第187回国会 消費者問題に関する特別委員会 3号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 まず、有村大臣、また副大臣、政務官、御就任おめでとうございます。安全、安心な国民生活を守る、このことに力を発揮されるよう期待をしております。

 本日は、かねてより私が問題意識を持っておりました、物づくりに革新をもたらす3Dプリンターについて質問してまいりますので、よろしくお願いいたします。

 政府が本年から成長戦略の一環として取り組む戦略的イノベーション創造プログラム、この個別課題の中に、3Dプリンター等の製造技術が入っております。安倍政権はこの支援に力を入れていくということが見てとれます。

 この3Dプリンター、技術革新やアイデアをもとに社会を活性化するものとして、経済効果、成果が期待をされておりまして、実際、家電量販店などでも今大量に売られております。普及をしてきております。

 この3Dプリンターの技術、我が国に起こすイノベーションの鍵の一つである、私はこのように考えております。この3Dプリンター、御存じかと思いますけれども、3Dの設計データを入力しますと、印刷するような感覚で複雑な立体物が自動で作製できるということです。これを使えば、今までのような型が要らなくなる、製作コストの削減、開発期間の短縮が見込める、物づくりに革命的な変化をもたらすのではないかということが期待をされております。

 この技術が進化をし、普及をしていきますと、先進国の物づくりのあり方、またコストが大きく変わってきまして、人件費の安い新興国に製造拠点を移すという動きが今までありましたが、その発想そのものがもしかしたら覆されるのではないかという可能性もあります。

 試作作品の造形などのほか、これは医療分野でもかなり期待をされておりまして、例えば、短時間で人工骨ができる、あるいは補聴器も、各個人の耳にフィットしたものができる、あるいはマウスピース、歯科治療のかぶせ物も同様に、このようなものも、歯科技師によって何度もつくり直したり時間を要したり、そういうことがなくなり、患者の負担も少なくなるのではないかと言われております。しかし、日本では医療分野での規制が多く、3Dプリンターの医療活用など、重要分野でおくれているのではないかと指摘もございます。

 初めに、イノベーションの成功の鍵を握る3Dプリンターについて、大臣の御所見を伺いたいと思います。

○有村国務大臣 お答えいたします。

 3Dプリンター技術に関するイノベーション、技術革新については直接の担当ではないと委員御案内のとおりですが、お問い合わせをいただきましたので、コメントをさせていただきます。

 やはり、3Dプリンターはすごいと思います。委員御指摘のように、金型をつくる必要がなくなる、そして、納期、工期が大幅に短縮できる、フィット感も高まる、そして、金型の技術やそういう工場を持たないところの新規参入組のハードルも低くなるという意味では、世界を変えていくというふうに私も痛感をしています。今後、物づくりにおいても重要な技術であり、国際競争が激しくなるというふうに私も予見をいたします。

 しかし、どのような製品や技術が発展するにせよ、消費者行政の観点からは、やはり、利便性の向上、技術の発展ということを進めるに当たっては、消費者の安全、安心に常に配慮していただくことが必要だということも同時に言えるかなというふうに思っております。

 以上です。

○古屋(範)委員 私もそのとおりだと思います。やはり、これが技術革新に大きく役立つといういわばプラス面と、それから、国民生活に与える負の側面というものも、インターネットなども経験をしてきて私たちもわかるように、両面あるということを考えていかなければいけないんだろうと思います。

 先日、この3Dプリンターを使いまして拳銃を製造する、そして所持をしていたという男性が逮捕されまして、実刑判決が出されました。新技術を悪用したという事例であります。こういうことが起きなければいいなと懸念をしておりましたが、実際に起きてしまいました。裁判長が、簡単に銃を製造できることを実証し、インターネットで製造過程などを公開し、模倣されるおそれも高い悪質な犯行、危険性を指摘しています。

 さらに、犯罪に悪用される懸念は銃に限りません。例えば、カード情報を不正に読み取るスキミングマシンがあります。これを3Dプリンターで製造して、中国の工場で大量生産、二十万円前後で販売するロシアのサイトが本年三月に発見をされております。3Dプリンター自体に罪はないわけで、使う側の問題、拳銃の設計図をネットにアップをしたという行為は取り締まるべきだ、刑事罰の対象にすべきだとの声もございます。

 拳銃の製造、所持は現行法で禁じられております。これまで、銃を輸入させないなど水際作戦もできましたけれども、設計図がデータとしてアップをされてしまう、これが遮断できずに、3Dプリンターで簡単に危険物を製造することができるという危険性も否めません。この男性も、米国のサイトから設計図をダウンロードしています。

 ペンシルベニア州のフィラデルフィアでは、この六月、3Dプリンターを使った銃製造を禁じる条例を施行したと報じられております。インターネット・ホットラインセンターでは、危険ドラッグ、3D設計図データなどの違法情報の削除をする運用を始められていると聞いておりますけれども、警察庁にこの取り締まりの状況についてお伺いしたいと思います。

○島根政府参考人 お答えいたします。

 インターネット上の違法・有害情報については、インターネット・ホットラインセンターに、一般のインターネット利用者等からの通報の受理やサイト管理者等への削除要請等を委託しております。

 インターネット上の3Dプリンターによる銃砲の製造が可能な設計図データにつきましては、本年八月一日、インターネット・ホットラインセンターの取り扱う情報の範囲を定めておりますホットライン運用ガイドラインが改定され、違法行為を助長等するおそれのある情報として有害情報に追加されました。これによりまして、該当する情報が同センターに通報された場合には、警察への通報やサイト管理者等に対する削除要請ができることとなったところであります。

 警察といたしましては、関係機関等との連携を図り、引き続き、インターネット・ホットラインセンターの効果的な運用を推進することによりまして、3Dプリンターによる銃砲の製造図データ、その他の違法・有害情報の排除に向けた取り組みを強力に進めてまいる所存であります。

○古屋(範)委員 インターネット・ホットラインセンターでの取り締まりを強化していくということでございました。

 私も同センターを訪問したことがありますが、職員は、少ない人数で大量の違法・有害情報を丸一日見ているという、非常に過酷な勤務に従事していらっしゃいます。ぜひ、ここの拡充も必要ではないかなというふうに感じております。引き続き、取り締まりの強化に取り組んでいただきたいと思います。

 次に、経済産業省にお伺いしたいと思っております。

 こうしたインターネット上の違法行為を自動的に防ぐ技術というものがそもそも組み込まれていれば、こうした懸念が少なくなるのではないかというふうに思います。

 コピー機また複合機ににせ札などを作成させない仕組みが組み込まれているのと同様に、3Dプリンターにも危険なデータの出力を抑えるというような機能が組み込まれているということが一つには重要ではないかというふうに考えております。

 ある企業では、危険物やまた著作権侵害のおそれがある物体を3Dプリンターで製造できないようにする技術を開発中だという発表もございます。

 これも含めまして、今後、次世代の3Dプリンターの研究開発に向けての取り組みをお伺いしたいと思います。

○谷政府参考人 お答えさせていただきます。

 銃器などの危険物製造やキャラクター製品の模倣などの目的で3Dプリンターを操作しようとしたとき、当該対象がブラックリスト対象製品か否かを判断し、これに合致する場合、製造指示を受け付けないプログラムを大日本印刷株式会社が開発していることは承知しております。

 現状におきまして本技術開発を直接支援しているものではございませんが、さらに実用化に向けた取り組みが進められることを期待しておるところでございます。

 また、物づくり産業の競争力強化に向けた3Dプリンター開発につきましては、経済産業省では、今年度から、次世代型産業用3Dプリンター技術や材料の開発を行い、現在の十倍の高速度、現在の五倍の高精度化及び材料の多様化を実現する、三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラムを開始させていただいております。

 今後、本プログラムを着実に推進させていただきたいと存じております。

○古屋(範)委員 材料も今のと違って、またさまざまなものが使えるようになる可能性があるとも聞いております。ぜひ、この分野の技術革新の支援に強力に取り組んでいただきたいと思います。

 銃の製造に限らず、3Dプリンターを使うこうした犯罪が今後も出てくるかもしれません。今、家電量販店などでは、値段も非常に安くて、六万円から十万円程度で販売をされております。実は我が家にもあるのですが、夫が家庭用品などを趣味でつくったりしております。

 悪用されるケースというものも視野に入れていかなければいけないと思います。例えば、硬貨の偽造ですとかブランドロゴの装飾品、またアニメのキャラクターのフィギュア、こういうものは非常につくりやすいのではないかと思います。商標法、それから著作権法、意匠法違反など、知的財産権の侵害になる可能性があります。新しい技術が生む課題というのは山積をしているというふうに思われます。

 これからこの点は中長期を見据えて議論をしていかなければいけないんですが、こうしたブランド品のコピーなどが、3Dプリンターの使用で、知的財産権の侵害被害が二〇一八年までに世界で年間一千億ドルに及ぶという米国の調査会社の予測もございます。このところも今後議論をしていかなければならないというふうに思っております。

 経産省では、3Dプリンターの経済波及効果を、二〇二〇年に二十一・八兆円に達すると予測をしています。こうした大きな可能性が見込まれる3Dプリンター、これは、犯罪があったからといって過度の規制は市場創出の機会を奪いかねない、そうならないように、安心して利用できる仕組みづくりを普及させなければならないというふうに思っております。

 危険物の製造回避、知的財産保護、こうしたことに配慮しつつ、しっかりと3Dプリンターの分野の技術革新を推し進めていかなければならない、このように思います。

 この点に関しまして、国民、消費者を守る立場から、消費者庁のお考えを最後にお伺いいたします。

○越智大臣政務官 お答えいたします。

 古屋議員から、3Dプリンターの開発普及が進んでいく中においての課題、そして消費者庁の取り組みについて御質問いただきました。

 3Dプリンターは、議員御指摘のとおり、拳銃製造やスキミング用の機械の製造等に用いられたことがございまして、犯罪等に悪用されることを防ぐことは大変重要だというふうに考えております。

 消費者の安全、安心を確保するためにも、違法な使用を防ぐための関係省庁の取り組みが重要でありまして、消費者庁としても、必要に応じて可能な協力を全面的にしてまいりたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

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