第204国会 衆議院 本会議-16号

古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、自由民主党・無所属の会、公明党を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 今回のコロナ禍で、医療、介護、子供、子育てなどの社会保障、生活困窮者支援や生活保護といった社会的セーフティーネットの重要性が、私たちの暮らしにとって安心の基盤であることが改めて実感されました。

 政府が二月に発表した二〇二〇年の出生数は、速報値で八十七万二千六百八十三人と、過去最少を記録しました。このように人口減少、少子高齢化の流れが続いている現状を鑑みますと、人々の安心を確保するため、社会保障制度は今後一層重要な役割を果たすこととなり、次世代育成支援対策の強化が急がれております。

 二〇一九年十月より、消費税率引上げによる税収を活用して、幼児教育、保育の無償化という新制度が施行され、はや一年半が経過しようとしております。

 家庭の経済的事情にかかわらず、希望すれば誰もが必要な教育を受けられる社会を目指し、公明党は教育費の負担軽減を一貫して訴えてまいりました。二〇〇六年に発表した、子育て支援策の集大成である少子社会トータルプランの中でも、幼児教育無償化を掲げ、所得の低い世帯や多子世帯などを中心に、無償化や負担軽減を段階的に実現させてきたところです。

 政府・与党としても、全世代型社会保障の構築に向け、消費税率一〇%への引上げの増収分を使い、財源を生み出すという大きな決断で、少子化を克服する、子育て世帯の負担を軽くするという強いメッセージを発信し、未来の宝である子供たちを社会全体で育てていく大きな第一歩になったと考えます。

 初めに、子ども・子育て支援に関する政府の基本的な考え方について、坂本大臣にお伺いいたします。

 具体的な質問に移ります。

 政府が昨年策定した全世代型社会保障改革の方針には、公明党が二十年以上にわたり推進してきた不妊治療の保険適用や、待機児童対策などが盛り込まれました。

 子育てと仕事を両立し、安心して育てられる環境整備も重要です。

 待機児童の解消に向けては、昨年末、二〇二一年度からの四年間で新たに十四万人分の保育の受皿を確保する新子育て安心プランが策定されました。保育の受皿確保とともに、保育の質の確保、向上、保育士不足の改善も重要であります。

 こうした取組に加え、安心して子供を産み育てられる環境整備に向けては、更なる経済的負担の軽減が重要です。

 公明党が長年主張を続けてきた幼児教育、保育の無償化については、現在、三歳から五歳は全員無償化しており、約九千億円の予算が計上され、毎年約三百万人の子供が対象となっております。

 今後、一部にとどまっているゼロ歳から二歳の無償化についても、更なる拡大を目指します。

 さらに、全国三千人の議員とともに行った調査でも、無償化に対する多くの感謝の声をいただきました。その中で、幼稚園として基準を満たさないため、これまで幼児教育無償化の対象になっていなかった、いわゆる幼児教育類似施設に通う世帯への支援がこの四月からスタートすることとなり、期待の声が届いています。

 今回の改正案では、待機児童問題の解決のためだけでなく、子育て支援を拡充する、重要な改正であると考えます。

 まず、田村厚生労働大臣に、新子育て安心プラン策定の意義、必要な保育人材を確保しつつ新たな受皿をどう整備していくのか、待機児童解消への御決意を伺います。

 また、今回の改正による国民へのメリットについて、坂本大臣、御説明ください。

 次に、児童手当法の改正について伺います。

 今回の改正では、待機児童対策の財源として、児童手当を見直し、年収一千二百万円以上の世帯を特例給付の対象から外すこととなりました。ただし、公明党の主張により、児童手当の所得制限の基準は、世帯合算ではなく、引き続き、現行の、夫婦のうち所得の高い方となりました。今後、子育て支援に必要な財源確保については、社会全体で子育て支援をしていくとの大きな方向性の中で、政府全体の予算の中で捻出すべきであります。

 現在の児童手当は、所得制限限度額以上の方々について、特例給付として、子供一人当たり月額一律五千円が支給されております。今回の特例給付の廃止について、政府は希望出生率一・八を目標に政策を進めてきたところであり、こうした政策に逆行しかねないとの批判の声もありますが、今回の改正は、全体として子育て支援の拡充になるものと考えます。

 こうした批判について、坂本大臣の御見解を伺います。

 あわせて、改正案には、児童手当の効果的な支給、支給要件の在り方について、検討規定が設けられております。今後の児童手当の見直しについて、お考えを伺います。

 次に、子育て支援における企業の責務について伺います。

 今回、子育て支援への企業の役割は非常に大きいことから、新プランの財源として、企業から追加で拠出をいただくこととなっております。加えて、各企業において育児休業を進める取組を加速させなければなりません。

 特に、男性の育児休業取得が重要な課題となっております。

 昨年十月、公明党女性委員会として、男性の産休制度の創設を盛り込んだ、真の男女共同参画社会の実現を目指す提言を菅総理に提出いたしました。

 この提言を反映した形で、厚生労働省は、今国会に育児・介護休業法の改正法案を提出しております。男性の育児休業取得促進のための男性の産休制度の創設を目指すものと承知しています。

 その際、従業員の育児休業取得など、子育て支援に積極的に取り組む中小企業には、新たな補助金の創設など支援策の充実が不可欠です。

 男性の育児休業取得については、くるみんマークがメルクマールになっています。今回の法案においても、これを条件とした新たな補助金を、中小企業向けの新しい五十万円の助成金を創設することとしています。

 子ども・子育て支援法において、企業主導型保育事業等の事業に対するものは別として、企業に対する直接の支援はこれまでにない画期的な支援であり、大変有意義なものと考えます。子育て支援を効果的に行うために、企業の力は不可欠であり、特に男性の育児休業取得促進への取組が重要です。

 子育て支援に積極的に取り組む事業主に対する助成制度について、中小企業を対象としている趣旨と、企業における子育て支援への責務について伺います。

 あわせて、今後どのように取組を進めていくのか、坂本大臣の答弁を求めます。

 次に、身近な地域における子育て支援について伺います。

 少子化や核家族化の進行、地域社会の変化など、子供や子育てをめぐる環境が大きく変化する中、子育て中の親の孤独感や不安感の増大等に対するため、身近な場所で適切な支援を受けられる体制の整備が重要です。

 子育て支援をする主体としては、企業だけではなく、地域のNPOや社会福祉法人、個人や大学など、いろいろな機関がありますが、これをつないでいくことが重要であると考えます。子育て家庭が身近な地域で安全かつ安心な子育てができるよう、総合的な支援を実施する必要があります。

 今回、市町村計画の見直しを通じて、多機能型の地域子育て支援を推進することとしていますが、市町村における新たな展開のイメージについて、どのような内容を想定しているのか、三年度予算も含め、御答弁ください。

 最後に一言申し上げます。

 昨年来の世界的なコロナ禍に直面し、都市住民の地方回帰が注目されるなど、これまでの国や地方の在り方が大きく変貌しつつあります。国として、少子高齢社会のグランドデザインを明らかにし、次世代を育てるための政策の優先順位をどうするのか、議論を深めていくことが求められています。

 私たちも、公明党の強みであるネットワーク力を存分に発揮し、国民に寄り添い、一人一人の声を的確に捉えた上で、少子化対策に全力で取り組んでまいります。

 今回の改正法案は、子育て支援を進めるため、大いに意義のある法案であります。早期の成立を期して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

国務大臣(坂本哲志君) 古屋範子議員の御質問にお答えいたします。

 子ども・子育て支援の基本的考え方についてお尋ねがありました。

 我が国の少子化の進行が深刻さを増す中、コロナ禍における結婚、出産の今後の推移についても、危機感を持って注目していく必要があると考えています。少子化の背景にある個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む隘路の打破に強力に取り組むことが重要です。

 政府では、これまでも、幼児教育、保育の無償化、高等教育の修学支援など、子育て世帯全体の支援を充実させてきたところです。

 さらに、今般、新生活への経済的支援を含む結婚支援、不妊治療助成の拡充を含む妊娠、出産への支援、待機児童の解消のための新子育て安心プランの実施や、男性の育児休業の取得促進など、男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備など、新型コロナウイルス感染症を踏まえた取組も含め、結婚、妊娠、出産、子育てのライフステージに応じた支援策を全体として充実させることとしています。

 引き続き、少子化社会対策大綱等に基づき、必要な安定財源を確保しつつ、少子化対策を全体として確実に進めてまいります。

 本改正法案のメリットについてお尋ねがありました。

 今回の改正では、待機児童の解消に向けた事業主拠出金の上限割合の引上げを行います。これにより、公費に加えて、新子育て安心プランの実現のため企業から追加拠出いただいた一千億円を保育所等の運営費に充当でき、保育の需要の増大に対応できるようになります。

 次に、市町村計画の任意記載事項を追加します。これにより、地域の子ども・子育て支援を行う関係機関相互の連携の推進を図っていくことで、子育て家庭への様々なニーズに対応した支援が円滑に進められることが期待されます。

 さらに、子育て支援に取り組む事業主に対する助成制度を創設します。これにより、従業員が希望に応じて育児休業等を取得しやすくする環境整備を進めていきます。

 これらにより、子ども・子育て支援施策の充実が更に図られると考えています。

 児童手当の見直しについてお尋ねがありました。

 子育て世帯に対する支援としては、これまでも、幼児教育、保育の無償化などを行っており、さらに、不妊治療助成の拡充や、新子育て安心プランの実施による待機児童の解消などを行っていくことから、子育て世帯全体への支援を充実させてまいります。

 このうち、待機児童問題については、四年間で十四万人分の保育の受皿を整備することとしました。この運営に必要となる追加費用については、今般の児童手当の見直しにより生じる財源等に加え、企業からも一千億円を追加拠出していただき、所要額を確保しています。

 児童手当の特例給付の見直しについては、このような総合的な少子化対策を進める中で、長年の課題である待機児童問題の最終的な解決を図るものであり、全体のバランスを考えた上での措置であることを御理解いただきたいと考えています。

 また、改正法案では、附則に検討規定を設けており、子供の数等に応じた児童手当の効果的な支給及びその財源の在り方や支給要件の在り方について検討することとしています。

 その際には、少子化の状況を始め、子ども・子育て支援に関する施策の実施状況、子育て家庭への影響等もよく注視しながら、少子化の進展への対処に寄与する観点から検討してまいります。

 くるみん認定を受けた中小企業に対する助成制度についてお尋ねがありました。

 企業の責務として、子ども・子育て支援法においては、労働者の職業生活と家庭生活との両立を図るための雇用環境の整備を行うことにより、雇用する労働者の子育ての支援に努めることとされています。

 今回の助成制度は、従業員に対して育児休業の取得を促進するなど、子育て支援を積極的に行う事業主に対する助成を行うことで、こうした支援に取り組もうとする事業主を後押しし、企業における子育て環境の整備を更に進めることを目的とするものです。

 厚生労働大臣が子育てサポート企業として認定する、くるみん認定企業については、大企業と比べ、中小企業はその企業数に比して認定企業の割合が低い状況となっております。こうしたことから、特に中小企業への後押しを強めるべく助成を行うことといたしました。

 今後、制度の詳細について、経済界からの意見も踏まえながら、厚生労働省とも連携しつつ、助成事業を行う体制の整備や事業主への制度の周知も含めて検討を進めてまいります。令和三年度の下半期から速やかに助成事業を開始することができるよう、準備を行ってまいります。

 多機能型地域子育て支援についてお尋ねがありました。

 在宅で子育てを行う家庭等が身近な地域で安全に、かつ安心して子育てができるよう、令和三年度予算においては、利用者支援事業では、地域の支援員が子育て支援を行う各事業所等を巡回し、連携、協働の体制づくり等を行うことの促進、ファミリー・サポート・センター事業では、安心して子供の預かり等を実施するため、地域子育て支援拠点等との連携の強化等を行うこととしています。

 本法案においても、市町村子ども・子育て支援事業計画に記載する事項に、地域の子ども・子育て支援を実施する関係機関相互の連携の推進に関する事項を追加することとしています。

 こうした関係機関の連携を進めることで、子育て家庭の個別の状況を機関相互で共有し、家庭の状況に応じた必要な支援へと結びつけられることなどが期待されます。引き続き、地域の子ども・子育て支援の取組を推進していきたいと考えています。

 以上です。(拍手)
    
国務大臣(田村憲久君) 古屋範子議員にお答えいたします。

 待機児童の解消についてお尋ねがありました。

 新子育て安心プランでは、できるだけ早く待機児童の解消を目指し、女性の就業率の上昇に対応するため、令和三年度から六年度末までの四年間で約十四万人分の保育の受皿を整備することといたしております。

 その際、地域の特性に応じた支援、魅力向上を通じた保育士の確保、地域のあらゆる子育て資源の活用を柱として、取組を推進していくことといたしております。

 各自治体における待機児童解消に向けた取組をしっかりと支援し、できるだけ早く待機児童が解消されるよう取り組んでまいります。(拍手)

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