第186回国会 厚生労働委員会 11号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、早朝から国会においでいただきまして、貴重な御意見を頂戴いたしました。心から感謝を申し上げます。

 まず初めに、伊藤参考人にお伺いをしてまいりたいと思います。

 長年難病対策に取り組んでこられ、そのお働きに私も心から敬意を表したいと思っております。

 伊藤参考人とは、二〇〇六年に、パーキンソンとそれから潰瘍性大腸炎、軽度のところの医療費助成を打ち切るということがあった際に、私もそれを食いとめるために奔走いたしました。そのときからの御縁がございます。

 これまで、難病予算は年々の予算措置でございました。不安定でありました。そんな中ですけれども、平成二十一年には私たちも一気に前年比四倍、百億という難病予算を確保するなど、徐々に難病対策に光が当たってきたことは確かでございます。

 このたび、四十一年ぶりの難病対策の抜本改革ということであります。これまでなかった難病対策の法的根拠ができる、難病対策のための法律が制定をされるということになります。我が党も、マニフェストに難病対策の法律の制定ということを掲げてまいりました。難病対策の定義を明らかにするとともに、難病対策の目的を明文化されております。

 持続可能また安定的な難病対策を実施するための本法律案、意見陳述の中でもお述べいただきましたけれども、本法律案制定に当たり、改めて伊藤参考人の御感想をお伺いしたいと思います。

○伊藤参考人 古屋先生、いろいろとお世話になりまして、ありがとうございました。

 今お話にありましたように、二〇〇六年のときには、新たな難病を入れて改革していくためには、どこかをまた外さなきゃならないというような矛盾がありました。そのときに私も本当に考えました。この対策は今までの対策の延長ではやっていけないのではないか、そしてもっと新たなものが必要だと。それは、どういう形がいいのかはまだ見えてはいなかったのですけれども、多くの患者さんや御家族が集まって勉強会を重ねて、難病対策のこれからのあり方というのをいろいろ考えて、提言もさせていただきました。

 そこから今日になったわけですが、実は私も子供のころからの難病でありまして、一九七二年に全国の患者会に入って以来、患者会の活動をしてまいりました。ですから、難病対策の初めからをずっと見てきたわけです。その中で、難病対策というのは実は法律ではなかったということに途中から気がついたんです。

 これが法律になるということは、単に改革ということではなくて、本当に質の違うものになっていくんだろう。そのきっかけが今回の難病法案の議論であり、かつ、この法律ができるということはその基礎をつくるということになるので、子供のころからずっと病気とともに暮らしてきた身としては、何か大きな変革がこれから始まるのだな、その土台をつくったんだなということについては、先ほど意見の冒頭にも述べましたように、本当に感慨深いものがあるというように思います。

 何か個人的な感慨の話で申しわけありませんが、そういうことです。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 質の違うものになっていくのだ、また、その基礎をつくって、これからいよいよスタートということなんだろうというふうに思います。

 引き続き、もう一問、伊藤参考人にお伺いをいたします。

 このたびの制度をつくるに当たり、公明党としても、難病団体の方々に丁寧に何度もヒアリングの場をつくってまいりました。全体として、その御要望を最大限取り入れる形で我々も政府にも要望し、努力をしてきたつもりではございます。

 対象を五十六疾患から三百疾患に、また小児慢性特定疾患も五百十四疾患から六百疾患に、その対象者が全体で約八十九万人から約百六十五万人に拡大をしていく。そして、全体としては、自己負担額を引き下げをしていく方向ではございます。

 この制度設計に関しての御意見、御所見をお伺いしたいと思います。

○伊藤参考人 難病対策がこういう形で法律化を迎えるとはいっても、それで一遍に全てのことが成り立つわけではありませんし、さまざまな角度からさまざまな検討をしなきゃならないと思います。

 しかし、私どもが難病対策を新しいものにしていただきたいというお願いをし、超党派の先生方にお集まりいただいて御支援をいただいたんですが、そこでも述べてきたことは、もっともっとたくさんの難病患者がいる、みんな困っている、その方々を一つでも多く同じ難病対策に入れるためには、幾らか自分たちの負担がふえたってやむを得ない、それよりももっと多くの難病を入れていただきたいという話をさせていただきました。

 そういうことがありますので、私どもは、自己負担のことだけが問題になるのではなくて、もっと、難病の抱えている、一つは病気、病理の問題もある、さまざまな問題があるんですが、もう一つはその生活ということを考えると、難病対策だけで全てできるわけではなくて、ほかにもさまざまな制度の利用をしていかなきゃならないのですが、しかし、難病対策で治療も研究も社会的な支援も経済的な支援もというのは、かなりすごい法律だなと思うんです。

 そういうのを背景にしながら、しかし、もっともっとここから、日本の患者さん、どんな病気であってもさまざまな社会的な支援が受けられる、そういうものを日本という国がつくっていく、その大きな礎をこの難病対策がつくったわけですから。若干まだ手が届かない、五十六疾患から百三十になり、三百を対象にし、さらに五百とはいっても、そこまでいっても多分全部ではないと思います。しかし、そういう高い目標を持って進めていくことができる、その基礎をつくっていただいたということは、私ども、大変よかったというように思っております。ありがとうございました。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 次に、五十嵐参考人にお伺いをしてまいります。

 この二月、特に小児がんの現状、課題をお伺いに成育医療センターにお邪魔をさせていただきました。そのときも話題になりました、こうした小児の難病あるいはがんに関するデータがやはり研究班の一部の学者の財産になっており、それが共有化されていないということが課題だというお話を伺いました。患者のデータ登録を活用する、その基盤が整備されていないということをお伺いいたしました。

 今回の法改正では、治療研究の推進ということが盛り込まれております。その集積した成果を、適切な方法によって、調査また研究を行う者、医師、それから疾病児童またその家族その他の関係者に積極的に提供するという条文が盛り込まれております。

 やはり、研究に必要な正確な難病データの蓄積また活用が期待されますが、この点について御意見があればお伺いをしたいと思います。

○五十嵐参考人 御質問ありがとうございます。

 我が国では、小児の悪性腫瘍、これには血液の悪性腫瘍とそれから固形腫瘍がございますけれども、年間それぞれ、年によって多少違いますけれども、血液の悪性腫瘍が千百名、それから固形腫瘍が千名、新たに患者さんが出ております。

 これまで、造血器、血液の腫瘍に関しましては、日本小児血液学会等が中心になりましてオール・ジャパンの体制をつくり、そのデータ管理が一元化されております。

 しかしながら、固形腫瘍は、例えば脳腫瘍だとか、神経芽腫、これは子供の神経の細胞から発生する悪性腫瘍ですけれども、これが二番目に多くて、それからジャーミナル・セル・チューモア、胚細胞腫瘍といいますけれども、これが三つ目ぐらい。それから今度四つ目が、網膜芽腫といいまして、目の病気なんですね。ですから、固形腫瘍に関しましては、脳腫瘍は脳外科の先生がやりますし、神経芽腫は小児外科の先生が対応しますし、それから網膜芽腫に関しましては眼科の先生がそれぞれ対応するということで、それぞれの領域の専門の先生たちがそれぞれ独自のデータをつくっていた、集めていた、そういう状況にございました。

 これを、このたび、昨年、小児がん拠点病院というのが日本全国に十五カ所指定されまして、その一つに国立成育医療研究センターが選定されました。そして、さらに本年は、小児がんの中央機関として国立がんセンターと国立成育医療研究センターがあわせて指定を受けましたので、今年度からは、小児の固形腫瘍につきましても、国立成育医療研究センターに集めて、そしてこれをデータ管理していくということになりました。

 したがいまして、ようやく今年度から、我が国の小児の悪性腫瘍に関しましては、血液、固形、両方あわせて一元化してそれぞれ対応するということができるようになったということで、ようやく体制ができたということでございます。そして、これを有効に将来使うためには、やはり情報発信、あるいはさまざまな新しい治療法の紹介だとか、関係者の研修、それから国民への啓発というようなことも含めて、この小児がんの中央機関がやっていくということになると思っております。

 以上です。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 小林参考人にお伺いをしてまいります。

 私も地元の神奈川県立こども医療センターを訪問し、ここでは、病院内に横浜南学校がありまして、中で授業をしております。子供たちは、入院をして治療しながらも、非常に授業に熱心に取り組んでおります。やはり子供は、大人と違って、教育ですとか、そういうものが非常に重要になってくると思います。

 このたび、本法律の中では、小児慢性特定疾病児の自立支援事業というものが盛り込まれております。特に、教育ということは、子供の一生涯にとって非常に重要になってくると思います。教育を中心としたこの自立支援事業、これについてさらに御意見があれば承りたいと思います。

○小林参考人 ありがとうございます。

 子供にとって、成長、発達に教育は欠かせないというふうに思っております。教育だけではなくて、保育も欠かせないというふうに思っています。特に入院中の子供たちは、治療という名目のところで、そうした成長、発達に必要な働きかけの機会が非常に少なくなるということがございます。

 今先生御指摘のように、横浜の病院には、病院の中に学校が、病弱を専門にする特別支援学校が設けられております。

 しかし、子供の数が昨今減っている傾向の中で、一般病院の中で小児科病棟が減っているんですね。このため、院内学級が以前より減る傾向にあるということを一つ心配に思っているところです。子供が入院する場合には、教育や保育は必ず必要ですので、ぜひそうしたことを積極的に、お金がかかるかもしれませんけれども、取り組んでいただきたいと思います。

 こうした場合に一番よく問題に出てくるのは、この病院には、入院している子供は他県から来る、他の自治体から来るから、特別支援学校というのは県立になってくるわけですけれども、自治体がかわるわけで、その予算について、どこからお金を出すんだというようなことがよく話題になるというふうに聞きます。

 しかし、子供のことですから、地域とかいうようなことに余りこだわらずに、ぜひ日本じゅうの子供をみんなの手で育てるようにしていっていただければありがたいなというふうに思います。

○古屋(範)委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。

 皆様の御意見を参考に、これからも難病対策に全力を挙げてまいります。

 ありがとうございました。

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