第166回国会  決算行政監視委員会 第2号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、規制改革、また、市場化テストの推進を中心にお伺いをしてまいります。

 初めに、歳出歳入一体改革に関しまして尾身大臣にお伺いをいたします。

 人口減少社会を迎えた日本にとりまして、財政赤字を減らし、また、持続的な経済の成長を維持するためには、新しい経済また社会制度をつくり上げる必要があります。そのために、規制改革の推進は日本の社会にとって極めて重要であると考えております。さらに、財政健全化につきましては、国、地方の無駄や非効率を省くために、抜本的な行政改革を強力に推進し、効率的な政府を実現することが重要であると考えております。

 公明党は、歳出改革に当たりまして、徹底した事業そのものの仕分け、見直しということが大事であると主張してまいりました。そこで、従来型ではない、行政の仕事を見直す新たな仕組みを構築していく必要があると考えます。

 財政健全化に向けて基本方針二〇〇六に具体的な工程表が示されましたが、それはとても生易しいものではございません。また、財務省は先月二十七日、二〇一五年末までに政府が保有する百四十兆円規模の資産を削減する国の資産・債務改革に関する工程表を示されました。これも、資産・債務改革に向けて改革を着実に進めていこうとするものと認識をいたしております。

 初めに、尾身大臣に、今回の工程表についてのそのねらい、資産・債務改革への御決意をお伺いいたします。

○尾身国務大臣 資産・債務改革につきましては、財務省といたしまして、行政改革推進法や基本方針二〇〇六を踏まえまして、平成二十七年度末までに、財政融資資金貸付金の圧縮や国有財産の売却、有効活用によりまして、国の資産を約百四十兆円規模で圧縮することとしております。

 既に、十九年度予算編成におきまして、財政融資資金貸付金残高を約二十三兆円圧縮するほか、国有財産につきましても、未利用国有地等の処分に係る歳入二千百六十五億円及び日本アルコール産業株式会社の株式の売却収入に係る歳入百四十億円を計上し、合計二千三百億円余りの計上をしているわけでございまして、この改革に向けて着実に第一歩を踏み出したところでございます。

 このような取り組みにつきまして、先月の二十七日に、財務大臣といたしまして、改革の今後の道筋を明らかにする観点から、工程表として取りまとめて公表いたしました。

 資産・債務改革は、簡素で効率的な政府を実現する観点から極めて重要な課題であると認識しておりまして、引き続き、経済財政諮問会議等とも緊密に連携しつつ、民間の知見も十分に活用しながら、この工程表に沿って、財務大臣として責任を持ってしっかりと改革を進めていきたいと考えております。

○古屋(範)委員 債務改革における御決意をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 続きまして、市場化テストについてお伺いをしてまいります。

 行政の仕事を見直す新たな仕組みとして、市場化テストがございます。市場化テストは、これまで国や自治体など官が担ってきた公共サービス全般につきまして、官と民が対等な立場で競争入札を実施し、どちらが担うのかを決める制度のこと、官民競争入札とも呼ばれております。

 官の業務を民間に開放する仕組みは、自治体の施設の管理運営を民間に委託する指定管理者制度、あるいは、民間の資金、ノウハウで公共施設を建設するPFIとは異なり、行政業務のほとんど全般を対象にしているため、民間が担える業務の範囲が一気に広がるのが市場化テストであると思います。すなわち、小泉前総理の、民でできるものは民へ、この基本姿勢の具体化されたものの一つと言えると思います。

 昨年九月の安倍総理の所信の中で、「公共サービス改革法に基づく市場化テストの積極的な実施により、官業を広く民間に開放し、民間活力を最大限活用します。」と述べられております。

 まず、この市場化テストの目的、意義について大田大臣にお伺いいたします。

○大田国務大臣 今、古屋先生御指摘のように、政府が責任を持って担うべき業務であっても、その事業の実施自体は、官が独占するのではなくて、民の創意工夫を生かした方がよい事業がございます。そういう事業につきまして、官と民のどちらがよりすぐれたサービスをより効率的に提供できるかということを判定するのが市場化テストです。官民競争入札もしくは民間競争入札によって、官と民のどちらがいいか、その担い手をチェックするものが市場化テストです。

 これは、単なる民間委託とは違いまして、官が落札した場合は官の方が民よりすぐれているということの証明にもなりますので、官の仕事全体のサービスの向上にもつながります。つまり、利用者からとってよりよい行政サービスを提供し、なおかつ、簡素で効率的な政府を目指すというもの、この二つを目的にしております。日本では、公共サービス改革法に基づいて実施しております。

○古屋(範)委員 今大臣お答えくださいましたように、やはり、公共サービスの質の向上ですとか、また公共サービスの効率化、そしてもう一つは、民間のビジネスチャンスの拡大にも資するものであるというふうに理解をいたしております。

 市場化テストの導入につきまして公明党は、二〇〇四年十二月、当時の行政改革担当大臣に対しまして、行政の透明化や民間活力の活用などの観点から積極的に推進をすべきと申し入れを行い、さらに、制度の本格導入を定めた公共サービス改革法の成立も強く推進をしてまいりました。

 政府は、市場化テストの導入に当たりまして、公共サービスを民間にゆだねられるかどうかを試すモデル事業、二〇〇五年から、ハローワークの一部業務、社会保険庁関連業務、また刑務所等関連など、三分野八業務に実施をされています。

 その実績の検証がまとめられまして、国民年金の収納事業では二年間の通算コストが半減になるなど、市場化テスト導入目的のコスト削減と、また、サービスの質向上で大きな成果が出たことが明らかとなってまいりました。

 このモデル事業の成果につきまして、もう少し詳しく御説明をいただきたいと存じます。

○中藤政府参考人 お答えいたします。

 モデル事業につきましては、今御指摘のように、平成十七年度以降、三分野で行っております。

 やや具体的に成果を申しますと、例えば社会保険関連業務について見ますと、国民年金保険料の滞納者に対する納付の督励業務を実施する国民年金保険収納事業におきましては、納付月数等に係るサービスの質、要求水準もおおむね達成されておりますし、経費につきましても、他の事務所に比べまして、今御指摘のように、おおむね半減程度ということで下回っている。さらに、厚生年金保険等の未適用事業所に対する適用促進事業等においても、所定の成果が上がっております。そのほか、年金電話センターの事業につきましても、やはり結果がよいということで出ております。

 また、ハローワーク関連で申しますと、キャリア交流プラザ事業等もございまして、例えばサービスの質の面で、求職者のニーズに応じて平日の開業時間を延長するなど、そういったいわゆる民の工夫というのも取り入れられております。

 昨年、法律が施行され、いわば今年度から本格施行ということでございますが、こうしたモデル事業におきます経験、知見等も活用し、良質かつ低廉な公共サービスの実現に努めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 モデル事業において、そうした事業の目的の達成あるいは経費の削減がなされているということでございました。

 このモデル事業、着実に成果を示しているわけでございますが、今後、深刻な財政悪化、また急速な人口減少を考えますと、国、地方自治体の業務、さらにさらに見直しが必要なんだろうというふうに考えます。そして、行政改革のさらなる推進が必要であり、市場化テストの対象業務、この拡大も急がれると考えます。

 しかしながら、各省庁、依然まだまだ消極的であると言われておりまして、対象業務の拡大は大変困難な状況にあると思われます。そこで、対象業務の拡大、また地方自治体への普及等、今後の市場化テストの展開についてのお考えをお示しいただきたいと思います。

○中藤政府参考人 お答えいたします。

 このサービスにつきまして市場を拡大していくということは、大変重要な課題と考えております。その際には、国のみならず、今委員御指摘のように、地方公共団体の取り組みを促していくこともあわせて必要だろうと考えております。このため、この公共サービス改革法では、対象とする事業につきまして公共サービス改革基本方針の中で定めておりますが、少なくとも毎年一度は見直して、対象を広げていくということで取り組んでまいりたいと思います。

 さらに、こうした際には、官民競争入札等監理委員会等にも御議論をお願いし、さらには、民間の方々あるいは地方公共団体の方々からの要望等も取り入れて進めてまいることとしております。

 いずれにいたしましても、公共サービスの改革、この法の趣旨等をしっかり根づいていかせることが大事と考えておりますので、しっかりと取り組んでまいりたい。

○古屋(範)委員 毎年見直しをしつつ拡大をしていかれるということでございます。しっかりと、地方へ、また他種業務へのさらなる拡大をしていただくことが重要かと考えます。

 先日、この四月六日の経済財政諮問会議におきまして、民間議員よりハローワークの無料職業紹介事業への市場化テスト導入への提案があり、安倍総理も、導入に向け、厚労大臣にも具体的に考えてほしいと具体策の検討を指示をしたと新聞報道で伝えられております。この場で提案をされましたハローワークでの市場化テストの導入の提案につきまして、その詳細をお伺いいたしたいと思います。

○中藤政府参考人 お答えいたします。

 このハローワークにつきましては、従来から官民競争入札等委員会、経済財政諮問会議でも議論がなされてきたところでございます。それから、先週四月六日の経済財政諮問会議におきましてもさらに議論が深まったところでございまして、今委員御指摘の点について検討を進めるようにということでございます。

 民間議員提案につきましては、現在十九ある都内のハローワーク、その職業紹介業務について、一部ですね、数カ所、そして、そういった際には従来のネットワークとのしっかりとした連携等を担保し、そういった意味で市場化テストの導入を検討したらいかがかという御提案がなされました。それを踏まえて今後さらに検討が進むものと承知しております。

○古屋(範)委員 今、民間議員よりの提案の内容の御説明がございました。

 このハローワークへの市場化テストの導入に関しましては、これまでもさまざまな議論が行われております。昨年十一月十日に行われました公共サービス改革小委員会でも今回と同様な意見が出されており、それに対しまして厚生労働省は、都市部のハローワークの一部が実施する職業紹介事業を対象とすることについては、ILO第八十八号条約では、国の指揮監督のもとで公務員が従事する全国的体系の職業安定組織を設けることが義務づけられており、同条約を批准している我が国としては、これを民間委託することは不可能である、また、ハローワーク付属施設を対象とすることにつきましても、他のハローワークとの全国的ネットワークを構成し、ILO条約上の職業安定組織であることから、市場化テストの対象とすることはできないという主張をされています。

 このILO第八十八号条約、この第二条には、「職業安定組織は、国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される。」とございます。また、同第九条では、「職業安定組織の職員は、分限及び勤務条件について、政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係であり、且つ、当該組織上の必要による場合を除く外、身分の安定を保障される公務員でなければならない。」とございます。
 また、昨年十月二十七日、ILO事務局の労働基準局長より、「民間事業者の成長を理由に、ILO第八十八号条約に規定するセーフティーネットとしての全国ネットワークの公共職業安定機関を民間委託してしまうこと、全国的体系の一部でも民間委託することはあってはならない。」との見解が示されております。

 また、昨日、厚生労働省よりちょうだいいたしました資料にも、この市場化テスト、民間委託への取り組みは、ハローワーク事業の民間委託は、欧米先進諸国と同様、一部につき実施をしている。ハローワーク事業の市場化テストは、欧米先進国では確認されていないが、我が国では、人材銀行、キャリア交流プラザ、求人開拓事業につき実施済みである。また、ILO条約との関係で、ILO条約は、一般の条約と同様、各国に一次的解釈権があるが、他方、ILOに設置された監視機構が各国内での労使の申し立てに対する実質的な準司法的機能を有するという特殊性を持つということから、ILO条約違反に係る申し立てなどが容易に予想される政策については避けるべきだ。それから、ハローワーク事業の包括的民間委託の問題点として、公平、公正性の確保、また、職業紹介、雇用保険、雇用対策の有機的一体性の確保ということを掲げていらっしゃるわけでございます。

 一方で、四月九日付の毎日新聞にはこのようにございます。ハローワークの市場化テスト導入、厚生労働省はまだ抵抗を続けている。この十年間、公共職業紹介の民間開放を拒否してきた。この十年間とは何か。企業が雇用、債務、設備の三つの過剰を抱えてリストラに取り組まざるを得ない時代だった。正規社員が大幅に削減され、新卒者は就職氷河期に苦しみ、失業者は高い水準で推移した。流動化した就職市場に対応するために、公共職業紹介所にも新たな取り組みが要請されていた。そして、結果として、リストラに遭った人々は、フリーター、アルバイト、人材派遣や契約社員など不安定な仕事につかざるを得なくなった。雇用情勢が悪化する中で、ハローワークが懸命に悪化を食いとめようとしている印象はなかったというような厳しい論調もあるわけでございます。

 我が国が直面しておりますこうした労働力の減少の時代にありまして、また少子社会にありまして、この雇用問題、最重要課題であるというふうに認識をいたしております。この若年層の雇用対策、また年長フリーター対策、高齢者、女性の再雇用、これは、我が国が全力を傾注して取り組まなければいけないテーマだろうと思っております。

 そのために、官の側も緊張感を保ちながら、より効率的、創造的な雇用対策を講じていくため、やはり何らかの民間の活力の導入というものは必要ではないかと思うのは私一人ではないと思っております。ハローワークの事業がこうした内外の論議にさらされていくこと、これは、サービスの提供を受ける側にとっても非常にプラスになるのではないかというふうに考えております。

 市場化テストに対しまして、厚労省だけではなく、既得権益を持つ官庁、また労働組合の強い抵抗を受けているのが現状であります。こうした抵抗の克服に加えて、またさまざまな課題が山積をいたしておりますが、その対応が不可欠であります。

 そのためにまず、外部評価の仕組みを確立すること。この市場化テスト法では、官業に対するコストや質を公平かつ適正に審査、評価できる仕組みを設けることとなっておりますが、まだその仕組みが確立をされておりません。また、対象事業の選定、これまで対象事業は民間提案を幅広く受けて選定をしてきていますが、それに加えて、公共サービスの質の向上や効率化など、どの程度寄与できるか等の検証に基づく選定が必要であります。そして、公平性の担保という公共サービスの提供のあり方と、効率性を追求する民間企業の論理との整合性をどのように考慮していく必要があるのかの検討が必要であると思っております。

 これらの課題に対しましてどのような対応を考えていらっしゃるか、お伺いいたします。

○中藤政府参考人 お答えいたします。

 市場化テストの実施に当たりまして、外部評価を含めたこの評価あるいは実施状況の点検というのは、これは非常に大切な課題でございます。

 したがいまして、対象事業の選定ですとか実施終了時における事業の評価、そこでどう透明性、中立性、公平性を保っていくかということでございますが、この点につきましては、第三者機関たる官民競争入札等監理委員会がその状況について関与することとなっておりますし、また、サービスの提供が終わった際には、各行政機関の長から内閣総理大臣への報告、さらには委員会への報告、それを踏まえた上での事業の継続、あるいは場合によっては廃止といった仕組みを考えております。

 さらに、二点目の、効率性をいかに確保していくかということでございますが、この効率性につきましては、安かろう悪かろうではこれは当然困りますので、まず、サービスの質の向上と経費の削減を図る、こういった観点から、官民競争入札等監理委員会におきましても、適切な入札参加資格の設定ですとか求める質の明確化、さらには契約の締結解除、あるいは国による監督と、法律上さまざまな措置が定められておりますので、それがしっかり担保されるよう待望しているところでございます。

○古屋(範)委員 しっかりとした検証に基づく推進というものをよろしくお願いいたしたいということを要望しておきます。

 最後の質問になりますけれども、この市場化テストにつきましてるる述べてまいりました。私は、この市場化テストを導入する以前の問題として、現在提供されている公共サービスは本当に行政が行うべきかどうかといった範囲の検討も必要であると考えております。

 私たち公明党は、かねてより事業仕分けということを提言しておりまして、この市場化テスト法また行政改革推進法の中で事業仕分けが盛り込まれました。そこで、今後は、国や地方自治体が行っている公共サービス全般につきまして、何をなすべきか、どの公共サービスを提供すべきかという行政の範囲の見直しについて、行政が直接こうしたサービスを行う必要があるのかどうかという事業仕分けをきちんとルール化していくことが必要なんだろうと考えます。

 この点につきまして大田大臣に御所見をお伺いいたします。

○大田国務大臣 国、地方の事業を全部棚卸しして仕分けするというのは、利用者からとって、行政サービスをよりよくするという意味でも、財政の無駄を省くという意味でも大変重要だと考えております。

 公共サービス改革法も、この仕分けの趣旨を十分に踏まえたものになっております。まず、政府の事業を、官民競争入札等の対象とする事業と廃止の対象とするべき業務に分けるとなっております。それで、官民競争入札等の対象になるものについては、官が担うのか民が担うのかを選定するとなっております。この選定に当たりましては、民間事業者や地方自治体の意見を聞いて、官民競争入札等監理委員会で調査審議するとなっております。

 このような枠組みで公共サービスの不断の見直しを行って仕分けをするというこの市場化テストは、先生がおっしゃる仕分けの非常に重要なツールになると思いますので、これからも、先生御指摘の趣旨がより生きるように、担当大臣としても精力的に取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 行政改革の重要なツールである市場化テスト、さらなる推進をお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

Follow me!