第176回国会 衆議院 厚生労働委員会 4号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、独立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止する法律案について質問してまいります。よろしくお願いいたします。

 法案に入る前に、先日行われました事業仕分けについてお伺いをしてまいります。

 先般、政府の行政刷新会議は、特別会計を対象とする事業仕分け第三弾で、労働保険特会五事業を廃止といたしました。

 この中で、ジョブカード制度は廃止という判定を受けております。これは、本年六月に政府が発表いたしました新成長戦略とは明らかに違っております。新成長戦略の中では、平成三十二年までの目標として、ジョブカード取得者三百万人を掲げているわけであります。ここには、「これらの目標値は、内閣総理大臣主宰の「雇用戦略対話」において、労使のリーダー、有識者の参加の下、政労使の合意を得たもの。」と書かれております。

 くしくも、きょうの毎日新聞社説にもそのことが書かれております。「雇用政策 急場しのぎから、次へ」というタイトルでありまして、

  「ジョブカード」で証明する制度は〇八年に導入された。菅政権は新成長戦略にジョブカードを位置づけ二〇年までに取得者を三百万人にする目標を打ち出した。

  時代とともに産業の盛衰は絶えず起こり仕事も変わっていく。労働者が必要な技能を習得し、企業が即戦力を確保できるようにするためにもジョブカードに期待する声は強かった。ところが今回の事業仕分けで同制度は「廃止」とされた。新成長戦略の発表からわずか四カ月後である。看板政策が同じ政権内で廃止されるとはいかにもちぐはぐだ。

このような社説が書かれております。

 労使のリーダー、有識者の参加のもとで政労使の合意を得ているジョブカード、取得者三百万人という目標、事業仕分けでは廃止としていらっしゃいます。推進しようと掲げた政策を同じ政権が廃止する、この対応を一体どのように私たちは考えたらいいのか。四カ月での方針転換は一体どういうわけなのか。

 六月の新成長戦略と今回の仕分けの整合性について、大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。

○細川国務大臣 ジョブカード制度というのは、これは今、労働に関しての規制緩和が進みまして、非正規労働者が労働者の三分の一を超えたような状況になっていて、とりわけフリーターのような方、そういう方がしっかりと職業能力を身につけて、そして正社員になっていく、そのためのいわばツールとしてジョブカードがつくられたということで、私自身は、ジョブカード制度そのものは大変重要なものだというふうに思っております。

 ただ、仕分けで廃止というような、そういうことになりましたけれども、よく確かめてみますと、ジョブカードそのものの本来の意義というものについては、大変重要なものではあるけれども、関連事業、例えば、ジョブカードの宣伝とかあるいは啓発事業とかいうものがあるわけなんですけれども、そういうことについて効率性の問題とかいうことで見直しをしろ、こういうようなことを指摘されたものだと私は受けとめております。

○古屋(範)委員 大臣は、就労支援、また若者のフリーターから正規雇用へ、こうしたものに対して非常にジョブカードは有用であると今お答えになったと思います。そして、ジョブカードの関連事業を見直していくという御答弁であったと思います。そのものは廃止しないという御答弁であったというふうに理解をしております。

 このジョブカード制度は、企業現場でのOJT、教育訓練機関等でのオフJTによる職業訓練を通じて、就職氷河期に正社員になれなかったフリーター、あるいは長期間離職をしていた子育て終了後の女性、また母子家庭の母など、こうした方々への就労支援を掲げて、職業経験の少ない人の能力を高めて就職を支援するということをねらいとして、平成二十年から五カ年事業でスタートをいたしました。ジョブカードを作成することによりまして、自分の職業能力、意識を整理することができる、さらに、常用雇用を目指し、就職活動や職業キャリア形成に幅広く活用ができると言われております。

 ジョブカード制度の原点といいますか、この機縁となりましたのは、私は横須賀市に住んでおりますけれども、神奈川県横須賀市の商工会議所で行っていたものが一つの原点となっております。これは、商工会議所の前会頭が、近くにありますハローワークに多くの若者が来ている、順番待ちをしている、そういう姿を見まして、あの若者たちに何とか就職の道を開きたいといういわば親心で、そのためには自分たちも地元の企業に就職開拓もして、ぜひとも就職の支援をしたい、こういういわば親心から始まった制度であります。

 そこでは、キャスポートといいまして、ウエブサイトから無料でメンバーに登録をして、その先、Eラーニング、また学生のインターンシップなどのキャリアサポートも行っていました。会員が取得して蓄積をしてきた資格、スキルを認定するキャリア認定証というものもここで発行を行っておりました。

 若者にとっては、きちっと履歴書に書けるような資格というものも余りない、あるいは学歴もきちっとしていない者もいる。そういう若者たちであっても、例えば、クラブ活動でサッカーをやっていたとか、バレーボールをやっていたとか、あるいは、性格の上でも自分はこういう特色があるとか、さまざまそういう、一定の免許あるいは資格には至らないけれども、その一人の人の中にあるいい面を何とか引き出して認めてあげて、そして地元の会社への就労につなげてあげよう、こういう、いわば若者を大切にしたい、学歴、資格という結果ではなくてそのプロセスも評価をしてあげよう、こういうことが原点になってつくられたのがこのジョブカード制度であります。

 就職を希望する者を受け入れる最大の受け皿は、何といっても、我が国の雇用の七割を担っております地域の中小企業であります。ジョブカード制度は、中小企業にとって使いやすく、かつ、即戦力となるような人材の確保に資するものとする必要はあるとは思っております。

 人材を確保したい企業と就職希望者との双方のニーズを的確に把握してマッチングをしていく仕組み、これが重要だというところからスタートをしていったわけなんです。

 今回、仕分け人から、これは履歴書と変わらない、本当に役に立っているのか、こういう批判が相次ぎました。その一方で、事業の趣旨を否定したわけではないとの意見もあったと聞いております。大臣もそのようにおっしゃっていました。確かに、制度が導入をされて二年半経過をしております。制度自体まだ認知度が低い、メリットが知られていない、現時点で二十五万人しか普及をしていないという現状はあるかとは思います。

 しかし、若者層に対する雇用対策、これは喫緊の課題であります。それをたった二年の実績で簡単に判断していいものかどうか。新しい制度が定着をして実績を上げるには、ある程度の時間がかかると思います。ジョブカードの真価が問われるのはまさにこれからでありまして、ぜひこれを生かす、活用する、こういうことも必要なのではないか。廃止をする判定をした仕分け人の方々は、では一体、これから就職困難な若者に対してどういう施策をとられようとしているのか、それにかわる施策は何であるのか、これを明確に言っていただきたいと思います。

 新卒で就職できなかった方、会社をやめざるを得なかった方々がどのような職業訓練を受けたか、どんな職業歴があるのか、どんな資格があるのかなどをきちんと記録にとどめていくことは、人材育成にとっても、企業、人材のマッチングをスムーズに行うためにも、非常に大切であると思っております。能力開発に日々取り組んでいる人たちも多いはずです。企業と求職人材のミスマッチを防ぐためにも、私は、ジョブカード制度は非常に有用だと考えております。

 今回の事業仕分けでは、「同様の政策目的を持った類似事業との整理統合を図り、OJTによる能力開発という本来の政策目的を実現できる新たな別の枠組みを設ける」として事業廃止とされたわけです。この別の枠組みとは一体どのようなものでありましょうか。ジョブカード制度を廃止するのではなく、ぜひ、大臣のリーダーシップで、制度の趣旨、目的を一般にわかりやすく周知していただいて、制度の対象となる求職者及び受け入れ企業が円滑に利用できるよう推進していただきたいと思うんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

○細川国務大臣 古屋委員の方からジョブカード制度の意義についても詳しくお話をいただきましたが、非正規の労働者、特にフリーターの人たちが正社員化していくというようなことへのツールとしては、私は大変意義のあることだと。ただ、それに伴う事業についていろいろ見直しをせよ、こういうようなことでありました。

 そこで、委員からのお話もありましたような、新成長戦略では、十年間で、現在の三十万人を、三百万人に取得させる、こういうことを規定したわけですけれども、その成長戦略の中に、いろいろな職業能力を取得していく、それを、イギリスでは職業能力評価制度というのがあるんですけれども、そのような形の、いろいろな職業能力をそれぞれその能力の段階に応じてランクをつけていくような、私どもとしてはキャリア段位というようなことを言っておりますけれども、そういうようなところへ発展をさせていく。

 これは成長戦略の中にも規定をしておりますけれども、そういうような施策とこのジョブカードというのを、そちらの方にも結びつけるような形で、効率的な、そして効果的な枠組みへ発展させて、このジョブカードの趣旨はしっかりと発展をさせていきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 閣議決定をいきなり廃止という評価を下す、現政権、一事が万事、すぐ決めたことが変わるのかなと思わざるを得ないんですが、今の大臣の御答弁ですと、イギリスの職業能力評価制度へと発展、移行させる、こういう御答弁であったかと思います。これは、ジョブカード制度を修正する、発展させるということにほかならないと思っております。廃止という断定的な表現、これは今の御答弁とはかなり意味合いが違ったものなのかな、このように受け取らざるを得ません。

 今回の事業仕分けで、「雇用調整助成金以外の必要性の低い雇用保険二事業は、特別会計の事業としては行わない。」という取りまとめを行っていらっしゃいます。しかし、二十三年度概算要求では四千億以上となるこれらの事業を一般会計でやると、どんなことになるのでありましょうか。

 きょう、資料をお配りしております。雇用保険二事業について、内訳はこのようになっているわけでございます。雇用調整助成金、これは前政権において、雇用情勢が極めて厳しいリーマン・ショック以降、累次の拡充を行いまして、まさに雇用をつなぎとめておく、雇用をつなぐ大きな施策の柱でもございました。これ以外は行わないということでありますが、次のページからは、これは二十三年度の概算要求であります。その下線を引いた部分、これは参議院の調査室が引いたものでありまして、この下線を引いた部分は雇用特会二事業で行う事業でございます。

 例えば、次のページ、ハローワークにおいて、訓練終了後の就職の実現に向けて、きめ細やかな支援が必要と判断される方に対する担当者制によるマンツーマン支援。あるいは、生活保護等の福祉を担う地方自治体と就労支援を担うハローワークの協定、こうした就労・生活支援。それから、ハローワークにおける住居確保、住居・生活支援アドバイザーがハローワークにおいて住宅手当の申請書類の作成助言を行うなどの事業。あるいは、第二のセーフティーネット支援施策等を効果的に実施するため、地域生活福祉・就労支援協議会を開催し、地域におけるワンストップサービス関係機関の一層の連携強化を図る。

 全部を読むことはできませんけれども、介護・福祉、医療等の分野における雇用創出とか、現政権において非常に力を入れていらっしゃることなどなど、次からも全部そうですけれども、この下線を引いた部分に関しましては雇用二事業であるということでございます。

 これを一般会計でやる、どこからこの財源を引き出してくるのかということであります。特別会計では、事業主から〇・三五%拠出をしていただいております。逆に、仕分けの結果には法的拘束力はない。幾らこう言ったからといっても、では、次年度の予算にどう反映をさせていくのか、反映をさせていく必要がないというのであれば、何のための事業仕分けなのかということにもなります。あるいは、二十三年度に反映が間に合わなければ、では、二十四年度以降の予算編成にこれをきちっと反映させて、すべてを一般会計で行っていくという方針でいらっしゃるのか。

 今後は、この仕分けの作業を政策決定プロセスの中でより明確に位置づけて、仕分け人対官僚、あるいは、政務官も行っていらっしゃったようですね、大臣と政務官、いわば内閣同士のやりとりもあるようでありますが、パフォーマンスの場に終わらせるのではなくて、どのように効率的に予算を編成していくのか、これが今後問われてまいります。新たな無駄を生まない仕組みづくり、あるいは長期の財政健全化、そのモデルをつくっていくことが大事なのではないかと思っております。

 大臣、この件についてどう思われますでしょうか。御所見があればお伺いしたいと思います。

○小林大臣政務官 今回の事業仕分け結果、私たち政務三役で十分今後検討して対応していきたい、このように考えております。

○古屋(範)委員 しっかり検討して、中身を精査していただきたいと思っております。

 この事業仕分けの中で、特に労災保険の社会復帰促進事業の原則廃止、この結果についてお伺いをしてまいります。

 言うまでもありませんが、この社会復帰促進事業の中には、アスベスト等による健康障害防止対策、あるいは、過重労働、メンタルヘルス対策、さらに、企業倒産の賃金未払い立てかえ払いを行います未払い賃金の立てかえ払い事業など、労働者の安全及び衛生の確保のために必要な事業が盛り込まれております。経済情勢が厳しい中で、企業が倒産をしたために賃金が支払われないまま退職に追い込まれた労働者は、この事業が廃止されたらどうなるのか、非常に厳しい生活が続くことになるわけです。

 厚労省が発表いたしました二〇〇九年度未払い賃金立てかえ払い総額は、前年度比三四・五%増、ふえております、三百三十三億九千百万円でありました。この立てかえ額は、一九七六年の制度発足以降において三番目に高い水準であります。企業数は過去二番目、支給者数は過去二番目となり、非常に高い水準であります。業種別に見ますと、製造業が全体の三一・五%と最も高くなっております。次いで建設業。また、支給者一人当たりの平均立てかえ払い額は四十九万三千円となっております。

 長引く不況下でますます労働者の雇用と生活の安定が求められる中で、この立てかえ払い事業を無駄として社会復帰促進事業を廃止する判定について、大臣、どのようにお考えになりますか。

○細川国務大臣 倒産した企業などでの労働者の未払い賃金について、これを立てかえ払いするというこの事業については、これは本当に重要な事業だというふうに思っています。

 私も以前、弁護士をやっておりまして、倒産事業にかかわって、未払い賃金がありまして労働者の皆さんが本当にお困りになっていた、この制度があって立てかえができたということで、私自身も非常に喜んだこともありました。

 そういう意味で、今委員の御指摘がありましたように、年間三百三十億円の支給、人数にしては六万七千人以上、こういう方が倒産に遭って、未払い賃金だ、これが支給されるということで、本当にセーフティーネットとしては重要な役割をしているというふうに私は思っております。

 そこで、この点については、私もその仕分けの責任者の方から聞きましたけれども、このことについての廃止と原則の中には入っていないんだ、こういうことも言われましたので、私は、この事業についてはしっかり継続してやっていくような、セーフティーネットとしての役割を果たしていくような、そういうことにさせていただけたらというふうに思っております。

 ただ、仕分けの中で、特別会計の中で労災保険のいろいろな事業についていろいろ御指摘があったということについては、それはそれで私どもの方としてもしっかり受けとめなければいけないというふうに思っております。

○古屋(範)委員 今の大臣の御答弁で、この未払い賃金の立てかえ払い事業、これは事業仕分けにあったとしても存続をさせる、その事業仕分けはこれは含まれていないという御答弁を明確にちょうだいいたしました。

 この事業仕分け、テレビを見ますと、ともかく大きな項目があって、廃止とマジックで書いているようであります。その中身というのは、無駄なものと、こうした絶対に必要なものとまじっている、こういうことだと思います。労働者を守るためのこの事業、これからもまだまだ経済は厳しいというふうに思っております。ですので、安心して労働者が働けるようにしっかりこれを堅持していただきたい、このことを再度要望しておきたいと思います。

 次に、雇用・能力開発機構廃止法案の中身についてお伺いをしてまいります。

 この機構の廃止につきましては、前政権、平成二十年十二月に閣議決定をされまして、三月には私のしごと館、また、アビリティガーデンを廃止しました。また、九月には国際能力開発支援センターを廃止するなど、事業の徹底したスリム化を図ってまいりました。

 ここで懸念されますのは、平成二十年秋以降、世界的な金融危機の影響によりまして、厳しい雇用情勢の中で、再就職を促進するための離職者訓練のニーズが高まっているという現実であります。また、業績低迷により、企業における職業訓練費も、みずから捻出するのはなかなか難しくなっているということであります。

 さらに、六月、政府が発表いたしました新成長戦略におきましても、平成三十二年までの目標として、公共職業訓練受講者の就職率、施設内八〇%、委託六五%を掲げていらっしゃいます。この中で、職業能力開発促進センター等が都道府県へ譲渡されることによって、地域によって訓練の水準なども大きな差が生じ、さらに、緊急時における特定地域への集中的な支援が困難になるのではないかという懸念さえ指摘をされているわけであります。

 本法案で、都道府県がこの職業能力開発促進センター等についてその機能を維持することができると厚生労働大臣が認めるときは、平成二十四年までの間に、職業能力開発促進センター等を都道府県に譲渡することができるとされております。この譲渡に当たっては、職員の引き受け割合に応じて、その譲渡の額の特例、あるいは移管後二年間の運営費補助についても特例が設けられております。

 しかしながら、都道府県の厳しい財政状況を考えますと、この特例の内容で都道府県の引き受けが現実に円滑に進んでいくのかどうか、これは疑問が残るところであります。特に、この運営費補助の特例は二年度間の限定となっております。それ以降の施設の運営に必要となる多額の支出は、都道府県によっては大きな負担となってまいります。

 そこで、都道府県が譲渡を受け入れない場合、雇用支援機構が引き続いて国の責任として運営されていくことになっておりますけれども、都道府県が財政負担をしてまで譲渡をしてもらうメリットがあるのかどうかという点も疑問があります。国が都道府県への譲渡を進めようとするのであれば、さらに受け入れが進むよう、運営費補助については都道府県が困らない水準にある程度引き上げるなどの対応が必要ではないか、このように思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

○小林大臣政務官 ポリテクセンターなど、雇用のセーフティーネットの機能を果たしておりますので、大変重要な役割を果たしてきた、このように考えております。そこで、移管に当たっては、訓練ノウハウを身につけている訓練指導員も一体となって移管されることが適切である、このように考えております。

 こうした考え方から、ポリテクセンター等の都道府県への移管条件については、過去の立法例、これは国立病院の地方自治体への移管、こういうことを経験しているんですが、これを参考にして、都道府県にとって受け入れやすい条件を整備したところでございます。

 具体的には、ポリテクセンター等の職員の引き受け割合に応じて、無償譲渡を含む減額譲渡や最大十割補助を含む運営経費の高率補助を行うという特例規定を法案に盛り込んだところでございます。これによって、都道府県としては、財政負担の軽減や、施設運営に必要なノウハウなどを有する指導員の確保が可能となることから、都道府県が施設を受け入れやすい条件が整備されたもの、このように考えております。

○古屋(範)委員 その特例の比率については、今お伺いしたとおりであります。しかし、自治体においても非常に財政状況が厳しい昨今、こうしたものを引き受けて運営していくというのは、非常に財政的にも厳しいかと思います。ぜひ、この運営費補助を最大に支援していただくことに努力を続けていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 次に、今回の法案では、全国八十二カ所あります国の地域職業訓練センターを平成二十二年度末をもって廃止して、希望する自治体等に対しては建物を譲渡する、希望し受け入れ条件が整う自治体に移管をする、移管されない場合は廃止するとの方針を示されております。完全失業率が五%を超えるという厳しい雇用情勢の中で、地域の職業訓練センターは地域の人材育成の拠点になっております。民間の啓発講座も多い都市部と異なりまして、先ほども質問にありました、地方では、センターが解体されてしまえば、求職者や在職者への影響というのははかり知れないと思います。

 財政難に苦しんでいる自治体で、受け入れを希望して、その条件が整うところが一体どれほどあるのかということであります。機構の無駄を省くことは大事でありますけれども、雇用のセーフティーネット機能、これに混乱が生じるということは大きな問題であります。地域間で格差が生じるなど、職業訓練機能が低下することがあってはならないと思っております。中小企業からも、国による職業訓練業務が廃止、縮小されることになれば、人材育成・確保、技術・技能の継承など問題が生じるのではないか、また、深刻な影響が及ぶのではないか、このような心配もあるわけです。

 特に、専門学校であるとか、また民間の講座などが少ない地方、こういうところの地域職業訓練センターにおいては、これは前政権のもとでは、一定の利用率さえあれば、先ほどありましたように、存続をさせる方針でありました。地域における職業訓練の実施に果たしている役割を踏まえて、希望する地方自治体への移管が円滑に進むよう国としても支援をすべきだと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

○小林大臣政務官 今回の法案を出した背景、あるいは一部のこういう施設については廃止、こういう経過については、先ほど来御質問もあり、大臣が答弁したとおりでございます。

 地域職業訓練センターについては、地域における労働者の職業能力開発を目的とする施設であって、これまでもこの施設運営は地方自治体にお願いをしてきた、こういう経過でございます。したがって、可能な限り地域において活用いただけるように、地方自治体が希望する場合は譲渡をしたい、これが基本的考えでございます。

 その譲渡に当たって、譲渡しやすい条件を整備しなきゃいけないということで、幾つか今の法案の中で考えております。

 それは、地方自治体の負担を軽減するために、建物の時価から解体費用を差し引いた額で譲渡することとして、その結果、地域職業訓練センターの譲渡価格は八十二の施設中八十施設が無償となった、こういうことでございます。

 さらに、譲渡後においては、地域職業訓練センターの修繕費用について、平成二十三年度から一定の期間、国が負担する激変緩和措置を講ずるとともに、その後も一定の補助を行う、このように考えております。

 なお、激変緩和措置については、平成二十三年度から二十五年度までの三年間、地域職業訓練センターの修繕費用について国が十分の十負担をする、このことを考えております。

○古屋(範)委員 幾つかの支援を考えているということでありますが、地方の雇用情勢が厳しい中で、ぜひ、能力開発に資するよう、その職業訓練の内容も、また講師の質も、この際、維持するというよりもさらにレベルアップするくらいの気概で、雇用のニーズとマッチした地域職業訓練センターとして再出発できるように、そのような御努力をお願いしたいと思います。このことを再度要望しておきます。

 次に、私も今、うつ対策に力を入れて取り組んでいるところでございますが、うつ病患者等が職場復帰のために受ける施策についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 今回、業務が移管されます高齢・障害者支援機構においては、これまで職業復帰、リワークの支援に取り組んでいらっしゃいます。この高齢・障害者支援機構が全国で展開をしている地域障害者職業センターでは、ここを利用している障害者のうち、精神障害者や発達障害の方の就労支援も行っていらっしゃいますね。その他の障害者など、就職することが大変難しい方々が四割を占めていて、職場復帰を目指している障害者にとって、またうつ患者にとっても大変重要な役割を担っていらっしゃいます。

 東京は上野にありまして、私も行ってまいりました。非常に丁寧に、医師とも連絡をとったり、復帰も、いきなりもとの職場というのは無理ですので、段階を踏みつつとか、非常に時間もかかる、人手も要る。また、発達障害の方々についてはさらに時間がかかるようでもございます。

 この休職者の障害者のリワークの支援を見ますと、十九年度、復職の継続率が七九・四%、二十年度八〇・二%、二十一年度八〇・八%と年々増加しておりまして、職業復帰への期待が高まっているところでもございます。

 しかし、非常にカウンセラーの人手も要るということでありますが、私たちも増員を進めてまいりました。それが、二十二年度は増員がなかったわけでございます。高齢・障害者雇用支援機構においても、この事業をさらに促進していただきたいと思っております。ですので、この支援担当職員、カウンセラーを増員するなど、ぜひ体制強化を図っていただきたいんですが、いかがでしょうか。

○小林大臣政務官 今先生おっしゃったように、精神障害者の職場復帰、これは私たちもきちんと取り組んでいかなきゃいけない、このような認識でおります。

 特に、支援ニーズの増加を受けて、平成二十一年度には、リワーク専任のカウンセラーを新たに十五センター、二十七名設置をいたしました。そして、支援体制の強化をこういうことで図ってまいりました。平成二十一年度は、千四百四十七人の方が支援を受けて、復職率は八一・四%、こういう高い実績を上げております。

 今後とも、事業の効率化等を通じてより多くの人に対するきめ細かな支援を図ってまいりたい、このように努めてまいりたいと思います。

○古屋(範)委員 ぜひ拡充をよろしくお願いいたします。

 最後の質問に参ります。職場でのメンタルヘルス対策についてお伺いしてまいります。

 先般、厚労省は、自殺、うつ病による経済的損失が推計二・七兆円に上るという調査をされました。また、自殺やうつ病がなくなった場合、国内総生産を約一・七兆円引き上げるということも出されております。過労、うつ病など、昨年度の労災の認定を求めた人は千百三十六人、過去最多でありました。経済損失ばかりではなく、命を失われる方にとっても非常に大きな悲劇であります。

 そこで、うつ病の治療、これは職場での理解が欠かせないということでございます。

 厚労省は、職場でのメンタルヘルス対策検討会において、この九月に報告書を公表されております。メンタルヘルス対策が受けられる職場の割合を、現在三三・六%しかないんですが、これを二〇二〇年度に一〇〇%にするという目標を掲げていらっしゃいます。

 そこで、早急に労働安全衛生法を改正して、労働者がうつ等によって不利益な扱いをされない、また、中小企業においても心の健康対策にしっかり取り組める、この新しい枠組みを進めていくことが必要ではないか、このように考えますけれども、これについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○小林大臣政務官 今先生御指摘のとおり、職場におけるメンタルヘルス対策を推進するに当たって、働く方が不利益な扱いを受けないように、このことは大変大事なことだと認識をしております。さらに、中小企業でも対応が可能なものとすべきこと、これについても先生がおっしゃったことと同感でございます。専門家による検討の報告においても、この二つについてはきちんと検討する必要があり、このように報告もいただいているところでございます。

 こうした課題も含めて労働政策審議会において御論議いただいているところであり、この結果を踏まえて職場のメンタルヘルス対策に取り組んでいくこと、このように進めていきたいと思います。

○古屋(範)委員 現在、民間の有識者、また患者、家族の方々などを含めて、こころの健康政策構想会議というものが発足をし、提言書を発表しております。ここでは特に、こころの健康の保持及び増進のための精神疾患対策基本法案というものを策定しようという試みに今着手されております。精神疾患を有する者の権利及びその人権の尊重、差別の禁止、あるいは地域社会におけるサービス提供体制の整備と予防、早期発見の重要性、家族、介護者支援の充実、教育啓発の重要性などを含めた、こうした法案も準備をされております。

 イギリスのブレア政権では、一九九九年に精神保健改革十カ年計画というのを立てて、大きく国としても推進をしているということでもございます。

 ぜひ、心の健康の問題、特に職場におけるメンタルヘルス対策、来年度、法改正も含めて大きく進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

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