第186回国会 厚生労働委員会 21号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等改正案について、お伺いをしてまいりたいと思います。

 大臣が戻られましたので、先日、五月十一日のNHK番組の中で、年金の支給開始を七十五歳に繰り下げる案に言及をされたという報道がございまして、一部国民に戸惑いが広がりました。これが、日本の年金制度は危ないのではないかという不安を再燃させるようなきっかけになってしまっては、もう元も子もないわけでございます。

 言うまでもなく、現在の年金制度の維持を前提とするのであれば、支給開始年齢を引き上げる理由はありませんし、それでもやろうというなら、私は反対でございます。

 平成十六年改革で、支給開始年齢を六十五歳からさらに引き上げなくても揺らぐことのないよう設計をされた、ここは再度確認をしておきたいと思います。

 日本人男性の平均寿命は七十九・九歳ですので、七十五歳からということになれば、平均的な日本人男性は年金によって生活できる期間が五年弱しかないということになってしまいます。

 しかし、多くの方々が勘違いをしている。田村大臣も、何も年金の支給年齢を七十五歳まで上げるということをおっしゃっているのではない。自分がいつまで働けるか状況を見ながら支給開始年齢を選ぶことは自分の意思でできる、今も七十歳までは選択できるが、これを例えば七十五歳まで選択制で広げる提案が与党から出されていて、一つの提案だと認識をしている、このようにおっしゃったわけでございます。これを額面どおりに受け取るのであれば、私たちも不安に陥る必要はない。七十五歳まで引き上げるとおっしゃったわけではない。

 ただ、国民年金の納付率というものが年金制度の信頼のバロメーターであると言われるように、大臣の御発言というのは非常に国民にとっても大きいものがございます。年金保険料の納付率を上げるための法案審議にきょうから入るというタイミングでもございました。再度、この御発言の真意を確認させていただきたいと思います。

○田村国務大臣 冒頭、きょう、参議院の本会議で、この委員会で大変皆様方に御迷惑をおかけしながら可決をいただきました医療介護総合確保推進法、この趣旨説明を私、させていただいたわけでございますが、参議院は、事前にその趣旨説明、私が読ませていただきます趣旨説明の資料を事前に配付される、そういう慣行があられます。その配付した資料の中で、私が申し上げていない文言が入っておりました。これは、プログラム法の文言が残っておったということでございまして、私、先ほど、参議院の議院運営委員会の理事会にお邪魔をいたしまして、深くおわびを申し上げてまいりました。

 また、こちらは衆議院でございますけれども、いろいろと委員会運営にも御迷惑もおかけをいたします。改めて心から深くおわびを申し上げ、あわせて、先般は、労働者派遣法の法案に関しましても、法文に関しましてミスがあったわけでございまして……(発言する者あり)おっしゃるとおり、たるんでおるわけでございます。二度とこういうことがないように、省内、徹底をしてまいりたい、このように思っております。重ねて心からおわびを申し上げる次第であります。

 そういうことで、大変御迷惑をおかけして申しわけないわけでありますけれども、今の古屋委員からの御質問でございますが、NHKの番組を見ていただいておられれば真意は伝わったというふうに思います。

 私は、六十五歳以上からの一律の引き上げ、これに関しては、国民の皆様方の理解はそうは簡単に得られないということで、難しいと思いますよというような発言をさせていただきました。その上でありますけれども、今も七十歳までは選択制で、年金というものは支給開始年齢を自分で選べるわけであります。七十歳になると、四割強、年金がふえるような制度設計になっております。ですから、それは、自分の働かれる、そういうような都合に合わされて年金は選択していただけるんですよということを申し上げた上で、七十五歳と。今七十歳でありますけれども、以前から比べると平均寿命が延びてきておりますので、御本人が選択されるという前提のもとにおいて、例えばでありますけれども、七十五歳ぐらいまで、今の七十歳までの選択制を延ばすということは検討に値するのではないかというようなお話をさせていただきました。

 もちろん、年金の規模は変わりませんから、早くもらわれれば今の水準で支給はされますし、遅くもらわれれば、一定の計算の上ででありますけれども、月々の年金が多くもらえるということでございますので、それをそれぞれが御判断するというのは、ちょうど与党自民党の方からもそういう提案がございますので、それも含めて検討してみてもいいというような話をさせていただいたわけでございまして、決して、年金が危ないから、六十五歳からを引き上げた上で、七十歳になっても六十五歳からと同じ支給額だったら、これは国民の皆さんにお約束をしていたのとは違うという話になるわけでありますが、そうではないわけでございます。

 あくまでも、選択という中において、それぞれのライフプランに応じてという中において、検討をしてみる価値はありますよというような類いのお話をさせていただいたわけでございます。

○古屋(範)委員 納付率の低下につながらないよう、特に若い方々の納付意欲、これを下げるようなことがあってはなりません。ぜひとも、その御発言の真意をこれからしっかりと伝えていただきたいというふうに思います。

 これまで納め忘れていた国民年金の保険料なんですが、過去二年間までさかのぼって納付することができる、これが、平成二十三年八月、年金確保支援法の成立による時限措置といたしまして、平成二十四年十月から二十七年九月までのこの三年間、時限措置として過去十年間までさかのぼることができるようになりました。現行の加入二十五年間に届かず年金を受けられなかった方々は、後納制度で無年金が解消できる、また、現在受給している人も、後納で加入期間をふやせば年金額をふやすことができるわけでございます。

 この制度ができましてから一年半がたつわけなんですが、この実施状況についてお伺いをしたいと思います。

○樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の後納制度、おっしゃるとおり、無年金、低年金になることを防止するといった観点から、平成二十四年十月から施行されております。平成二十四年十月から平成二十七年九月までの三年間という措置でございます。

 二十四年十月の施行からこれまでの間に、この後納制度の利用状況を申し上げますと、累計で百七万五千件の申込書を受け付けております。これはことし四月末時点でございます。それで、保険料の納付が、累計一千四十八万月分の保険料の納付というものが行われております。これはことしの三月末時点でございます。また、こうした措置によりまして、約一万五千人の方が老齢年金の受給資格期間、要は、老齢年金を受けられるように期間を確保できたということになっております。これはことしの四月二十三日の時点ということでございます。

○古屋(範)委員 やはり、十年間までさかのぼれるこの制度を導入したことにより、新たに受給権が発生した方が一万五千人ということでございます。一定の成果を上げていると考えます。時限措置でございますので、ぜひ、さらにこの制度を活用していただけるように、国民への周知徹底をお願いしたいと思っております。

 今回の法案では、過去五年間の保険料を納付することができる、その制度を創設していらっしゃいます。現行の十年間という後納制度を三年間の時限措置として、引き続き、その後に新たに五年間の後納制度を創設したその意義、そして、これを三年間の時限措置とした理由、また、本来の納付期限までに保険料を納付した方々への公平感の担保というものはどうしていくのか、この三点にわたってお伺いをしたいと思います。

○樽見政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど、この後納制度についての周知というお話がございました。

 これまでも、後納制度が利用できる全ての方に対して個別のお知らせの送付とか、あるいは新聞、ラジオ、ポスターといったようなことをやってまいりましたけれども、本年度においてもこうしたことを予定しているところでございまして、引き続きましてしっかりやっていこうと思っております。

 新たに五年間の後納制度を創設するということをこの法案で盛り込んでおりますけれども、内容といたしましては、国民年金保険料は本来、納付期限内に納付していただくということが原則で、ただ、二年の徴収時効が経過した後にも、その後で保険料を納める資力ができた場合などを想定しまして、特例的に保険料を納付できるという制度を、現在の十年間後納の期限が切れる後も設けるということでございます。

 具体的には、現行の後納制度が終了いたします平成二十七年十月から三年間に限りまして、過去五年以内の未納期間のうち、保険料の徴収権が時効によって消滅した期間について保険料の納付を可能とする、それによって無年金、低年金を回避できる道を設けるということを考えているところでございます。

 三年間の時限措置というふうにしてございますけれども、これは、そもそも社会保険の原則、事前に保険料を納めて後で給付を受けるということからいたしますと、保険料を事後に納付できる仕組みというのは、やはり社会保険の原則ということからすると特例と言わざるを得ないということでございますし、過去にも実は、昭和四十五年以来、何度かこうした同様の特例措置をやってございます。その時々でも、国会でも御議論いただきまして、いずれも三年以内の時限措置ということになってございます。そうしたことを踏まえまして、今回も、現行の後納制度も二十四年からの三年間となっていたわけでございますけれども、三年間の時限措置としているところでございます。

 また、この後納保険料については、現行制度においても、普通に納めるときに比べますと一定率の加算を行っているところでございます。おっしゃるとおり、納付期限までに保険料を納付した方々との公平性ということがございます。それから、どうせなら納付期限に納付をしていただきたいと思っております。納付期限内の納付をさらに推進するという観点から、今回も一定の加算を行い、また、現行の後納制度よりも若干高目の設定をするということを検討しているところでございます。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 やはり無年金の方を減らしていく、そのための法改正であろうかと思います。しっかりと実効性あるものにしていただきたいと思います。

 次に、受給資格期間の短縮についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 年金保険料の滞納を減らすために、納付率を上げるための数々の方策というものが今回の法案に盛り込まれております。これは、来年十月から予定されている受給資格期間短縮への対応のためでもあると考えられます。この受給資格期間の短縮を公明党もマニフェストに掲げまして、実現に向け努力をしてきた点でございます。平成二十七年の十月から、これは消費税一〇%引き上げが前提でありますけれども、これまでの年金の受給資格期間二十五年から十年へ短縮をされるということであります。この短縮の恩恵を受けるのは、加入期間が二十五年未満のために年金を受け取っていない高齢者、また、日本に住む期間が二十五年未満、これらの方々が中心であります。

 ここで改めて注意しなければいけないということは、受給資格期間を満たしているかどうかにかかわらず、二十歳から五十九歳の方々はやはり保険料を納める義務がある、これが大前提であると思います。すなわち、十年に短縮されても、十年だけ加入すればいいんだということにはならない。

 しかし、平成二十四年度新規受給権者を見ますと、実際に年金を受け取り始めた人の加入期間は、男女とも被保険者期間が四十年以上の者が最も多くなっている。やはり長いわけです。二十五年という方々も、その前後の年数よりも実際に多くなっている。

 そこで、今後、受給資格期間が十年に短縮されたことに伴って、十年だけの加入が多くなってしまうのではないかという懸念も一方であります。しかし、加入期間が十年では、受け取れる年金というのは非常に少ない。現在の基礎年金で考えると月額一万六千円ほどにしかならない。非常に低年金となります。低年金で、生活保護受給者がまたふえてしまうという懸念があります。

 そこで、この受給資格期間短縮についてはさらに周知徹底をされることが必要ですけれども、これと並行して、今回の法案に盛り込まれている納付率向上のための対策の徹底、両面必要になってくるんだろうと思います。

 年金受給資格期間の短縮、また後納延長について、いずれも私たち公明党が平成十六年から無年金、低年金者への救済措置として一貫して推進してきました。該当者に関しては、漏れのないよう申請をしてほしいと思っているところでございます。

 受給資格期間短縮についての周知徹底はどのように行われていくのか、また、どの程度の効果が見込まれるかをお伺いいたします。

○樽見政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年の八月に成立いたしました年金機能強化法で、今お話ありましたように、受給資格期間の二十五年から十年への短縮措置というものが成立したわけでございまして、これもお話ありましたが、消費税の引き上げ時期に合わせて、平成二十七年の十月から施行される予定というふうになってございます。

 これによりまして、六十五歳以上の無年金者の推計の中で、二十五年の資格期間が足りないだけの年金の加入期間を持っておられる方の割合というところから推計をいたしますと、現在、六十五歳以上の無年金者、四十二万人というふうに推計をしてございますけれども、このうち、およそ十七万人の方が年金を受給できるようになるというふうに見込んでいるところでございます。

 お話ありましたように、周知は大変大事だというふうに考えてございます。これまでも、制度改正に関するリーフレットをつくりまして幅広く配るということをやっておりますほか、後納制度の対象となるような未納期間がある方には、個別に後納というものをお勧めする中で、受給期間の短縮についても説明するといったようなことをやってきたところでございます。

 今後さらに、資格期間の短縮によって新たに受給資格が得られるということが確認できる方については、個別に年金の請求手続のお勧めということをやっていくということを考えてございますし、それから、もちろん、政府広報あるいは厚生労働省や日本年金機構のホームページも活用いたしまして、広く制度を周知するということをやっていきたいというふうに考えてございます。

 今回の後納制度の話もございますし、それから、例えば納付猶予の拡大とか、今回の法案で盛り込んでいるようなことにつきましても、成立をしていただきましたならば、しっかりと周知を図って利用をしていただき、これまで納めないという方についても、しっかり年金制度とのかかわりを持っていただくということが大事だというふうに考えておりますので、それにしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 受給資格期間の短縮で新たに十七万人の方が受給権が発生するということでございます。非常に大きなことだと思いますので、ぜひ周知徹底を再度要望しておきたいと思います。

 次に、国民年金に加入をする被用者の現状等についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 平成二十三年国民年金被保険者実態調査によりますと、保険料を納めない最大の理由は経済的な理由ということでありました。実際の所得でも、滞納者が納付者よりも所得が少ないという傾向があると伺っております。

 また、これは五月二十日に発表された国民年金保険料納付率でありますけれども、平成二十五年四月から二十六年二月まで、納付率六〇・二%ということでございます。微増だとは思いますが、やはり低い納付率にとどまっていると言わざるを得ません。

 国民年金加入者の中でも、やはり被用者が増加をしていること、また自営業者よりも被用者で滞納率が高いということも指摘をされているところであります。

 そこで、国民年金に加入をしている被用者がどのような人たちなのか、その現状、また滞納の原因、そして納付率向上対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

○樽見政府参考人 お答えいたします。

 平成二十三年の国民年金被保険者実態調査の数字でございますけれども、国民年金の第一号被保険者のうち、常用雇用労働者が七・七%、臨時またはパートの労働者が二八・三%ということでございますので、被用者ということでこの両者をまとめますと、合わせて三五・九%という数字になってございます。

 次に、国民年金保険料の納付が悪い理由ということでございますけれども、これはさまざまな要因が複合的に影響しているものというふうに考えてございますので、なかなか一概には申し上げにくいところでございますけれども、今もありましたように、国民年金被保険者実態調査の数字などを見ますと、一号被保険者の中の、いわば就業構造が変化してきている。特に臨時、パートといったような方がふえている。それから、さらに言いますと、実は無職という方もふえているというような構造の変化がある。これがやはり国民年金保険料の納付率の低迷に影響があるのではないかというふうに思っております。

 それから、景気の悪化によります低所得者の増加といったようなところも、第一号被保険者の属する世帯の総所得金額で見ますと、やはりここ数年の間に下がってきておりますので、そういうことも影響しているのではないか。

 それから、納付しない理由をこの調査で聞いているのですが、その中で、年金制度の将来が不安だというお答えもございます。そういうことで、年金制度に対する国民の皆様の信頼の低下あるいは納付意識の低下といったようなものも要因としてあるのではないかというふうに考えてございます。

 したがいまして、国民年金保険料の納付率向上方策ということになりますが、こうした年金制度に対する国民の信頼を確保するということが大事でございますし、また、未納者の属性に応じてきめ細かな対策をとっていくということが大事だというふうに考えております。

 具体的には、これも先般来、話が出ておりますけれども、公的年金制度についての皆様の御理解あるいは御関心を高めるということで、年金広報、教育を充実する、納付意識というものの向上を図っていきたいということがございます。

 それから、低所得者の方には免除という制度があります。あるいは、未納の方には納付督励をしていくといったような、こういうことを民間の事業者も使いましてしっかりと行っていくということで、これはいわゆる市場化テスト事業というふうにやっていますけれども、そうしたものも強化をしておく。

 それから、三番目といたしましては、一定期間納付をされない未納の方には強く納付を促していきたいということで、特別催告状というものを送っておりますけれども、これもさらに強力に取り組んでいきたい。

 さらに、最後になりますけれども、高所得であるにもかかわらず納められないという方については、差し押さえといったような強制徴収も強化をしていくといったような、未納の方々の状況に応じまして、いろいろな取り組みをしていくということでございます。

 今回の法案によりまして、さらに納付猶予制度対象者の拡大、あるいは保険料納付機会の拡大、先ほどのような後納制度の延長みたいなこともございます、これをやっていくということで、納めることに困難がある方についての対策をとっていくということと同時に、一方では、平成二十六年度において、所得四百万円以上で未納月数十三月以上の全ての滞納者に督促を実施するというようなこともやることとしておりますので、そうした取り組みを通じて、納付率の一層の向上というものを図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 年金の意識啓発、教育というお答えがございました。若者にとっては、年金、保険料を納めてもどうせもらえないんだからというような意識が広がってはいけないと思います。

 私たちは、消費税が八%に上がりましたけれども、死ぬまで、物を買えば消費税を納めなければいけない。しかし、年金の受給資格がなければ、基礎年金の部分も、二分の一は税金でございます。消費税を払っていながらも、一生涯、基礎年金はもらえない。そのことを考えますと、何としても受給資格を得ておくということが重要であります。若い方々にもこのところを理解していただけるように、さらに周知徹底をお願いしたいと思います。

 最後の質問になります。

 第三号被保険者問題についてお伺いをしてまいります。

 現政権は、女性の活躍促進ということを打ち出してくださって、非常にありがたいとは思っております。

 その中で、第三号被保険者の見直しですとか、あるいは配偶者控除についても見直しの議論が出ております。女性の就労を促そう、労働力人口の減少にも歯どめをかけたい、そういう意図があるんだと思います。

 この第三号の見直しの議論は、過去十年以上にわたって、繰り返して議論がなされてまいりました。これまでその制度の見直しには至っておりませんけれども、多くの識者、研究者の中では、女性の就労を促し、しかも、可能な限り男性と同等の就労、処遇機会を実現していけば、抜本的に解消し得るという意見でございます。

 男性と同等の就労、処遇機会の実現というのはそもそも難しいのが現状です。少しでもそこに近づいていくための対策を練らなければいけない。多く働くと手取りが減るような制度はやはり見直すべきかと思います。

 実際、この第三号被保険者制度の見直しに関して、短時間労働者への厚生年金適用拡大ということが前提とされていて、平成二十四年八月に成立をいたしました年金機能強化法によりまして、短時間労働者への厚生年金の適用拡大が盛り込まれております。週三十時間以上勤務から、週二十時間以上に拡大になったわけであります。

 昨日も、NHKの番組でこの件について報道しておりました。ある大手のファミリーレストランチェーンでは、この厚生年金の適用拡大で非常に社会保険料の負担が増大をする、だから、短時間のパート労働者をふやそうという方針で臨もうとしたわけですね。

 ところが、やろうとすると、やはり勤務上さまざまな弊害が出てきて、どうせ社会保険料の負担がふえるんだったら、この際、能力ある女性にはしっかりと働いてもらおうというふうに発想を逆にして、働いて厚生年金の対象となるのであれば、もうしっかりと店長までやっていただくような方向に女性の能力を生かしていただこう、そういうふうに転換をした企業があるということでございました。しかし、まだ、こういう企業は少ないというふうに感じております。

 そこで、短時間労働者の雇用管理の改善等改正案では、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取り扱いの禁止、この対象が拡大されることになって、パート労働を取り巻く環境も整備されつつある。

 いずれにしても、この第三号問題は、置かれた立場で賛否両論であります。女性の就労状況、能力開発、雇用の問題等々、非常に大きな問題であります。この丁寧な議論が必要になってくるのではないかと思います。これに対しての御意見を伺いたいと思います。

○佐藤副大臣 古屋委員の御質問にお答えいたします。

 御指摘のとおり、経済と社会保障の好循環を実現するためにも、今、政権として、女性の活躍を促進して、男性も女性も、また、さらには若者も高齢者も、それぞれの能力を十二分に発揮できる環境を整備することというのは大変重要な課題である、このように考えております。

 まず、委員が質問の中で御指摘された女性の働く環境整備の観点からは、もう御存じのとおり、育児休業や育児のための短時間勤務制度を盛り込んだ育児・介護休業法の周知徹底、これは平成二十四年七月から完全施行になっておりますので、これをしっかりと企業の皆さんにも周知徹底するということ。

 さらには、次世代育成支援対策推進法に基づく働き方の見直しの取り組み促進についてもしっかりとやってまいりたいと思っておりますし、さらに、女性がその能力を発揮して活躍することを支援するため、ポジティブアクションに取り組む企業に対する助成、支援にも引き続き取り組んでまいりたいと思います。

 従来より、女性の就労の促進を図る上で社会保障が問題になるのは、就労時間が一定以上となる働き方でなければ被用者保険が適用されず、被用者にふさわしい保障を欠くという点。あるいは、被用者保険の適用基準に関連して、特定の働き方が労使ともに保険料負担を免れる構造となっていて、働き方の選択にゆがみを生じさせているということが理由として考えられておりました。

 この点に関して、委員が御質問の中でも言われておりましたけれども、社会保障・税一体改革によりまして、平成二十八年十月に、まずは約二十五万人を対象に被用者保険の適用拡大が行われることが決まっておりまして、さらに、その後三年以内に適用範囲について再検討して必要な見直しを行うことが検討規定として明記されているわけであります。

 そのことを踏まえて、今回、本年実施する財政検証におきましても、週二十時間以上就労する者全てを適用とした場合等を仮定したオプション試算を行うこととしておりまして、大体この対象が約四百万人弱いらっしゃるんですけれども、そういう試算をして、これらの結果も検討材料として、適用対象をさらに拡大するための検討を進めてまいりたいと思っております。

 特に、御質問のありました第三号被保険者制度につきましては、女性の社会進出が進んだ影響もございまして、かつて、平成七年がピークで千二百二十万人いらっしゃったんですけれども、直近の平成二十四年では九百六十万人と、数、割合ともに減少傾向にございます。

 先ほど申し上げました財政検証のオプション試算において、適用拡大によって、第三号被保険者の人数や平均的な第三号被保険者期間の推移などがどういう影響を受けていくのかということなども示すことによりまして、第三号被保険者のあり方についても、この財政検証の結果を材料として、しっかりと丁寧に議論をしてまいりたい、そのように考えております。

○古屋(範)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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