第204回国会 衆議院 内閣委員会-23号

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、ストーカー規制法改正案について質問してまいります。小此木大臣、よろしくお願い申し上げます。

 私も、ただいまも質疑にありましたけれども、もう一度ストーカー規制法、施行から昨年十一月に二十年ということで、経緯を振り返ってみたいと思います。

 このストーカー規制法、二〇〇〇年、桶川のストーカー殺人事件を機に制定をされました。この事件は、一九九九年、女子大生の猪野詩織さん、当時二十一歳が刺殺をされた事件であります。メディアでもかなり取り上げられました。これは、警察、司法行政に深い自省と大きな転換を迫った事件でもありました。このとき、警察は無気力捜査と隠蔽体質ということで厳しく問われました。三人の警官が懲戒免職、書類送検をされ、有罪判決も受けております。ほかに、埼玉県警本部長以下十二人が大量処分をされました。

 この詩織さん、元交際相手の男からストーカー被害を警察に訴えていました。具体的な対策は取られず、事件の犠牲となったわけです。事件直前に自宅周辺に中傷ビラをまかれるなどのストーカー被害を受けまして、埼玉県警上尾署に名誉毀損の容疑で告訴して捜査を求めていました。しかし、同署は対応を取らなかった。さらに、事件後に、署員が告訴の調書を改ざんして放置していたことが明らかとなりました。

 これを機にストーカー規制法という新しい法律が生まれました。ストーカー事案に司法行政が向き合う体制がやっと整い、動き始めたというふうに言えるのではないかと思います。

 その後もこうした事案は続きました。大臣、神奈川にいらっしゃるわけなんですけれども、私も神奈川なんですけれども、一二年十一月に逗子市で女性が元交際相手に刺殺をされるという事件がありました。また、一三年には、三鷹市で女子高生が元交際相手の男に殺害をされた。

 また、この後、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNSを使ったストーカー事案も増えていまして、一六年五月には、東京の小金井市のライブハウスで女性が刺されて瀕死の重傷を負うということがあり、SNSのつきまといも規制対象に加えられたところであります。

 二度にわたる法改正が行われまして、私もこれには関わらせていただきましたけれども、メールの大量送信、SNSへの執拗な投稿、自宅周辺をうろつくということが規制対象に追加され、厳罰化が進みました。警察の体制も強化をされてきたと承知をしています。

 また、相談件数につきましては、二〇二〇年、全国の警察に寄せられた相談件数二万百八十九件ということで、二万件を突破しています。八七・六%が被害者が女性であります。加害者八〇・七%が男性ということで、四十代の加害者が一番多いんですけれども、六十代、また七十代も、七十代九百六十人も加害者がいるということであります。

 被害というものも多様化していまして、今回、衛星利用測位システム、GPSを悪用することを禁じることが本改正案の重要な改正点になっておりまして、成立が急務であるというふうに思っております。

 初めに、警察におけるストーカー事案への対応、また、ストーカー被害者保護の視点に立った対策の強化、これに取り組む大臣の御決意を伺いたいと思います。

小此木国務大臣 今委員から様々な事案の例示をしていただきましたけれども、ストーカー事案については、警察が認知した段階では比較的軽微だと判断することがとても危ない状況になる場合がある、事態が急展開して重大事件に発展するということがございました。事案の危険性、切迫性を的確に判断し、個別具体の事案に応じて、検挙措置等と保護対策の両面から、被害者等の安全確保を最優先とした措置を講ずる必要があると思っています。

 このため、警察では、認知の段階から対処に至るまで、一元的に対処を行う生活安全部門と刑事部門を総合した対処体制を構築して、事案に応じ、検挙措置等による加害行為の防止、防犯指導やパトロール等の警戒活動や一時避難等の措置を講じているところであります。

 国会の御審議によりこの法案が成立すれば、相手方の承諾なくGPS機器等を利用して位置情報を取得する行為等が規制をされ、警告、禁止命令等を発出することが可能となります。こうした規定の活用も視野に入れ、被害者等の安全確保を最優先にした対策をしっかり推進するよう、改めて警察を指導してまいりたいと存じます。

古屋(範)委員 御決意を伺いました。

 やはり、兆候があったその時点で早い対応を取るということが必要なんだと思います。おっしゃったように、一元的な体制整備をつくっていくということが重要だと思います。しかしながら、要員の問題もあって、なかなか難しい点もあるのではないかというふうに思いますけれども、是非、被害者を守るのはやはり警察しかないというふうに思います。積極的な捜査、また、保護、相談体制の強化を要望しておきたいと思います。

 今回の改正案の柱である、GPS機能を悪用した手口に対する対応について伺ってまいります。

 GPS機能をストーカー被害者の車に取り付けて居場所を特定する、この行為の違法性を否定した昨年七月の最高裁判決。ストーカー規制法では、住居、勤務先の近くでの見張りは禁じているけれども、GPSを使って離れた場所から所在を把握する、この行為については明確には規定をしておりませんでした。司法判断を受けて、見張りに当たるとの立場を取ってきた警察は、取締りの方法の見直しを迫られました。

 GPSを無断で使用してどこにいるかを知られるということは、まず、プライバシーの侵害、不安も大きいと思います。自分がそうされたときのことを考えてみなければいけないというふうに思います。

 判決が出ました二件の事案では、いずれも被害者の車にそっくり機器を取り付けていた。うち一人は、約十か月にわたって元交際相手から六百回以上、位置情報を調べられていました。

 こうした、GPSの性能が向上して、入手もしやすくなっている、悪用する例が相次いでいます。場所を突き止めて、殺害をするという事件も発生しております。

 GPSの機器等の定義、位置情報の取得方法については政令で定めることとしていますが、どのように規定をされていくのか。また、多様化するストーカーの手口に迅速に対応して、被害者を守り、重大な事態を招かないために、体制の充実とともに、新たな手口に即応できるような仕組みの対応が必要であると考えます。政府は、常に被害の実態を把握して、どんどん進化していきますので、分析を行い、新たな手法に対し、速やかな、法律に反映できる仕組みを整えるべきではないかと思います。

 これについての見解を求めたいと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 改正法で規制対象となります位置情報記録・送信装置等や位置情報の取得方法につきましては、今後の技術の進展や、それに伴う手口の変化等を踏まえ、機動的に規制措置を講ずる必要があると考えられることから、相手方の承諾なく、相手方が所持する位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を取得する行為を規制するという根幹の部分は法律で規定した上で、具体的な位置情報記録・送信装置等や位置情報の取得方法について政令で定めることとしているものでございます。

 具体的には、位置情報記録・送信装置等につきましては、現在、GPSシステムが広く普及し、最近のストーカー事案において、同システムを利用した機器等が悪用され、相手方の位置情報が把握されているという実態を踏まえまして、政令でGPS機器等を定めることを検討しております。

 また、位置情報の取得方法につきましては、ストーカー事案におけるGPS機器等に係る位置情報の取得の実態を踏まえまして、位置情報記録・送信装置の位置情報を受信する方法や位置情報記録・送信装置を回収する方法等を政令で定めることを検討しているところでございます。

 また、新たな手法への対応といった点でございますけれども、警察庁におきましては、通常業務を通じまして都道府県警察において対応したストーカー事案を把握しているほか、これまでも必要に応じて有識者検討会等を開催して法改正の検討に資することとしてきたところでございます。

 警察庁といたしましては、引き続きストーカー事案の実態を的確に把握し、現行法で対応が困難な事案が認められれば、こうした事案への効果的な規制の在り方について適切に判断し、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 次に、加害者対策についてお伺いしてまいります。

 被害者を守るということは、加害者へのアプローチも大切になってくると思います。

 警察では、近年、加害者に対しまして医療機関で治療を受けるよう積極的に勧めていて、相手への執着心、支配欲を弱めていく、行為を繰り返さないために医学的な措置が有効とされております。マスコミによりますと、ストーカーに対して警察が医療機関での治療を働きかけるケースが近年増加をしていて、二〇一九年では全国八百二十四人と過去最多になっていると思います。この医学的アプローチの有効性というものが指摘をされています。医療機関と連携して加害者にカウンセリングを受けさせる、受診費用を一部負担するという県警もございます。拒まれれば強制することはできないような現状なんですけれども、こうした再発防止に力を入れていくべきと考えます。

 また、ストーカー予防のための教育も重要だと思っております。もちろん、被害者にもならない、加害者にもなってはいけない教育、啓発が必要だと思います。関係省庁が連携をして、教育、啓発を推進していくことが重要ではないかと思っております。加害者の治療等の義務化などを視野に、治療、更生の支援を充実する、また、被害者にも加害者にもならない教育、啓発、知識の普及が必要と考えます。

 これについてどのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 ストーカー事案の加害者の多くは、注意や警告等の措置で行為をやめる一方、被害者への強い執着心等から警告や検挙等をされた後もつきまとい等を続ける者が存在するところでございます。

 このため、ストーカー対策に当たっては、こうした加害者の特性を踏まえた対応が必要であると考えております。

 そこで、平成二十八年度から、警察が、加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性につきまして、地域の精神科医等の助言を受けて加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しているところでございまして、今後ともこういった取組を推進してまいりたいと考えております。

 また、ストーカー被害を未然に防止するためには、ストーカーの被害者にも加害者にもならないことの重要性を踏まえつつ、教育活動を通じた知識の普及及び啓発の推進が重要であると考えております。

 警察におきましては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議におきまして策定されたストーカー総合対策等を踏まえまして、非行防止教室や大学における防犯教室等の様々な機会を捉えまして、ストーカー事案をめぐる情勢、具体的事例、対処方法等を伝えることにより、被害者にも加害者にもならないための教育、啓発活動を推進しているところでございます。

 引き続き、関係機関等と連携しながら、ストーカー被害の未然防止及び再犯防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 もう時間がないんですけれども、最後に一問、済みません。ストーカーの規制法の要件についてお伺いいたします。

 ストーカー規制法では、恋愛感情、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的をストーカーの要件としております。規制法の立法当時、それ以外の目的によるストーカー行為というものは対象外となっておりました。当時、恋愛感情に起因するものがほとんどだったわけなんですけれども、現実には、恨みであるとか憎悪、ライバルへの嫉妬など、ほかの感情を動機とするストーカー事例も起きております。

 ですので、被害者に大きな恐怖を与える大事件に発展する可能性があるということを考えると、恋愛感情だけではない、それ以外の目的で行われる行為についてもストーカー規制法の対象とすべきではないか、この検討をすべきではないかと思います。検討をよろしくお願いいたします。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 委員からもお話ございましたとおり、ストーカー規制法の立法当時、つきまとい等の事案の実態として、交際を求めたり復縁を迫ったりするなど、恋愛感情等に起因して行われる状況が多く認められ、これらの場合に、暴力であるとか脅迫、殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が認められたこと等から、規制対象を、恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等に限定しているものと承知しております。

 恋愛感情等の充足目的以外の目的で行われる行為を規制対象とするかどうかにつきましては、ストーカー規制法の在り方そのものに関することから、慎重な検討を要するものと認識しておりますが、ストーカー事案の実情等に応じて、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

Follow me!