第187回国会 厚生労働委員会 2号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 まず、塩崎大臣また副大臣、政務官、御就任おめでとうございます。

 本日は、災害医療、それから医薬品の関連の質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 その質問に入る前に、このたびの大阪・泉南アスベスト判決につきまして、塩崎大臣の受けとめをお伺いいたします。

 大阪・泉南地域の元工場労働者からの石綿被害をめぐる泉南アスベスト訴訟で、最高裁から、国の賠償責任を認める初の判決が出されました。今回の判決のポイント、第一陣に係る最高裁判決は、昭和三十三年以降、局所排気装置の設置を義務づけなかったことが国家賠償法一条一項の適用上違法とされる余地はあるとして、この点の審理を尽くすため、大阪高裁に差し戻し。また、第二陣に係る最高裁判決は、昭和三十三年から四十六年までの間、局所排気装置の設置を義務づけなかったことを違法としたという判決でございます。

 このアスベストは、吸い込むと肺に刺さり、がん、中皮腫などを引き起こす、発症までに数十年の潜伏期間がある、静かな時限爆弾と呼ばれております。

 私の地元横須賀も造船の町ですので、このアスベストを原因とする患者が多くおりました。その専門医もございます。二〇〇五年のアスベスト健康被害の議論のときも、私も当委員会で議論をした記憶がございます。

 これまで公明党としても、原告団から何度もヒアリングを行ってまいりました。当時、アスベストの撚糸工場、紡績工場で、もうもうたる粉じんの中で仕事をしていた。朝、それが舞いおりて、窓をあけて、それを外に掃き出してから仕事をしていたというような、リアルな体験も伺いました。

 この原告団また弁護団とも意見を重ね、政府に対しまして、被害者救済を最優先にすべきだと速やかな解決を求めてまいりました。先日も、公明党アスベスト対策本部として、塩崎大臣に、一日も早い全面解決を申し入れたところでございます。

 二〇〇六年以来八年がたち、十四名の原告が亡くなられています。現在、原告被害者の方々も高齢化が進み、また病状も悪化をしている。命あるうちの全面解決、これは被害者全員の願いだと思います。

 この最高裁判決によって、国の過去の不作為が違法だと判断をされた意味合いは非常に大きいと考えます。塩崎大臣も、国の責任が認められたことは重く受けとめる、判決に従って対応したい、このような談話をされています。

 ぜひ、この被害者の方々の声に耳を傾けていただきたい。働く方々の生命また健康を守るのは国の仕事であります。時間をかけずに、一日も早く全面解決をしていくことを望みますけれども、これについて御見解をお伺いいたします。

○塩崎国務大臣 古屋先生から今御指摘がございましたように、今回の判決によって、国の不作為の責任というものが認められたことでありまして、これは本当に極めて重たい事実だというふうに受けとめております。そしてまた、判決で国の責任が認められた原告の方々に対しては、まことに申しわけないという思いであり、また、これまで本当に御苦労されて裁判を続け、あるいは途中で他界された方々もおられるわけでありますので、本当に頭の下がる思いだということでございます。

 今、全面解決というお話でございました。早期解決ということについては、私も全く同じ思いでおるわけであります。

 第一陣の訴訟というのが大阪高裁に差し戻しになっております。そこで審理をすることになっておりますが、最高裁の今回の判決内容を踏まえてどのようなことができるのか、関係省庁とも協議をしながら今考えているところでございまして、できるだけ早期にという今の先生の御指摘については、できる限り実現をしてまいりたいというふうに思っております。

○古屋(範)委員 今大臣からも、最高裁の判決を踏まえて、できる限り早く、関係省庁とも協議をしながら進めたい、そのような御答弁がございました。ぜひとも一日も早い解決をしていただきたい、このことを再度申し述べておきたいと思います。

 次に、災害医療についてお伺いをしてまいります。

 このところ、広島の土砂災害、それから御嶽山の噴火、また台風十八号、十九号と、大きな災害が相次いでおります。この災害に対する医療、災害医療の充実にぜひとも力を入れていただきたいと考えております。

 阪神・淡路大震災を契機といたしまして、災害拠点病院の整備、あるいはDMAT、災害派遣医療チーム等の体制整備、また広域航空搬送計画の構築、また広域災害救急医療に関する情報システムの整備などが行われてまいりました。また、厚労省では、災害医療等のあり方に関する検討会を設置して報告書を取りまとめるなど、これまでも対応されてきたと承知をしております。

 災害医療は、政府全体でぜひとも取り組んでいただきたい重要課題であると思っております。

 内閣府及び厚生労働省を中心とする関係省庁横断的な災害医療合同検討チームが設置をされると聞いております。ぜひこれを一日も早く設置していただきたいと思っております。

 災害時に必要な医療が十分かつ適切に提供される実効性ある体制の整備について、お伺いをいたします。

○橋本大臣政務官 古屋議員から災害医療について御質問をいただきました。

 御指摘をいただきましたとおり、災害時におきましては、短時間で多数の傷病者が発生することが想定をされます。したがいまして、そうした場合に備えて、平時から必要な医療が十分かつ適切に提供される体制を整備するということは大変重要でございます。特に近年、あるいは最近と言ってもいいと思いますが、集中豪雨あるいは噴火の災害もございました。ますます重要になってくるものというふうに認識をしております。

 このため、厚生労働省といたしましては、先ほど議員からも御指摘をいただきましたけれども、災害拠点病院の整備、これは現在で六百七十六病院の指定をしております。また、災害派遣医療チームであるDMAT等の体制整備につきまして、現在で千三百二十三チームの養成を行っておりまして、一旦緩急あらばということで待機をしていただいている。また、医療機関の被災状況や患者受け入れ可否などの情報を共有するための広域災害救急医療情報システムの整備などを行ってきております。これも四十七都道府県に用意がされております。

 引き続き、厚生労働省といたしましては、DMATの養成を着実に行いチーム数の増加を図るなど、災害時に必要な医療が十分かつ適切に提供されるように、災害医療体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 随時、さまざまな災害医療の体制整備に取り組んでこられたということでございます。

 災害医療におけるトリアージの問題についてお伺いしてまいりたいと思います。

 トリアージとは、災害発生時に搬送能力を超えた多数の傷病者が同時に発生をした場合に、その傷病者の緊急度また重症度に応じて適切な処置、搬送を行うために傷病者の治療優先順位を決めることであります。

 具体的には、このタグをつけて、色別になっておりますけれども、ここを切り離して、本人にこれをつけて搬送をするというシステムでございます。緊急度に応じて、赤、それから黄、緑、黒ということで四種類に分類をされておりまして、優先順位に従って病院に搬送されていくということでございます。

 このトリアージなんですが、今まで、阪神・淡路大震災でトリアージの重要性が認識をされました。このときにタグの様式が標準化をされたということであります。ただ、実際、例えば東日本大震災などですと、多くの方が溺死をされていて、なかなかトリアージをするという段階には至らなかった。また、今回の広島の土砂災害でも、窒息死をされていて、救急医療を行う、そういう状況でもなかったということも伺っております。

 最もこのトリアージのタグがたくさん使用されましたのが、JR福知山線の脱線事故のときであります。平成十七年でございました。現場で約三百枚のトリアージタグが使われたそうであります。

 このような形でトリアージが現在も行われているわけなんですが、先日、御嶽山の救助活動の際にも、御嶽山から腕に添え木をして自力で歩いて下山してこられた方は緑色のタグをされているのをテレビで拝見いたしました。

 噴煙の上がる過酷な現場で、数十名にも及ぶトリアージを行った医療、消防関係の方に、私も心から敬意を表したいと思っております。

 まず、このトリアージの意義についてのお考えをお伺いしたいと思います。

○二川政府参考人 災害時のトリアージの意義についてでございますけれども、これまでも、委員御指摘のとおり、大規模な災害におきましてトリアージが実施されているところでございます。そういった観点から、災害拠点病院の指定要件に、ただいま御指摘がありましたトリアージタグの保有をすることということを要件に定めておりますし、災害派遣医療チーム、いわゆるDMATでございますけれども、そのDMATの研修にもトリアージ訓練というものを取り入れているところでございます。

 そういったことで、大規模事故や災害時には、処置や搬送が必要な傷病者の数に対し、医療従事者等が不足する場合が想定されるわけでございまして、より多くの命を救うためにトリアージを実施することの意義は大変大きいものだというふうに考えているところでございます。

○古屋(範)委員 このトリアージ、非常に重要なシステムなんですが、その課題について質問していきたいと思います。

 今、日本弁護士連合会、日弁連の災害復興支援委員会の永井幸寿前委員長、それから、東京大学医学部附属病院災害医療マネジメント部の中尾博之先生から、このトリアージの課題について御意見を伺う機会がありました。

 東大の中尾先生は、トリアージは、治療の優先順位を決めて、死者、被害を最小限にすることが目的だが、医療従事者の精神的負担が大きい、このように指摘をされています。

 さらに、永井弁護士は、トリアージの判定は一〇%から三〇%程度誤りが発生をすると。実際に、福知山線脱線事故で兵庫医大の行った調査によりますと、八一・六%が正しい判断であったということが当時の読売新聞にも出ております。ですので、やはり一定数の過誤が生じるということであります。トリアージに関する法的整備が必要だという御主張でございます。

 トリアージの法的整備の必要性について、私もこれは認識をするところでございます。

 平成二十五年、地域における疾病並びに医療に関する研究調査というものが行われました。また、二〇一三年一月、第十八回日本集団災害医学会総会・学術集会で行われたアンケート調査がございます。

 この調査は、日本集団災害医学会総会の出席者であって、災害医療に関しては最も見識の高い医療集団の調査というふうに考えられます。

 災害現場に先着した場合にトリアージ活動を開始するかという問いに対して、九二・四%が実施をすると回答しています。看護師、救急救命士は実施をするという意向を示しています。看護師、救急救命士が黒判定をすることに問題はないかという問いに対して、七九・九%は問題がないということで、医療従事者はトリアージを肯定している。

 しかし、看護師また救急救命士の判定に家族が過誤を主張した場合、当事者は守られるかという問いに対しまして、派遣組織の責任で守られている三一・一%、法律で守られる二二・七%。しかし、全く守られていないというのが一五・五%、医師の責任で守られる八・八%というふうになっていまして、二割は法律で、三割は組織で守られるというふうに答えています。

 それから、過誤があると主張された場合、刑事事件として逮捕や起訴される場合があると思いますかという問いに対して、可能性は低いが四二・九%、しかし、可能性は高いという方が三四・九%、間違いなくそうなるという方も二・一%いらっしゃいます。

 このようなアンケート結果からもわかるように、現在、幸いなことに訴訟事件というのは起こされていないんですが、そういう可能性を考え、また、トリアージをしっかり普及、定着させていく意味でも、一旦、刑事事件として起訴され、または損害賠償請求が提起される、災害医療から撤退をする、あるいは萎縮をしてしまうような危険性がある、また、患者の権利意識が年々高まり、そのリスクは高くなっていると考えられます。また、今後、広域災害の発生が予想されて、トリアージを含む災害医療の重要性が増加をするということになりますと、法的位置づけがなく、医療従事者の精神的負担が大きい。これについては、法的整備が必要なのではないかと私は考えます。

 これについてのお考えをお伺いしたいと思います。

○橋本大臣政務官 古屋議員から、トリアージに関する法整備について御質問をいただきました。

 御指摘をいただきましたように、特に法律関係者の方々から、そうした法整備を求める御意見がある、あるいはそういうお持ちの方々がおられるということは、私たちも承知をしているところでございます。

 ただ、現時点におきましては、災害時の現場において適切にトリアージは実施をされていると考えております。また、災害医療や救急医療の関係学会等からも、要望という形では、法整備の要望は出されていないというのが現時点であります。

 ただ、御指摘をいただきましたことは、トリアージを行う医療関係者等の責任について、貴重な問題提起を受けたというふうに受けとめております。

 私自身も、過去、議員として、医療関係者の過誤についての法整備について質疑をしたこともございますので、問題意識としては共有をしているつもりでございますが、今後、関係学会等から必要に応じ御意見を伺うなど、動向を注視してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 私も、さらに立法の課題を整理しながら取り組んでいきたいというふうに考えております。

 次に、バイオ後続品とジェネリック医薬品の違いについてお伺いをしてまいりたいと思います。

 本年五月なんですが、がん研有明病院の畠清彦血液腫瘍科部長より、バイオ後続品の安全性、効果についてという講演をいただきました。そこで、バイオ後続品とジェネリック医薬品の違い、安全性の担保、効果の差、抗がん剤治療の課題などについてもわかりやすくお話をいただきました。

 バイオ医薬品は、生命維持のための人体に自然に備わっている仕組みを活用して、体内で生成されるたんぱく質に倣ってつくられている。バイオ医薬品の登場によりまして、多くの重篤な疾患で、従来の医薬品では得られなかった治療効果が得られるようになってきました。また、比較的新しい分野の医薬品ではありますけれども、バイオ医薬品は既に日本でも多くの患者に使用されております。

 少し専門的な話になるんですが、このバイオ医薬品というのは、分子量が大きくて、その構造も複雑である。化学合成でつくられる従来の低分子の医薬品とは大きく違っています。専門家の言葉をかりると、部品またその構造の複雑さは、自転車と自動車ぐらいの差がある。最近では、さらに自転車とジェット機ぐらいの落差があるのだということでございました。

 製造においても、化学合成でつくられる従来の医薬品は、同じ方法に従うことで正確に同じものをつくっていくジェネリックになる。バイオ医薬品では、多くのプロセスを厳格な手順に従って精製しなければならない。製造工程のわずかな変化によって最終産物が変わってしまうということでございました。

 医薬品市場で特許が切れると、競合他社がジェネリックを製造してくる。バイオ医薬品でも同じことが起きてまいります。その複雑さから、先行の製剤と同じものを複製するということが難しいバイオ医薬品の世界では、それを後発品と呼ばず、バイオ後続品というふうに区別をしております。

 バイオ後続品の開発では、複数の機能部位から構成されるといった複雑な構造、生物活性、不安定性、免疫原性等の品質特性から、化学合成医薬品とは異なって、先行バイオ医薬品との有効成分の同一性を実証することが困難な場合が少なくない。基本的に、化学合成医薬品の後発品と同様のアプローチは適用できないというふうに考えられる。このように、厚生労働省も平成二十一年、バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針というところで通知を出されています。

 ジェネリックとバイオ後続品、この呼称の違い、取り扱いについて一線を画していく必要があるのではないか、このように思いますけれども、いかがでしょうか。

○神田政府参考人 バイオ後続品につきましては、国内で既に承認されたバイオテクノロジー応用医薬品と同等、同質の有効性等を有するものとして、異なる製造販売業者が開発した医薬品ということでございます。

 化学合成品でございます後発品は、先ほど先生おっしゃいましたように分子が小さく単純であるため、先発品と同じ構造のものを製造することができますけれども、バイオ後続品は、一般に分子構造が巨大かつ複雑であるため、先行バイオ医薬品と同じ立体構造のものを製造することが困難という性格の違いがございます。

 このため、審査におきましても、後発品の承認審査では、一定の品質を担保するための安定性のデータ、先発品と後発品を人に投与して時間の経過とともに有効成分が血液中にどの程度含まれるかなどを比較したデータに基づき同等性を評価しておりますけれども、バイオ後続品の承認審査におきましては、同じ立体構造のものを製造することができませんので、今申し上げたような後発品におきます同等性の評価に加えまして、実際に治験を実施しまして、有効性等について先行バイオ医薬品との比較による評価を行っているところでございます。

○古屋(範)委員 そのように、バイオ後続品、ジェネリック、性質が違っているということでございます。ですので、バイオ後続品をジェネリック医薬品使用促進のこの枠組みの中で扱っていくことの妥当性についてお伺いをしたいと思っております。

 政府は、平成三十年三月までに後発医薬品数量シェアを六〇%まで持っていくという目標を掲げていらっしゃいます。そのためにもさまざまな促進策を講じていらっしゃる。これは非常に重要なことであります。そこにバイオ後続品も含まれているということになっています。

 そこで、ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を同一量含んで同一経路から投与する製剤で、効能、効果、用法、用量が原則的に同一である、化学的に同一であることを伝えて、医療関係者の不安を払拭することに厚労省も努めていらっしゃいます。

 これは低分子のジェネリックであれば言えることであって、バイオ後続品については、なかなかこれは難しいというふうに考えます。現場で混乱が起きてしまうようでは、患者の信頼も失ってしまう。後発品の数量シェア目標については、やはりバイオ後続品については、いきなりこの六〇%目標に入れてしまうというのはいささか乱暴な議論なのではないかというふうに思います。

 バイオ後続品時代の幕あけを前に、患者の安全また安心を最優先に考えるのであれば、ジェネリックとバイオ後続品、この呼称の違いのとおり、取り扱いについても一線を画していく必要がある。この六〇%の枠組みから外すべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○永岡副大臣 古屋委員にお答えいたします。

 先生御指摘のとおり、バイオ後続品というものは、国内で既に承認されておりますバイオテクノロジー応用医薬品と同等、同質の有効性などを有することが治験によって確認されております医薬品でございます。

 全て全く同じではないというのも、今、古屋委員の御指摘のとおりでございますけれども、このバイオ後続品につきましては、先発品に比べまして格段に開発費用が少ない、その結果として価格が安いということから、医療費の効率化の観点から、ジェネリック医薬品と同様に使用の促進が重要と考えております。

 しかしながら、臨床上の必要性に応じまして、医師の判断のもとで適切に使用するべきであるというふうに考えております。

○古屋(範)委員 ぜひバイオ後続品については再考をお願いしたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、iPS細胞技術の普及促進についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 再生医療を推進するための法律、さきの国会で、再生医療推進法が昨年施行されました。残りの二つの法律、改正薬事法また再生医療安全確保法、この十一月に施行される予定となっております。世界の最先端を進む再生医療、これが安全かつ速やかに普及する法的環境も整いつつあるというところでございます。

 このiPS細胞研究については、大きく二つの流れがあると思っております。

 一つは再生医療ということで、実際にこれは理化学研究所、高橋政代プロジェクトリーダーのところで、もう既に臨床研究が着手をされたということでございます。私も実際に網膜の移植の細胞を見てまいりました。コーヒー色のようなものをしていて、これを網膜に移植していく。これは非常に今世界じゅうで注目を集めております。

 また、もう一つが、難病の治療薬の研究開発であります。六月には、慶応大学で、脊髄損傷の新しい治療薬の臨床実験を始めると発表しております。こうした脊髄損傷になる患者は、日本でも年間約五千人おります。リハビリ以外に有効な治療法がない。薬による治療が大変期待をされております。また、ALS、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、アルツハイマー、このような病気でも同様な取り組みが進んでいるということでございます。

 iPS細胞により病態をつくり、それが創薬につながっていく。山中教授も、このiPS細胞の真価は創薬への貢献だというふうにおっしゃっています。薬が主役だけれども、その開発をiPS細胞が裏で支えている、そうなるのが私のビジョンだ、創薬をもっと強力に推進したいというふうに語っていらっしゃいます。

 大臣、このiPS細胞技術の普及にぜひとも力を入れていっていただきたいと思います。これについて、最後、御所見をお伺いします。

○塩崎国務大臣 今先生御指摘ありましたように、再生医療等安全性確保法というのが十一月に施行になるわけであります。薬事法もセットで改正をされました。そういうことで、細胞培養加工の外部委託化等によって、再生医療の普及推進の環境整備が図られたということになります。

 また、再生医療の実現化ハイウェイ構想に基づきまして、文科省や経産省とも連携をして、iPS細胞を用いた臨床研究や創薬研究等に対して積極的な研究費助成を行ってまいりました。

 こうした取り組みによって、本年九月に初めて、今先生もごらんになったというiPSの細胞を用いた、患者への初めての移植手術があったわけでありまして、大きな成果を上げていると言っていいのではないかなというふうに思っております。

 再生医療の実用化につきましては、日本再興戦略などでも位置づけられておりまして、これは重要課題ということで、政府を挙げてやっていく予定でございますし、研究開発への助成あるいは体制整備等の取り組みを通じて、再生医療の実用化が円滑に進むように政府としてしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

Follow me!