第177回国会 衆議院 本会議 39号

○古屋範子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 現行の子ども手当は、単年度限りであった平成二十二年度の子ども手当法を半年間延長する暫定措置で維持されておりますが、本年十月以降については何ら政府の具体的な方針が示されず、その後、自由民主党、公明党、民主党の三党による政策協議を経て、ようやく今般の法案提出に至りました。

 私は、本法案の提出には、二つの大きな意義があると考えます。

 一つは、年少扶養控除の廃止による負担増、また、存続が危ぶまれる子ども手当制度によって子育て世帯の不安が増す中、今後の恒久的な制度づくりへの明確な道筋が示されたことです。本法案の成立で、本年十月以降の六カ月間、切れ目なく手当の支給が可能となります。そして、来年度以降については、民主党がマニフェストに掲げた子ども手当ではなく、児童手当の拡充として、安定した制度設計ができるのであります。

 もう一つは、マニフェストに固執する余り、子ども手当の具体的な見直しができなかった民主党が、これまでの主張を改めて、所得制限や手当額の見直しを受け入れ、現実路線へと転換したことであります。すなわち、マニフェストの誤りを完全に認め、二万六千円という子ども手当から決別できたということであります。遅きに失した感はありますが、我々は、このたびの民主党の決断を大いに歓迎したい。

 その上で、今日まで党内の論議が迷走し、いたずらに国民に混乱を与えたその責任について、民主党はいま一度自覚をしていただきたい。なぜ、もっと早く、マニフェストを見直し、与党として責任ある提案ができなかったのか。

 子ども手当をめぐる政府の迷走は今に始まったことではなく、そのことは、これまでの法案提出の経緯を見ればよくわかります。

 平成二十二年度に続き子ども手当の恒久的な制度設計ができなかった政府が今年度の手当支給に関して当初提出した法案は、三歳未満の支給額を二万円に引き上げ、それ以外は中学校修了前まで一万三千円を所得制限なしで支給するというものでありました。財源規模にして二兆九千億円、しかも、昨年度と同様、児童手当法の枠組みを残したままの単年度限りの措置でありました。

 これについて、公明党は、現物給付とのバランスが確保されていないことや、恒久的な財源確保の見通しも立っておらず、子育て世代の安心につながらないことなどを指摘し、制度の見直しを求めました。しかし、政府が再提出した法案は、昨年度の内容を半年間延長するいわゆるつなぎ法案であり、到底賛成できるものではありませんでした。

 この時点で、公明党は、政府・民主党に対し、子ども手当の実現はもはや困難と認め、マニフェストの欠陥を認めて国民に謝罪するとともに、一から制度設計をやり直すよう求めました。折しも、東日本大震災という未曾有の大災害に見舞われ、復旧復興に大きな財源を要するという事態にあっても、政府から良案は出ず、いたずらに時間だけが経過をしました。

 こうした中、公明党は、子ども手当の存続が難しくなった以上、ここは原点に立ち返って児童手当に戻り、その上で、年少扶養控除の廃止による負担増を緩和するため、これを還元して児童手当を拡充するという公明党案を提案いたしました。具体的には、従来どおりの所得制限を設けつつ、手当額は一律一万円、支給対象は中学校修了前まで拡大するという内容でありました。

 その後、自民、公明、民主の三党により、子ども手当などの見直しに向けた検討を行うことが合意され、三党の合意を得るべく、我々は実務者協議の中でさらに公明党案に検討を加え、三歳未満と第三子以降の子供は手当額を一万五千円に増額し、所得制限も大幅に緩和するなど、建設的な提案を続けました。

 こうした公明党の考え方をベースにして協議が進み、八月四日の三党合意に至ったわけであります。この間、持続可能な手当制度をつくるために腐心してきたのは、公明党であり、自民党です。この三党合意の重みを今後も民主党は忘れないでいただきたい。

 以上、これまでの経緯を含め確認させていただき、これより、本法案に賛成する主な理由について申し上げます。

 賛成の第一の理由は、本法案の中身が、公明党の考え方に基づいてまとめられた三党合意に沿ったものであり、結果として、我々がこれまで主張してきた児童手当制度のさらなる拡充を実現するものであるということです。

 具体的に、手当額については、年少扶養控除廃止の影響を考慮し、中学校修了前まで原則一万円としつつ、三歳未満や小学校までの第三子以降の子供は一万五千円とする配慮措置が盛り込まれました。

 また、平成二十四年六月分以降は所得制限を適用することが明記されていますが、その基準については、従来の児童手当と同様、中学校修了までの子供を持つおよそ九割の家庭が受給できるよう、夫婦と児童二人世帯で年収九百六十万円程度とすることが三党合意で確認され、こちらも従来の基準を緩和する方向となっています。

 第二の理由は、公明党の提案で平成二十二年度の子ども手当法の附則に盛り込まれた、児童養護施設に入所する子供等への対応を初め子供に対する国内居住要件の厳格化など、従来の児童手当制度を改善する内容が盛り込まれていることです。

 これは、平成二十四年度以降の恒久的な制度設計を行う上で必要な改正事項であり、早期の実施が求められます。

 第三の理由は、これまでの課題であった恒久的な制度設計について、平成二十四年度以降、児童手当法の所要の改正を行うことを基本とすることが検討規定に明記されました。これにより、新たな手当制度は、子ども手当ではなく児童手当の拡充によって行うことが明確となりました。

 これは、昨年度の子ども手当法に続き、今年度も、児童手当法を残しつつ、これをベースに子ども手当法で上乗せ分を賄うという法体系や、安定財源が確保できず恒久的な子ども手当法案が提出できない政府の現状を見れば、当然の結果と言えます。

 要するに、昨年度も今年度も、名称こそ子ども手当という言葉が使われておりますが、実際は、児童手当をベースにした拡充と何ら変わらないのであります。

 第四の理由は、今般の法案に基づく手当の財源規模が、平年度ベースで二兆二千億円から二兆三千億円となっていることです。

 これは、扶養控除の廃止や無駄の削減等で捻出できない額ではありません。また、当初の政府案の規模である二兆九千億円と比べ、年間六千億円から七千億円が削減され、この分は東日本大震災の復興費用に回すことができます。子育て世帯の負担増に配慮しつつ、持続可能な財政規模になったと考えます。

 以上、本法案に賛成する主な理由を述べましたが、本法案は、あくまで恒久的な制度づくりに向けた第一歩です。

 これまで公明党が一貫して主張してきたとおり、安心して子育てができる社会をつくるためには、現金給付とともに、保育サービスの充実やワーク・ライフ・バランスの実現などの環境整備が重要であり、そのためにも予算の確保もしなければなりません。

 東日本大震災が発生し、一層厳しさを増す我が国の財政事情にあって、いかにして子育て支援のための予算を確保し、優先順位を決めて効果的な施策を実行していくのか、そのことがこれまで以上に問われてまいります。

 恒久的な手当制度づくりに向け、これからの検討が極めて重要であり、今後、地方との十分な協議を行うことは当然として、財源構成や所得制限世帯への対応など残された課題について与野党が知恵を絞るべきです。党利党略ではなく、子育て世代の立場に立って考えれば、おのずと成案が見えてまいります。このように考え、公明党はこれまで以上に総合的な支援の充実に取り組んでまいりたい。そのことを最後に申し上げ、私の討論といたします。(拍手)

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