第177回国会 衆議院 厚生労働委員会 16号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 初めに、ケアラー、介護をしている人への支援についてお伺いをしてまいります。

 このケアラーというのは、高齢者だけではなく、身体、知的、精神などの障害を抱える人の介護、あるいは難病の方を看病している、あるいは病児、障害児、引きこもりなどの家族や知人の世話をしている、気遣いをしている、多様なケアの役割を担っている人を想定しております。これがケアラーでございます。

 昨日なんですが、日本女子大の堀越栄子先生に来ていただきまして、このたび、ケアラー連盟が介護者サポートネットワークセンター・アラジンと二〇一〇年度に実施をしたケアラー支援のための調査の結果をお伺いいたしました。

 この報告書では、ケアラーのいる世帯というのは五世帯に一世帯という結果が出てきました。非常に多いです。また、四人に一人は複数の人をケアしている。二人以上ケアをしなければいけない。中には、一人で五人をケアしているという方もいらっしゃいました。

 このケアを担っている人というのは、非常に生活の制約を受けている。また、夜も、朝までぐっすり眠ることができないなど、さまざまな精神的、経済的、肉体的な負担を負っていらっしゃる。これがケアラーで、また孤立感を深めている、このようなことも明らかになりました。

 このケアラーの年齢層なんですが、四十歳未満から八十歳代まで、各世代に幅広く分布をしています。特に四十歳未満の、ヤングケアラーとおっしゃっていましたけれども、若い世代でケアラーという方が六・五%もいる。要するに、親あるいは祖父母、下手をすると曾祖父母までケアをしなければいけない、非常に負担を負っていらっしゃるということでございます。

 公明党が行った介護総点検でも、こうした介護をしていく、これは高齢者でありましたけれども、経済的、精神的、肉体的な負担が非常に重い、こういう結果が見てとれました。

 このようなケアラーの実態、生活への影響。ケアラーを総合的に支援する仕組みが国としても必要である、このように感じました。この調査結果をもとに、法制化も急ぐ必要があるとして提言をまとめていらっしゃいます。

 介護をしている家族、ケアラーへの抜本的な支援、また、この報告書の中でも提言しているんですが、ケアラーへの対応策は震災復興の構想にもふさわしいものであると思っております。日本の今後の生活支援モデルとなるよう、被災地の仮設住宅等におけるサポート拠点に、アウトリーチ、また心のケアも入れていただいております。大変ありがたいと思っております。さらにこうした介護者、ケアラー支援の機能も備えるべきではないか、できればケアラー専門員などを置くなどして支援をしていくべきではないか、このように考えるんですが、いかがでしょうか。

○細川国務大臣 委員からは、ケアラーについてのいろいろな支援体制を構築しなければいけないんじゃないか、こういうことの御提案をいただきました。

 これは私どもの方としてもいろいろと検討していかなきゃというふうには思いますが、震災でのいろいろな、ケアラーの皆さんへどのような支援が行われるか、こういうことにつきましては、これは補正予算で、地域支え合い体制づくり事業ということで七十億円計上いたしておりまして、ここでサポート拠点の設置と運営を推進しているところでございます。

 そこで、この事業を活用いたしまして、被災地のケアラーの皆さん方の相談、支援の取り組みといたしまして、一つは、そのケアラーの皆さんの所在とニーズをしっかり把握をいたしまして、いろいろな情報の共有、これは行政あるいは医療機関ともに情報の共有をする仕組みづくり。二つ目には、この震災によって生活環境が激変いたしておりまして、ケアラーの皆さんも孤立しがちでございます。そういうケアラーの皆さんのサポート体制と、それから家族介護者のネットワークづくり、これらを地域の実情に応じまして進めていきたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございます。

 所在、ニーズ調査をしてくださって、ネットワークづくりなどもつくっていかれるということでございますので、このサポート拠点が非常に多くの機能を担っていくことになると思うんですが、ぜひこれを成功させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 次に、介護職員の処遇改善についてお伺いをしてまいります。

 団塊の世代が七十五を超える二〇二五年には、現在の二倍の介護職員が必要だと言われております。

 公明党で一昨年行いました介護総点検の中で、介護職員として働いている方々へのアンケートを行いました。この中で、働ける限り介護の仕事をしたい、続けたいと答えた方が七割いらっしゃいました。仕事にやりがいを感じているということがよく伝わってまいります。しかし、同時に、心身の負担が大きい、また、業務の内容に対して収入が低いと答えた方も八割に上りました。介護を敬遠する理由として、全産業の平均の六割から七割程度という低い給与水準が問題となっているわけでございます。

 さらに、介護職員だけの賃金引き上げではなく、ケアマネとか事務職員、また給食の担当の方々、多職種で、やはりチームでケアをしているわけですので、こうした職種間のバランスを考えることも必要だと思っております。対象職種も広げるべきだと思っております。

 質の高い介護サービスを安定的に提供していくためには、待遇改善とあわせて、専門性を高める取り組みも欠かせません。

 今回の法案では、実務経験者の研修等の実施について三年の先送りとしています。質の向上へ疑問も残される中で、たんの吸引等の医療行為を不安定なパート職員も多い介護現場へ導入するなど、多くの課題が残っていると思っております。

 菅内閣は昨年六月に、菅総理、雇用、雇用と叫んでいらっしゃいました。閣議決定をした新成長戦略では、医療、介護分野での雇用の創出を掲げて、勤務環境や処遇の改善による介護従事者の確保が盛り込まれたわけでございます。

 厚労省は、二〇〇九年度の介護報酬改定で三%引き上げを行いました。さらに、二〇一一年度までの措置として、一万五千円引き上げる交付金制度を導入するなど、介護職員の賃金のアップを図っております。しかし、民主党のマニフェスト、介護職員の賃金四万円アップには全く届かない現状でございます。

 交付金制度は二〇一一年で終了しますけれども、今後はどうするつもりなのか。この介護従事者の処遇改善について、財源の確保、また、ケアマネ、事務職員など対象の職種を広げるべきである、これについてのお考えをお伺いしたいと思います。

○細川国務大臣 介護分野での人材の確保というのは、これは大変重要な問題でありまして、しかも今、介護職員の労働条件はよくないと言われておりまして、その処遇改善というのはどうしてもやっていかなければというふうに私どもも思っております。

 これまで、委員が御指摘のように、介護報酬のアップとかあるいは交付金も合わせまして二万四千円ぐらいのアップが出ております。

 さらに、では来年からどうするのかということにつきましては、ことしの暮れには介護報酬の改定がございます。そこで決めていくのか、それとも、これまでどおり、その処遇改善の交付金によりまして改善をしていくのか、これは二通りあると思いますけれども、どのような形でやるかということにつきましては、ことしの暮れまでに、この職員の処遇改善に向けて検討をしてまいりたい、このように思っております。

○古屋(範)委員 社会全体で高齢者介護を支える仕組みとしてスタートしました介護保険制度、十一年目を迎えまして、さまざまな課題が残っております。

 今回の改正、細部の項目を見ますと、果たして今後十年後の高齢社会はどうなるのか、介護保険を他の社会保険との関係でどのように位置づけていくのか、あるいは、恒久的な財源確保とのバランスをどうするのか、こういうことにはなかなかこたえ切れてはいないという疑念が残ります。

 現在の介護保険制度が抱える課題、これは非常に根が深いと思っております。目先の予防だけではなく、今後十年の高齢社会はどうなるのか、介護保険を他の社会保険との関係の中でどう位置づけるのか、恒久的な財源確保とのバランス、こうした介護保険制度の方向をさらに明確に示していただきたい、このことを要望して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

Follow me!