第204回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会-9号

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 前回に引き続きまして、特定商取引法改正案について質問をしてまいります。

 本日は、先日の参考人の陳述でも問題として取り上げられました、特定商取引法における契約書面の電子化について、中心に質問してまいります。

 この点は、この改正案の閣議決定前に、我が党内でも大きな議論となった点でございます。今回の改正案、様々な論点がありますけれども、問題ありとされているのはこの書面の電子化に関する改正点であります。

 先日も、この委員会がこの法案の審議に入りまして、その後も、消費者団体の皆様と懇談をさせていただきました。そのほかの改正部分についてはもろ手を挙げて賛成するけれども、この書面の電子化だけは反対をしていくという御意見でございました。こうした経緯もありまして、全国の消費生活センターで相談を受けている相談員を始めとして、多くの消費者団体、弁護士会等を中心に、書面交付義務の電子化に対して慎重な対応を求める意見が強くあります。

 冒頭、大臣に、この書面の電子化の改正部分について、今回の改正案に盛り込む必要について、改めてお伺いをしておきたいと思います。

井上国務大臣 国民生活におけるデジタル化は急速に拡大、進化しており、こうした社会状況の大きな変化に即応した施策を講ずることは必要不可欠となっております。

 とりわけ、昨年来、新型コロナウイルス感染症対策が求められる中、極力人の接触を減らす等の新たな日常が模索され、自宅にいながらインターネットを利用する取引や手続の規定を整備する重要性は、いまだかつてなく高まっております。また、紙よりもデジタル技術を活用して必要な情報を保存、閲覧し、やり取りする方がより便利であると感じる国民も増えているのではないかと考えています。

 このような社会のニーズに応えることは重要であり、今回の改正法案では、消費者の承諾を得た場合に限り、例外的に契約書面等の電磁的方法による提供、例えば電子メールでの提供を可能とする制度改革を行うこととしました。

 一方で、デジタル化が進む社会の中で、消費者の利便を向上させつつ、更に手厚い消費者保護を実現していくことも重要です。例えば、契約の相手方が高齢者の場合には、家族など契約者以外の第三者にも承諾に関与させる仕組みをしっかりと政省令等で整備することにより、消費者保護にも万全を期した実効的な制度設計を検討してまいりたいと思います。

古屋(範)委員 ただいま大臣の方からも、デジタル化の必要性、また、高齢者の保護に関しまして更なる施策を講じていく、その考えがおありになるということを確認することができました。

 続けてまいります。

 四月二十七日の質問の際にも申し上げたんですけれども、特定商取引法などで、書面交付の義務は消費者にとって重要な制度であります。電子化をしていくということは、選択肢の幅を広げていくということにつながってまいります。

 大臣おっしゃったように、今回の契約書面の電子化については、あくまでも消費者の承諾を得た場合に限る、紙に代えて電子メールなどで契約書面等を受け取ることが可能になるという制度であります。私は、その質疑の際も、この承諾を取るということをいかに実質的なものとするかが重要なポイントだということを申し上げました。消費者が本当に納得して電子書面でよいということを承諾しているか、どのように確保していくか、ここが重要なのだということを申し上げました。

 その際、消費者庁の方から答弁をもらいました。口頭や電話だけの承諾は認めない、消費者が承諾をしたことを明示的に返答、返信がなければ承諾があったとはみなさない、また、承諾を得る際に、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メールで送付されるのかを明示的に示すことなどを規定するという答弁をもらいました。

 そこで、口頭や電話だけの承諾は認めない、また、消費者が承諾したことを明示的に返答、返信がなければ承諾があったものとみなさないということに関して、訪問販売での勧誘に関しては、本体の契約について消費者の承諾を取る際に、事業者が持参したタブレット契約に申込みフォーマットを提示してサインをさせる、消費者のスマートフォン、事業者サイトにアクセスさせて申込みをさせる等の方法も考えられるということで、消費者団体の方からは、この場合、電子交付の承諾の存在は明白と評価をされてしまうのか、本体の契約について、不意打ち勧誘や利益誘導による勧誘によって不本意な承諾となりがちなのが特商法の取引類型だ、それなのに、同じ勧誘場面での書面の電子交付については承諾の存在が明確であれば真意の承諾と認定されるのでは歯止めにならないではないか、また、そもそも訪問販売であるにもかかわらず、消費者の承諾を事実上得た上でタブレット、スマートフォンで申込みをさせることで、訪問販売ではなく通信販売に当たるという主張がまかり通るのではないかという懸念の声を伺ったところであります。

 ですので、先日伺った三点にわたる答弁の上に、更なる強化策として、例えば、承諾の取り方については、紙の書面か電磁的記録によってのみ可能とすること、その際、ウェブ上やタブレットでチェックを入れて承諾を取ることは認めない、また、紙の書面で承諾を取った場合、その承諾を取った旨の控えを消費者に対して渡させる、あるいは、消費者から承諾を取る際に、電磁的方法で提供されるその種類、内容を明示的に示させる、このようなことを強化策として盛り込むべきではないか、検討していくべきではないかというふうに思います。また、先ほど大臣もおっしゃったように、高齢者の場合には更に厳しい条件を付していく、このようなことを今後検討するということが必要なのではないかと思います。

 消費者庁の答弁を求めたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 消費者からの承諾の取り方については、承諾を得ていないにもかかわらず承諾を得たなどとする悪質事業者を排除する観点から、例えば、政省令等において、少なくとも、口頭や電話だけでの承諾は認めない、消費者が承諾をしたことを明示的に確認することとし、消費者から明示的に返答、返信がなければ承諾があったとはみなさない、承諾を取る際に、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メール等で送付されるのかを明示的に示すことなどを規定することが適切であると考えております。

 委員の御指摘にもありますように、承諾の取り方について、消費者利益の保護の観点から、口頭や電話だけでの承諾は認めないこととしている中で、電子メールなどの電磁的方法か紙で承諾を得た場合のみ認められることが考えられますが、その際に、例えば、オンラインで完結する分野は電子メールで、それ以外のものは当面、紙で承諾を得ることなどが考えられます。

 また、ウェブページ上やタブレットでチェックを入れる承諾を取ることは認めない、消費者から承諾を取る際に、電磁的方法で提供されるその種類や内容を明示的に示させるなど、委員御指摘の様々な点につきましても、そうした点を踏まえて十分に検討してまいりたいと考えております。

 また、契約の相手方が高齢者の場合には、家族など契約者以外の第三者にも承諾に関与させるなど、デジタル機器に不慣れなお年寄りが事業者のペースで本意ではない承諾をしてしまったりしないような仕組みも含めて、実効的な制度を検討していくことが必要であると考えております。

 いずれにせよ、法案成立後、オープンな場で広く意見を聴取する検討の場を設けるとともに、消費者委員会でも御議論いただき、消費者相談の現場にいらっしゃる相談員の方などから丁寧に意見を伺い、それらも十分に踏まえながら、消費者の承諾の実質化や電磁的方法による提供の具体的方法の在り方を検討してまいります。

古屋(範)委員 確認をいたしました。

 更に厳正な、政省令で更なる施策を強化をしていく、そして、特に高齢者の場合には家族など第三者も承諾に関与させるなど、消費者保護の観点から更なる強化策を考えていただきたいというふうに思います。それも、今後、政省令を検討していく場には、消費者団体など、十分な意見を聞き、オープンな場で検討をしっかりとしていくよう、ここで再度求めておきたいと思います。

 承諾を得る際に、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メールで送付されるのか明示的に示すことを法律にすべきではないかという御意見をいただいております。

 先日も答弁でいただいた、承諾を得る際には、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メールで送付されるのかを明示的に示すことが適切だという答弁をいただいております。

 これを明確に定めることとすると、この契約にはクーリングオフが適用されること、また、契約書面を受け取ることが原則であるが、承諾すれば、書面は交付せず電子データの送付だけになる、あるいは、電子データを受信した日から八日間の行使期間が始まる、電子データは、代金額や商品の内容やクーリングオフのことが記載されていることとなる。以上について、明確に消費者庁としても説明することを義務づける必要があるのではないか、法律に規定すべきだという御意見をいただいております。

 この御意見についての消費者庁の見解を聞きたいと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の点は、非常にいずれも重要な論点でございます。

 法律ではなく政省令で手続の細則を定めることによって、消費者トラブルや取引実態を踏まえて機動的な細かい制度の見直しが可能となるとともに、取引の特徴に応じて承諾の取り方を柔軟に規定することも可能となるなど、より手厚い制度設計を行うことが可能であると考えております。

古屋(範)委員 政省令で規定をしていくことの方が機動的、迅速に対応ができるということであります。確認をさせていただきました。

 次に、クーリングオフの通知による解除の効力発生時の問題点について伺ってまいります。先ほども、お二人の委員からもございました。

 消費者団体の方からこのような意見をいただきました。

 クーリングオフの書面による通知に、九条一項に電磁的方法を認める、この点については、一昨日の参考人も述べていましたけれども、書面によらないクーリングオフの意思表示が証拠上明らかであれば有効とする解釈が、以前から、判例、学説の見解であります。今回の改正案では、九条二項で、書面を発したとき、電磁的記録媒体に記録して発送したとき、効力を生ずるということとしております。この場合、消費者がクーリングオフ期間内に電子メールで解除の通知を発信したけれども、事業者のメールサーバーがプロバイダー側の原因などにより期間内に到達しない場合、クーリングオフの効力が発生しないということになってしまうのではないかという不安があります。

 四月二十七日の本委員会で、電子メールを発信と同時に到達して効力を生ずるものであって、クーリングオフは電子メールの送信をもってその効力が発すると消費者庁の見解が述べられました。この解釈自体は維持すべきであります。条文根拠がなければ、こうした解釈ができなくなるという懸念が残ります。条文として規定することが必要なのではないか、改正案の規定のままでは、悪質業者がクーリングオフのメールが期間内に届いていないから解除の効力を認められないと主張して、クーリングオフができなくなる可能性が大きいという意見をいただきました。

 そこで、改正案の九条二項の二、「記録媒体に記録された電磁的記録 当該記録媒体を発送した時」の解釈についてお伺いをしたいと思います。この規定のままでは電磁的方法による送信も発送時に効力が発生すると読めないのか、また、クーリングオフの効力について改めてただしたいと思います。よろしくお願いいたします。

片桐政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正法案においては、例えば第九条第二項第二号において、記録媒体に記録された電磁的記録について、「当該記録媒体を発送した時」と規定しております。これは、郵送等により到達までに時間を要する記録媒体に記録された電磁的記録については、発送したときに効力を生じる旨の規定を明示的に置くとともに、到達に時間を要しない電子メール等については、その性質上、発信と同時に到達して効力が生じることとなるため、電子メールについてはあえて規定を設けることはしていないというものでございます。

 熟慮期間を確保するというクーリングオフ制度の趣旨は貫徹されておりまして、これまでのクーリングオフ制度の考え方に変更を加えるものではございません。

 なお、仮に、クーリングオフ行使に係る電子メールが消費者の責めに帰することができない事由によって不到達となったとしても、消費者がクーリングオフの行使をしたことが明確であれば、電子メールの発信時に効力が発生し得るということでございます。

古屋(範)委員 電子メール発信時に効力を発するという点を確認をさせていただきました。

 時間が迫ってきました。最後に、消費者教育の必要性について一問伺いたいと思っております。

 高齢化に伴って、新製品、サービスの内容を十分理解できないで、高齢者の脆弱性につけ込むような悪徳商法の被害が増加をしています。また、デジタルプラットフォームを介した消費者取引の拡大を踏まえた対応が必要になってまいります。制度的な措置、執行体制の強化、これに加えまして、消費者が被害に遭ったときの対応はもちろんですけれども、被害に遭わないように、消費者教育に取り組む必要があります。この高度情報通信ネットワーク社会の発展に応じた消費者教育の推進が求められます。

 消費者のデジタル化への対応に関する検討会報告書では、デジタル社会に対応した消費者教育を、小中高、大学生、社会人、高齢者といったライフステージに応じ体系的に進めることが提言をされております。

 こうした消費者教育、大変重要だと思います。最後に消費者庁の見解を求めたいと思います。

片岡政府参考人 お答え申し上げます。

 社会のデジタル化は、生活の豊かさや質の向上をもたらすものでございます一方、デジタルサービスの広がりに起因する消費者被害のリスクもございます。そのため、消費者がデジタルサービスの仕組みやリスクを正しく理解すること、また、賢い消費者として自立することを支援するための消費者教育がますます重要になっていると認識しているところでございます。

 消費者庁では、消費者教育推進会議の下に社会のデジタル化に対応した消費者教育に関する分科会を立ち上げて、消費者が身につけることが望ましい内容などについて議論を進めて、去る五月十日に取りまとめを公表いたしました。分科会では、消費生活相談員など地域で活動するデジタル消費者教育の担い手に対する支援や育成、また、誰一人デジタル化に取り残さない観点からは、高齢者等を対象とした消費者教育への支援などが課題として指摘をされたところでございます。

 これらの課題を踏まえまして、消費者教育の担い手の支援、育成につきましては、分かりやすく、シンプルで、最新のトラブル事例が絶えずアップデートされるようなデジタル教材の提供、オンライン講座の推進など、また、高齢者などを対象といたしました消費者教育につきましては、見守りネットワークや民間の事業者などとも連携をして、高齢者向けの講座の提供を行う人材の育成支援などを検討していきたいというふうに考えているところでございます。

古屋(範)委員 本法律案の早期の成立を期して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

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