脳脊髄液減少症 研究報告がでました

党脳脊髄液減少症ワーキングチーム(渡辺孝男座長・参院議員)で、「脳脊髄液減少症に診断・治療の確立に関する研究」の平成22年度総括研究報告書についてヒアリングを行いました。100人の症例中、脳脊髄液減少症と判定されたのが16人、その疑いがあるものが17例。発症は極めて稀とされていたが、報告書では「頻度は低くない」と指摘しています。そのうち、何らかの外傷が原因で発症したのが5人で、うち2人は交通事故による外傷。研究班は今後、定義自体がまだ定まっていない脳脊髄液減少症の診断基準や、治療のガイドラインづくりを進めていく方向です。ずっと患者会とかかわってきて、ここまで前進し、本当によかったと思います。

(以下、2011.7.1付 公明新聞より引用)

【脳脊髄液減少症 厚労省研究班が中間報告/患者救済に高まる期待】

激しい頭痛やめまいなどを引き起こす脳脊髄液減少症について、厚生労働省研究班(代表、嘉山孝正・国立がん研究センター理事長)がこのほど中間報告書をまとめた。報告書では、髄液漏れの存在を認めたほか、焦点となっていた交通事故などの外傷による発症について「決してまれではない」として、これまでの認識を改める内容になっている。今後、診断基準が確定すれば、早期診断・早期治療の体制確立につながることが期待される。誰もが発症の可能性を持ちながらも、一般に認知されていない同症の実態を探るとともに、公明党の取り組みを紹介する。
 『主要原因は事故外傷/「やっと認識が変わった」』
 「やっと、ここまで国の認識が変わったのかと思うと、率直にうれしい」。こう語るのは、埼玉県在住の脳脊髄液減少症患者・吉田孝治さん(61)だ。
 吉田さんが発症したきっかけは、2001年12月に起きた交通事故だった。車を運転中に、対向車と衝突し、車は大破した。幸い、吉田さんは大きなけがをしなかったが、事故から2日後、しびれが全身に広がり、吐き気や寒気を感じるようになった。
 3カ月間の入院生活を送ったが、病名は分からず、揚げ句の果て、事故を起こした相手方の損保会社から「むち打ち損傷でここまでひどくなる訳がない」などと嫌みも言われた。退院後、15カ所もの病院を回ったが、「どの病院でも脳脊髄液減少症と診断されることはなかった。中には詐病扱いする病院すらあった」と、吉田さんは当時を振り返る。
    ◇ 
 関西地域に住むAさん(70歳代の女性)も同じような経験を持つ。Aさんは交通事故が原因で発症したが、しばらくは同症の存在を知らず、ほぼ寝たきりの生活を強いられた。自宅近郊の病院を回っても「交通事故でこういう症状にはならない」などと医師から言われ、「なしのつぶて状態で、精神的にも追い詰められた」とAさんは語る。
 追い打ちを掛けたのが、交通事故関係者の対応だった。事故の責任は百パーセント、相手方にあった。しかし、担当した警察や損保会社からは「あなたがいつまでもそういう状況だと、相手側がかわいそうじゃないか」と言われた。「加害者扱いされるとは思いもしなかった。この病気のことを知らないからといって、許されることではない」と、Aさんは語気を強める。
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 今回、厚労省研究班がまとめた報告書によると、同症と判定された患者16人中、何らかの外傷が原因で発症したのが5人で、このうち2人は交通事故による外傷だった。同症の発症原因については、これまでも事故外傷との因果関係が指摘されてきたが、国の研究報告で裏付けられたのは初めてだ。
 現在、Aさんは損保会社と訴訟中であり、「今回の報告書は裁判に大きな影響を与えるはず」とAさんは語っている。
 『「患者は兵糧攻め状態」/早期治療体制の確立が急務』
 「この病気は、まさに兵糧攻めのようなもの」。こう語る埼玉県在住のBさん(50歳代の女性)も、同症に苦しみ続けている一人だ。
 Bさんは08年5月に交通事故に遭い、同症を発症した。勤めていた会社では休職を余儀なくされ、車の運転もできなくなった。このため、移動手段はタクシーしかなく、自宅と病院の往復には1カ月で約10万〜20万円も掛かるという。
 さらに、同症の治療に有効とされるブラッドパッチ療法は保険適用されないため、1回に約30万円の自己負担が求められる。そのほか、症状を緩和する治療の費用などを含めると、Bさんは年間約350万円を全額自己負担しているという。「多くの患者は、治療を続けるために貯蓄を崩してやりくりしている。中には生活保護を受けなくては生きていけない人も多い。一日も早く、患者を救済する制度をつくってほしい」と、Bさんは強調する。
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 今回、報告書をまとめた厚労省研究班は、今後、いまだに定義自体が定まっていない同症の診断基準や治療ガイドラインの策定を進めるという。
 『公明、有効治療の保険適用など強く主張』
 公明党は、脳脊髄液減少症の治療法確立や、ブラッドパッチ療法への保険適用などを一貫して強く求めている。
 04年3月には、公明党の古屋範子衆院議員が同症の治療法研究や保険適用を求める質問主意書を政府に提出したほか、06年3月の参院予算委員会で公明党の渡辺孝男氏が、ブラッドパッチ療法への保険適用を強く主張。さらに、翌4月には他党に先駆けて、党内に脳脊髄液減少症ワーキングチーム(WT、渡辺座長)を結成した。
 また、当時、文部科学副大臣だった公明党の池坊保子衆院議員が、全国の教育委員会に対し、同症で苦しむ子どもたちへ適切な対応を求める事務連絡を出し、実態把握に努めている。
 一方、公明党の推進によって、厚労省による本格研究がスタートし、今回の報告につながった。渡辺WT座長は「一日も早い早期診断・早期治療の体制確立をめざし、公明党として全力で取り組んでいく」と話している。
 『因果関係の周知が必要/特定非営利活動法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」/中井 宏代表理事』
 厚労省研究班がまとめた報告書への評価や今後の課題について、特定非営利活動法人(NPO法人)「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」の中井宏代表理事に聞いた。
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 交通事故と発症の因果関係について、これまで医学界全体にあった「まれにしか発症しない」という認識が改められたことを率直に評価しています。
 しかし、いまだに多くの医療機関や警察、損保会社などの関係者は、脳脊髄液減少症について認知していないのが現実です。このため、自分が何の病気なのか知ることができない患者も少なくありません。
 今後、大切なことは、今回の報告書が示した事実を広めていくことです。ぜひ、公明党の国会議員、そして地方議員の皆さんに、一層の協力をお願いします。

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