第183回国会 衆議院 予算委員会第一分科会-2号

○古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、北朝鮮のミサイル問題、緊張の中ですけれども、質疑の方、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 私は、比例区選出なんですが、自宅は横須賀にございまして、事務所も横須賀に構えております。ですので、海上自衛隊初め防衛省、防衛大学校の関連施設ですとか、あるいは高等工科学校などもありまして、私もできる限り関連行事には出席をさせていただいております。

 女性自衛官の方々と懇談をさせていただいたこともあるんですが、実際に艦船に乗っていらっしゃる女性自衛官もいらっしゃるし、子育てをしながら頑張っている方々もいらっしゃるということで、ともかく、我が国の国民の生命財産を守るとうとい職務についていらっしゃる自衛隊の皆様に、私も日ごろから心から感謝と敬意を持っております。

 きょうは、ドクターヘリの操縦士の養成確保についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 自衛隊の操縦士からの転出をお願いしたいということでございます。

 公明党の主導で、二〇〇七年の六月なんですが、ドクターヘリ特別措置法を制定いたしました。以来、全国各地でこのドクターヘリの導入が拡充をしてきております。この法律が制定されたときには、十道県で十一機しかなかったんですね。それから全国配備ということで逐次拡充をしてまいりまして、昨年十一月十五日現在ですが、三十四都道府県四十機ということで、かなり広がってきております。

 これは、御存じのように、医師が乗り込んで治療しながら患者を搬送するということでございまして、ドクターヘリがなかったら命を落としていたという方々もたくさんいらっしゃいます。また、東日本大震災の折は、全国から被災地に十八機のドクターヘリが集結をいたしまして、被災者の救援活動に当たったわけでございます。

 このドクターヘリ普及の背景には、私たち公明党の地方議員が各地域で導入を訴えてまいりまして、また特措法の存在も大きかったわけでございます。こうした全国配備の拡大、操縦士の定年退職等の自然減に伴いまして、近い将来、ドクターヘリ運航に従事するパイロットの絶対数が不足をしてくる、このような課題に直面をいたしております。

 地方の病院ではなかなか救急医療の確保ということが難しいわけでありますし、また、医師不足、財政的な面でも公立病院の存続さえ危ぶまれているという中で、確かにこちらはこちらでしっかり進めていかなければいけないんですが、一方で、搬送体制を整備して、遠隔であったとしても救急患者を搬送できる体制をつくっていく、これが重要だと考えております。

 そこで、まず、自衛隊ヘリ操縦士の現状について、現員数、また定年退職者数、そしてドクターヘリパイロットに再就職をされた実績についてお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、大塚(拓)主査代理着席〕

○左藤大臣政務官 古屋先生にお答えを申し上げたいと思います。

 先生おっしゃったように、ドクターヘリ、活躍をしておりますけれども、近年の自衛隊のヘリ操縦士の定年退職者数は、過去三年間を見ますと、毎年大体四十名から五十名程度で推移をしております。また、退職者のうち、防衛省による再就職援護によりドクターヘリ運航会社におけるドクターヘリパイロットとして再就職した実績は、現在把握している限りでは二件でございます。非常に少ないです。

○古屋(範)分科員 現実はそういうことでございまして、私は、ドクターヘリのパイロットへ移行する、こういう流れをぜひつくっていただきたい、このように考えております。

 自衛隊は、精強さを保つために、若年定年制と任期制の制度を採用していらっしゃいます。多くの自衛官が五十代半ばとか、あるいは二十代半ばで退職をされると聞いております。このような中で、自衛官の方々が退職後の生活にも不安を抱くことなく厳しい任務を遂行するために、また、すぐれた資質を有する人材を確保するためにも、退職後の生活基盤の安定確保が不可欠であると考えております。

 防衛省におかれましては、退職予定自衛官の再就職に関する施策を人事施策における最重要事項の一つとして捉えていらっしゃる、再就職に有効な職業訓練あるいは雇用情報の有効活用など、就職援護施策を行っていらっしゃるということでございます。その中で、ドクターヘリパイロットへの再就職が円滑に行われるような施策をとっていただきたいと考えております。

 そこで、若年退職者などがドクターヘリなど民間事業用のパイロットへの再就職を円滑に行えるよう、例えば、在職中にドクヘリパイロットに必要な資格、技能を取得できるような支援を実施していただけないか。あるいは、今後、ドクターヘリ業務を習得するにはある程度の期間が必要であるということで、一千八百時間あるいは二千時間ということでございます。この期間を考慮すると、比較的若い年齢の操縦士が民間に転出をしていただけると、より活躍できる年数が長くなるわけでございます。

 そこで、今後導入される予定の早期退職募集制度を活用して定年前に退職する自衛隊ヘリ操縦士を、ドクターヘリパイロットとして活用できるような支援ができないかどうか。

 また、これまで割愛制度というものがございました。これは、自衛隊と航空会社の間で協定が結ばれておりました。毎年、ある程度の人数の自衛隊パイロットを民間航空会社に出していくという制度であります。これは、民間航空会社が始まるときに、多くの自衛隊のパイロットを民間会社が引き抜いてしまうということで、非常に困るということで、こういう制度をつくられたというふうに聞いております。

 この制度が、平成二十二年度以降、停止となっております。平成二十一年九月、民主党政権下の閣議で、公務員の天下りに対する厳しい批判に応えるとともに、行政の無駄をなくす観点から、あっせんを直ちに禁止するとの総理の発言がありまして、それを受けて、防衛省によるあっせんは行わない旨の防衛大臣通達が出されたという経緯がございます。

 確かに天下りの禁止は行っていかなければいけない。一方で、ドクターヘリのパイロットの人材不足、こういう大きな課題がございます。これが機能しなくなったために、壮年操縦者の退職人数の減少による操縦者の高齢化、新人養成数の減少、大幅なパイロット不足など、今後の人材確保へ非常に大きな影響が広がるのではないかという懸念が広がっております。

 そこで、この割愛制度というのは、操縦技能有効活用制度であるというふうに考えられます。いわゆる天下りとは違うのではないかと思います。割愛制度を、天下りという観点で捉えるのではなくて、航空自衛隊の精強性の維持、あるいは民間航空会社の発展という大所高所からの視点で捉えて再検討できないか、この点に関してお伺いをしたいと思います。

○小野寺国務大臣 まず、私の方から早期退職制度のことについてのお話、そして、割愛制度については左藤政務官から御答弁をさせていただきたいと思います。

 ドクターヘリ、私は大変有効な制度だと思っております。

 私の地元、宮城県の気仙沼というところでありますが、ここは、三次医療圏まで行くのに車で二時間から二時間半かかります。また、所在する離島では、三次医療施設まで行くのに約半日かかってしまいます。

 ですから、かなり重篤な場合には、恐らくここでは処置ができないということが大変多い。このときにドクターヘリがあればな、そう思う地域の一つでもあります。そういう意味で、ぜひ古屋委員には、推進のことをこれからもよろしくお願いしたいと思います。

 その中で、今回、防衛省・自衛隊としまして、若年定年退職者あるいは早期退職制度で退職した自衛隊ヘリ操縦士を、例えばドクターヘリパイロット等の活用ということでの御要望がございました。私どもとしましては、再就職支援や、あるいは自衛隊において培った技能の活用という観点から意義があると考えておりまして、本人の希望があれば、ドクターヘリパイロットとしての活用、これができるのではないかと考えております。

 また、ことしじゅうに国家公務員に導入されます早期退職募集制度などを活用しまして定年前に退職する自衛隊ヘリ操縦士が今後出てくる場合には、同様に、ドクターヘリパイロットとして活用していただけるものと考えております。

 このことについて、けさほども役所と相談をしたんですが、実は、ヘリコプターのパイロットの資格というのはそれぞれ機種によって定められている。ですから、自衛隊で運用しているヘリコプターが操縦できるからドクターヘリのヘリコプターが操縦できるとは限らないということで、確認をさせていただいております。

 ただ、ドクターヘリとして活用されているヘリコプターも自衛隊は所有していることから、そこでしっかりとした運用あるいは免許の取得を行えば対応できるということでありますので、これは、中でさまざま検討できる課題があるのかなと思っております。

○左藤大臣政務官 今大臣から御指示ありましたように、割愛制度について答弁をさせていただきたいと思います。

 先ほど古屋先生御指摘のとおり、割愛は、従来、自衛隊のパイロットの無秩序な流出を防止するとともに、自衛隊のパイロットを民間航空事業において有効に活用するという観点から実施しておりました。

 先生御指摘ありましたように、平成二十一年の九月二十九日の閣議における鳩山総理の発言によって、省庁があっせんするということを禁止するんだ、こういうことでございましたので、これに抵触をするおそれがあるということで、それ以降の割愛は行っていないところでございます。

 そして、今、何とかというお話で大臣も御答弁しましたとおり、防衛省としては、本年度中に国家公務員に導入される予定の早期退職募集制度を活用するなど、自衛隊ヘリ操縦士の養成管理、これは、先ほどおっしゃったように全部同じ飛行機じゃないとかいろいろありますけれども、そういうものも踏まえながら適切に行っていって、政策について検討をさせていただきたい、このように思っておるところでございます。

○古屋(範)分科員 大臣、ドクターヘリに関する深い御認識がおありになるということで、御存じかと思いますけれども、愛知県で子供が水に落ちて心肺停止状態になって、そこから静岡県にドクターヘリで搬送して命が助かったという方もいらっしゃいましたし、ドクターヘリによって命が救われたという報告はさまざまございます。

 それから、ある方から言われたんですが、ドクターヘリに税金を使うのであれば、これは非常に理解ができるということを聞いたこともございます。やはり命を救うという、まあ、一つの搬送手段でありますけれども、国として行っている事業の、国民の命を救う、その象徴的な存在であるというふうに思います。

 私たちもドクターヘリを推進してまいりまして、今後さらに機数を拡充していくとともに、この事業が永続的に推進されるように、やはり人材確保を含めて周辺の整備も行っていかなければ、この事業をスタートして、ヘリを入れたからそれで終わりということにはならないんだろうというふうに思います。

 左藤政務官からも御答弁がございましたけれども、早期退職者の制度を今後、本人の希望も当然あると思いますので、こちらに行けと言うことはできないとは思いますけれども、やはりこれは非常にとうとい仕事でございますので、機種の訓練も含めまして、こちらへの流れが少しでも大きくなるように施策を進めていただきたいと考えております。

 続きまして、ドクターヘリパイロットの訓練、養成支援についてお伺いをしたいと思います。

 防衛省では、ヘリ操縦士の受託教育を行っていらっしゃると聞いております。この受託教育の現状についてまずお伺いをしたいと思います。

 続きまして、これまで農薬散布等を行う操縦士を養成するために受け入れを行った実績があるという受託教育に、ぜひこのドクターヘリパイロットの受託教育も含めていただけないかという質問でございます。

 自衛隊の教育訓練施設は立派なものであると聞いております。例えば、鹿屋の航空基地、ここは海上自衛隊の航空基地の一つであります。海上自衛隊では、この鹿屋航空基地において、EC135型機、これは民間事業者がドクターヘリとして使用している機種、これと同機種でありますTH135機というものを使用してヘリ操縦士の養成をされています。

 現状では、この機材、教官等、ヘリ操縦士の養成にフル稼働状態であるというふうに思います。こうした厳しい状況の中でドクターヘリの方まで教育をお願いするというのは非常に難しいとは思うんですが、このドクターヘリの公共性を御理解いただいて、ここでドクターヘリの受託教育を行っていただけないかどうか。ぜひとも、この訓練施設にドクターヘリ操縦士養成のための訓練実施機関としてのコースをつくって、航空機材、教官ともに活用させていただけないか。

 この点、いかがでございましょうか。

○左藤大臣政務官 お答えします。

 ドクターヘリの受託教育の問題ですが、自衛隊法第百条の二に基づいて、回転翼操縦士の教育も含め、部外から、受託教育は先生御指摘のとおり実施をしております。

 この受託教育の現状ですが、警察庁から、昭和四十六年、そして四十九年から五十一年、五十九年から現在までの間、毎年一名、約一年十カ月間の教育課程を受託しております。

 そして、先ほど農薬散布のこともございましたけれども、民間からの回転翼操縦士の受託教育の現状ですが、過去、昭和三十八年から昭和六十三年までの間、毎年一名、先ほど御指摘あった農薬散布等を行う操縦士の養成を行うための教育の受け入れを行った実績がございますけれども、平成元年から実は受け入れておりません。申しわけないんですが、それが現実です。

 それと、先ほど御指摘のあったTH135、これはドクターヘリに使われているのと同じ機種なんですが、海上自衛隊で鹿屋航空基地において、これは鹿児島にございますが、このTH135を使用してヘリ操縦士の養成を行ってございます。

 ただ、同基地においてヘリ操縦士の養成を担当する第二一一教育航空隊における教育の現状ですが、近年の各種任務の増加や操縦士の中途退職者の増加等を背景として、ヘリ操縦士の養成が急務となっており、現在、養成能力の上限いっぱいでヘリ操縦士の養成に当たっているところなんですね。もういっぱいなんです。そのため、現時点での部外者の教育の受託については非常に慎重に考えざるを得ないという状況になっております。この点、御理解をひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。

○古屋(範)分科員 任務も多くなり、また財政面、人員面でも厳しい中、手いっぱいであるということでございます。

 そんな中ではございますけれども、ドクターヘリの養成に関してもぜひお心にとめていただきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 次に、国土交通省に質問してまいります。

 ドクターヘリ操縦士に必要な技量を付与するための訓練をするために、独立行政法人航空大学校の施設の活用ということも考えられるのではないかと思います。民間操縦士の公的な養成機関として、特に公益性の高いドクターヘリ、この養成についてぜひとも御協力いただけないか。

 このことについて国土交通省にお伺いをいたします。

○高橋(和)政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御案内のとおり、ヘリコプターのパイロットの養成は、運航事業者のほかに、民間訓練会社でございますとか私立大学等において行われております。

 一方、航空大学校では、ヘリコプターの操縦教育に対応した訓練機ですとかシミュレーターですとか、さらには教官等を現時点では有しておりません。したがいまして、ドクターヘリパイロットの養成に対応することは、現時点では困難でございます。

 しかしながら、航空大学校が既に保有しております格納庫ですとかエプロン等々、施設の活用については、御要望があれば、可能な範囲で御協力することについて検討してまいりたいと考えております。

○古屋(範)分科員 保有施設は活用できるということでございますので、これも今後前向きに活用ができないか、私も考えてまいりたいと思っております。

 最後に、厚労省にお伺いをしたいと思っております。

 ドクターヘリは、国民生活の中にもう既に定着をしてきております。また、出動回数は年々上昇しておりまして、その需要も高まっていると考えられます。

 厚労省で行っているドクターヘリの運航に必要な経費についての財政支援、平成二十五年度予算では、四十四・八億円確保しております。ドクターヘリで出動して高度な救急医療を提供できる医師、看護師の育成のための研修事業も行っていらっしゃいます。

 これに加えて、ドクターヘリ操縦士の育成についても財政支援が必要かと考えます。ドクターヘリを所管する厚生労働省として、ドクターヘリのパイロットの育成についてもやはり財政面で責任を持っていく必要があるのではないかと考えます。

 ドクターヘリ操縦士の養成施設を民間事業者が整備し保有するということは、極めて困難でございます。ドクターヘリを運航している民間事業者のほとんどが、資本金一億円前後の従業員百名未満の中小企業であります。ドクターヘリが拡充するのはありがたいが、飛ばせば飛ばすほど赤字が出るという声が届いております。

 これに加えまして、ドクターヘリ年間運航経費が、出動回数を年三百八十回としますと、約二億五千万円を必要とするということで、補助金は一億九千万円にとどまっておりますので、結局、六千万円の赤字に陥ってしまうということでございます。

 操縦者の育成確保、これはドクターヘリ事業に欠かせません。幾らヘリがあっても、飛ばすパイロットがいなければ、これは継続していくことはできません。

 以前、航空大学校で、農薬散布事業に必要なヘリコプター操縦士の養成が行われておりましたけれども、この予算も、農水省の予算をもとに、訓練生に対し奨学金が貸与されておりました。

 また、先ほどの御答弁にもありましたように、防衛省における警察庁の陸曹航空操縦課程の受け入れも、警察庁での予算措置で行われているそうでございます。

 そこで、ドクターヘリ事業という目的のために行う操縦士の養成でありますので、厚生労働省が責任を持って予算面で支援を行う、防衛省、国交省などにその教育についても厚労省の側からお願いをしていくというのが本来の筋ではないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

○神田政府参考人 ドクターヘリの操縦士の養成確保につきましては、これまでは、各運航事業者を中心にお取り組みいただいてきたところでございまして、厚生労働省としては、ドクターヘリの安定的な運航が図られますように、操縦士の人件費を含めた運航に必要な経費に対する財政支援を行ってきているところでございます。先ほど先生御指摘のように、大変厳しい財政状況ではございますけれども、二十五年度予算では、前年度比較で七・九億円増の四十四・八億円を計上しているところでございます。

 確かに、操縦士の養成というのも非常に大事な観点だというふうには思っておりますけれども、先ほどおっしゃったような単価のアップでございますとか箇所数の増加ですとかいろいろな要望をいただいている中で、先ほど申し上げた厳しい財政状況の中で予算の確保に努めているところでございまして、御指摘の点については、今後、関係省庁と情報の共有等を図りながら、必要な支援について、どういったことが限られた予算の中でできるのかということを検討していく必要があるというふうに考えております。

○古屋(範)分科員 このドクターヘリ、過疎地域あるいは離島等、国民の命を守っていく非常に重要な機関でございます。この拡充をしていくということが今求められているのではないかと思っております。そこに必要なパイロットの養成への支援を求めまして、質問を終わりたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

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