第198回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会-3号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、消費者にとって今大変関心の高い、ゲノム編集食品についてお伺いをしてまいります。

 このゲノム編集技術につきまして、政府が、これからの主要技術と位置づけ、強く推進する一方で、消費者の間からは、遺伝子を操作することに不安の声も上がっているところでございます。

 本年三月、厚生労働省におきましては、薬事・食品衛生審議会の新開発食品調査部会で、ゲノム編集を応用した食品をめぐる食品衛生法上の取扱いにつきまして方針を決定をいたしました。

 遺伝子組み換え食品が出回り始めて約二十年になります。遺伝子を操作する生命科学が進んで、遺伝子の組み換え技術は、より効率的な技術としてゲノム編集技術が登場してまいりました。昨年から、ゲノム編集食品というこれまで聞きなれない言葉が報道等で取り上げられまして、ゲノム編集食品とは一体何なのか、安全なのか、どのようなものなのか等々、消費者から声が上がっているところでございます。

 この技術は、遺伝子の狙った部分を操作をして、効率よく品種改良ができるというものであります。狙った改良を正確に、しかも簡単に行うことができる、遺伝子組み換えとは大きな違いがあります。

 アメリカやヨーロッパでは、企業や大学がこぞってこの技術を使った商品開発に取り組んでおります。我が国でも、昨年六月に閣僚会議で決定された政府の総合イノベーション戦略が、このゲノム編集技術を特に取り組むべき主要分野と位置づけまして、ゲノム編集食品について今年度中に取扱いを明確化するということを打ち出して、今回の議論が始まりました。

 まず、基本的に、ゲノム編集技術を応用した食品とは一体どういうものなのか、遺伝子組み換え食品とどう違うのか、ゲノム編集食品が出てきた背景についてお伺いをいたします。

○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 ゲノム編集技術とは、一般的に、外部から遺伝子を組み込むのではなく、標的とする遺伝子を切断することで遺伝子改変を行うことが可能な技術とされておりまして、この技術を利用して品種改良を行う食品がゲノム編集技術応用食品でございます。これは先生御指摘のとおりでございます。

 昨今、このゲノム編集技術を用いて品種改良された農産物等が開発され始めているため、こうした食品の食品衛生法上の取扱いについて議論をすることが必要とされてきております。

 このため、こうした食品等について、食品衛生法による安全性確保措置の必要性を検討するため、薬事・食品衛生審議会の部会等におきまして、平成三十年九月以降、合計八回の議論を重ねてきたところでございまして、その後、パブリックコメントの結果も踏まえ、平成三十一年三月二十七日に報告書が取りまとめられたという経緯でございます。

○古屋(範)委員 このゲノム編集食品、従来の育種技術、突然変異を誘発した技術があるとすると、対局に、いわゆる遺伝子組み換えの食品がある。その間に三つのタイプがあるということであります。

 まず、タイプの一は、標的とするDNAを切断をして、自然修復の過程で生じた変異を得ていく。タイプ二は、標的とするDNAを切断をして、あわせて導入したDNAを鋳型として修復をさせて変異を得ていく。タイプスリーは、標的とするDNAを切断をして、あわせて導入した遺伝子を組み込むことで変異を得るということで、一口にゲノム編集技術と言っても、このような三つのカテゴリーがあるということであります。こういうことも、実際、消費者の側は余り知らされていないというのが現状ではないかと思います。

 今局長が言われましたように、ゲノム編集食品の報告書が取りまとめられたわけなんですが、従来の品種改良や自然界でも起こり得る範囲の改変なら、遺伝子組み換え食品のような厳格な安全性審査は不要である。改変した食品が健康に悪影響を及ぼさないということは、開発者が確認をする。また、国は、改変した食品に関する情報を販売前に届けるよう開発者に求める。

 しかし、海外の対応はいろいろ分かれておりまして、例えば推進派のアメリカなどでは、ゲノム編集で生まれた農産物は規制をせず、企業の独自判断に任せています。アルゼンチン、チリなど南米諸国では、外来遺伝子がないことが確認される、先ほど言った一、二のタイプについては規制の対象外とする。また、規制派のEUでは、ゲノム編集など新たな遺伝子改変技術を使ったものは、全て遺伝子組み換え食品として規制をする。ニュージーランドも同じ対応をとっております。

 この三月に、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の新開発食品調査部会で決定をした方針の内容、ポイントについて、簡略にお伺いをしたいと思います。

○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からお話がありましたお話が大変詳しくて、ちょっと繰り返しになってしまって恐縮なところもございますが、報告書におきましては、従来の品種改良技術を用いた食品と比べた安全性等の観点からゲノム編集技術応用食品というのを見ておりまして、そのうち、自然界又は従来の品種改良技術でも起こり得る範囲の遺伝子変化により得られるものは、安全性審査を義務づけることまではせず、食品の開発者等から届出を求め、公表するという取扱いです。

 一方、自然界又は従来の品種改良技術を超える遺伝子変化により得られるものは、基本的に安全性審査の対象とするということにされています。

 さらに、報告書では、ゲノム編集技術応用食品等に関する消費者の十分な理解を深めるためにリスクコミュニケーションを推進すること、あるいは、ゲノム編集技術応用食品等に関する公衆衛生上、食品安全上の調査研究を推進すること、それから諸外国における取扱いの検討状況を注視するとともに、調査研究により新たな科学的知見が得られた場合は、必要に応じ、届出制度の取扱いを見直すことが提言されているところでございます。

○古屋(範)委員 ただいまの報告書のポイントについて御説明をいただきました。

 厚労省が、食品として流通をさせていくということが果たして妥当なのか、食品衛生法上の扱いについて決定をされたんですが、問題となっているのはやはりその安全性であると思っております。ゲノム編集技術を政府がこれからの主要技術と位置づけて強く推進する一方で、消費者の間からは遺伝子を操作するということに不安の声も上がっております。

 例えば、もともとある遺伝子を改変しただけの場合は審査不要となぜ判断できるのか。また、ゲノム編集食品は長期的な影響が国際的にまだ十分にわかっていない、想定外の事態が起こる可能性も考えなくてはならないのではないか。また、国民の命、健康に深くかかわる問題だけに、安全性への疑いが否定できない場合は商業化を認めないという予防原則に立った対応が求められるのではないか。審査不要とした食品が健康に悪影響を及ぼさないかは開発者が確認をするとした点も疑問だと。受益者になり得る開発者に判断を委ねてどうやって安全性を担保するのかなどなど、さまざまな意見がございます。

 欧州司法裁判所におきましては、ゲノム編集は遺伝子組み換え作物の規制の対象とすべきとの判断を示しました。欧州が危険であると判断した食品をなぜ日本は大丈夫なのか、実証された科学的根拠も示されなければいけないのではないかと思っております。報告書では安全性の審査は必要ないとされておりますが、その理由、また、届出の実効性は確保できるのか。国民が納得できるようにするためにも、食品が安全だとするその根拠をしっかりと示すべきだと考えます。この安全性についてお伺いをしてまいります。

○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘のありましたさまざまな意見、我々も検討の過程で、審議の過程で、さまざまな団体の方から、また、パブリックコメント等でもいろいろ御意見をいただきました。それらも踏まえまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、ゲノム編集技術応用食品のうち、自然界又は従来の品種改良技術を超える遺伝子変化により得られるものは基本的に安全性審査の対象とすることとしております。

 一方、自然界又は従来の品種改良技術でも起こり得る範囲の遺伝子変化により得られるものにつきましては、実際に従来の品種を掛け合わせて選抜していく過程を経て食品として流通するものであることも踏まえれば、自然界又は従来の品種改良技術と同程度の安全性は確保されているものと考えられることから、安全性審査を義務づけることまでは要しないこととされたところでございます。

 それにつきまして、届出でございますが、届出につきましては現時点では法的義務とはしていないところでございますが、消費者等の不安に十分配慮する観点から、今後、届出項目や届出方法等の具体的な内容を検討し、実効あるものにしていきたいというふうに考えているところでございます。

○古屋(範)委員 その安全性とともに、大事なのは消費者の安心ということだと思っております。

 今、食卓に一番先に上がるかもしれないと言われているのがトマトです、この技術を活用したトマトだとも言われております。血圧上昇を抑え、また、ストレスを軽減をするアミノ酸、ギャバを大量に含むトマトが開発をされているということでございます。

 そうすると、安全性とともに、このトマトを食べることによってどれほど効果があるのかなというのも、実際、消費者にとっては聞きたい点でもございます。また、毒のないジャガイモとか肉づきのよいマダイなども今開発をされているということでございます。料理をする者からしますと、毒のないジャガイモというのはあると便利かなという気もしないではないんですが、消費者にとって安心ということが最も重要になってくると思います。

 遺伝子組み換え食品は買わないと決めている消費者も多いと思います。厚生労働省、専門家が、遺伝子組み換え食品よりもゲノム編集食品の方が安全だとしているんですが、どれくらい国民が納得をしているのか。ぜひとも、消費者への周知徹底ですとか、また、この内容を発信をしていくということが重要ではないかと思っております。国民の健康にかかわる問題、技術への不安がまだ残る中で新たな品種が市場に出てくれば、消費者の反発また混乱があるかもしれません。政府は丁寧に消費者の意見を酌み取っていく必要があります。

 ゲノム編集食品は新しい技術だけに不安も多い、また、集めた情報を消費者にわかりやすく届けて、食べるかどうか判断を自分で決められる環境も整えていく必要があると思っております。どんな情報が提供されれば消費者が安心をするのか、国としてルールを運用しながら見直していくこと、こうした柔軟な対応が必要と考えますが、いかがでしょうか。

○宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、安心ということも大変、委員御指摘のとおり重要でございまして、先ほどの報告書でも御紹介しましたが、食品に対してリスクコミュニケーションを十分進めていくということが一つ重要だと思います。

 それから、安全ということで申し上げますと、先ほどの報告書も踏まえて、厚生労働省では、厚生労働科学研究等を通じてゲノム編集技術応用食品等に関する公衆衛生上あるいは食品安全上の調査研究を推進しますとともに、諸外国における食品衛生の観点からの取扱いの検討状況についても注視していくこととしております。

 そうした中で、ゲノム編集技術について、今後、国内外の安全性に関する新たな科学的知見が得られた場合には必要に応じてルールを見直すことも視野に入れ、ゲノム編集技術応用食品の安全性確保に向けた取組を継続していきたいと考えております。

○古屋(範)委員 しっかりと消費者に向けた正しい情報発信、また、柔軟なルールの改変ということも取り組んでいただきたいと思っております。

 最後の質問になります。農水分野に大変詳しい宮腰大臣にお伺いをしてまいります。

 ゲノム編集普及に向けて、ゲノム編集食品を正しく選んでいく、その体制づくりが欠かせないと思います。明確な表示ルールというものがなければ、消費者がゲノム編集食品かどうか判断ができないということが起きてまいります。今後焦点となってくるのが表示のあり方であると思っております。

 自然界で起きている突然変異と同じであるとはいえ、安全性を審査しない以上、ゲノム編集技術で生まれた食品が消費者にそれとわかる、これはゲノム編集技術を応用しているということがわかることが必要なのではないかと思っております。適切に商品を選ぶためにどういう表示が必要なのか、丁寧な議論を進めてほしいと思います。

 消費者庁は、正しい情報を伝える表示のあり方について真摯に検討して、明確なルールづくりをしていただきたいと思います。大臣の見解をお伺いいたします。

○宮腰国務大臣 ゲノム編集技術を用いた食品の表示のあり方については、厚生労働省における食品衛生上の整理を踏まえ、消費者庁において検討を進めております。

 委員御指摘のとおり、この問題につきましては、社会的な関心も高いことから、消費者委員会食品表示部会において、食品安全委員会の委員も務めるゲノム編集技術に関する専門家の科学的な御意見も踏まえた上で、ゲノム編集技術応用食品への懸念や表示のあり方など、さまざまな御意見を委員から伺う予定となっておりまして、これらも参考にして消費者庁において責任を持って検討を進めたいと考えております。

 検討に当たりましては、今後の流通可能性の把握に努めるとともに、消費者の意向、表示制度の実行可能性、表示違反の食品の検証可能性、さらには国際整合性を十分考慮する必要があると考えております。

 その上で、消費者庁において責任を持って検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○古屋(範)委員 これまで、突然変異誘発技術を使って、従来の育種技術で突然変異を誘発して、それを何代も何代も繰り返しながら、長い間かけて、さまざまな品種改良というものは日本で努力を重ねてまいりました。それが効率的に行えるよというのはすばらしいことだというふうに思います。

 こうした技術を応用していくということは大変重要なことでありますけれども、一方で、やはり、それを食べる、消費していく消費者の側の安心というものをしっかり確保していく、これが重要だと思っております。しっかり、大臣におかれましては、消費者の安全、不安を払拭する努力を続けていただきたい、このことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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