(党員講座)労働者派遣法改正案のポイント(公明新聞 2015年5月18日付)

派遣労働者の雇用安定めざす

正社員化への道開く

派遣雇用の固定化防ぐ

古屋範子党厚生労働部会長

労働者派遣制度を見直し、派遣労働者の雇用安定やキャリア形成支援を強化することなどを柱とする労働者派遣法改正案の国会審議が本格化しています。改正案のポイントについて古屋範子党厚生労働部会長(衆院議員)に聞きました。
 『ポイント』
 ●派遣事業を全て許可制にして厳格化
 ●期間制限で派遣労働の固定化を防止
 ●26業務なくし分かりやすいルールに
 ●雇用安定措置など派遣元に義務付け
 ●派遣労働は「臨時的な働き方」と明記
 ●均等・均衡待遇について調査研究も
 ――今回の改正のポイントは。
 古屋範子党厚生労働部会長 これまでも派遣労働者の保護と雇用の安定のために改正を行ってきましたが、今回の改正も、立場の弱い派遣労働者を守るためのものです。
 ポイントは、これまで業務ごとに派遣労働者が働ける期間が異なっていましたが、どの業務が期間制限の対象となるか分かりにくいとの声が、派遣元、派遣先企業だけでなく派遣労働者からも上がっていました。改正案では、全ての業務に一律の期限を設け、分かりやすい制度へ変更します。
 また、正社員を望む派遣労働者が、正規雇用に進めるようさまざまな支援策を施します。さらに、派遣労働者の待遇の改善を行います。
 こうした制度が行き渡るよう、届け出制と許可制に分かれている派遣事業を全て許可制にし、派遣業界の健全化を図ります。
 ――全ての派遣業務に一律の期間制限が設けられるのですか。
 古屋部会長 これまで期間制限のなかったソフトウエアの開発などの「専門26業務」の区分を廃止し、全ての業務で期間制限を設けます。
 派遣元に有期雇用されている派遣労働者であれば、派遣先の同じ職場(会社の「課」など)で働ける期間の上限を3年に設定します。また、派遣先の事業所ごとで、派遣労働の受け入れができる期間を原則3年とする制限を設けます。
 ――期間制限を設定した理由は。
 古屋部会長 派遣労働者個人に対する期間制限は、不安定な有期雇用の派遣労働のまま、同じ職場に同じ仕事で固定されることを防ぐためです。
 派遣先ごとの期間制限は、派遣労働者に仕事を任せ続けることで、正社員との置き換えが進むのを防ぐためです。
 また、現場をよく知る労使の話し合いにより、派遣先が派遣受け入れを延長することもできるようにして、より実態に即した判断を可能としました。過半数労働組合などが延長に反対した場合には、派遣先に今後の対応などを説明する義務も求めています。
 こうした対応を促すため、公明党の主張で、法の運用にあたっては、派遣就業が臨時的・一時的なものであることを原則とし考慮すると法案に明文化させました。
 ――しかし、3年の期限がくれば、また不安定な雇用状態に戻ってしまうとの声がありますが。
 古屋部会長 改正案では、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続のために、さまざまな対策を盛り込んでいます。
 まず、派遣期間が終了した労働者の雇用の安定を図るため、派遣元に対し、(1)派遣先への直接雇用の依頼(2)新たな派遣先の提供(3)派遣元での無期雇用(4)その他、安定した雇用継続のために必要な措置を取る――責務を課しています。
 さらに、派遣労働者に対する計画的な教育訓練や希望者へのキャリア・コンサルティングも派遣元に義務付けています。
 こうした義務規定に違反した業者については許可の取り消しを含め、厳しく指導していくとしています。
 ――派遣先との待遇の違いも指摘されています。
 古屋部会長 派遣元には、派遣労働者の賃金などについて、派遣先の労働者との間でバランスの取れた待遇を確保するために考慮した内容を説明する義務を新設します。
 また、派遣先には、業務に関連した教育訓練の実施や、休憩室など福利厚生施設の利用について、派遣労働者への具体的な配慮を義務付けています。
 ――法案成立後の対応は。
 古屋部会長 法案には、施行3年後の見直しに加え、(1)能力の有効発揮、雇用の安定などに資する雇用慣行が損なわれる恐れがある場合は速やかに検討を行う(2)均等・均衡待遇の確保を検討するための調査研究など必要な措置を講じる――との見直し、検討規定を設けています。
 これからも公明党は労働者の雇用と権利が守られるよう全力を挙げていきます。

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