第210回国会 衆議院 厚生労働委員会-4号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、五人の参考人の皆様、国会においでいただきまして、貴重な御意見をいただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず、脇田参考人、それから大曲参考人、お二人にお伺いをしてまいります。

 新たな専門機能、日本版CDCの創設についてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 脇田先生の方からも、横断的、迅速な調査、分析、研究が重要であるという御意見も頂戴いたしました。また、大曲参考人からも、感染症は災害と同じく危機管理の対象とすべきであるという御意見をいただきました。

 政府がまとめました、次の感染症危機に備えるための対応の具体策におきましては、内閣感染症危機管理統括庁の設置、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して新たな専門家の組織を創設するということが決定をされております。今回のような新型コロナのパンデミックだけではなくて、平時から、今後発生する新たな感染症を想定した対策を進める組織として、緊急時対応体制の構築、感染症対応と専門家の育成等が期待をされているところでございます。

 平時から有事まで、感染症対策についても主導権を持って統括できる司令塔機能を持つ組織、専門知識を持って国にきちんと方向性を発言でき、かつ行動できる機関が創設されるべきと考えます。この日本版CDCへの期待、どのような組織が求められるのか、御意見をお伺いしたいと思います。

○脇田参考人 お答えいたします。

 感染症研究所は、そもそも研究所の成り立ちがワクチンの品質管理というところから戦後始まりまして、主には現在も病原体の研究機関というところでありました。この新型コロナウイルス感染症対策の前に、しかし、疫学、公衆衛生の対応部門を拡張しなければいけないということで、そこを拡張していくということを我々考えていました。実際に、パンデミックになりましてから、感染研の体制を強化していただくということで、現在は、疫学、公衆衛生部門と病原体の研究部門、これがほぼ同じぐらいの大きさになっています。

 ただ、やはり日本版CDCと言われますけれども、そういった公衆衛生対応の部門の強化が非常に重要でありまして、いざ何か感染症が来たときには危機管理としての対応を行う、やることが必要ということで、我々、機能強化をしてまいりました。さらに、NCGM、国際医療センターと統合されるということで、そこに更に臨床機能が加わるということですね。

 ですから、新たな感染症が発生したときに、直ちにNCGMと感染研は連携をして、科学的な知見を得て、どういった対応が必要なのかということを政府に専門的な助言ができる、そういった機能を持つということが何よりも大事だというふうに考えております。

○大曲参考人 ありがとうございます。お答えいたします。

 まず、思いつくところからお話をしたいと思います。日本版CDCという中で、やはり米国のCDCというのをモデルに語られると思っています。先々週ですかね、調査の目的で米国に行ってきました。大学病院、あとは郡のレベルの現状、いろいろなところを回ってきて、あとは診療所もそうですが、非常に驚いたのは、CDCはこういう指針を出している、だから我々はこれをやる。もちろん多少の味つけはあります、ただ、そこなんですね。ですので、やはり専門的な知見を集める、研究もする、その中で専門的な知見を統合する、メッセージにもするといったところがやはりできていて、そこへの信頼、市民もそうだし、医療者の信頼も非常に高いというところを強く感じました。そこは求められるだろうと思っています。

 もう一つは、米国ではNIHの機能ではないかと思います。つまり、研究開発をしっかりと行うというところです。恐らくは、言外にそういったところも必要だということを先生方はお求めになっていらっしゃるのではないかと思います。

 実は、NIHの中には病院があります。NIHの中の病院では、特に開発の、全ての段階の治験等もしっかりと行っています。ですので、NIHの中に病院があるというのは、そういう研究開発を進めるという意味では非常に重要だと思います。

 ただ一方で、日本の中で文脈で求められているのは、もっと広い医療対応のこともちゃんと検討するということではないかと思っています。それは、感染症は、別に特定の患者層だけがかかるわけではなくて、赤ちゃんでもかかるし、妊婦さんでもかかるし、高齢の方でもかかるし、持病のある方もかかるわけです。そうした方々における感染症の影響等々もちゃんと診療して診ていく中で見極めて、物によっては研究開発につなげていく、そういう機能もやはり要るんだと思っています。

 そういう意味で、NCGMが一緒にやるというのは意味があるのではないか、特に総合医療という観点で加わっていくということは非常に意味があるのではないかと思います。

 あとは、これは国のどの機関というわけじゃないですけれども、今日のお話を伺っていても、有事にちゃんと動ける人材を確保する、教育するということは非常に重要でありまして、その機能というものを厚く持つということは、私は、期待されていると思っていますし、必要だと思っております。

 私からは以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 今後創設をされる日本版CDC、本当に、研究とか分析とか、それから人材育成、また医療提供体制の構築、それからメッセージの発信、あらゆるものを担う組織であるということを今お教えいただきました。次期通常国会提出予定と私も伺っておりますけれども、しっかりとした司令塔機能をつくっていくべきということを学ばせていただきました。ありがとうございました。

 続きまして、大曲参考人にお伺いをしてまいります。

 今回の法律の改正点の一つでございますけれども、医療措置協定締結という観点が盛り込まれております。

 これまで、新型コロナウイルスの流行で病床が逼迫をしたという、私たちも大きな経験をしました。感染症の蔓延に備えて、地域の中核を担う病院に病床確保、発熱外来の設置などを義務づけているものであります。感染拡大への備えを平時から備えておくということは重要だと思いますし、改正案の意義は非常に大きいというふうに私は評価をしております。

 ただ、現状を見ますと、今回、協力義務化をされる医療機関が確保したコロナ病床は全体の約七割となっておりまして、既に感染症対応の主力を担っています。このことと、診療所を含めた全医療機関の九四%を占める民間医療機関、今日も意見陳述いただきました、感染症対応への協力は任意となっております。この改正で病床が大幅に本当に増える見込みはあるのかとの指摘もあるところです。

 この感染症対応を手厚くするために、都道府県が医療機関との協定をどこまで幅広く結ぶことができるかということがポイントだと思っております。この点について、参考人の御意見を伺いたいと思います。

○大曲参考人 ありがとうございます。

 委員が御指摘になった点は、私も、案を見まして、ちょっと考えたところはございました。

 ただ、やはり大前提として、全ての医療機関に対して都道府県がこういう声をかけるというところが大前提として非常に重要だと思います。これは絶対外しちゃいけないだろう。

 その中で、やはり、ここまでこのコロナという病気が世の中に回るようになると、どの医療機関も、職員さえコロナにかかるわけですから、逃げられないわけですね。その中で、重点医療機関ほどではないけれども何らかの形でコロナに関わるということは、不可避であろうと思います。例えば、自分の病院の中でクラスターが起こったときに対応ができないなんということは言えないわけであります。

 ということで、そうした観点から、重点医療機関ほどではなくても担えることはあるのではないか、そういう観点で、私自身は、全ての医療機関で都道府県と御議論いただきたいと思います。

 これは、実は裏返しで、コロナ診療だけではなくて、一般診療との両立という観点からも非常に重要ではないかと思います。
 実は、一般診療とコロナ診療のバランスは非常に難しくて、一般診療を縮めるというのは医療機関は非常に怖いんですね。というのも、それは地域のニーズであり、市民の期待に応えられないということを意味します。病院としての信用を失った場合どうなるのかというのは非常に怖いです。

 ですので、やはり、感染対策と同時に、そうしたことに関しても、行政との話合いの中で各医療機関の役割が決められていくということがあれば、有事にも各医療機関は自分たちの果たすべき役割ということに邁進できるのではないかと考えております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 この法案の早期成立を目指しているわけなんですが、成立した暁に、運用していく段階で、医療機関の現場にいらっしゃる関係者の方々からしっかりと御意見を伺って、適切な配慮をしていくことが重要だと感じました。ありがとうございました。

 次に、糸数参考人にお伺いをいたします。

 私も、かなり前なんですが、沖縄県立中部病院を訪問したことがございます。本当に、県の予算を投じて研修医の指導、育成を行っていらっしゃるということで、大変すばらしいというふうに感じました。それはもう全国に行き渡っているというふうに思います。

 先ほども、社会は今ウィズコロナで、社会経済活動は元に戻りつつあるけれども、医療者はいまだにゼロコロナ体制だという現実がございました。本当に御苦労なさっている、疲労も本当にたまっている、緊張状態の中におありになると思います。

 保健所の体制強化についてお伺いしてまいります。

 コロナ拡大に伴う中で感染者が増加をしてくる、本当に保健所の業務が逼迫したという現実がございます。私も、地元は神奈川、横須賀市ですけれども、地元に保健所がありますので、直接、職員からも声を伺ってきました。

 今回の改正で、保健所の体制、地域の関係者間の連携を強化しようということが盛り込まれております。保健所は、日常業務が増加をしていく、赤ちゃんから高齢者まで、本当に多くのことを担っていらっしゃるんですが、有事に対応できる余力が本当にないんだろうというふうに思います。

 保健師という専門職が専門性の高い業務に専念できる環境づくりについて、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

○糸数参考人 ありがとうございます。

 保健所につきましては、医師の発生届が最初に着くというところがありますので、全数把握を今年の九月までずっと続けておりましたので、先ほど少し申しました、令和二年の八月には千七百人だった患者が、翌年には一万七千人、今年は十万人を超えたというところですが、全ての書類にチェックをして、その後の健康観察等につなげないといけないというところがございましたので、どうしてもハイボリュームへの対応というところで逼迫が来たと考えております。やはり、その中でも、事務的な作業がかなり多いですので、外からの派遣人材によってこなせる仕事も大分分かってまいりました。

 保健師というのは、やはり、専門性を持った形で全体がうまくいっているかどうかを見るような統括する立場であったり、あるいは健康観察で専門的な配慮が必要な方々、あるいは難病とか未熟児とかそういうふうな、元々行っている、専門性が発揮できるようなところにフォーカスして仕事に当たるべきだと考えておりますので、感染状況にもよりますけれども、こうやって増えていった中で、保健師がやる仕事というのをしっかりと維持をしておくというふうな、一つのプランニングのようなものが必要になるのではないかと考えております。

 これは、現場の保健師、保健所とも意見交換をしながら、今後、また自治体としても考えていきたいと考えております。

○古屋(範)委員 現場からの御意見、ありがとうございました。国としても、しっかりこうした人員の確保に関して支援をしていかなければならないと思います。

 もう一問、大曲参考人にお伺いいたします。第八波への備えを伺いたいと思います。

 新型コロナウイルスの第八波、インフルエンザと同時流行が懸念をされています。この同時流行を深刻化させないことがまず重要だと思います。コロナもインフルもワクチン接種を更に推進していく必要があるんだろうというふうに思います。

 新型コロナの第八波の見通しについて、二〇二三年二月までに八百万人程度が感染する一方、ワクチン接種が順調に進めば三〇%近く減らすことができるとのシミュレーション結果を、京都大学の西浦教授が示されております。

 ヨーロッパやアジア、一部の国々で感染拡大が起きているような状況で、第八波は非常に起きる可能性が高いというふうに思います。そこで、感染拡大が大規模になったときに、インフルエンザの対応も重なって、救急など医療機関の逼迫も避けられないというふうに思います。

 同時流行の事態を想定した対応、第八波への備え、これについて参考人の御意見を伺います。

○大曲参考人 お答えいたします。

 八波に関しての対応というのは、特にインフルエンザとの同時流行の対応に関してはもう大きな議論になっていて、政府の方からも大きな指針が出ていることは承知しております。そこはまず踏まえた上でと考えております。

 その上で、重点として押さえるところが何かという観点で申し上げるとすれば、一点目は、今日も議論になっておりますが、まずは、病院ですね、入院する医療機関の前の段階での、症状がある方々の受皿をしっかり整備することではないかと思います。

 抗原検査を使ったコロナの患者さんの自宅での検出、それに基づいたいわゆるケアフローの整備ということ自体は非常に重要なことだと思うのですが、我々としては、それを超えた波が来たときにどうするかということを考える必要があると思っています。そのときに受皿としての診療医療機関あるいは診療所の数というものが大きくなるということは非常に重要だと思っておりまして、そこの拡充ということはやはり非常に重要だと思っております。

 また、ワクチンに関してでありますけれども、今後、いつ、どれぐらいの大きな波が来るかは、人々の行動ですとか、どういう変異株が世の中に入ってくるのかというので、いろいろと不確定性があって言いにくいところはありますが、一つ、我々が目標を立てて進めることができて結果が期待できるのは、やはりワクチンではないかと思います。

 議員がおっしゃったように、ワクチンを打つことによって、時期が後ろにずれるかどうかはともかくとして、全体として患者さんが減り、そして全体として入院が必要なぐらいの重症度の方が減ることはやはり十分期待できるわけでありまして、そこはもう国全体で取り組んで、一気にワクチンの接種は進めていくべきだと思います。

 いつ打つべきかとか、個人個人のレベルでいけば非常にお悩みのところが多いようで、すごく分かるんですが、一つ気にしているのは、ある程度波が立ち始めてから慌てて打つということになると、結局、打つだけの受皿が用意できないとか、要は自分が希望した日時に打てないとか、そういうことになると、それはそれでストレスの大きいことでありますので、私個人は、もう今からでも、ワクチンはタイミングが来た方はすぐに行っていただく方がいいのではないかと思っております。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 今先生からお話のあったワクチンについて、脇田参考人にお伺いいたします。

 今回、新型コロナのオミクロン株に対応したワクチン接種、三回目以降の接種について、前回接種から間隔は少なくとも三か月ということで、短縮をされました。十月二十一日から五回目の接種も可能となっております。

 抗原の値というのは接種から三か月ほどたつと徐々に下がるので、接種の期間を短くしてワクチンの効果を一定程度に維持をしていくという判断だと思うんですが、この接種期間の短縮について御意見があれば伺いたいと思います。

○脇田参考人 お答えいたします。

 ワクチンの接種期間が短縮をされたということですね。五か月から三か月になりました。これは三か月の方を推奨するということではなくて、ワクチンの追加接種について、三か月の間隔でも有効性と安全性が担保されますよという話なんですね。ですから、三か月でも打つことは可能ですということになりました。

 一方で、次の波が、いわゆる第八波というところがやはり年末年始にかけて来るということが予測される中で、より多くの方になるべく早く四回目、五回目の追加接種を打っていただきたいということがありますので、それに関してオミクロン株対応のワクチンをなるべく早く打っていただきたい、そういうことだと思います。

○古屋(範)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わりにいたします。
 本日いただきました御意見、法案審議にしっかりと生かしてまいります。大変にありがとうございました。

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