第176回国会 衆議院 厚生労働委員会 7号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様には、きょうは国会においでいただき、貴重な御意見を賜りました。大変ありがとうございます。感謝を申し上げます。

 私も、肝炎対策に携わってまいりました。特に、二〇〇七年十一月には、自民、公明党で肝炎対策基本法を国会に提出をいたしました。三年前でございます。それをもとに、二〇〇九年、再提出をいたしまして、これが成立をいたしました。そして現在、B型肝炎の全国訴訟で、札幌、福岡の両地裁で和解協議が難航しているという現状でございます。救済の対象や補償額の設定をめぐりまして、国と原告側、これは非常に大きな隔たりがございます。一刻も早い解決が望まれるところでございます。

 B型肝炎の感染者は、最大で百四十万人ということでございます。このうち、予防接種による感染、四十七万人と国は推計をいたしております。肝硬変、また肝がんへと進行していく、亡くなる方もいらっしゃる、まさに患者の皆様にとっては時間との闘いであるということが言えるかと思います。

 現在、公明党といたしましても、肝炎対策のプロジェクトチームで、原告団また弁護団の方々と毎週のように意見交換の場をつくらせていただいております。谷口三枝子代表、きょうは参考人としては御意見をいただけませんけれども、さまざまな患者の皆様から私も切実な声を伺っております。特に、きょう参考人として原告団の代表の方をお呼びできなかった、これは非常に残念である、このことを申し上げておきたいと思います。

 谷口代表からも伺っておりますけれども、肝炎を発症し、また、特に母子感染で将来あるお子さんが自分のせいでキャリアとなってしまった、これから勉強し、また仕事をし、あるいは家庭を持つかもしれない、その将来ある子供たちにいわば自分のせいでそういう重荷を負わせてしまった母親としての苦しみ、これは察するに余りあるものがあると私は思っております。

 こうした患者への支援、私たち、先日の委員会でも、坂口元厚生労働大臣は細川大臣に対しまして、まず原告団と会うところから出発をしてもらいたい、このように申し述べたところでもございます。

 きょう、参考人の皆様には、今回の問題あるいは肝炎対策全体にかかわる論点をお伺いしていければと思っております。

 まず最初に、天野参考人にお伺いをいたします。

 私も、日肝協の皆様からはさまざま御意見をちょうだいしております。夫を亡くされた、また、それまでの家計を支え、夫の治療を支えてこられた、その御苦労はいかばかりであるかと思っております。幾つか、障害者手帳交付の際の認定基準の緩和ですとか治療費助成という御意見は今お伺いいたしましたけれども、肝炎患者、家族への支援ということでもう少し御要望があればお伺いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○天野参考人 肝炎患者、家族に対する支援というのは、患者に対する支援がなされれば、こういうふうな働かざるを得ないという状況も緩和されますし、ですから、例えば肝硬変、肝がんの患者に対する支援法、どういうことが考えられるかということを先ほど申し上げましたけれども、こういうことを重点的にやっていただければ、それで肝炎患者、家族にとっては本当に助かることだと思っております。

 そこで、国会の場で、肝炎対策協議会でなかなか、肝硬変、肝がんに対する支援というのが医療費助成、生活支援を含めて全く検討されておりませんので、国会の場でぜひ先生方に検討していただくように、よろしくお願いいたします。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 肝硬変、そして肝がんへの支援、また研究体制の確立、治療費の支援、こういうことの重要性を今お述べいただいたかと思っております。

 次に、香坂参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 先ほどの御説明の中で、肝炎の研究が進み、そして治療が進むにつれ、肝炎ウイルスが変異をし、再び肝硬変を起こすということをお伺いいたしました。いわば肝炎ウイルスとの闘いといいますか、これは際限がないのかなという印象を持ったわけでございますけれども、さらに、こうした肝炎に対する研究体制のさらなる拡充というものも必要なのではないかと思っておりますし、また専門医が必要ではないか、同じ肝炎治療に当たりましても、やはり専門医としての深さ、キャリアというものが影響してくるのではないか、このように思います。

 この研究体制あるいは専門医の育成、この点に関して、御意見があればいただきたいと思います。

○香坂参考人 内科の方と小児科の方とこの肝炎については大きく分かれるんですけれども、小児科の立場としてお話をさせていただきますと、母子感染のブロックということが行われたのが、ちょうど僕が医者になる七〇年から八〇年にかけて、この問題が起きかけたときなんですが、ブロックが行われることになって、九五%あるいは九〇%ぐらいの方は母子感染ということがブロックできるようになったわけです。そのために、逆に、五から一〇%の方々というのは見捨てられた状況にあるということになるんですね。

 それで、現在、僕は腎臓と消化器をやっているんですけれども、腎臓の方では特定疾患が認められておりますが、肝臓の方は何もないんです。それで、国立小児病院時代は、実は、こういうことを申し上げていいかどうかわからないんですが、肝臓が何もないから、大人の病気を引っ張ってきて、そして、書類上はその病気にして提出して保護を受けるという苦し紛れのことをいろいろやっておりました。

 それがいいかどうかは非常に問題がありますので、ぜひ肝炎に関して特定疾患の補助ぐらいはしていただかないと、お母さんの精神的苦痛はもちろんなんですが、子供に対する医療費という点でも、全く支援がないというのは非常に問題じゃないかなというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 小児への支援という観点で貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 次に、佐藤参考人にお伺いをしてまいります。

 国は除斥ということを理由に、この除斥とは、不法行為のときから二十年経過をしたとき、損害賠償請求権の期間も制限があるというものでございます。この除斥を理由にキャリアに対する一時金の支払いをしないという、こうした国の主張に対してどうお考えになるか、お伺いいたします。

○佐藤参考人 先ほど申し上げましたが、除斥というものの考え方についても、現在、裁判所の考え方さえも動いております。必ずしも、形式的な不法行為のときから二十年、本件でいえば接種のときから二十年というふうに形式的に考えているわけではないと思います。じん肺その他の裁判を通じて、動いてきています。

 本件についても、最高裁も、発症してから、損害発生のときから二十年というふうに、発症した患者、被害者、原告についてはそういう判断をされました。それを無症候キャリアに押し及ぼせば、少なくとも感染を知ったときからというような解釈も十分可能なんだろう、こう思います。

 しかし、我々はさらにこの問題に関して言えば、感染させてから四十年問題を放置し、さらに最高裁で十七年、予防接種法の昭和二十三年から計算しますと、もう六十年以上もこの問題について責任を否定して争ってきて、最高裁の十八年のときから考えても、もう既に過去に二十年たっているからあなたたちの請求は認められない、国は一切責任をとらないと言っているに等しいわけですから、こういった態度は、どう考えても私どもは道理に合わないというふうに考えております。

 形式的な理屈で除外するのではなくて、先ほども申し上げたように、そういった形式的な問題があるなら、それをどう乗り越えるか、乗り越えて解決するかということをぜひ考えていただきたい、こう思っています。

○古屋(範)委員 弁護団の側のこの除斥に対する考え方、お伺いすることができました。ありがとうございました。

 次に、戸田参考人にお伺いをいたします。

 最後の結論として、「感染予防には汚染された血液との接触を避けることも重要であるが、最も効果的な予防法はワクチン接種である。」ということを述べられております。

 この予防ということに関しまして、どのようなことを国の体制として御要望がおありになるか、どのようなことが必要とお考えになるか、お伺いいたしたいと思います。

○戸田参考人 私は、ここに書いてありますように、ワクチンが一番有効であるというふうに思っております。

 ぜひ進めていただきたいのは、ユニバーサルワクチネーション、すべての人にB型肝炎ワクチンを接種する、そうしますと差別もなくなる可能性は十分あると思うんですね。そして、今現在、職場とかそういうところで差別される方がかなりいらっしゃるということなんですが、それを防ぐため、それからその方からの感染を防ぐためには、ワクチンを接種して抗体をつくることは有効である。そういった意味では、ユニバーサルワクチネーションというのをぜひ進めていただきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 すべての人にワクチン接種をという御意見でございました。私たちも、それ以外のワクチンにつきましてもやはり日本はおくれている、これをぜひとも推進しなければならない、ワクチン体制の拡充ということも今取り組んでいる真っ最中でございます。貴重な先生の御意見を参考に、これからもワクチン体制の拡充に取り組んでまいりたい、このように思います。

 次に、溝上参考人にお伺いをいたします。

 ともかく早期検査、早期診断が大事だということをおっしゃられていたと思います。しかし、検診は三割程度ということでありまして、これがおくれているという御指摘があったかと思います。

 こうした国としての検査体制、あるいは自治体もこれは非常に大きな役割を担っているかと思います。その辺の検査体制の拡充について、もう少しお伺いできればと思います。

○溝上参考人 国は、肝炎対策七カ年計画の中に、C型肝炎が主体でありますが、検診の体制の充実及びそれに関してというふうにしておられます。それに対して、我々、肝炎・免疫研究センターの中に肝炎情報センターを設置しまして、それのサポートをしているという現状でございます。

 ただ、この検診の体制に関しまして、一番の、私個人が思っていることは、会社が検診をしてくれません。これが一番問題だと思います。ほかのところは、住民の方は結構やっていただくんですけれども、二つ問題がございます。一つは、会社の中で、会社側はそういう方を見つけると、医療費がかかる、検診に医療費がかかって、保険組合の問題がある、財政を圧迫するという問題。もう一つ、これは、例えば天野さんのお話がございましたように、会社の中で知られると、いろいろな差別とリストラに追い込まれるというような、こういう問題が二つございます。

 この問題がございまして、三割というのは非常に大きいと思いますし、そういうことを考えたときに、これをどのような形でするかというのは、やはり国会の運営の場でしっかりと議論していただきたい。我々の力、行政的なものとかいろいろなサポートでは非常に難しいだろうというふうに思っております。現時点では、我々としてはしっかりやっているつもりです。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 企業、職域における検査体制、ここにおいてこれから進めなければいけない点があるという御指摘、ありがとうございました。

 天野参考人に、最後、もう一問お伺いしたいと思います。

 多くの患者の方々と接していらっしゃるかと思います。その中で、無症候キャリアの方々の御苦労、そういったものに関して何かおっしゃりたいことがありましたら、最後にお聞かせいただければと思います。いかがでしょうか。

○天野参考人 無症候キャリアの方というとB型だと思うんですよね、C型の場合はほとんど慢性化してしまいますので。そういう方ですと、やはり感染させてしまうのではないかとか、そういう心配があるというふうな電話は受けたことがございます。それで、どうしたらいいだろうかというふうなお話で、例えばパートナーがいて、感染させてしまったら困るとか。そういうのはワクチンを打てばよろしいんですよとか、そういうことはお伝えしているんですけれども、なかなかそういうことが一般に広く普及されていない、正しい知識が伝わっていないということがありますし、キャリアであることによって差別、偏見というのを受けるということもあると思います。

 そこら辺のところを、やはり差別、偏見がないように、例えば法務局に差別、偏見があった場合にはお伝えすればいいか、そういうことも一応国民に広く知らせて、それで国民が差別、偏見しないようにしていただければよろしいかと思います。

○古屋(範)委員 皆様の貴重な御意見を参考に、これからも肝炎対策に取り組んでまいります。

 ありがとうございました。

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