第180回国会 衆議院 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会-5号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、引き続き、税と社会保障一体改革、特に年金を中心に野田総理に質問してまいります。

 野田総理に初めての質疑となります。どうぞ明快な答弁をいただけますよう、よろしくお願いをいたします。

 野田総理は、決められない政治からの決別、このようにおっしゃっていますね。しかし、その言葉とは裏腹に、民主党政権はこれまで、野党時代も含めまして、社会保障改革を先送りにしてきている、遅滞させてきている。私は、その事実をきょうはパネルを用いまして時系列で指摘をしてまいりたいと思っております。

 まず、二〇〇三年、年金制度抜本改革案を主張されましたね。既に九年が経過をいたしております。

 そして、二〇〇四年、私たちは自公政権当時、年金の改革案、これを提出いたしました。それに対しまして、民主党は大反対をされました。

 そして、二〇〇六年、私たちは、医療制度改革、この関連法案を提出いたしました。これに対しましても、後期高齢者医療制度の創設の廃止、こういうことを掲げられたわけであります。

 そして、二〇〇七年、被用者年金一元化法案、また短時間労働者への社会保険適用拡大の法案を私たち自公政権当時、提出いたしました。これも反対をされた。

 そして、二〇〇九年、年金制度の抜本改革案、これを主張されました。そして、後期高齢者医療制度廃止、そして障害者自立支援法の廃止、まさにこの三つ、トリプルで我々は大批判を受けたわけであります。

 あの総選挙で、この批判の嵐の中、私たちは地元に帰って一つ一つ丁寧に説明をする、一時間、二時間説明すればわかってくださる。しかし、民主党議員のさまざまな批判、こういうものによりましてなぎ倒された、そういう実感がございました。そして、総選挙で敗北を喫し、皆さん方は政権交代をなし遂げられたわけであります。

 そして、今回、二〇一二年に至って、税と社会保障の一体改革を出してこられました。新たな年金制度の創設、これはいまだに具体案は示されておりません。そして、後期高齢者医療制度の見直し、いまだに、今国会、法案は提出をされておりません。もう会期末は来月に迫っております。一体いつ提出をされるんでしょうか。そして、被用者年金一元化法案を提出されてきた。あわせて、短時間労働者への社会保険適用拡大の法案も提出をされてきた。障害者総合支援法、これは提出をして、参議院に行っているということでございます。

 このような時系列で事実を振り返ってみて、一体、これまで民主党が掲げてこられた社会保障改革案、どうなったんでしょうか。

 政権交代をしてから既に二年八カ月がたっております。後期高齢者医療制度の廃止については、法案すらいまだに提出をされておりません。障害者自立支援法に至っては、政府が出してきた総合支援法案は、結局、現行法の改正にすぎなかった。少子高齢社会の中で、社会保障の改革、これは待ったなしであります。それにもかかわらず、政権交代から三年近く、何も進めることができてこなかったのではないでしょうか。

 総理、これに関してどのような認識をお持ちでしょうか。

○野田内閣総理大臣 これまで私どもが主張をしてきたことで、まだ法案を提出していない、あるいは実現できていないものがあることも事実でございます。だからといって、社会保障制度改革、これはいろいろな項目があると思いますけれども、そこに空白が生じたり後退が出たりということでは私はないというふうに思っています。

 政権交代以降、まさに社会保障を推進するためには、従来、毎年二千二百億、機械的に削るということがありましたけれども、それをやめて、例えば政権交代直後の予算においては、社会保障関係費を一〇%伸ばすという形の環境整備をしました。

 それから、政権をとる前に、介護難民の問題とかあるいは医療崩壊の話が随分強く出ていたときに、私どもが政権をとった後に、十年ぶりに診療報酬のプラス改定を行って、そして、配分を見直しすることによって、産科であるとか救急であるとか、あるいは病院勤務医とかに対する、これまで手薄だったところを手厚くすることによって立て直しを図るなどなど。

 あるいは、こういう制度論ではありませんけれども、消えた年金の記録の問題も、五千万件と言われたものを、千数百万件発見をして一兆数千億円戻るようにした等々、社会保障制度改革の中でも、きちっと努力をしながら成果を上げている部分もあるということはぜひ正当に御評価をいただきたいというふうに思います。

○古屋(範)委員 私は、そういう枝葉末節の、いわば枝葉の問題を論じているのではございません。中心となるこうした制度改革、法律、この改革の問題を論じているのでございます。

 昨日の質疑の中で、総理は、政権交代するたびに社会保障が変わるのはよくない、このような趣旨の答弁をされていますね。これを見ておわかりと思いますけれども、選挙のたびに社会保障に関してさまざまなことを掲げてこられたのは民主党ではございませんか。

 二〇〇三年、年金制度の抜本改革を主張される。これは衆院選でございます。二〇〇五年は、確かに郵政改革だった。二〇〇四年、参院選では年金制度に大反対をされた。そして二〇〇六年、一元化を主張されましたね。参議院選でございました。そして、二〇〇九年があの政権交代の総選挙であります。このときに、年金制度を抜本改革するんだ、後期高齢者医療制度も廃止をする、障害者自立支援法も廃止をする、これを掲げて、これが原動力となって政権交代をされたのではありませんか。選挙を意識して、そのたびに社会保障制度に関する大きな政策を掲げてきていらっしゃる。

 いかにも社会保障制度を選挙のパフォーマンスにしているのではありませんか。選挙に利用されているのではありませんか。総理、いかがですか。

○岡田国務大臣 今まで社会保障制度の改革に真剣に取り組んでこられた古屋さんだからこそ、いろいろな今までのことでお怒りはよくわかります。

 私は、社会保障制度について、二つの立場がこの国会にも、そして各議員の中にもあるんだと思うんですね。今おっしゃったように、対立の歴史というのはありますが、そこには書かれておりませんが、二〇〇五年には、衆参合わせて、年金等社会保障制度改革のための協議会だったか委員会だったか、国会につくりまして、まさしく衆参両院の超党派の議員、各党議員が集まって、そして真剣に年金制度その他社会保障制度について議論したという経緯もございました。残念ながら、それは郵政解散によって成果を得ないまま解散に至ったというか、まだあるんですけれども、その後議論されていないわけです。

 ですから、各党間で、社会保障制度の問題は、やはり国民に密接に関係するし、政争の具にせずにきちんと話し合っていくべきだという流れも一方であったということでございますので、ぜひそういう視点でこれからお互い、与党、野党、それぞれ入れかわる中でしっかり議論していく、そういうことが私は国民にとって必要なことではないかというふうに思っております。

○古屋(範)委員 岡田副総理、社会保障、年金を政争の具にしてはいけない、今もおっしゃいましたけれども、それをされてきたのは民主党ではありませんか。まさに政争の具、このパネルを見てもおわかりのように、選挙のたびに年金あるいは社会保障を掲げてこられたではありませんか。

 特に、年金について申し上げます。

 二〇〇三年、抜本改革を掲げられた。それからもう既に九年たっています。十年一昔という言葉がありますけれども、もうすぐ一昔ですよ。そして、二〇〇四年、我々の年金改革案に大反対をされました。体を張って反対されたんです。あの委員会室のドアまで壊された。あれを補修するのに費用がかかったんです。そして、今回、この民主党が掲げた具体案、出てきておりません。

 副総理、あのとき与野党の会議を持ったじゃないかとおっしゃいますけれども、ここだって与野党の会議なんです。これから百時間もやろうとしている税と社会保障、この会議に、特別委員会に民主党のその年金の改革案をど真ん中に据えて与野党で議論する、これが本筋じゃないんですか。

 パネルの二に参ります。民主党の一体改革大綱の中では、全ての年金を一元化する、七万円の最低保障年金を支給する、法案を来年国会に提出するとございます。しかし、いまだにその具体案はない。そして、基礎年金六万六千円はなくなってしまうわけですので、最低保障年金七万円、これは国民全員がもらえるわけではありません。そのように誤解した国民もいるかもわかりません。

 昨年の予算委員会で、既に公明党の坂口元厚労大臣が質問しておりました。それで、やはりそのときも具体案が出てこなかった。生涯の平均所得、どこからどこまでが最低保障年金をもらえて、それが徐々に減ってきて、どこでなくなるのか。これに対して坂口委員からは、民主党の年金案は「三角形のお絵かきをされたということにすぎない」「幼稚園のお絵かきに近い」、このような発言もございました。

 また、最低保障年金、これは全額税で賄うことになっていますが、これに必要な財源、民主党が試算をされたところ、今回五%の消費税に加えて七・一%の増税が必要、そのような報道もございます。実際どうなのかと問われると、総理は、具体的な制度設計は、その規模が変わり得る、あるいは今後の重要な検討課題である、このようにおっしゃっています。これでは、どこまで負担が増すのか、国民は不安を増すばかりであります。

 なぜ、民主党の年金案、その具体像を出してほしいのか。これは私たちのためではありません。これを出していただくということが、国民の社会保障に対する、年金に対する安心と直結をしているからです。現行制度、壊れているとかあるいは破綻をしたとか、さんざん批判をされ、不安をあおったというのもあります。私たちの責任もあります。現行制度が理解をされていない面もあるでしょう。しかし、その上に、来年、民主党の抜本改革案を出してこられるというのなら、今でさえ不安があるのに、来年、負担と給付はどうなるのか、これはさらにわからなくなるわけです。国民の不安はさらに増している、そう言わざるを得ません。

 ですから、国民が安心するために、特に若い層です、納付率がなかなか上がらない、こういう若い方々の保険料納付の意欲を高めるためにも、年金の安心を高めるためにも、一日も早く民主党の抜本改革案なるものを出していただかなければ、安心して本当に年金に加入できないということになってしまうわけであります。

 政権交代して二年八カ月、民主党の年金案、まだ出てこない。この抜本改革案完成までに四十年かかるとも言われております。現在、年金記録問題もある。これが並行していく。第二、第三の記録問題も起こりかねない状況であります。

 私も、先日、若者との対話集会に出席をいたしましたけれども、自分たちは将来、年金を幾らもらえるのか、また保険料は幾ら払わなければいけないのか、こういう質問を受けております。

 現行制度がまだまだ理解されていない、そういう面もあるでしょう。しかし、この現行制度と並行しながら、新しい年金案がまた来年出てくる。民主党は、全世代対応型、このようなことをおっしゃっています。しかし、具体的な数字がいまだに出てきておりません。

 今、この具体的な数字、検討状況はどこまでいっているんですか。本当に出すつもりがおありなんでしょうか。

○岡田国務大臣 具体案は、今、党の中で検討しているところでございます。

 この委員会にという委員の御指摘ですが、ここは政府とそして各委員の議論の場でありますので、そういった年金についての協議の場をおつくりいただいて、そこで私どもの考え方も出させていただき、そして、御党の考え方も出していただく中で協議をさせていただきたいということを前から申し上げているところでございます。

 この国会には、既に年金関係の法案を二本出させていただいております。その中には、被用者年金の一元化、それから厚生年金の拡大、それから加入期間の二十五年から十年への短縮、それから最低保障機能の充実、そういった従来から御党が主張されてきたことを最大限入れた法案が出ているわけでございますので、ぜひ、そのことについて御議論いただき、早くこれは成立をさせていただきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 このパネルにもありますように、我々の提出した二〇〇四年改革案、また二〇〇七年に提出をした被用者年金一元化法案、これに対しまして、今回の本会議での質問に総理はこのように答えられていますね。将来にわたり給付と負担の均衡が現行制度は図られていると現行制度を評価されています。また一方で、国民の信頼が得られているとは必ずしも言えないとおっしゃって、結局、今回、この年金関連法案を出してこられた。そしてさらに、新たな年金制度も創設をされると言っている。この二つの答弁には私は矛盾があると感じております。一体どっちなんでしょうか。

 民主党のマニフェストの工程表があります。ここには、二〇〇九年から二〇一〇年、年金記録問題に取り組むとございます。今年度も、約七百億円、巨額の財源を割いて年金記録問題に取り組んでいらっしゃいますね。まず、この二年間、政権交代して二年間は年金記録問題への集中対応期間だと。そして、その後、二十四年度から制度設計をされる。

 なぜ、記録問題をやっている間、制度設計ができないんでしょうか。記録問題、まさか、国会議員あるいは大臣初め政務三役、皆さんが年金記録問題の作業を行われているわけではありませんよね。これは予算を割いて、人も入れて、今、年金記録問題に取り組まれているんでしょう。なぜ、政権交代をして、このマニフェストの工程表、制度設計が二十四年度からなんですか。小宮山大臣にお伺いいたします。

○小宮山国務大臣 制度設計について、先ほどおっしゃったように七%さらに必要だというのは、四つのケースのうちの一番手厚く最低保障をした場合のケースですので、今、四つあるケースのうちどこにするかというような、具体的なところがまだ詰まっていないのは申しわけなく思いますが、昨年五月に、社会保障と税の抜本改革調査会、党の方から、基本的な考え方は既にお示しをしています。

 所得比例年金の保険料は、老齢年金のための分として一五%程度として、そのほかに遺族年金、障害年金のための保険料を加算するということですとか、所得比例年金の額は、納付した保険料を記録上積み上げて、その合計額に賃金上昇率をベースにした一定の運用益、マクロ経済スライドみたいなこと、似たものですが、運用益を付した上で、受給するときの平均寿命などで割って算出する、こういうような具体的な内容については既にお示しをしていますので、この間もそうした準備はしてきているというふうに考えます。

○古屋(範)委員 試算をされた、これは報道で聞いております。どこにするか今決めている最中。では、どこからどこまで最低保障年金、給付をするのか、そのようなことはもうすぐ出てくるんですね。いつ出されるおつもりですか。

○小宮山国務大臣 今、党の方のワーキングチームで週二回ぐらい御検討いただいていると聞いておりますので、それはなるべく早くお出ししたい。

 ただ、先ほど副総理が申し上げましたように、将来の年金のあり方につきましては、やはり政権がかわっても持続可能なように、協議の場をつくっていただいて、ぜひ、今のままでいくのかどうか、その改善で済むのか。

 私どもが申し上げているのは、二十一年の検証で、持続可能だということは制度上はわかっています。ただ、特に、各地を回っても、若い方たちを含めて信頼感がどうも足りない。今の無年金、低年金があることは事実でございますから、そこを抜本改革するためには、やはり私たちは抜本改革が必要だと思っていますので、質疑の場ですと、私どもは質問にお答えするだけです。そうではなくて、お互いにちゃんと意見を述べ合える場でこれは協議をしていければというふうに思っています。

○古屋(範)委員 よく野党時代は、資料がない、データがない、そうおっしゃっていましたけれども、もう政権をとられたんです。幾らでも資料もデータも出せるでしょう。あとは決めるだけなんじゃないんですか。

 二〇〇四年の自公政権当時、私たち、年金の改革案を出しました。当時坂口大臣でありましたけれども、現行制度の改正でさえ、その法案を出す前年の九月には試案が示されておりました。そこから約半年の検討を経て、二〇〇四年の通常国会に法案を提出いたしました。

 年金、これには国民的な議論が欠かせません。法案提出に向けて、丁寧な手続、議論が必要なんです。もう五月の末です。一体、民主党の抜本改革案の原案の素案の素案ぐらいは、もうできていてもいいんじゃないですか。どうでしょうか。どこまで進んでいらっしゃるのか。これは総理にお伺いをしたいと思います。抜本改革案、今どこまで進んでいるのか、いつ出せるのか、お伺いをしたいと思います。

○岡田国務大臣 先ほど小宮山大臣がお答えしましたように、今党の中で精力的に議論しておりますので、その結果を見てお示しをさせていただきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 検討中という言葉ばかりですね。結局やる気がない、そう断ぜざるを得ません。

 先ほどの議論の中でもありました、岡田副総理、私も厚生労働委員会で答弁を聞いておりました。また、議事録も精査をしてみました。入り口は違うけれども、与野党で協議をしていこう、大きな方向性が合意できれば、我々、来年度は法律を出すということに必ずしも固執する必要はない、このようにおっしゃっていますね。

 ということは、民主党の年金の抜本改革案、これは取り下げてもいいということですね。確認をいたします。

○岡田国務大臣 坂口先生のこのお話は、各党間で協議をするということを前提にしての議論でございます。したがって、各党間で協議をして、そして成案が得られれば、別に民主党の案にこだわる必要はないというふうに考えております。

○古屋(範)委員 総理にもお伺いいたします。

 民主党の年金の抜本改革案、取り下げてもよい、そのようにお考えですか。

○野田内閣総理大臣 新しい年金制度、国民年金も含めての年金の一元化、そして最低保障年金、こういう柱の中で制度設計をこれまでしてまいりましたし、今、先ほど来答弁があったように、引き続き党内でその制度設計の詰めを行わせていただいているところであります。

 政府としても、もちろん、数字等必要なものについては、党から要請があればお答えをしていくという形でまとめていきたいというふうに思いますけれども、今は、それを撤回せよというお話でございます。

 でも、これは、お互いにあるべき姿を、公明党は公明党で積み重ねてきた年金の像があると思います。私どもも、その積み重ねの議論があります。その積み重ねの議論をやってきた中で折り合えるところは何なのかという協議は、これから真摯にやらせていただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

○中野委員長 今、公明党さんの質疑応答の最中であります。他党の方がちょっと不規則発言も多いようでございますが、もう少し静かに質疑応答を聞いてください。

○古屋(範)委員 我が党と民主党政権の折り合えるところを探したいとおっしゃいますけれども、折り合える具体案そのものがまだ出ていないんです。一体どこで折り合えるのか、具体案も出ないのに話し合いなどできるわけがございません。

 いよいよ被用者年金一元化に入ってまいります。パネルの三を用いてまいります。

 抜本改革案が示されない中で、今回、年金関連法案の一つであります被用者年金の一元化、これは二〇〇七年に自公が非正規労働者への適用拡大とまとめて法案提出をしてきましたけれども、民主党の反対で廃案となった経緯がございます。なぜ今になって当時反対をしていたのと同様の内容の法案が提出をされるのか。

 総理は、五月八日の衆議院本会議において、二〇〇七年の自公案は衆議院の解散に伴い審議未了で廃案になったものであり、民主党として反対していたことではございません、このように答弁をしていらっしゃいます。

 まず、小宮山大臣にお伺いをいたします。

 大臣、平成十七年四月に、私たちが提出をした一元化法案に対して、当面、厚生、共済年金の一元化というだけではとてももたない、信頼回復はできない、このようにおっしゃっています。

 もたない法案を今回提出されたんですか。お伺いいたします。

○小宮山国務大臣 私どもは、先ほど申し上げたような観点から、抜本改革が必要だというふうには考えております。ただ、これは、野党であったときに、そういう自覚が足りなかったという御指摘があれば、私は反省して、その部分の言葉についてはおわびを申し上げたいと思います、正直に。

 ただ、抜本改革については、先ほどからお話ししているように、なるべく協議の場をつくって、みんなで合意を得たい。抜本改革をするにしても一定の期間がかかりますので、今の中で改善をすべきことは、働き方に中立な制度にするという意味で、今回、中身は本当に平成十九年にお出しになったものと同じでございますので、そこのところについてはぜひ、問題意識も共有していると思いますので、成立に御協力をいただければと思っております。

○古屋(範)委員 当時、確かに野党だったかもしれませんけれども、国会議員の発言というものは非常に重いものがあります。その責任、ぜひ重く受けとめていただきたい、このように思います。

 総理にもお伺いをしたいと思います。

 菅前総理はこのように発言をされています。平成十九年です。今回も国民年金以外の厚生年金と共済年金のミニ一元化法案を政府は出している。今回、ミニ一元化法案、これを提出されてきた、このように総理もお考えになりますでしょうか。

○野田内閣総理大臣 ミニという言い方がどうかわかりませんけれども、もともと私どもは、国民年金も含めての一元化という論に立っておりますが、そうはいいながらも、現実的な対応をしていくときに、現行制度の改善をしていくという意味において、まずはできるところから、可能なところからの組み合わせをしていこうということで、被用者年金の一元化という判断をしているわけでございます。

 ミニという言い方がいいかどうかは別として、まずはここは、これまで各党が御賛同を得られる部分ではないかというふうに思います。その意味では、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

○古屋(範)委員 であるならば、まず一元化法案を示していただきたい、このように思います。

 保険料率についてお伺いをしてまいります。

 パネルにありますように、被用者年金一元化について、共済年金と厚生年金をそろえる。民主党の抜本改革案がもし実現されたら、今回の法案は関係なく、保険料は統一をされていくものと思われます。特に国民年金加入者は、労使折半がないために保険料が大幅にふえることとなるわけであります。この厚生年金、共済年金、保険料を段階的に引き上げて、一八・三%までそろえていく、こういう保険料率の上昇であります。

 お聞きをいたしますけれども、年金の抜本改革案、この改革時に、比例部分の保険料というものがありますね、民主党の年金案には。この一八・三%がその保険料の上限、そういう意味でよろしいのかどうか。また、抜本改革案が来年提出されるわけですけれども、仮に被用者年金一元化法が成立をした場合、二〇一五年四月の時点での保険料は現行制度に基づく水準か、それとも抜本改革に基づく水準か、一体どちらを想定しているのか、お伺いをいたします。

○小宮山国務大臣 厚生年金、共済年金の保険料につきましては、今も毎年〇・三五四%ずつ引き上げているわけですけれども、今回の一元化法案の中では、引き上げスケジュールを法律に位置づけまして、厚生年金は平成二十九年、公務員は平成三十年、私学教職員は平成三十九年に一八・三%で統一することにしています。

 先ほど申し上げたように、私どもの新しい年金制度がスタートをするとしましても、所得比例年金の保険料は、老齢年金のための分として一五%程度、さらに遺族年金、障害年金、ここで三%程度というふうに考えておりますので、大体今の水準と同じだというふうに考えております。

○古屋(範)委員 一五%程度、それほど変わらないとおっしゃいますけれども、国民にとって、厚生年金保険料、社会保険料というものは非常に重いものであります。それが幾らか、手取りが何千何百何十何円なのか、そこまで国民は本当に一つ一つ気にしながら毎月の家計をやりくりしているわけです。そんなアバウトな答弁では、私はとても承服しかねます。

 次に、非正規労働者への適用拡大をおくらせた責任、これについてお伺いをいたします。

 非正規労働者への適用拡大について、民主党は、自公政権当時、二〇〇七年の同様の法案に対し、その理由として、適用拡大をする範囲が狭過ぎると。確かに、対象十万から二十万という法律案でございました。しかし、まずそこから進めればよかったんだと思います。もしあのとき民主党が賛成をしていれば、二〇一一年九月からもう実施をしていました。そして、そこからさらに拡大ができたんです。

 今回の提出法案、多少拡大、対象範囲が広いとおっしゃるかもしれませんけれども、仮に成立をしても、施行は二〇一六年の四月からです。これほど適用拡大をおくらせた責任、これについてお伺いをいたします。

○小宮山国務大臣 委員の御指摘は、当時そういう思いで出された方の御指摘として重く受けとめたいというふうに思っています。

 ただ、私どもがその当時申し上げたのは、当時のその十万から二十万ですと、主たる生計維持者にしかいかない部分がありました。今回一番違うのは、主たる生計維持者以外の、パートなどで今女性の五三%が非正規で働いている中で、そういう人たちに何としても適用を拡大したいという思いがございまして、最初は百万ぐらいは何とかしたいと思ったんですが、やはり中小企業を中心に、経済的な負担がある、そういうお話もございましたので、今回、社会保険の適用を二十時間以上の人全てのなるべく多くの範囲に広げたいということと、経済的な、中小企業などの事情を考え合わせた上で、現実的な線として四十五万からスタートをする、三年以内にさらに拡大をするということにいたしましたので、ちょっとそうしたところの考え方の違いもございます。

 ただ、委員の、そのときに導入していればもっとそれから先広げられたという御指摘は重く受けとめたいと思っています。

○古屋(範)委員 あのとき、もう既に制度設計をつくっておりました。それが実施をされていれば、施行になって、さらにその拡大もできていたはずです。それをおくらせて、今年度やっとこの法案を提出されてきた。それも、対象者はそれほど多くはございません。私は、その責任を問うているんです。

 若い世代にとって、先ほどの保険料についてもそうです、では一体、自分が厚生年金に入るのか、あるいは国民年金、ここまで一元化なのか、来年の制度設計もわからない。

 私たち、先ほど斉藤委員からも紹介がありましたように、新しい福祉社会ビジョン、こういうものをつくりました。そのときも若い世代に意見を聞きました。ともかく、社会保障の制度設計、国民目線に立った改革を行ってほしい、このように言われました。給付と負担を明確化してほしい、また制度設計も見える化をしてもらいたいと。

 セーフティーネットの機能強化を推進する上で最大のポイントは、国民に理解されやすい制度です。現行制度だって十分に理解をされていない。加入していない方々も減免制度などを使って受給資格を得ていく。これは非常に重要な点であると思います、二分の一は国庫負担なんですから。これは、死ぬまで消費税を払い続けなければいけない、年金に加入をしていればその中で年金を受けることができる、なかなかそういう理解もされていない中で、今度は、ことしはここまで厚生年金を短時間労働者に適用拡大をする、そしてさらに来年は抜本改革で一元化をしてくる。では一体、自分の保険料、そして給付、もらえる年金、そして来年の制度、自分は一体どうなっているのか、この不安は増すばかりであります。

 若い世代は、給付と負担の関係を明確にしてほしい、さらに制度設計のプロセスの透明化、こういうことを求めております。私たちも、この新しい福祉社会ビジョン、冒頭にこのことを掲げさせていただいております。ここが重要なんです。ここをないがしろにしている、私はそう言わざるを得ません。

 さらにお伺いをしてまいります。

 年金の適用範囲でありますけれども、法施行後三年以内にさらに適用を拡大するとしていますね。来年に抜本改革の法案を提出して、全ての国民を同一の年金に加入させる。では、今回の短時間労働者、非正規への適用拡大、これ自体要らないんじゃないですか。必要ないんです。ここで時間をかけてこの特別委員会で議論をしていく必要性がそもそもあるのかどうか。

 抜本改革、今般の法施行時期の二〇一六年四月からさらに三年後の二〇一九年以降、このように先送りをされるんですか。これについてお伺いをいたします。

○岡田国務大臣 論理的には、委員のおっしゃることもわかります。

 しかし、年金の抜本改革が、我々これを主張しているわけですけれども、各党間で合意され成立するということは、それは結局、御党を含め野党の皆さんが理解していただき、お互い折り合いをつけなければできないわけです。したがって、ある程度時間がかかることも覚悟しなきゃいけない。その間に、やはりできることはしっかりやっておこう、こういうことでございます。

 そのできることはしっかりやっておこうということの中身が、かつて我が党が反対したりあるいは賛成しなかったことが含まれておりますので、先ほどの御意見は、私は本当に申しわけないところがあるというふうに思いますけれども、しかし、国民の立場に立てば、今できることだけでもしっかりやっておくということは必要なことで、お互いそういったことで潰し合っていたら、結局、いつまでたってもできないことになりますので、ここはぜひ、御党の従来の主張を受け入れて我々は案を出しておりますので、御審議いただき、そして賛同していただきたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 与野党協議に時間がかかるから、当面せねばならぬことをする、そうおっしゃるんでしょうけれども、だったら、政権交代をしてすぐに抜本改革案を出すべきじゃないんですか。もう二年八カ月もたっております。そのときに出して議論していれば、二年八カ月間、十分な議論ができたかもしれません。ここに至って、これから議論をし、法律が出てきて、そこで議論をして時間がかかる、当たり前のことです。

 次に、無年金、低年金対策、これをおくらせてきたことについてお伺いをいたします。

 無年金、低年金対策、私たちも、政権交代後、当時の鳩山総理に、早急にその実現を訴えてまいりました。そこでも民主党政権は、抜本改革とあわせて検討することを理由に先送りをしてきました。

 民主党の具体案づくりを待っていては、いつになったら無年金、低年金で困っている国民を救済できるかわからない。我々は、これはもう抜本改革と切り離して無年金、低年金対策をやるべきだ、そのように主張してきました。しかし、結局のところ、抜本改革にこだわる民主党政権は、すぐにでも行う必要がある改革までおくらせてしまったわけであります。

 この年金制度の抜本改革に固執してきたからには、さぞかしすばらしい案が出てくるか、そう思えば、何も示されない。財源の見通しさえ立っていない。この九年間、民主党のせいで社会保障の真っ当な議論はまさに先送りをされてきた、こう言わざるを得ません。

 社会保障改革の迷走と混乱に対する民主党の責任、これは重大であります。これをどう説明されるんですか。ぜひ、それについて明快にお答えいただきたいと思います。

○小宮山国務大臣 例えば、無年金、低年金対策について、今回、受給資格期間の短縮、低所得者への加算など、こうしたことをお出ししまして、御党がそういうことを主張されてきたことも十分承知をしております。そのときにやっていればということは先ほどと同じでございますが、しっかりともっと対応すべきだったということは、今、私も思います。

 ただ、こうしたことに当たって、次の世代にツケ回しをするわけにいかないので、今回、消費税を増税させていただくことを御理解いただいて、そこで安定財源を得た上でこうした対応をしたいというふうに思っていますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

○古屋(範)委員 時間も迫ってまいりました。

 最後に、子育て支援についてお伺いをしたいと思っております。

 子ども・子育て新システムについては明日の議論に譲りますけれども、これまで私も取り組んでまいりました子供の健康支援、特に、ワクチン、予防接種について取り組んでまいりました。この予防接種法見直しについて御見解を伺いたいと思っております。

 今までもHibワクチン、それから小児用肺炎球菌ワクチン、そして子宮頸がんワクチン、この三ワクチンは公費助成が実施をされております。これに加えまして、B型肝炎、成人用の肺炎球菌感染症、また水痘、流行性耳下腺炎、おたふく風邪ですね、そして、昨年承認をされたロタウイルスなど、直ちに定期接種化をすべき、このように考えます。

 こうした新しいワクチンが次々と開発をされて使用可能になっても、任意接種でありますと、個人負担になる、あるいは自治体によって助成制度が違ってくる、このような格差が出てまいります。

 明日、予防接種部会で、三ワクチンに加えまして四ワクチンについても、財源が確保され次第、順次対象とすることが検討されることになっております。これには財源がかかります。全体で年間約二千億円かかると言われております。

 子ども手当の年少扶養控除の廃止等による地方の増収分、平成二十四年度においては六千二百億円であります。これは、昨年の十二月、四大臣合意によって取り決められておりますけれども、私たちも、現金給付の重要性は認識をしているつもりでもございます。しかし、公明党は、総合的な子育て支援、それは、生まれてから成長するまで総合的な、それも切れ目のない支援が必要だということを主張してまいりました。現金給付だけではなく、ワクチンの場合には、子供の健康、子供の命を守る、ここに直接寄与していく政策でございます。

 今までも小宮山大臣にはワクチンについてはるる質問してまいりましたけれども、ぜひ、この財源を確保して定期接種化をしていただきたい、予防接種法の抜本改正をしていただきたい、このように思います。総理にお聞きをしたいと思っております。

○野田内閣総理大臣 予防接種は、生命と健康を守る重要な手段であり、特に子供に対しては、その健やかな育ちを支えるものでございます。古屋委員そして御党におかれましては、かねてからこの問題に熱心に取り組んでこられたことに敬意を表したいと思います。

 もう御指摘ございましたけれども、現在、制度の見直しに向けて、厚労省審議会等では、専門家や自治体関係者の方々による議論が行われているところでございます。その中では、新たなワクチンについて、優先順位も考慮して予防接種法上の位置づけを明確にすべき、そのために必要な財源の確保に努力すべきといった方向性が示されつつあると承知をしております。

 政府としては、その議論を踏まえてしっかり対応していきたいと考えております。

○古屋(範)委員 ぜひ、予防接種法の抜本改正、定期接種化に向けて最大限の御努力をお願いしたい、このことを申し上げておきます。

 子育て支援に触れましたけれども、子ども手当、この二年余り迷走してきました。二万六千円を中学生まで全員に国費で支給をする、この子ども手当を掲げられて、最初は一年間の時限法でありました。そして、その後は半年の延長、その後は半年の特措法。まさに、一回も恒久法が出せなかった、綱渡りのようなマニフェスト、子ども手当でありました。

 そして、このたび、法律も児童手当法の改正、名称も児童手当に戻りました。国民も安心をしております。来年幾らもらえるかわからない、これでは家計の予測が立ちません。予見可能性を最大化していく、これは政治の役目であると思います。それさえもわからなかった。その証拠に、毎日新聞の調査でも、児童手当に戻ってよかった、六割以上の方がそうおっしゃっています。

 また、後期高齢者医療制度、これは、うば捨て山あるいは差別、そうおっしゃっていましたけれども、五割は税金が入っている、四割は現役世代の保険料、一割が高齢者の方々の御負担、まさに支え合いの制度だったんです。これをさんざん批判して否定をされた。障害者自立支援法もそうです。このたび総合支援法を出してこられましたけれども、さんざんこれも批判をされてきた。

 こういう中で、民主党政権、民主党がこれまでいかに社会保障制度改革、年金、医療、そして障害者施策、これをおくらせてきたか、先送りをしてきたか、このことを指摘し、私は質問を終わります。ありがとうございました。

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