第201回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会-5号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 本日は、公益通報者保護法改正案について質問をしてまいります。これまでのお二人の質疑者と重なる部分もございますけれども、立法の趣旨、また改正点の論点について順次質問を行ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 近年、自動車のリコール隠しであるとか、また保険の不適切販売等、社会問題化する企業の不祥事が絶えません。公益通報者保護制度の重要性が再認識をされていると思います。消費者の安全、安心を確保する観点からは、公益通報を通じた法令違反行為の未然防止と早期是正を一層推進するとともに、通報者が通報を行いやすく、また、より保護されやすくする必要があります。制度の実効性を高めるために、法改正を急ぐ必要がございます。

 同法案は、平成十六年、成立となりました。私も、議員になったばかりでございましたけれども、党内での議論に参加をいたしました。公明党としても大変活発な議論を行い、成立させることができました。

 そして、平成十八年四月に施行されてから十四年が経過をしてしまいました。消費者庁の調査結果によりますと、事業者における不正を発見する端緒の第一位、これは内部通報であるということから、法制定の意義があったというふうに考えます。

 本年二月七日、公明党消費者問題対策本部、また内閣部会で衛藤大臣に提言を提出をさせていただきました。

 現行法の附則第二条では、法施行後五年をめどに、法の施行状況について検討を加えて必要な措置を講ずる旨の記載がされております。ガイドラインの作成はしたものの、なかなか抜本的な改正というのは行われずにまいりました。こうした中で、企業の内部通報制度が機能せず、大きな不祥事に発展してしまうという例、また、通報者が企業から不利益処分を受けた事例などが相次ぎまして、公益通報者の保護が図られるとは言えない現状があります。

 今回の改正では、企業みずからが不正を是正しやすく、安心して通報ができる、行政機関等への通報を行いやすくすることを目的として改正がなされております。通報者の範囲に退職者及び役員を追加するとか、あるいは通報対象事実の範囲に個人の生命身体の保護等に係る法律で過料の理由とされている事実を追加するなどなど、改正点が盛り込まれております。通報者保護が強化される内容になっておりまして、本改正案の早期成立が望まれるところでございます。

 まず、この法改正から、十四年も経過しているにもかかわらず、これまで抜本改正が行われなかった理由についてお伺いいたします。

 また、内部通報は極めて重要になっておりますので、法改正は、今、時代が求めていると思います。本改正案の一刻も早い成立に向けて、大臣の決意をお伺いいたします。

○衛藤国務大臣 まず、古屋委員には、公明党の各委員会における議論を終始リードしていただきまして、そして、本日の、与党全体の中の案を入れて、ここまで、抜本改正にこぎつけたことに対しまして、改めまして感謝を申し上げる次第でございます。

 消費者庁としては、平成十八年の法施行以来、法の施行状況にかかわる調査を実施するなどし、その結果を踏まえて、事業者が取り組む事項を明確化、具体化するなどの観点から、ガイドラインの策定、改正や、制度の周知、広報に取り組むなど、制度の実効性向上に向けて必要な対応を行ってきたところでございます。

 また、法改正に向けては、平成三十年十二月に取りまとめられました消費者委員会の専門委員会報告書には、更に関係者間の丁寧な調整を実施する必要がある論点があったために、取りまとめ後も、関係者の意見を丁寧に聞き、調整を進めてまいりました。

 こうした制度の実効性向上に向けた取組や調整の結果、今国会においてこの改正法案の御審議をお願いすることとなったものであります。

 今般の改正法案は、公益通報者保護制度を大きく充実するものであり、我が国の経済社会の健全な発展にとって重要なものになると考えております。

 担当大臣として、早期成立に向け万全を期したいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

○古屋(範)委員 私も、この十四年ぶりの改正、大変重要だと思っております。消費者の保護、ひいては安全、安心な国民生活を築いていくためにも、一刻も早い成立を期して頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、不利益取扱いに関する行政措置についてお伺いをしてまいります。

 専門調査会報告書におきましては、不利益取扱いに対する抑止の観点から、通報を理由として通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を導入した上で、具体的措置として、助言、指導を行うほか、重大かつ悪質な事案を対象に勧告を行って、勧告に従わない場合は公表することができることとすべきということが盛り込まれました。

 裁判例あるいは消費者庁の調査結果を見ますと、まだまだ、公益通報を理由とした解雇その他の不利益取扱いは依然として行われていると思います。雇いどめであったり、業務上必要性とは無関係な配転命令、解雇など、希望する業務の担当から排除される、このような事例が続いております。民事ルールだけでは不利益取扱い抑止の効果が十分ではないということが言えるかと思います。

 今回、通報者に不当な扱いをした企業に対する行政措置や罰則の導入は見送られました。この不利益取扱いを抑止する効果を期待して、行政措置を求める声というのは大きいというふうに思います。

 今回、先ほど委員長からも御発言がございましたように、新型コロナの緊急事態宣言発令下で、理事間で知恵を出し合いまして、委員長に御決断をいただいて、各団体から書面で御意見を頂戴いたしました。

 その中でも、例えば、全国消費者行政ウォッチねっと事務局というところからも、通報者への不利益措置は、消費者、投資家を含む社会全体の利益に反する悪質な行為として刑事罰、少なくとも行政措置の対象にすべきだという御意見をいただきました。また、全国消費者団体連絡会からも、不利益取扱いに対する行政措置に関しては、今回見送った理由となるさまざまな課題についてどう対応するのか、課題解決に向けた道筋をつけてほしいというような御意見をいただいているところでございます。

 こうした不利益取扱いを抑止するということに関して、内部通報したことによる不利益なのか、あるいは、いや、それは営業成績とか通常の人事に従って行ったものだというふうに言われると、この区別が、なかなか立証していくというのは難しいだろうというふうに思います。

 今回の法案で不利益取扱いに対する行政措置が導入されなかった理由についてお伺いしたいと思います。また、不利益取扱いに対する行政措置の導入については、改正法で、附則五条に施行後三年をめどとする見直しが規定をされております。検討の内容、また今後のスケジュールについてお伺いをしたいと思います。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法案では、制度の実効性確保のため、行政措置という事後的な対応ではなく、不利益取扱いを事前に抑止することが重要と考えたところでございます。

 この観点から、改正法案においては、従業員等に対する守秘義務を課すとともに、事業者に、公益通報者に関する情報が漏えいしない体制、公益通報者に対する不利益取扱いを防止する体制の整備を求めることとしております。

 これに対し、不利益取扱いに対する行政措置については、事実認定や執行体制に多くの課題があることから、今回の改正法案では導入しないことといたしました。

 また、施行後三年を目途とする見直しの内容につきましては、附則第五条の趣旨を踏まえ、まずは消費者庁において施行後の状況についてしっかりと把握、分析していくことが必要であると考えております。

 それらの分析結果等も踏まえ、不利益取扱いに対する行政措置や刑事罰、立証責任の転換など、どのような対応が適当かについて、関係者の御意見も聞きながら検討してまいりたいと考えております。

○古屋(範)委員 公明党の提言にもこのことは盛り込ませていただきましたけれども、ぜひ次の改正に向けて前向きな検討を行っていただくようにお願いをしたいと思います。

 次に、公益通報者の救済について伺ってまいります。

 現行の保護法では、公益通報したことを理由に解雇とした解雇の無効、そのほか不利益取扱いの禁止が規定をされております。実際には、解雇や不利益取扱いを受けた公益通報者は、解雇無効など救済を求める場合には、最終的に民事訴訟で争う、裁判を起こすこととなります。現状では、内部通報をした人が不本意な人事の扱いを受けたこととして裁判で争う事例というのは少なくありません。

 裁判では、不利益取扱いが公益通報に対する報復であるということを説明する責任、立証責任は公益通報者の側にあります。しかし、通報者が公益通報と不利益取扱いとの因果関係を立証するというのは大変難しいことであります。容易なことではありません。

 勧告などの行政措置をするには、通報対象事実に該当するかどうか、また、各法令を所管する行政機関と連携して厳格な事実認定をする必要があるために、消費者庁の機能強化は欠かせないというふうに思います。まだまだこの消費者庁の調査体制というのは整っていないのではないかと思います。

 公明党の消費者問題対策本部の提言の中におきましても、勧告や公表が確実に実施できるだけの行政の体制強化、また、裁判における立証責任について通報者の負担軽減ということを訴えさせていただきました。

 今回の改正で、内部通報者に対する報復を防ぐ手だてが尽くされているのか、あるいは、公益通報者の救済を実効性ある制度にすることが報復の抑止につながると思いますけれども、通報者が本当に安心して通報ができるのかどうか、安心できる制度をつくるべきだと思います。

 今回の改正で、先ほど申しましたように行政措置の導入は見送られましたけれども、これで公益通報者に対する不利益取扱いを抑止する制度として機能していくのか、安心できる通報制度になるのか、真に公益通報者の保護に資するものとなるのか、その実効性について消費者庁にお伺いをいたします。

○高田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案では、保護の対象となる公益通報者の範囲や通報対象事実を広げることとしたほか、公益通報者が不利益取扱いを受けてしまった場合においても、権限のある行政機関や行政機関以外の外部通報先への通報の保護要件を緩和するなど、訴訟においてより救済がされやすくなる制度といたしました。

 また、訴訟以外においても、第三者が介在して個別の労働紛争解決のあっせんをする制度として、労働審判のほか、厚生労働省や各都道府県等の関係機関、いわゆるADRがございます。

 今後、これらの制度を運用する機関との連携を図ることで、不利益取扱いの救済がされやすくなる取組を進めてまいります。

○古屋(範)委員 私たちの提言の中でも、専門調査会報告書の提言も踏まえて、今後制度を更に充実させる観点から、行政の体制強化を図ることということを述べております。しっかりこの体制強化をしていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、消費者庁の相談ダイヤルに寄せられた相談事案の傾向を見てまいりたいと思います。

 通報者の属性として、まず、労働者というのが五八・八%です。退職者が一一・九%、他の事業者というのが三・六%で、役員が〇・七%というような調査結果が出ております。今回の改正で、保護される通報者として退職者そして役員を追加したということは評価できると思います。

 その上で、退職者について、退職後一年以内に通報した者であるという要件が課されております。専門調査会報告書では、保護の対象とする退職者の範囲について、労働者名簿の保存期間が三年と定められております、このことを踏まえまして、退職後三年以内とすることも考えられるとされておりました。

 本改正案におきまして保護される通報者の範囲、退職後一年というふうに区切った根拠についてお伺いをしたいと思います。

○坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正法案は、法令違反行為の早期是正を促すことをその目的の一つとしております。そのような観点からは、保護される通報を退職後一定の期間内のものに限定し、早期の通報を促していく必要があります。

 また、実際に退職後の通報を理由として不利益取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報された事案であり、このため、退職後一年以内にされた通報を保護すれば、実際に不利益取扱いが想定される通報のほとんどを対象とすることができると考えられます。

 さらに、退職から長期間経過後の通報については、証拠の散逸等により、通報を受けた事業者が適切に対応することが困難であるとの指摘もありました。

 このような考え方により、まずは退職後一年以内に通報した者を保護の対象としたものでございます。

○古屋(範)委員 やはり一年以内に通報されたものが多いということ、また、長期間退職した後の通報になりますと証拠なども散逸してしまっているのではないかということから、一年ということにしたということでございました。

 私たち、党内で、この一年ということもいろいろと議論いたしました。提言の中でも、この一年ということに関しましても、通報者がより保護されやすく、また、これから通報の実態等も踏まえて、法令違反行為の早期是正を図る観点からまずは一年としたわけですけれども、今後、その運用状況を踏まえて必要に応じて見直していくということを提言をさせていただきました。

 これも、今後の運用状況を見ながら、果たして一年が妥当なのかどうか、また次への改正に向けてしっかりと検討をお願いしたいと思います。

 時間が近づいてまいりましたので、残された質問は次の委員会に回したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

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