第180回国会 衆議院 厚生労働委員会-10号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 岡田副総理、初めて質問いたしますので、よろしくお願いをいたします。

 私は、この一体改革の六分野の中で、介護の問題を質問してまいります。

 介護に入ります前に、午前中、また今坂口委員の議論も聞いておりまして、増税議論の前に、まず、年金、介護、医療、この社会保障の全体像を国民に示すことが先ではないか、このように考えます。

 私たち公明党は、社会保障のあるべき姿につきまして議論を重ね、一昨年「新しい福祉社会ビジョン 中間取りまとめ」を発表いたしました。現行制度の改善、機能強化とともに、うつですとか虐待、引きこもりなど新しい課題に対応するための新しい福祉、こうした考えを明らかにいたしました。

 この二月に発表された大綱の中身ですが、やはり、民主党マニフェストとの整合性が不明確になっております。社会保障の全体像がまず示されていない。今もありましたように、まず、その最大の問題である年金制度、これが曖昧な内容ばかりで、法案提出も一年先ということであります。本来、医療、介護を含めた給付、保険料そして税、これを総合的に検討して、将来のサービス像を示すべきであります。増税論だけが先行する、これではなかなか国民も納得はできないだろう、このように考えます。

 まず、民主党は、マニフェスト二〇〇九の見直し、これを早急に行うべきだと思います。また、年金、医療、介護、制度をこう変えるから、それにはこれだけの財源が必要です、ですのでこれだけの消費税増税になる、特に、大綱に記載してあります給付抑制項目のうち、何を実施して何を実施しないのか、これを明確にしなければいけないと思います。増税されて、そして抑制もされる、これでは、赤字財政を穴埋めするための増税と言われてしまいます。

 政府は、社会保障制度の明確な全体ビジョン、また将来像をきちんと説明をしなければならない、このように思います。まず初めに、この点について副総理にお伺いをしたいと思います。

○岡田国務大臣 将来のビジョンをということですけれども、我々、社会保障改革の工程表を示しております。そして、そこのかなりの部分は、公明党の御主張と私は重なり合っているのではないかというふうに思っております。といいますか、自民党、公明党が政権与党の時代におつくりになった原型をかなり、そのまま踏襲している部分がございます。これはやはり、特にねじれということを意識しますと、なるべく我々の主張も抑えるべきは抑えて、合意が得やすいもの、そういう観点でまとめてきたという経緯もございます。

 そういう中で、やはり決定的に違うのは二つ。高齢者医療、先ほど来議論になっておりますが、それと年金の抜本改革をやるかどうか、この二点だと思います。

 先ほど坂口先生との議論でもございましたが、私は、年金制度などは、当面やるべきことと、それから、抜本改革の議論というのは少し時間がかかります、数カ月で決着するものではございませんので。それはそれとしてしっかりと各党間で御議論いただけないか、そういうふうに思っているところでございます。

 それから、何をやり何をやらないかということについては、今回も、三・八兆円程度の充実をする、一%分は充実に充てるというふうに申し上げたわけですが、その内実は、三・八兆円充実をして一・二兆円効率化する、差し引き二・六兆円の、消費税一%分の充実である、こういうことになっているところでございます。

 例えば、年金の物価スライドの特例分につきまして、三年間で解消するということにしております。それから、年金の最低保障機能を強化するために、これは金額としてはわずかですが、高所得者の年金給付の見直しを行うことにしております。この二つは、既に国会に法案を提出しているところでございます。

 そのほかの検討課題として、七十歳から七十五歳の医療保険の患者負担の見直しをどうするか、それから、後発医薬品のさらなる使用の促進、一定の所得がある方の介護保険の利用者負担のあり方などについて、なお検討を行うこととしているところでございます。

○古屋(範)委員 自公案を勘案しということでございました。あの総選挙でマニフェストを掲げられ、そして見事、政権交代を果たされた。そして、この二年間かけて、めぐりめぐって自公案に戻ってきている、その現行制度への修正である。一体この二年間は何だったのかというふうに思わざるを得ません。

 消費税の引き上げ法案、五%引き上げということで提出をされております。各論に入りますけれども、介護保険料はこの四月から既にアップしております。今回の介護報酬改定のいわば柱といいますか目玉であります二十四時間定期巡回・随時対応サービス、これがこれからスタートしていくわけですけれども、ぜひ普及させ、円滑に実施をしていかなければならない柱だと私も思っております。

 先日も、モデル事業として既にこうした事業を行っている世田谷に行ってまいりました。区内、約五百人が利用している。密集地でもありますので、職員の平均到着時間は十二分ということで、車を使ったり自転車を使ったりということで、定期巡回をしながら随時対応も行っている。その内容は、排せつとか下膳、配膳、服薬といった利用件数が非常に多かったということであります。

 大事なのは、ITを使っていまして、オペレーターがいて、定期的に見守りの連絡を入れる。また、何かあったらボタンを押してオペレーターを呼び出す。それによって職員の訪問も効率化ができる。また、部屋の様子も見られますので、何かが起きた、ベッドから落ちているというようなことも、オペレーターの方にはそれが端末を通して掌握できるということであります。

 このサービスを開設するに当たり、随時、ひっきりなしに呼び出してしまうのではないかとか、さまざまな懸念があったんですが、そこのところは、こうした端末、ITを利用してモデル事業が進められたということでもございます。

 しかし、人材の確保に非常に苦労しているということでありました。三交代勤務ということになりますと、当然深夜もあるわけですので、こうした介護従事者、看護師の人材確保に非常に苦労しているということであります。

 この中で要望しておきたいんですが、こうした定期巡回・随時対応のサービスが始まって、訪問介護で、これまで六十分が基本だった生活援助の基準時間が四十五分に変更されているということで、介護サービスの時間区分が変わったことで、サービスの利用が不便になったり、あるいは介護事業者の負担が増したりすることがあるのではないか、そのような不安の声が寄せられております。

 この時間短縮によって介護職員がより多くの家庭を回れると効率化を強調されていますけれども、時間に追われて、結果的にサービスが低下するのではないかというような懸念もございます。この点についてお伺いをしたいと思います。

 そしてもう一つ、慢性的な介護職員の不足ということはこれまでも大きな課題でした。さらにこの二十四時間のサービスが始まって、職員の人材不足が非常に懸念をされております。介護職員、看護師が確保できなくては、このサービスは成り立ちません。

 この二点について、大臣のお考えをお伺いいたします。

○小宮山国務大臣 時間のことについては何回か答弁もさせていただいていますが、平均すると割と短い方が多いということで、それは御負担もそれだけ軽くなるというので四十五分を基本にしましたが、これはケアマネジメントによって、必要だということであれば、六十分も、組み合わせで九十分もできますので、そうしたことをしっかりと徹底していきたいというふうに思います。

 それから、おっしゃいましたように、介護職員ですとか看護師などの人材確保が非常にこれからの課題だということで、今、訪問看護事業所との連携による看護職員の確保ですとか、サービスの内容の透明化を図るための介護・医療連携推進会議の事務所への設置、こうした取り組みなどをしているところですので、人材をしっかり確保して、また、訪問看護との連携などの適切なマネジメントができるようにしていきたいというふうに考えています。

○古屋(範)委員 さらに、介護保険における低所得者対策についてお伺いしてまいります。

 今回の報酬改定で、第一号保険料は平均四千九百七十二円となっております。最も高いところでは六千六百八十円、このような額になっております。低所得者にとってはこの負担が非常に重くのしかかっているわけです。そこで、前回の改定では保険料の上昇を抑えるために公費が投じられたわけなんですが、今回は見送られている。五千円が負担の限界と言われてきたと思います。自治体によってはこのような高額になってしまっているということであります。

 そこで、この大綱の中で、今後の高齢化の進行に伴う保険料水準の上昇や消費税引き上げに伴う低所得者対策強化の観点を踏まえ、公費を投入することにより、六十五歳以上の加入者の保険料の低所得者軽減を強化する、具体的内容について検討するということが出ているんですけれども、社会保障審議会の資料によると、費用は二〇一五年時点で最大一千三百億円とされています。この財源は一体どうされるおつもりなのか。

 そして、ここにありますように、法案提出に向けて関係者の意見を聞きながら検討するとされていますけれども、いまだにこの法案自体は提出をされておりません。いつ提出をされるんでしょうか。

    〔委員長退席、和田委員長代理着席〕

○小宮山国務大臣 社会保障と税の一体改革の介護保険料の低所得者の軽減につきましては、二〇一五年度に最大で千三百億円の公費の増ということを見込んでいます。この財源は、消費税率の引き上げのうち社会保障の充実に充当される一%分と、制度の重点化、効率化によって、一体改革全体の中で確保することにしています。

 必要な法案につきましては、税制抜本改革と同時実施に向けまして、これは施行時期は未定ですけれども、八%引き上げ時、または一〇%引き上げ時が基本でございますが、それに向けて検討を進めているところでございます。

○古屋(範)委員 まだ提出時期ははっきりしていないということですね。

 時間ですので、最後の質問になります。

 今回、介護について、地域包括ケアシステム、これが大きな柱になっているようでありますけれども、高齢化が一段と進む二〇二五年、どこに住んでいても、その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現するとおっしゃっています。また、この実施時期についても、平成二十四年通常国会以降速やかな法案提出に向けて関係者の意見を聞きながら検討する、これは医療についてでありますけれども、介護については、改正介護保険法の施行、介護報酬、診療報酬改定、補助金等の予算措置により包括システムの構築を推進するとあるだけで、法案提出時期はこの通常国会には限定していない。また、実施時期についても明記をされておりません。

 この地域包括ケアシステム、これが柱だというふうにおっしゃるわけですけれども、この構築をぜひとも着実に進めていただきたい。住みなれた地域、在宅でのケアシステム、これについて、副総理の御決意を最後にお伺いいたします。

○岡田国務大臣 委員御指摘のように、できるだけ住みなれた地域で在宅を基本とした生活の継続を目指すために、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した地域包括ケアシステムの構築は極めて重要であるというふうに考えております。

 ことし四月から施行された介護保険制度改正や介護報酬改定においても、例えば、訪問介護や訪問看護が連携した二十四時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設など、これは委員が先ほど世田谷の例を挙げられたわけですが、さまざまな政策を実施しているところであります。

 今後、よりよい制度をつくるために、これもぜひ、現場に強い公明党の皆さんのお力もいただきながら、実態に即したよりよい制度をつくり上げていきたいと思っておりますので、また国会の場などで、あるいはいろいろな場で御示唆をいただき、共同してつくり上げていければというふうに考えております。

○古屋(範)委員 時間ですので、以上、質問を終わります。ありがとうございました。

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