第198回国会 衆議院 環境委員会-7号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、動物愛護管理をめぐる諸課題について質問をしてまいりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 犬や猫などの動物虐待、悪質なブリーダーによる劣悪な環境下での飼育など、動物に関する悲惨なニュースが後を絶ちません。動物の愛護及び管理に関する法律、通称動物愛護管理法ですけれども、動物の虐待防止などを定めた法律でございます。しかし、動物愛護団体などから現行の法律が不十分であるという指摘がございまして、超党派で改正案が議論をされ、今国会、成立を目指しているということでございます。

 公明党におきましては、動物愛護管理推進委員会、委員長の中野洋昌衆議院議員を中心にいたしまして、動物虐待を犯した者に対する厳罰化、また、犬、猫の飼い主を特定するマイクロチップ装着の義務化等々、動物愛護管理法の改正に積極的に取り組んでまいりました。きょう起草が予定をされているわけでございますけれども、この改正案の一刻も早い成立が期待をされているところでございます。

 現行法の七条、これは、動物の所有者又は占有者の責務等が規定をされております。第一項には、動物のその種類、習性等に応じた適正な飼養、また第二項には、感染症、疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うよう努めなければならないということが規定をされております。

 しかし、命あるものであるにもかかわらず、工場のように大量生産をしている、そういう繁殖業者もおります。また一方で、捨て猫を飼っていて、不妊、去勢をせずに、繁殖の繰り返しで徐々に数がふえて、飼育不能、ごみ屋敷化、近隣とトラブルを起こすなどなど、多数の動物を劣悪な環境で飼育をしている、異常に繁殖をしてしまう、いわゆる多頭飼育崩壊と呼ばれるような、飼育ができない数の動物を集めてしまうという事件も起きているわけであります。

 所有者等が動物を適正に飼養管理しないことが原因で、動物の健康や安全が保持されず、また生活環境の保全に支障を起こすということが起きております。

 そもそも、ペットの飼い主等動物の所有者において適正飼養とは一体どういうことなのか、こうした具体的な理解が進んでいないことが問題だと思います。

 適正飼養とは何か。動物の衣食住がどうか、きちんとしているかなど、最低限必要なことを示していく必要があると思っております。また、近隣住民に迷惑を及ぼさないような、そういう飼い方というものが必要であります。

 こうした予防について、飼う前に適正な飼育のための講習会を受講させる、こうした取組も重要であります。

 初めに、適正飼養とは何か、飼い主等における適正飼養を確保するための基本的な考え方を伺います。

 また、一般の飼い主が不適切な飼養管理を行わないようにするために、適正飼養を飼い主に浸透させる取組、不適切な飼養に対する対策の強化についてお考えを伺います。

○正田政府参考人 お答えいたします。

 まず、適正飼養についてでございますが、適正飼養とは、動物の健康及び安全を保持しつつ、その生態、習性及び生理を理解し、愛情を持って動物がその命を終えるまで継続して飼養することでございまして、その趣旨を動物愛護管理法に基づく基準に定めているところでございます。

 そうした適正飼養を浸透させるためには、飼い主の意識の向上による飼い主責任の徹底が重要と考えておりまして、環境省におきましては、そのためのパンフレットやパネルを作成、配布し、自治体や関係団体の取組を支援しているほか、動物愛護週間に合わせまして、自治体や関係団体と共同でイベントを開催するなどの取組を進めております。

 また、虐待等の不適切な飼養に対しましては、自治体の職員が適切に対応できるように、事例集の作成でございますとか研修の実施などにより、その対応力の強化を図っているところでございます。

○古屋(範)委員 私も犬が好きで、今は飼っておりませんが、かつて飼っておりましたが、飼い主によって何が適切な飼い方かという基準がやはりさまざまであるなという気はいたしております。ですので、法律に動物の所有者等が遵守すべき責務規定を明確化することが必要なのではないか、このように考えております。

 次に、マイクロチップの義務づけについてお伺いをしてまいります。

 確実な所有明示を進めるために、やはりマイクロチップの装着の義務化ということが効果的だと考えております。マイクロチップは、家庭動物の遺棄、盗難を予防しますし、保護動物の飼育者への返還率の向上から、処分数を削減していくことが見込まれております。さらに、生産、流通、飼育履歴に関するいわゆるトレーサビリティーを確保する上で、最も効果的な方策であると思っております。

 一方、狂犬病予防法においては、飼い犬の取得後、一生に一回の登録、また、毎年一回の予防接種の実施が義務づけられております。

 まず、厚生労働省に、狂犬病予防法における登録の現状等についてお伺いをしたいと思います。

○吉永政府参考人 お答え申し上げます。

 狂犬病予防法におきましては、狂犬病発生時に発生拡大を防止するために的確な措置が講じられるよう、明示することが重要であると考えてございます。

 このため、法律に基づきまして、犬の所有者は、犬を取得した場合、犬の所在地を管轄する市区町村に犬の登録を申請することが義務づけられているところでございます。

○古屋(範)委員 狂犬病予防法については、そのように規定をされているということでございます。

 さらに、環境省の方にお伺いをしてまいりますけれども、マイクロチップを装着することによる効果、また、マイクロチップの装着率を向上させていく、この取組についてお伺いをしたいと思います。

○正田政府参考人 お答えいたします。

 まず、マイクロチップの装着による効果につきましては、犬、猫の盗難及び迷子の防止に資するとともに、所有者不明の犬、猫や非常災害時に逸走した犬、猫の返還が容易になることでございますとか、管理責任の明確化を通じて所有者の意識向上等につながり、動物の遺棄や逸走の未然の防止、適正飼養の推進に寄与することなど、こういったことが挙げられると考えているところでございます。

 マイクロチップの装着率向上に向けての取組でございますが、まず、マイクロチップの装着の現状でございますが、一般社団法人ペットフード協会が行った平成三十年度の実態調査、これは推定値でございますが、犬、猫への装着率でございますが、全国で飼育されております犬約八百九十万頭のうちの一七・四%、猫につきましては約九百六十万頭のうち四・一%となっているところでございます。

 こういった現状を踏まえまして、環境省では、マイクロチップの装着率向上に向けまして、関係機関等からの情報収集を行うとともに、平成二十六年度から二十九年度にかけまして、人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクトにおきまして、五つの自治体でマイクロチップの実態把握や意識調査等のモデル事業に取り組んできたところでございます。

 さらには、マイクロチップへの理解を促すリーフレットやポスターを作成いたしまして、地方自治体や関係団体等の協力を得て広く配布しているほか、動物愛護週間行事や各種シンポジウム等においても普及啓発を図ってきているところでございます。

○古屋(範)委員 御答弁いただきましたように、厚労省の方では、飼い主に犬を登録させて狂犬病の予防接種を受けさせる。そうすると証明書が送られてきて、その証明書を私も家の玄関あたりに張るということを毎年やってきているわけなんです。

 一方で、マイクロチップを装着するということを進めていく上で、マイクロチップの装着義務化ということを、狂犬病の予防接種の方と、犬の所有者に対して二重の負担となってしまわないように、この狂犬病予防法に基づく犬の登録制度と、また、こちらのマイクロチップの装着の義務化の方と、これを一本化する必要があるというふうに思っております。ぜひ、これをリンクさせることによって、飼う側にとって負担にならないよう、そして、その動物の、逃げ出したり、そういったときの所有者を適切に捜していくということにもしっかりと役立てていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、多頭飼育等、適切でない飼養の予防対策についてお伺いをしてまいります。

 動物愛護管理法の目的には、動物による人の生命また身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止するということが掲げられております。

 冒頭でも触れましたが、多数の動物を劣悪な環境で飼育するいわゆる多頭飼育崩壊のニュースが後を絶たないわけなんですが、この多頭飼育崩壊を引き起こす飼い主というのは、周囲や動物自身に対し悪影響を及ぼしているんだという自覚がない場合が多いんですね。こうした多頭飼育崩壊の飼い主については精神疾患との見方もありますし、保健師や精神保健福祉士等の専門家との連携による対応が必要なケースが多いとの指摘もあります。

 動物による深刻な生活環境の支障を引き起こしている飼い主、ネグレクトなど動物虐待の状態で飼育をしている飼い主等に対して、現状把握また未然防止、再発防止のための仕組みづくり、専門家や自治体福祉部門との連携等が重要であると考えます。抜本的な解決に向けてどのような対策が必要か、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

 また、さらに、勧告措置の対象が動物取扱業者だけではなく、一般の人、特定動物の飼養者も含まれているんですが、実際に都道府県知事による報告徴収や立入検査は認められておりません。こうした現実に対してどのような見解を持っていらっしゃるかについてお伺いをいたします。

○正田政府参考人 お答え申し上げます。

 多頭飼育問題につきましては、平成二十四年の動物愛護管理法の改正によりまして、地方公共団体は、条例により、多数の動物の飼養、保管に関し届出をさせることができること、都道府県知事は、多数の動物の飼養、保管が適正でないことにより動物虐待のおそれがある事態を生じさせている者に対し、改善のための勧告、命令をすることができることが追加されたところでございます。

 これを受けまして、現在、自治体によりまして取組が進められているところでございますが、問題を引き起こす飼い主は届出を行わないとの指摘があるほか、勧告、命令の発動件数は、まだ数件という形で、少ない状況にございます。

 こうした中でございますが、昨今、飼い主が犬や猫をふやし過ぎて世話ができなくなる、いわゆる多頭飼育崩壊が全国的に問題となってございます。この問題につきましては、地域から孤立した単身高齢者などがかかわるケースが多いことが明らかになってきておりまして、対応に当たりましては、社会福祉分野との連携が重要と考えておるところでございます。

 このため、環境省におきましては、本年の三月に、動物や社会福祉の専門家による社会福祉施策と連携した多頭飼育対策に関する検討会を立ち上げたところでございまして、厚生労働省と連携いたしまして、予防策を含めたガイドラインの策定等に取り組み、適切な対応が推進されるよう努めてまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 やはり、こうした高齢者の孤立というような問題もはらんでいるというふうに思います。やはり、現行法だけでは私は不十分であるというふうに思っております。都道府県知事による指導助言、そして報告徴収、また立入検査等、こういうものができるような法律に改正をすべきというふうに考えております。その意味でも、この改正案の早期成立を望むところでございます。

 次に、悪質な業者に対する立入り権限の強化についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 現在、ペットショップ、またブリーダーなど、営利目的で動物を販売したり展示したりする、いわゆる第一種動物取扱業を営む場合には、事業所を管轄する自治体へ登録が必要となっております。悪質な業者につきましては、都道府県知事などが登録更新の拒否や登録の取消し、業務停止の命令措置をとることができます。

 行政には、強制的な立入り権限がございません。そこで、実際、業務停止命令や取消しが行われたということがほとんどない。環境省の報告によりますと、平成二十九年度における全国の第一種動物取扱業に対する業務停止命令数、登録の取消し命令数ともゼロでございます。このため、より行政の権限のある繁殖業者の許可制の導入が必要なのではないかとの指摘もございます。

 こうした動物取扱業者による不適切な飼育、保管についても、地方自治体が、こうした取扱業者に対する立入調査というものを積極的に行って、勧告、命令、また取消し等の行政処分、刑事告発についてももっと適切に行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

○正田政府参考人 お答えいたします。

 環境省が地方自治体を対象に行いました動物愛護管理法の施行状況調査、この全体の数値が、データが整ってございます平成二十八年度のものでございますが、都道府県等が動物愛護管理法に基づく立入検査を行った施設数は二万五千五十三件、このうち、指導を行った施設数は四千八百九十九件となってございます。

 また、飼育施設や飼育方法の基準を遵守していない業者に対して行われます勧告件数は十八件、勧告に従わない場合に行われる措置命令の件数はゼロ件でございました。

 さらに、動物取扱業者が措置命令に違反したとき等は、登録を取り消し、又は業務の停止を命ずることができるとされておりますが、平成二十八年度におきましては、業務取消し命令と業務停止命令は各一件でございました。また、告発件数はゼロ件という結果でございました。

 都道府県等が立入検査において問題を発見した場合には、まずは指導を行い、指導に応じない場合に、改善に係る勧告、命令を行うという対応をしてございます。このため、立入検査と指導が、業者による取扱いの改善にかなりの効果を上げていると受けとめてございます。

 環境省といたしましては、このような自治体による指導、勧告、命令、取消し等の行政処分、刑事告発等が一層効果的に行われますよう、引き続き、自治体の職員を対象とした動物愛護管理研修や、動物虐待を科学的に評価できる人材を評価するための研修を実施することとあわせまして、さらに、平成三十年三月に設置いたしました動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会におきまして、自治体の取組がより一層適切に推進されるよう、現行の基準の具体化等を図ってまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 最後の質問に飛ばさせていただきます。

 今回、きょう起草される予定でございますが、改正によって諸施策を着実に実行していくために、動物愛護行政を担う都道府県、政令市、中核市などの体制整備が必要であります。この動物愛護の行政は、非常に幅広い、先ほども言いました取扱業者の取締りであるとか、ペットをめぐる地域社会のトラブル解決、また、すぐれた飼い主を育成するための普及啓発、非常に職務が多いわけであります。こうした諸施策を着実に実行するために、自治体が法律に従って有効な行政を行えるよう、必要な体制また職員の充実に向けても国として最大限支援をしていただきたいと思います。これについて見解を伺います。

○正田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘ございましたとおり、動物を取り扱う業者等に対する規制の運用でございますとか、犬、猫の引取り等、動物愛護管理法に基づく各種の事務につきましては、都道府県を始めといたします自治体の自治事務として行われているところでございます。

 環境省におきましては、飼養管理に係る基準の策定でございますとか、自治体に対する技術的な助言、さらには、自治体の担当職員がさまざまな課題や基本的な考え方の専門的な知識を習得できるよう、毎年、動物愛護管理研修を開催してございます。さらには、各種課題に応じた研修会等も実施してきたところでございます。

 環境省といたしましては、こういった取組を通じまして、引き続き、自治体において実効性のある円滑な実務が展開できるように取り組んでまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 本日起草予定でございますけれども、この改正案が成立することによりまして更に動物の愛護、管理が向上することを期待して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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