第204回国会 衆議院 消費者問題に関する特別委員会-3号

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、大臣所信に対する質疑、成年年齢引下げに伴う諸課題について質問をしてまいりたいと思います。

 成年年齢が引き下げられまして、契約年齢が引き下げられた場合に大きな問題となりますのが、十八歳、十九歳の若者が未成年者取消権を喪失するということで、悪徳業者の標的とされてしまい、不必要な高額な契約をさせられるなど、若年者の消費者被害が拡大をするというおそれがございます。

 大臣も、所信の中で、この件につきまして、令和四年四月からの成年年齢引下げまでおよそ一年となる中、消費者教育の充実等により、新たに成人となる若者が、被害に遭わない、自立した消費者になれるよう、しっかり取り組むということをおっしゃっています。

 若年者の被害の傾向なんですけれども、もちろん、社会経験が乏しい、また、適切に情報を得て必要に応じて交渉を行ったり、また契約判断を行う能力というのは非常に脆弱である。多くの消費者被害が発生をしております。特に、マルチ商法、キャッチセールス、アポイントメントセールス、サイドビジネス、エステなどの医療、美容サービス、インターネット取引などの被害が多く見られております。

 若年者は、やはり学校で、同級生とかあるいは先輩後輩、こういう関係に影響を受けやすいことから、人間関係を介しての被害が広がっております。一旦被害に遭ってしまうと、その先どうしていいか分からない、問題を抱え込んでしまうということで被害が拡大をしてしまいます。

 二〇二二年四月一日から、民法の成年年齢が二十歳から十八歳に変更されます。この変更が成年年齢引下げと言われている法改正なんですけれども、要するに、このときから十八歳になったら成人と扱われていくということで、十八歳から親権者の同意なく契約ができるようになってしまうということで、成年年齢が引き下げられて、資格が取れるようになるなど若者の活躍の場が広がる反面、未成年者の取消権が行使できなくなるわけです。

 この未成年者取消権といいますのは、御存じのように、未成年者が高価な買物をするときに、原則として親の同意が必要であって、同意がなければ契約を取り消すことができる権利です。

 今、若年者の被害の状況はといいますと、やはり二十歳を境に若年者の消費生活センターへの消費者相談件数が増加する傾向がある。ということは、引き下げられた場合には、この十八、十九のところがいわゆる悪徳業者のターゲットとなる危険性が高いと言えるのではないかと思っております。

 この対策の必要性についてどう思われるのか、成年年齢引下げによる若年者の消費者被害の拡大への懸念、また対策の必要につきまして、井上大臣の御認識を伺いたいと思います。

井上国務大臣 成年年齢引下げを見据え、若者が契約や支出管理などの基本的な知識を身につけることが重要であり、また、健康、美容関係や、いわゆる情報商材など、もうけ話に関するトラブルが特に若者の間に多いことを踏まえ、対策を講じていく必要があります。

 これまで消費者庁では、消費者教育の充実、制度整備や厳正な法執行、消費生活相談窓口の充実、周知などに取り組んでまいりました。

 消費者教育の充実については、成年年齢引下げも見据え、平成三十年二月に、若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラムを関係四省庁で取りまとめ、全国の全ての高校で実践的な消費者教育が行われることなどを目標に掲げて、集中的に取組を行ってまいりました。

 また、令和三年度は成年年齢引下げ前の最終年度に当たることから、更に取組を強化するため、成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンを三月二十二日に、関係四省庁の大臣などにも御出席をいただき、決定しました。

 消費者被害の最新の状況に留意しつつ、関係省庁と連携し、業界団体や大学にも御協力をいただき、若年者に必要な情報が実際に届くよう、今年度一年間、キャンペーンに基づき、重層的な取組を全力で進めてまいります。

古屋(範)委員 井上大臣の方から、若年者への消費者教育について御決意を伺うことができました。

 ただいまの答弁の中でもこの成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンについて触れられました。このキャンペーン、まさに全力で取り組んでいこうというキャンペーンだと思うんですけれども、ここは、消費者庁、また法務省、文部科学省、金融庁と、こうした四省庁が連携しながら、地方公共団体や大学等、関係団体、メディア等も巻き込んで重層的な取組をしていくものと承知をいたしております。

 若年者が消費者被害に遭わないように、先ほどもありましたように、高額なUSBを売りつけられるだとか、様々なキャッチセール、特に四月になりますと大学の近くや駅などでそういうことを行っている者を見つけますけれども、こうした成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーン、この具体的な内容、その狙いについてお伺いをしたいと思います。

片岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンは、成年年齢引下げの施行まであと一年となる中で、若者に対して、消費生活上の契約や家計管理などに関する教育、そして、消費者被害防止に資する教育の取組を更に強化するため、地方公共団体、大学等、それから関係団体、メディア等を巻き込んだ重層的な取組を関係四省庁が連携して行うことを目的とするものでございます。

 内容といたしましては、第一に、地方公共団体、大学等への働きかけの実施、それから第二に、消費者団体、事業者団体等の関係団体への働きかけの実施、そして第三に、イベントの開催やメディアを通じて周知徹底を行うこと、そして第四に、コンテンツの充実、活用の促進の四本の柱に基づいて取組を進めるものでございます。

 具体的な取組といたしましては、地方公共団体、大学等への働きかけにつきましては、キャンペーン決定と同日付で、各都道府県知事、各都道府県教育委員会委員長、そして各国公私立大学学長宛てに四省庁連名で文書を発出してございまして、関係団体等との連携による一層の消費者教育の推進などを依頼したところでございます。

 また、イベント、メディアを通じた周知につきましては、例えば、若者はSNS等を活用する機会が多いことから、若者に直接的に情報を届けるために、SNS等を活用した情報発信等にも積極的に取り組んでいくこととしてございます。

 成年年齢引下げ前の最終年度として、関係四省庁で一丸となって若者への消費者教育に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 関係省庁協力をしながら、しっかりと総合的な活動をお願いしたいというふうに思っております。

 また、今おっしゃいましたように、若者は直接会うということも難しい上に、なかなか、テレビですとか、あるいは新聞も読まないということもありますので、SNSの活用は大変有効ではないかなというふうに思っております。様々な手段を通じて若者への消費者教育を全力で行っていただきたいと思っております。

 やはり、大学に行きますと、なかなか皆を集めて集中的に何か教育をするということが難しくなってまいります。そういう意味では、小中高での教育というのは大変重要かと思っております。

 文部科学省にお伺いをしたいと思っております。

 消費者教育の推進に関する法律三条三項には、消費者教育は、幼児期から高齢者までの各段階に応じて体系的に行われるとともに、年齢、障害の有無その他の消費者の特性に配慮した適切な方法で行わなければいけないと規定をしています。

 若年者に対する消費者教育は、本来、民法の成年年齢引下げが実施されるか否かに関係なく、元々行わなければいけない重要な施策です。

 成年年齢が引き下げられると、いわゆる十八、十九の若年者、その中に高校三年生が含まれてきます。この年代が大人の市場に参入してくるということになりますので、こうした変化に応じて消費者教育の在り方を再検討する必要があるのではないかなと思っております。

 この十八、十九の若年者が有している親権者の同意に伴う契約締結の学習ですとか、あるいは体験の機会に代替するものでなければならないというふうに思います。机上の知識だけではなくて、やはり実態、消費者教育をどういう場面でどのように行っていくのか。これはもちろん、書面も含め、今はSNS等の問題もあると思います。こうした意味で、消費者教育を早急に充実させるべきと思っております。

 この消費者教育につきまして、消費者教育推進法の趣旨にのっとって、成年年齢到達の前の小中高等学校、そして成年年齢到達後の大学、専門学校などでの消費者教育の内容、また体制の充実、参加型の、体験型の教育の導入など、量的にも質的にも見直しを行う必要があるんじゃないかというふうに思います。文科省のお考えをお伺いしたいと思います。

寺門政府参考人 お答えを申し上げます。

 令和四年度より成年年齢が現行の二十歳から十八歳に引き下げられることに対応するため、関係省庁がより一層緊密に連携し、若年者への実践的な消費者教育の推進を図っていくことが重要だというふうに、委員御指摘のとおり、十分認識してございます。

 このため、文部科学省におきましては、まず、学習指導要領に基づきまして、多様な契約、消費者の権利と責任、消費者保護の仕組みなどにつきまして、社会科や公民科、家庭科を中心に、関連する教科等におきまして充実した消費者教育が適切に行われるように、その趣旨を周知を行っておりますとともに、教材といたしましては、消費者庁が作成されました高校生向けの消費者教育教材「社会への扉」の活用の促進を通じまして実践的な能力の育成を図ってございます。

 また、外部講師の活用としては、消費者生活相談員の方ですとか弁護士の方についても御協力をいただくようにしてございますし、さらには、教員の養成、研修の段階におきましても、消費者教育の充実について盛り込んでございます。

 さらには、広報啓発の一環といたしまして、消費者教育の専門家を地方公共団体へ派遣する事業ですとか、消費者教育フェスタ等の開催、各般の取組を進めているところでございます。

 また、各大学等におきましては、消費者教育に関する授業科目の開設ですとか、学生に対するガイダンスや学生相談等におきまして、トラブルやその対処方法に関する注意喚起、情報提供の取組を進めていただいておるところでございます。

 特に、成年年齢引下げの最終年度に当たります令和三年度につきましては、関係省庁との連携を一層強固にし、先ほど来出てございます成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンを実施するなどにおきまして、文科省としてもその役割を十分に果たしまして、消費者教育の更なる充実に努めてまいりたいと存じます。

古屋(範)委員 是非、この一年間、学校における消費者教育を全力で充実をさせて取り組んでいただきたいと思っております。

 成年年齢引下げは、十八歳、十九歳、若年者に単独で完全な有効な契約を締結するということを認めています。法律上、高額であってもできるわけであります。しかし、今、消費者被害に巻き込まれるリスクというのは当然高まるわけであります。若年者において被害やトラブルが多発している行為については、取消権については確保するなど、消費者被害の防止、被害の回復のための立法措置が必要なのではないかというふうに考えます。

 消費者被害で、クレジットや借入れの利用など、非常に、現金を持っていなくても高額な契約となってしまうということもあって、こうなった場合には若年者が債務を抱えるということになってしまいます。こうしたものを防ぐ制度設計が必要なのではないかと思います。

 消費者契約法の改正のときに、つけ込み型の不当勧誘について取消権、十八、十九を含む若年者は、一般に社会経験や知識が乏しい、脆弱であるということで、そこにつけ込まれて消費者被害に遭うおそれが多いということで、恋人商法とか霊感商法など被害が多く見られます。平成三十年、消費者委員会は、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆるつけ込み型勧誘の類型につき、特に、高齢者、若年成人、障害者等の知識、経験、判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権について意見を述べております。

 また、消費者契約法改正の際、衆議院における消費者特別委員会の附帯決議にも、この件に関して、要件の明確化の課題を踏まえつつ検討を行い、本法成立後二年以内に必要な措置を講ずるということが付されております。

 このような被害を防止するため、判断力、知識、経験の不足につけ込んだ消費者契約を締結させない、いわゆるつけ込み型不当勧誘について、若年者を含む、高齢者等の被害に対応するための、消費者が契約を取り消すことができる旨、消費者契約法に定めるべきと考えますけれども、この点について答弁を求めたいと思います。

坂田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、若年者の消費者被害を防止し救済することは大変重要な課題であると認識しております。

 平成三十年には、主として若年者に発生している被害事例を念頭に置き、いわゆる就職セミナー商法等の消費者の不安をあおる告知や、いわゆるデート商法等の恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用といった不当勧誘行為に対して取消権を追加するなどを内容とする消費者契約法の改正が行われたところでございます。

 その際に、若年成人のみならず、高齢者や障害者等も対象としたより幅広い取消権の創設について附帯決議が付されたこと等も踏まえまして、現在、消費者庁におきまして、消費者契約に関する検討会を開催いたしまして、消費者契約法の更なる改正を視野に入れた検討を行っているところでございます。

 検討会では、若年者が消費者被害に遭った事例等も取り上げて取消権の在り方等を検討しているところであり、報告書を取りまとめていただけるよう、引き続き鋭意検討を行ってまいりたいと思います。

古屋(範)委員 いよいよ成年年齢が引下げになるこのときに、十八歳、十九歳という年齢が大変重要になってくるというふうに思います。こうした法整備も含め、ここへの対応を充実させていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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