、結局、現物でいく、あるいは総額は減らす、そのような報道がなされております。

 また、十六日には、民主党は主要閣僚を交えて協議した中で、長妻大臣は、焦点の二十三年度以降の子ども手当について、衆院選公約の子供一人当たり月額二万六千円を減額し、その分を保育施設整備やサービス拡充などに充てる方法もあり得るとの考えを示した、このようにございますけれども、真意は一体どこにあるのか、再度お伺いいたします。

○長妻国務大臣 これは、もちろんまだ決まった話はございませんけれども、実際、真意というか、党からもそういういろいろな御意見がありますので、それについてどう考えるべきかということを政務三役で検討することになっております。

○古屋(範)委員 それはいつごろまでに結論をお出しになるおつもりなのか。

 私も当委員会で、鳩山総理をお迎えしてのこの子ども手当の質疑のときにも申し上げたんですが、今年度は一万三千円支給される、しかし来年度はどうなるのか、子育て世帯の来年度の家計の見通しというのがいまだ立っていないわけであります。今年度は来る、しかし来年度は幾ら来るのかがわからない。私のところによくいただく質問なんですが、これは税制改正とあわせて我が家の手取り分は一体幾らになるのかという御質問を多く受けております。

 こうした中で、平成二十二年度はこのような形で落ちついたわけですけれども、実際には六月から給付が始まっていくわけであります。支給額は公約の半額であるというわけでありますけれども、実際には、二万六千円の子ども手当、このことを大きく掲げていらしたわけです。

 昨年の五月だったと思うんですが、選挙前に、子育て支援のためのシンポジウムがございまして、各党代表が行って、私も行って、それぞれ各党、では子育て支援の目玉を一つだけ掲げてくれという質問を受けたときに、当然、民主党は、ベテランの女性議員さんでありますけれども、我が党は子ども手当二万六千円だと堂々とそのときおっしゃったわけなんですね。しかし現実には、その後、初年度は一万三千円ということになり、来年度はまだその支給の額が決まっていないというわけであります。

 長妻大臣は、八日、大分市での記者会見の際に、民主党内で来年度の増額分を現金で支給するかどうか意見が分かれていることについて、増額分を含め月額二万六千円の満額を現金で支給すべきだ、このように八日の日にはおっしゃっていました。報道によりますと、大臣は、記者会見で、日本は長い間子供に関係する予算はほかの先進国に比べて見劣りをしてきた、現金給付も現物給付も不足していると述べられまして、去年の衆院選の政権公約どおり、増額分を含め月額二万六千円満額で現金で支給すべきだという考えを、本当に先日ですね、お示しになったわけであります。

 そのお考えは、今変わられたんでしょうか。

○長妻国務大臣 私自身も、このマニフェストを基本として努力をしたいというふうに考えておりますけれども、今も御紹介いただいた、この前の日曜日に閣僚も集めた打合会等がありまして、党側からも、上乗せ部分について、全額現金か、あるいは一部を保育所整備などに充てるかというような御意見も出ましたので、我々としては、これは財源上の制約もあるというようなこともそこで議論がございまして、持ち帰って政務三役で検討していく、こういうことであります。

○古屋(範)委員 結局、今はどちらとも言えないということなんだと思います。

 あれほど二万六千円ということを掲げられて、そのほかのマニフェストもそうですけれども、選挙を戦われて政権交代をしたわけであります。

 これは五月十八日付の朝日新聞なんですが、立教大学助教の逢坂巌先生がこのようにおっしゃっています。民主党の政策はエンゼルデコイだ。これは幻の天使という意味だそうなんですが、軍用機が目くらましで出す熱源の周りにできる天使の羽のような形の白い雲のことを言っているそうでありまして、民主党がぶち上げた政策の幾つかは消えていった、このエンゼルデコイのように消えていった、そのような表現を使われております。

 当委員会でも、子ども手当法案のときに参考人質疑を行いました。そのとき、三重県松阪市の山中市長は、子ども手当を痛烈に批判されたわけであります。

 松阪市の試算によりますと、月額二万六千円の満額支給に必要な予算は、全体では七十六億円だそうであります。同市の個人市民税とほぼ同額です。八億円もあれば市内の保育園を無料化できる、このようにおっしゃっています。山中市長は、半額の三十八億円でも、毎年自由に使えるなら、子育てだけではなく高齢者対策や農業、観光振興など市政の課題がすべて解決できるともおっしゃっていました。

 また、全国の首長有志で参院選前に地方からの声を国政に届ける、現場から国を変える首長の会が十六日に発足したそうであります。この十六日、東京都内で開いた総会で、子ども手当制度の抜本的な修正を求める要望書を国に提出する方針を決定したということであります。出席をした首長からも、国は余りに地方の現場の状況に無知だ、これは鶴ケ島市長でありますけれども、非常に不満の声が相次いだそうです。

 鶴ケ島市長は、総会で、一一年度に満額支給となった場合の市民への支給総額二十八億五千万円が同市の子育て、教育関連の年間予算に匹敵する、こうおっしゃいまして、この三分の一の額で、市議会で指摘されている子育て、教育の課題が全部クリアできておつりが来ると。

 こうした地方の声もございます。こうした地方の声を大臣はどう受けとめられるでしょうか。

○長妻国務大臣 地方は当然地方でいろいろお考えがあって、その地域の特性に応じた子育て支援あるいはそれぞれの諸施策を実行されておられるということだと思います。

 ただ、今回は半額、一万三千円の子ども手当を創設いたしましたけれども、やはり、その背景にある問題意識としては、GDPの比率で先進七カ国でもアメリカに次いで低い、それが結果的に、少子化の流れ、合計特殊出生率が先進七カ国で最も悪い、低いというようなことを生んで、少子高齢化が世界でも先進国で最も進んでしまった、こういうことでありますので、ほかにいろいろなお金が必要だということはありましょうけれども、今回は国がリードをして、まずは一万三千円ということで実施をさせていただいている。

 それに上乗せ部分については、これはもう地方独自のいろいろな諸施策ということで、最低のベーシックのところを底上げする、こういう問題意識が背景にあったわけであります。

○古屋(範)委員 私たちは、修正案に盛り込んでいただいた中にも主張しましたとおり、総合的な子育て支援、保育所の整備ですとかあるいは放課後児童クラブの拡充等、こうしたものができずして、満額二万六千円支給、これには賛成しかねる、このことをまた改めて申し上げておきたいと思います。

 だんだん時間がなくなりましたので、児童扶養手当の方に戻ります。

 厚労省が昨年十一月に発表いたしました子供のいる現役世帯の相対的貧困率は、一人親世帯の相対的貧困率が五四・三%である、大人が二人以上いる世帯の相対的貧困率は一〇・二%、一人親世帯の貧困率は極めて高いことがわかります。

 こうした結果からも、民主党のマニフェストに大きく掲げてあります支給停止制度の廃止、これは一刻も早く行うべきと考えております。前回も申し上げました。大臣はそれに対しまして、一期四年の中で実現に向けて努力をしていく、今回は政府内の調整がつかなかった、そういう答弁を前回されました。

 この一部支給停止措置の廃止に要する費用は、対象を四千五百世帯と試算しますと、これは約三億五千五百万円であります。子ども手当に比べれば非常に少額であるということが言えます。大臣が一期四年間でやるというふうにおっしゃったんですが、私たち、修正案にもこのことを盛り込んでおりますけれども、百歩譲って、二十二年度予算は既に成立をし、執行されているでしょう。しかし、来年度から、これに関しては民主党もマニフェストに掲げていたことであります、ぜひ実現していただきたい、このように思いますが、いかがでしょうか。

○長妻国務大臣 これについても、予算編成過程の中で我々としても主張をして、それを実現すべく努力をいたしますけれども、最終的には一期四年の中で実現をしていくということで努力をしてまいります。

○古屋(範)委員 では、一期四年ということは、最速で来年度ということもございましょう。ぜひ早急な実現、よろしくお願いを申し上げます。

 最後になりますけれども、大変御苦労をされている父子家庭、これは、母親であっても父親であっても、子供が病気になる、あるいは就労の機会においてもさまざまなハンディを背負っている。こうした御家庭に対しまして、父子家庭において多様な支援メニューを利用可能なものにしていく必要がある、このように考えますけれども、この点についての大臣の御見解をお伺いいたします。

○長妻国務大臣 これについては、国の施策でも父子家庭あるいは母子家庭への公的支援というのがありますが、これは格差がございます。母子家庭にはいろいろ支援策があるにもかかわらず、父子家庭であるものもありますし、ないものもあるということで、今回のお願いしている法案もその一つでございますが。

 その中で、我々、この法案の質疑の中で再度調べてみますと、やはり母子福祉センターの利用については、今までは父子家庭はできないということになっておりましたが、そこも利用いただいて、就職の相談、あるいは家事、家庭の相談などもできるように、今後その方向で検討していこうということ。そして、母子自立支援員という相談員がおられますけれども、これについては、基本的には母子家庭は相談に乗っていて、父子家庭については自治体が独自でやっているところ、やっていないところ、こういうふうになっておりましたが、実際に御自宅などに訪問をして相談する支援員でございますので、これについても、父子家庭も母子家庭と同様にやる方向で検討をしていきたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ぜひ、父子家庭に対するさまざまな支援の拡充をしていただきたい、このことを要望し、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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