第186回国会 本会議 13号

○古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について、安倍総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 この医療・介護総合推進法案は、団塊の世代が全て七十五歳以上になる二〇二五年に向けて、高齢化のさらなる進展で増大する医療・介護給付費の抑制を図る一方、在宅医療・介護サービスを手厚くし、高齢になっても住みなれた地域で必要な支援を受けられる、地域包括ケアシステムを構築することが重要な柱となっております。

 高齢化の進展の中で、医療、介護の改革は喫緊の課題であります。医療、介護を一体的に捉え、両者の連携により国民の生活を支える仕組みを構築することが必要であり、そのための内容を一括した法律案として提出されたことは、極めて意義があることと考えます。

 しかし、一方で、懸念や不安の声もあるのは事実です。

 課題は山積していますが、そうした声に真摯に耳を傾け、国民に安心してもらえるよう、政府には、より丁寧な説明が求められています。

 初めに、本法案の意義について、安倍総理にお伺いいたします。

 次に、地域包括ケアシステムについてお伺いいたします。

 先月二十五日、特別養護老人ホーム、いわゆる特養への入居待ちの高齢者が昨年の秋時点で約五十二万四千人に上ることが、厚生労働省の調査結果で明らかになりました。四年前に実施された調査よりも十万人もふえたとのことです。

 待機者のうち、入居の必要性が高いとされる、在宅で要介護三以上の高齢者は、約十五万三千人に及びました。深刻な実態を考えると、医療と介護が一体となって、施設から在宅へとの流れを進めなくてはなりません。

 こうした観点から、地域包括ケアシステムの構築は、政治の重大な責務でもあります。特に認知症の高齢者は、現在四百万人を超え、さらにふえることが予想されています。その対策は待ったなしです。

 公明党は、地域包括ケアシステムの構築に向けて、昨年十二月、党内に地域包括ケアシステム推進本部を立ち上げ、全国約三千人の地方議員と連携して、それぞれの地域の実情に即した地域包括ケアの姿を模索しながら、関係者との意見交換を行っています。

 また、移動本部も実施し、介護予防や、医療と介護の連携を築いてきた地域へも出向き、モデルとなる事例を学び、発信しています。

 公明党は、今後、強力なネットワーク力を生かし、党として調査で得た課題や対応策などを取りまとめてまいります。

 一方、政府においては、地域包括ケアシステムに先進的に取り組んでいる事例の調査を行い、その結果をまとめたと聞いています。まず、これを有効活用すべきと考えます。

 安倍総理に、本法案の柱である地域包括ケアシステム構築への御決意をお伺いいたします。

 地域における効率的な医療提供体制の確保も大きな課題です。

 現在、病床数に偏りがある背景として、病気になった直後に手厚く治療する急性期向けのベッド数は多いものの、病状が安定した後、回復期の患者向けベッドが少ないことが挙げられます。

 そのために、本法案では、地域のニーズに合わせて医療の提供体制を整備する権限を都道府県に付与し、都道府県が、域内のベッドの必要量などを示す、地域医療構想を策定することとなっています。それを踏まえて、都道府県は、病院関係者も交えた協議会を開催し、各病院のベッド数などを決めることとしています。

 重症者向けのベッドが多い現状を改め、病状が落ちついた患者向けのベッドやリハビリ施設をふやす、そうなれば、施設から在宅へという大きな流れができると期待されます。

 その際、医療機関の理解や同意を得ることが大変に重要になると思われます。そのために、都道府県は、医療機関に対して丁寧な説明が必要です。

 今後、政府としても、医療機関への理解と協力をどのように進めようと考えているのか、また、在宅医療、訪問看護等、在宅医療・介護連携をどう図っていこうとされているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 地域の実情に合った医療体制を構築するため、四月の消費税増税分で生まれる財源などから、都道府県が使える約九百億円の基金が創設されたことは、率直に評価したいと思います。この基金を活用し、療養型ベッドなど施設整備や、地域で働く医師や看護師育成などスタッフ確保に使えると想定しています。

 都道府県には、地域の実情や必要な事業を分析した上で、効果的な基金活用が求められます。

 国としては、基金活用を都道府県に任せるのではなく、しっかりとバックアップしていただきたいと、強く要望いたします。

 あわせて、公的医療機関だけでなく、真に必要な地域医療に幅広く活用すべきと考えますが、厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

 地域包括ケアシステムの構築に向け、高齢者に寄り添った制度にすることが何より大切と考えます。

 本法案では、介護の保険料について、低所得者の負担軽減措置を講ずる旨を規定していますが、厚生労働大臣に、低所得者の保険料軽減の拡充の意義について伺います。

 また、介護の必要度が比較的低い要支援一、二の介護保険サービスの一部を、全国一律から市町村事業に移行することとしています。

 この見直し案に対し、各地の要支援者から、事業の移行により地域格差が生じるのではないか、今までと同じようなサービスが受けられるかどうか不安だといった内容の声が上がっています。つまり、市町村事業に移行することで、要支援者の切り捨てにつながりかねないとの懸念が広がっていると言えます。

 政府の説明では、基本的に現行制度を念頭に置いた基準を検討として、現行のサービスを維持することとしています。

 そこで、市町村事業に移行することでサービスの低下はないのか、また、地域格差の解消をどのように担保するのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 地域包括ケアシステムの構築の実現には、医師や看護師など医療人材とともに、介護人材の確保が喫緊の課題です。それができなければ、地域包括ケアシステムは、絵に描いた餅になるおそれがあります。

 特に介護職員について言えば、二〇一二年度の推計値で百四十九万人いるとされていますが、二〇二五年には、最大で、百万人増の二百四十九万人が必要とされています。

 今後、労働人口が徐々に減る状況の中で、介護人材の確保は簡単ではありません。

 これまでも、公明党の主張で、介護職員処遇改善交付金などが創設され、一定の処遇改善が行われてきたのは事実です。しかし、給与やキャリアアップなどの点で、さらなる改善が必要です。

 繰り返しになりますが、人材確保、処遇改善は、地域包括ケアシステムを構築する上で重要な鍵を握っています。

 最後に、人材の確保と処遇の改善に向けた総理の御所見をお伺いし、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 古屋範子議員にお答えいたします。

 本法案の意義についてのお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、救急医療などの急性期の医療から、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することが必要です。

 このため、今回の法案では、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備することとしており、医療、介護の双方のサービスを対象とする新たな財政支援制度を設けるなどの取り組みを行うこととしております。

 改革の実施に当たっては、国民の皆様にその意義や効果を丁寧に説明しながら進めてまいります。

 地域包括ケアシステムについてお尋ねがありました。

 医療や介護が必要な状態になっても、できるだけ住みなれた地域や自宅で生活を続け、安心して自分らしく生きたいというのが国民のニーズであり、それにしっかりと応えていかなければならないと考えています。

 このため、身近な地域で、安心して住み続けることができる住まいを確保し、医療や介護サービスはもとより、介護予防など、自立に向けたさまざまな支援を受けられることが必要です。

 地域包括ケアシステムの推進に党を挙げて取り組まれている御党ともよく連携しながら、市町村の取り組みの参考となるような事例を提供していくなど、地域包括ケアシステムを全国に広げていくため、しっかり取り組んでまいります。

 介護人材の確保と処遇改善についてお尋ねがありました。

 地域包括ケアシステムを構築するためには、介護の人材確保や処遇改善は重要な課題と考えています。

 介護人材については、自公政権において、平成二十一年度の介護報酬改定や補正予算において、処遇改善のための取り組みを行ってきました。さらに、キャリアアップの支援等による人材の定着と資質の向上などの取り組みも進めてきたところです。

 今後とも、社会保障・税一体改革の中で、必要な財源を確保し、さらなる処遇改善に取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

○国務大臣(田村憲久君) 古屋議員からは、四問ほど御質問をいただきました。

 まず、医療機関の理解と協力、在宅医療・介護の連携についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、病床機能報告制度の創設や地域医療構想の策定を定めるとともに、都道府県に協議の場を設置し、医療機関相互で協議を行うなど医療機関の理解と協力を得ながら、医療機能の分化、連携に取り組むことといたしております。

 また、在宅医療・介護の連携に関しては、医療、介護を総合的に確保するための基本的な方針に即して都道府県や市町村が実施計画を作成するとともに、市町村が行う地域支援事業に在宅医療・介護連携の推進に係る事業を位置づけることとしており、これらの取り組みを通じて、在宅医療・介護の連携を進めてまいります。

 続きまして、基金の活用についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、国が定める医療と介護の総合確保方針において、公正性や透明性の確保を初めとした基本的な事項を定めること、都道府県が基金に係る計画を作成するときは、あらかじめ、関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるように努めることを定めております。

 さらに、交付要綱において、官民に公平に配分することや、官民を問わない幅広い地域の関係者から意見を聴取することなどを交付の条件として示すこととしており、これらの措置により、地域で適切に活用されるようにしたいと考えております。

 次に、介護保険料の低所得者軽減についてのお尋ねがございました。

 今後さらに高齢化が進展することに伴い、介護費用の増加と保険料負担水準の上昇は避けられないと見込まれております。

 こうした中、所得の低い方々の保険料を引き続き負担可能な水準にする必要がありますが、現在の制度で保険料を軽減した場合、その軽減分は低所得者以外の被保険者が負担することとなるため、その負担増には限界があるところであります。

 このため、今回の法案では、公費を投入して低所得者の保険料を軽減する新たな仕組みを制度化することとしております。

 最後に、予防給付の地域支援事業への移行についてのお尋ねがございました。

 予防給付の見直しについては、市町村を中心とした支え合いの体制づくりを推進し、訪問介護等の既存のサービスから、住民が担い手として参加する取り組みまで、さまざまなニーズに対応した多様な主体による多様なサービスの提供を目指しております。

 その中では、地域包括支援センター等が利用者の意向や状態像等を踏まえて行うケアマネジメントにより、適切なサービス利用が推進されます。

 今回の見直し後の市町村による事業の財源構成は、予防給付と同様とするとともに、一号被保険者の所得水準を勘案した財政調整の仕組みを予防給付と同様に設けるなど、市町村財政を支援します。

 また、生活支援サービスの基盤整備への財政支援、国によるガイドラインの策定など、市町村の取り組みを最大限支援してまいります。

 以上でございます。(拍手)

 ありがとうございました。

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