第185回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会-3号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 参考人の皆様におかれましては、早朝から国会においでいただきまして、貴重な御意見を述べていただきました。心から感謝を申し上げます。

 まず初めに、河野参考人にお伺いをしてまいります。これまでも消費者被害に対して、その救済、あるいは本法律案に関しましても制定に向け積極的に活動を展開されたことに、心から感謝をしたいと思っております。

 この委員会の場で身内のことを申し上げて大変恐縮でございます。私も二十七歳の息子がおりまして、大学生のときに、英語を勉強しようと思うと。何と殊勝なことを言い出したのかと思いまして、本人も受講申し込みをして受講料を払った、その直後にその英会話学校が経営破綻をいたしまして、私もそのニュースを見ておりましたので、こんなタイミングでと思ったんですが、受講料を返還してもらえるようにしなさいとか消費者センターに行きなさいとか電話では言ったんですが、うちから離れて遠くにひとり暮らしをして大学に通っておりましたので、やはりそのままになってしまいました。少額でもありましたし、私も国会があり、なかなか一緒に行って行動するということもかなわなかったわけでございます。

 先ほども参考人の方がおっしゃっていましたけれども、余りそのことには触れてほしくないという空気がありまして、やはり嫌な思いをしたんだろうというふうに思います。これが社会というものだから、勉強になったでしょうと。授業料と思ったというような経験がございます。

 こうした多くの消費者被害、今は悪質商法とかインターネットによるトラブルなどもふえております。こうした消費者トラブルが後を絶たないわけなんですが、個々の消費者の立場から見た場合に、現行制度というのはやはり限界があるというふうにお感じになっていらっしゃると思います。そのようにも先ほどおっしゃっていました。どのような限界があるとお感じになっていらっしゃるか。また、現行制度の限界を踏まえて、個々の消費者の立場から、消費者の被害を集団的に回復する本制度の導入の必要性、消費者市場に与える影響性など、改めてお伺いをしたいと思います。

○河野参考人 ありがとうございます。

 現在は、先ほど申し上げましたように、二〇〇七年に、消費者トラブルに対しては被害の未然防止それから拡大防止を図るためということで差しとめ請求ができる状況になっています。ですから、自分は被害に遭っても、そういった例を使って次の被害者を生まないというところだけでございます。今、古屋先生がおっしゃってくださいましたお子様の例でいいますと、払ってしまったお金は返ってこないというのが現在の状況だというふうに思っております。

 なかなか、せっかく事業者側に非があるというふうに判決をかち取っても、そこに被害弁償という形が乗っておりませんので、本当にうれしさ半分というふうな状況だというふうに感じております。ぜひ新しい制度で、払った分はやはり戻す、不当に払ってしまった分は、拡大に返ってこなくても全然構わないんですけれども、その分は返していただけるということなので、新しい制度には大いに期待したいところでございます。

 それからもう一点は、今の先生の御質問なんですけれども、やはり日本では、なかなか実社会における法律の知識というのが学校教育の中で行われていないのではないかというふうに思います。

 法律の知識というのは、特定の学ぶ人たちにとって深く伝えられ、一般の社会で本当に必要な法学習というのがなされていないのか。ですから、少なくとも、ある段階では、きちんと契約について、対価を支払うとはどういうことなのかということについて、やはり今後、社会の中で学習する機会、教育する機会というのを見つけていただければというふうに思っております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。本当にそのとおりだと私も思います。

 次に、野々山参考人にお伺いをしてまいります。前国民生活センター理事長としてのお立場から、大変明快な御意見を頂戴したと思っております。

 本制度は、一段階目の手続を提起する際には、個々の消費者の授権を必要としないという仕組みになっているわけでございます。この点について、特定適格消費者団体がむやみに訴訟を提起して、事業者に悪影響が生じるのではないかという懸念の声がございます。

 そこで、本当にむやみやたらに訴訟が提起をされるのかどうか、そもそも、この特定適格消費者団体が、どのような事案で、どのような検討をして本制度に基づく訴訟を提起していくのか。現行の差しとめ請求訴訟における御経験も踏まえて御意見を伺いたいと思います。

○野々山参考人 個々の消費者の授権をせずに第一段階をやるというのは、この制度の基本的な制度設計の根本だというふうに思っております。そういう形で、難しい問題について、まず全体の消費者の利益を代表する消費者団体の方で、しかも、内閣総理大臣から認定を受けた消費者団体の方で、ある意味公益のためにやっていくというのが一つのみそだというふうに思っております。それが濫訴になるのかというと、決してそうはならないというふうに考えております。

 先ほど西島参考人がるる説明をしたように、差しとめ請求、今回の回復制度よりもある意味簡単というんですか、手数のかからない制度でありましても、非常に手間がかかっております。十分な検討をしております。そういう中で、しかも、自主的な改善を求めて、その求めたものでどうしてもできなかったものに対して訴訟をしていくという形をとっております。

 これは今後も、この制度ができ上がりまして、さらに手数がかかる、手間がかかるということになれば、それはさらに慎重な検討をしていかざるを得ませんし、それから、自主的な対応をさらに求めていくということがまずされていくというふうに考えております。

 したがいまして、個々の授権を得ないこと、適格消費者団体が訴訟を、第一段階を担うことが濫訴につながるとは考えておりません。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 慎重な検討、自主的な検討が行われ、濫訴にはならないだろう、こういう御意見であったかというふうに思います。

 次に、阿部参考人にお伺いをしてまいります。

 本制度の導入に当たりましては、事業者の立場から、企業の経済活動に影響が与えられるのではないかというような御意見がございます。

 そこで、この法律案では、事業者の立場に配慮をして、訴訟追行主体を行政の監督の及ぶ特定適格消費者団体に限定をしています。訴訟の規模についてある程度見通しが立つように、対象となる請求権、損害の範囲を限定し、一段階目の判決の効力を他の団体にも及ぶようにするなど、さまざまな濫訴防止措置が施されていると認識をしております。

 事業者としてのお立場から、濫訴防止措置を設ける必要性について、さらに御意見を伺えればと思います。

○阿部参考人 冒頭にも申し上げましたけれども、仕組み自体、非常によく練られたものだと考えております。その上で、例えばリコールと並行して訴訟が起こされるとか、あるいは瑕疵担保責任として非常にささいなものが取り上げられるというようなことがあり得るという懸念は持っております。

 そういう意味で、法案第七十五条第二項に、「特定適格消費者団体は、不当な目的でみだりに共通義務確認の訴えの提起その他の被害回復関係業務を実施してはならない。」と。この「不当な目的でみだりに」ということを具体的に何かというものは、やはりもう少し明らかにしていただければと思います。できれば法律で書いていただきたいと言いたいところなのでありますが、例えば政省令でありますとか、あるいは特定適格消費者団体に対する監督指針の中で、何がまさにこの第七十五条第二項で言っている不当、みだりなのかということは明らかにしていただきたいと思います。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、西島参考人にお伺いをしてまいります。

 これまでもさまざまな消費者被害に取り組んでこられた御経験を踏まえての、非常に具体的な御意見をいただきました。

 この適格消費者団体の活動の中で、現行制度のもとでは消費者被害の回復に限界がある。先ほども、非常に長い年月をおかけになった事例を紹介していただきました。適格消費者団体の活動の実情にも照らして、現行制度の限界、また、本制度を導入する必要についてどうお感じになっているか、また、実際どのような事例で現行制度の限界をお感じになったか、先ほども述べられましたけれども、具体例があれば、さらにお教えいただければと思います。

○西島参考人 現行の制度の限界ということですが、これはやはり、もちろん、一番の限界というのは、未然防止、拡大防止のためにということで、将来にわたって、もうこういう勧誘だとか表示、契約上これは使ってはいけないという差しとめ請求訴訟ができて、それの判決がいただけるということになっております。ですから、そういった意味では、対象も、この間、制度が一番最初にスタートしたときは消費者契約法だけが対象でしたけれども、その後、景品表示法や特定商取引法にも広がってきて、ことしの六月十二日ですか、食品表示法にも関係してくるということになっておりますので、対象はだんだん広がってはおるんですが、それにしても、やはりまだまだ対象以外のものもあるだろうというふうなことがあります。

 それから、やはり、普通の消費者に、例えば適格消費者団体あるいは消費者団体訴訟制度というのは知っていますかというふうにもしお聞きになったら、はあというか、何か余り知りませんねという話になってくるというような状況。これはもちろん私どもも努力していかないといけないと思うんですが、制度をしっかり効果的に運用していくという意味で、国もしっかりその辺はさらに御努力を願いたいなというふうなことも考えております。

 ですから、新訴訟制度というのができましたら、被害回復というようなこともできますので、そこには消費者の方たちもやはり一定の期待をされるでしょうから、情報提供というようなことも、今は、ほかの人も同じ被害に遭わないようにということを考えた上でしかなかなか情報提供を得られないということが、私の被害を何とかしてほしいという方の情報も得られるという意味では、被害実態にかなり即した対応というのが今後もできていくのではないかなということを期待しておるところです。

○古屋(範)委員 だんだん時間になってまいりました。

 もう一度、野々山参考人にお伺いをいたします。

 先ほども、この適格消費者団体、非常に財政的に厳しいという御意見でございました。もし公的な財政支援がなければ、永続的に団体がこの法律に基づいて活動していくということはやはりかなり難しいというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

○野々山参考人 細々とやることはできるとは思いますけれども、この制度をワークさせるためにきちっとした活動をするには、やはり一定の財政的な支援が必要だというふうに思っております。諸外国ではそういう制度を持っている。このような制度そのものが公的なものだ、公益的なものだという認識のもとで財政支援を、こういうことをやっていく、こういう制度を動かして消費者団体にしている例もありますので、やはりそういうものは必要不可欠ではないかというふうに考えております。

○古屋(範)委員 私たちも国会の立場から、この財政確保に関してはしっかりと要求をし、確保に努めてまいりたいと思います。

 次に、もう一度、河野参考人にお伺いいたします。

 これまでも御意見の中で、諸団体との連携、情報交換が必要であるという御意見を述べていらっしゃると思います。最後に、この必要性についてお伺いできればと思います。

○河野参考人 諸団体というのは、もう一度諸団体というのを、消費者団体というふうに考えればよろしいでしょうか。

○古屋(範)委員 済みません、時間になってしまって、少しはしょりました。

 自治体、各地の弁護士会、民間NPO、消費者団体と情報交換の連携が重要だという御意見を述べていらっしゃいました。団体間の連携についてお伺いします。

○河野参考人 お答えします。

 やはり、本当に消費者問題というのは消費者だけでは解決ができません。ですから、特に消費生活センターですとかそれから行政の方、そのあたりでしっかりとこの制度のこと、それから消費者被害のことを理解していただいて、消費者自身も気軽にふだんの暮らしの中でいろいろな方に御相談できる、ちょっと不安に思ったときにはいろいろな方に声をかけられる、いろいろな入り口がたくさんある、適格消費者団体だけではとても、今十一ですから不安ですけれども、それがやはり日本の中でネットワークになるということで、さまざまな皆さんにこの制度を知っていただきたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 貴重な意見、ありがとうございました。

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