第166回国会  予算委員会第一分科会 第1号

○古屋(範)分科員 本日は、在日米軍の再編を促進するためのいわゆる再編交付金について、久間防衛大臣にお伺いをしてまいります。

 近年、我が国を取り巻く安全保障環境は、北朝鮮問題を初めといたしまして、竹島の領有権問題、また中国を含む排他的経済水域問題等に見られるように、極めて厳しい状況にあります。粘り強い外交交渉を前提としつつも、やはり日米安保体制の枠組みもさらに重要性を増すものと考えております。そして、それに伴って、米軍基地及び自衛隊施設の重要性が増していくことは明らかであります。

 私の地元横須賀市には、国の要請として自衛隊及び米軍基地が存在をしております。一方で、それらの存在によってさまざまな問題が発生していることも事実ですが、これらの諸問題はコミュニケーションを通じて解決をしていかなければいけないだろう、私自身もそのために尽力をしていきたいと考えております。揺るぎない日米関係の安定は、アジア、ひいては世界全体の平和への貢献となってまいります。

 久間大臣の所信の中で、「このような安全保障環境において、日米安全保障体制及びそれを中核とする日米同盟は、我が国の防衛のみならず、地域の平和と安定、さらには国際的な安全保障環境の改善のために、重要な役割を果たしております。」と述べられ、またさらに、在日米軍の再編は、日米安全保障体制を一層実効性のあるものにしていく上で極めて重要であるほか、基地を有する地元の負担軽減のための絶好の機会である、これを円滑に、早期に実現していくことが極めて重要と述べられていらっしゃいます。

 今回、在日米軍再編に関する特別措置法案が提出をされ、来年度予算案の中に初めて、日本の安全に大いに貢献している自治体に対しましてこれを評価しようと、再編交付金の初年度分五十一億円が計上されております。

 そこで、初めに、この米軍再編特措法案を提出する必要性について、大臣の御所見をお伺いいたします。

○久間国務大臣 やはり法律をきちんとつくって、それに基づいて交付するといいますか、あるいは実行していく、そういう政府の姿勢を示す意味でもそれは非常にいいことだと思いますし、そして、この再編は一年、二年でできるわけじゃございませんで、かなり長期的にかかるわけであります。

 そのときに、仮に政府がかわったとしても、地元に約束したことはきちっと実行していくということを法律で定めておくことの方が、私はその地方自治体にとっても大変いいことじゃないかと思いまして、これは、SACOのときは実は予算だけでやったわけでありますけれども、それだけだったら、正直言って、政権がかわってやめたといった場合には、あるいは予算が足らなくなってやめたと言われたら、打ち切られてしまうということだってあり得るわけでございますので、やはりそういうものじゃないんじゃないかと思いまして、それが一つであります。

 それともう一つは、いわゆる今度のグアムへの移転のときに、JBICの資金を使おうとしますときに、これは後進国を対象とした法律になっていますから、業務の内容が対象になっておりませんので、それもあわせてやったらどうかということで、それも取り込んで再編の法案の中に入れたわけであります。

○古屋(範)分科員 今、大臣からもございましたように、政府がかわっても、地元の基地を抱える自治体にとって、法律で担保されている、これが非常に重要ということになってくると思っております。この法案、米軍再編による負担を受け入れた自治体、まあ、沖縄に基地が集中しているということでございますけれども、その自治体の期待にこたえるものとなることを大いに私も期待をしているところでございます。

 次に、この再編交付金の趣旨及び交付の仕組みについて御説明をいただきたいと思います。また、どのような判断基準でその対象自治体を選定していくのか、これについてもお伺いいたします。

○大古政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの再編交付金につきましては、米軍再編によりまして、住民生活の安定に影響、具体的には負担ということになりますけれども、これが生じる場合におきまして、その負担をみずから受け入れる地元市町村の我が国の平和と安全への貢献に国としてこたえる、このことによりまして、米軍再編を円滑かつ確実に実施するということを目的とするものでございます。

 具体的な交付の関係でございますけれども、これにつきましては、今回の米軍再編により住民生活の安定に影響が生ずる市町村であって、その当該市町村におきまして、住民生活の利便性向上等につながる事業を行うことが米軍再編の円滑かつ確実な実施に資するということが必要と認める場合におきまして、防衛大臣が指定するということで考えているところでございます。

○古屋(範)分科員 その地元の貢献に対して、国として支援をするということでございます。

 私も横須賀に住んでおりまして、市民の一人であるわけなんですが、現在あるキティーホーク、通常艦は廃艦となるということでございます。そのほかに原子力空母しかないというような現実がございます。また、行動範囲にしても、通常艦と原子力空母では物すごく大きな差があるということも伺っております。

 その中で、市民感情といたしましても、今反対の署名運動なども起きていることも事実でございますが、地元の住民はこの米軍基地に勤める方も非常に多いわけであります。また、日米安保の上から迎えざるを得ない、非常にそのところは複雑な感情がやはり交錯をしているということではないかと思っております。しかし、原子力という名のつくものが市に来るということになりますと、絶対に安全の確保、保ってほしい、安心、安全な町づくりに国としても最大寄与してほしい、これは市民全員が希望しているところだというふうに考えております。

 この在日米軍横須賀基地への原子力空母配備、この再編事業と位置づけていただいているというふうに私自身も認識をしておりますが、この横須賀市を再編交付金の対象としていただくことが決定したということでよろしいかどうか、再度確認をさせていただきたいと思います。

○大古政府参考人 再編交付金につきましては、昨年の五月一日に日米間で了承されたいわゆる米軍再編事業、これにかかわる基地につきまして、まず一義的には交付金の対象になるわけでございます。

 ただ、これは法律上、この米軍再編にかかわる基地ということにつきましては、運用の態様の変更等があるわけでございますが、このような変更が、航空機を保有する部隊の編成または配置の変更である場合にあっては、当該航空機を搭載し、当該部隊と一体として行動する艦船の部隊の編成または配置の変更を含むというふうにされております。

 それで、こういう条文の趣旨からいたしますと、具体的には、横須賀海軍施設を寄港地とする空母の原子力空母への交代についても、この法案に基づく措置の対象にはなるというふうに考えているところでございます。

 ただ、他方、具体的な交付金の交付対象市町村につきましては、この法案が成立した後に、法令の規定に基づきまして、その時点の状況を踏まえて適切に判断されるということでございますので、現時点で、個別具体的な市町村名については、交付金の対象としては、この場では答弁できないということで御理解いただきたいと思います。

○古屋(範)分科員 個別の市町村名は答えられないということではございますけれども、この横須賀市、旧海軍があり、そことともに発展をしてきた町でもございます。誕生いたしましたのが一九〇七年の二月十五日ということで、本年、百周年を迎えました。その歴史を見ますと、江戸幕府の直轄地としまして、またその後は、軍港都市として非常に苦労してきたということが言えるかと思います。現在では、造船業などもやはり斜陽となりまして、その後、今、横須賀リサーチパークというのがありまして、ここはITの最先端の企業の研究所などが集積をいたしておりまして、産学官の協同によるさまざまな最先端の研究開発が行われるなど、新たな活路をそこに見出そうと頑張っているというところでございます。

 本来は、国民一人一人、また全国の市町村がひとしく担うべきところ、この安全保障につきまして、やはり横須賀市は、米軍基地及び自衛隊施設等を受け入れている自治体の市民として、物心両面で非常に大きな負担を背負っていると言うことができると思います。

 第二次世界大戦後、米軍基地また自衛隊基地が存在する中で、横須賀基地がアメリカの空母の海外母港となって、もはや三十四年もたっております。私も中に入ったことがございます。空母というのはもう巨大なものでありまして、ビルが海に浮かんでいるといいますか、そのような巨大なものでございます。現在の市長の苦渋の決断によって、来年の夏には原子力空母が初めて配備になるわけであります。今日まで、市民が一体となって日本の平和と安全に大きく貢献をしてきたということをぜひともおわかりいただきたいというふうに思っております。

 大臣、この横須賀市の、歴史的にもそうですが、現在に至るまで、この貢献についての御感想をぜひともお伺いしたいと思います。

○久間国務大臣 横須賀市は、本当にこれまでも軍港として発展しましたが、その後、戦後も、海上自衛隊の基地としてあるいはまた米海軍の母港として機能してまいりました。その間において、プラスの面もあったかもしれませんけれども、また、市当局の苦労もたくさんあったんじゃないかと思っております。しかしながら、その辺が一体となって非常にうまく機能している、そしてまた町もすみ分けがうまくできていて、自衛隊と米海軍とが上手にセパレートされている、そういう意味でもすばらしい発展を遂げておりますから、私は、これはやはり市当局を初めとする市民の皆さん方の協力があればこそだと思って、大変感謝しているところでございます。

 今おっしゃられましたように、キティーホークから今度ジョージ・ワシントンにかわりますけれども、どうしてもやはり、ここに強固な米海軍のプレゼンスがあるということが、我が国並びにアジア太平洋地域における平和と安定に非常に大きく貢献しておりますので、これはやはりこれから先も必要だと思っております。

 そういう中で、苦渋の決断をして米原子力空母ジョージ・ワシントンへの転換を受け入れていただいたということは、私はそういう点では非常に感謝申し上げる次第でございますので、先生からもよろしくまた皆さん方にお伝えいただきたいと思います。

○古屋(範)分科員 横須賀市、今、公明党の市会議員は七名おります。最大会派ではありませんが、やはり大きな会派でございまして、私も地方議員とは一つ一つ連携をとりながら今日まで参りまして、ぜひともこの横須賀市の、大臣がおっしゃいましたように、今までの日本の安全保障に対する貢献、そういったものを十分に評価をしていただき、交付金につきましてもぜひとも配慮していただきたいというふうに思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、具体的に、交付金に関する基本的な考え方について御説明をいただきたいと思います。

 負担に応じた額、これに関しましてどのように判断をしていかれるのか、具体的にどうすれば交付金がいただけるのか。また、米軍再編の実施に向けた進捗状況によって交付をしていくという御説明でございますが、具体的にどのようなイメージで進んでいくのか。また、交付期間が原則十年ということでございます。この十年間の時限立法にされた理由についてお伺いをいたします。

○大古政府参考人 まず交付金の算定のところのお話でございますが、これについては、米軍再編により住民生活の安定に影響が生じる程度ということでございまして、この点については、今後、具体的基準等については検討していきたいと思っているところでございます。

 それから、四段階云々ということなんですけれども、これにつきましては、交付金の交付につきましては、再編が実施された場合の交付の上限額といたしまして、再編の実施に向けた措置の進捗状況において交付額を段階的に見直す、こういう制度にしているところでございます。

 具体的な進捗状況の各段階として、これはあくまでも検討の一例でございますけれども、一段階目として、当該市町村が再編の実施を受け入れた段階、二段階目として、環境影響評価に着手した段階、三段階目として、施設整備工事に着手した段階、それから再編が実施された段階、最後の四段階目というところでございますが、これは一例として考えられると思っております。

 ただ、具体的な進捗の各段階等につきましては政令等を整備していく中で明確にしたいと考えておりまして、これは、一例として今の四段階を示しておりますけれども、現段階では確定しているものではないということで御理解いただきたいと思います。

 それから、なぜ十年間の時限措置という御質問でございますが、これについては、昨年五月一日に日米間で合意されたいわゆるロードマップというのがございますけれども、これで各施設についての時期的なめどを書いているところでございます。

 この中で、例えば普天間飛行場代替施設は二〇一四年の建設完了とかとございます。その他、岩国飛行場への空母艦載機の移駐も二〇一四年完了ということで整理してございまして、この意味で法律の期限をおおむね十年間というふうに設定したところでございます。

○古屋(範)分科員 段階に応じて、進捗状況に応じてという御答弁でございました。

 横須賀市におきまして、近年、米兵による殺人というような事件もございました。それほど事件、事故が多いという印象では私自身はございませんが、実際にはそういったこともございました。

 これまで、交付金の対象事業につきまして、基地を取り巻く警戒態勢、あるいは市民の不安を取り除くための広報活動、また防犯パトロールなど、ハードではなくていわゆるソフト事業については対象となっておりませんでした。しかし、米軍基地があるということでは、そういった面での市民の不安、負担というものも実際にはあるわけであります。ですので、こういったソフト事業につきまして、ぜひ対象に含めていただきたい、使い勝手のよいものにしていただきたいというのが市民としても要望するところでございます。

 そこで、具体的な事例など、交付の対象となる事業についてどのようなものをお考えか、御説明をいただきたいと思っております。

○大古政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、防衛省が運用をしております環境整備法という法律がございます、略称でございますけれども、その中で、いわゆる九条交付金という制度がございますが、これについては公共用の施設の整備に限定しているところでございます。

 ただ、今回の法案につきましては、先生からも御指摘のあったソフト事業も対象とすることとしてございまして、そういう意味では、例えばソフト事業の一例ということでございますけれども、防犯カメラの設置とか、そういうことに対しても交付金の対象とすることができるというふうに考えているところでございます。

 ただ、具体的な事業の範囲についてお尋ねがございましたけれども、これにつきましては、今後、関係省庁とも協議の上、法案成立後、政令で定めることとしておりますので、現時点では具体的事業については答弁できないということで御理解賜りたいと思います。

○古屋(範)分科員 原子力空母が来る、その名前だけで市のイメージというものがダウンするのではないかというような危惧も実際にはございまして、ぜひ、見合ったといいますか、市の安全性を実際に高める、また安全、安心の町である、そういうような負担に見合ったさまざまな事業を展開することによって、やはり横須賀市そのもののイメージアップにつながるようなもの、また実際に市民の一人一人の生活に資するような、ぜひともそういう政策も含めていただきたいというふうに考えますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 それで、既に基地のある自治体につきまして、いわゆる特定防衛施設周辺整備調整交付金というものがございます。これと、今回の米軍再編交付金の違いについて御説明をちょうだいしたいと思います。

 国の財政が厳しい中でありますけれども、この米軍再編に伴う振興策が加われば、従来の振興策は逆に減らされてしまうのではないかという懸念がございます。この点についてのお考えを聞きたいと思います。

○大古政府参考人 お答えいたします。

 環境整備法の九条交付金につきましては、これは一般的に、米軍基地、自衛隊基地につきまして、基本的には飛行場、それから演習場、それから港湾、その他政令で定める施設もございますが、こういうものに限定した上で、公共用の施設の整備について対象としているというものでございます。

 他方、今回の米軍再編交付金につきましては、法律上、米軍再編ということに目的を限って、そのための負担のふえる指定された基地の指定された市町村に対して交付金を出すものでございまして、そういう意味で趣旨が違いますので、あくまでも既存の環境整備法の九条の交付金とは別のものとして法案をお願いしているということで御理解を賜りたいと思います。

○古屋(範)分科員 ありがとうございました。

 この特定防衛施設周辺整備調整交付金、これはこれとしてという今の御答弁だったと思いますので、安心をいたしました。

 今、横須賀では、反対署名ですとか、あとは住民投票も行うべきというような意見もございます。公明党の市会議員も、こういった問題、国の防衛に関する問題であり、住民投票にはなじまないということで、あらゆる場で市民に今説明をいたしております。

 そういう中で、苦渋の選択をせざるを得ない、そういう自治体に対しまして、こうした米軍再編推進のいわばお手本と言っていいかどうかわかりませんが、先頭に立ちまして、そういった市民の理解を求めて奮闘している市に対しまして、ぜひとも御理解をいただきますとともに、最大、市民の安全の確保、万が一にも事故というものがあってはならない、このように考えております。

 今後とも、ぜひとも市民の意見を丁寧に聞きながら、私もパイプ役となってまいりたいと思っておりますし、横須賀市への最大の支援というものを心からお願いを申し上げまして、少し時間が早いようでございますが、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

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