第159回国会 衆議院 決算行政監視委員会 第4号
○古屋(範)委員 本日、初めて決算行政監視委員会で質問をいたします、公明党の古屋範子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は、奨学金制度についての質問を行ってまいります。
総括質疑ということでありますので、その前に、まず初めに、平成十四年度決算検査報告についてお伺いをいたします。
平成十四年度決算検査では、三百三十七件の報告事項が報告され、約四百億円という税金のむだ遣いが指摘をされております。これは、前年に比べまして、件数、金額ともに大幅に増加しており、予算執行の適正化が求められているところでございます。
厳しい財政事情などを背景として、財政の現状や課題に対する関心が著しく高まっており、行政改革が強く求められている今日、この検査結果を十分に踏まえ、今後の予算編成に反映するため、徹底した事業の見直しを図るべきであるというふうに考えます。この平成十四年度決算検査報告について、谷垣財務大臣の御所見をお伺いいたします。
○谷垣国務大臣 今委員が御指摘になりました平成十四年度決算検査報告、これは、不当事項が前年度に比べて件数、金額ともに増加しているわけであります。これは、一面では、会計検査院が非常に努力されて検査をされたということもあるのだろうと思っておりますが、この金額、件数、ふえていることはまことに遺憾なことだと思っておりまして、この検査報告を踏まえて、予算編成等に関連する事柄につきましては、関係各省庁とよく協力をしながら、これは予算編成にできる限り反映していくべきものだ、こう考えております。
また、あわせて、厳正な予算の執行というのを各省庁に、これはお願いというよりか、財務当局としてはむしろ、指導すると言うとちょっと言葉が強いかもしれませんが、指導するぐらいのつもりでやっていかなければならないと思っておりまして、予算の効率化あるいは合理化、適正かつ効率的な予算執行ということに向けて、さらに意を用いてまいりたいと思っております。
○古屋(範)委員 さらにむだゼロに向かいまして御努力をお願いしたい、このように思います。
次に、奨学金制度について質問をしてまいります。
今日、主に、長引く不況の中、またリストラや給与カットを初めとして実質的な収入減が親たちを直撃し、教育費負担の圧迫は、今や多くの家庭が抱える共通の話題、課題となっております。そうした中、子供たちが安心して勉強に専念できるための奨学金制度は、何より心強く、大変に貴重な制度であります。
平成十三年、日本の合計特殊出生率は一・三三と過去最低を記録しておりますが、少子化の要因の一つとして未婚率の上昇などさまざまな指摘がございます。
総理府の一九九七年九月の男女共同参画社会に関する調査では、出生率減少の理由といたしまして、子供の教育にお金がかかる、これが五八・二%、第一位となっており、また九九年二月の調査、少子化に関する世論調査でも、子育てのつらさについて最も多かった回答が、子供の将来の教育にお金がかかる、これが四四・四%と、世論調査の結果を見る限り、教育費の負担が家計に重くのしかかっていることが言えます。
さらに、文部科学省の子どもの学習費調査、二〇〇〇年度調査によりますと、幼稚園から高校まで、四歳から十八歳までの十四年間すべて公立で学んだ場合、その学習費総額は五百六万円、大学進学の場合、さらに初年度納入額、入学金と年間授業料を合わせまして、国立大学で約七十七万円、また私立大学で平均約百二十八万円が必要となります。
こうした実情を考えますと、少子化の大きな要因の一つとなっている家計の教育費負担を軽減する政策はまさに国の重要課題であり、そして、柱としての奨学金制度は大変に重要な役割を果たしていると考えます。
そこで、初めに奨学金事業の意義について文部科学副大臣にお伺いいたします。
○原田副大臣 ただいま先生が御指摘いただきましたように、教育の大事さ、それはもう否定する者はいないわけでありますが、あわせまして、教育また教育費の重圧というのもこれは本当に大きなものになってまいりました。いろいろな困難を乗り切りながら今日まで日本が発展してきたのも、私は日本の教育がしっかり果たしてきたのではないかな、そういうふうに思うわけでございますし、また、その中で、御指摘のような奨学金事業が担ってきた役割というのも、これはもう非常に大きいものがある、こういうふうに思っております。
奨学金制度は、人材の育成と教育の機会均等、この大きな課題を実現すべく施行されておるところであります。人材の育成は、何といっても持てる力を、経済的な理由のためにそれが育たないというのは非常に問題でありまして、しっかり人材の育成を進めなきゃいけませんし、あわせて教育の機会均等、これはもうだれにもひとしく教育が行き渡らなきゃならないわけでありますから、そういう観点からも、この奨学金事業が進められてきているところでございます。
あわせて、これが結果的に家計に占める教育費の負担を軽減するということもあろうかと思います。実はこの奨学金制度、本格的には、我が国の場合に、昭和十八年からこの奨学制度が創設されたところでありまして、平成十五年度末まで六十年間に貸与した学生生徒数は七百十万人に及ぶ。その事業規模、累計で六兆一千二百億。これだけの人材を私どもはこの奨学制度によって支え、そして世の中に送り出してきたということに誇りを持たなきゃいけませんし、しかし、あわせてこれからがまたもっと大事なことである、このように考えているところでございます。ゆえに、今後ともこの奨学制度をさらに充実させていかなければならない、こういうふうに思っておるところであります。
平成十一年度に、いろいろそのときの社会経済事情を踏まえて、従来は日本育英会が中心でありましたけれども、奨学制度、質量ともに大きく発展したところであります。十六年度、今年度におきましても、貸与人員九十六万五千人、事業総計六千八百二十億、こういう事業規模で、いかなるニーズにもきちっと対応できるように今取り組んでおるところであります。
○古屋(範)委員 大変歴史があり、また多くの人材を輩出してきたこの日本の奨学金制度という御答弁であったかと思います。
次に、育英奨学金事業の推移についてお伺いをいたします。
学びたいという意欲のある人はだれでも学ぶことができるというのが文化国家の最低の条件であると思います。私も奨学金制度はそれを達成するために必要不可欠な柱であると考えております。憲法第二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定をしております。
私ども公明党は、勉強意欲のある学生に平等に経済的支援をするべきとの観点から、一貫してこの奨学金制度の拡充に全力で取り組んでまいりました。その結果、十六年度予算においては、無利子、有利子合わせ、貸与人数が九十六万五千人に上り、百万人の大台が目の前というところでございます。我が党は、野党時代の一九九九年四月から、日本育英会の第二種奨学金制度、これは有利子でございますが、きぼう21プラン奨学金として、希望者のほぼ全員が利用できる抜本拡充した結果、貸与人数が約十万人から二十五万人と大きく拡充をされております。
そこで、この五年間の奨学金の推移について、無利子、有利子、各金額と人数を御提示いただきたいと思います。
○遠藤政府参考人 平成十一年度からの数字を申したいと思います。有利子で申しますと、貸与人員が二十四万四千人、貸与金額で一千六百六十億円でございます。無利子の方が四十万一千人、二千百二十一億円となっております。平成十二年度で申し上げますと、有利子が二十七万六千人、一千九百五十三億円、無利子の方が四十一万五千人、二千百九十八億円。平成十三年度でございますけれども、有利子の貸与人員が三十三万一千人、二千四百四十六億円、無利子が四十二万二千人、金額が二千二百八十六億円。平成十四年度で申しますと、有利子の人員が三十九万二千人、金額で二千九百五十二億円、無利子で申しますと、四十万五千人、二千二百十四億円。平成十五年度でございますが、有利子が四十四万人、三千四百五億円、無利子が四十二万七千人、二千三百八十五億円。そして平成十六年度の予算が、有利子で五十二万七千人、四千三百十六億円、無利子で四十三万八千人、二千五百四億円、こういう数字になっております。
○古屋(範)委員 年々拡充をされているということであろうかと思います。
この奨学金でございますけれども、今、返還金の滞納者の増加の問題が最近深刻化をしております。現在、そのほかに緊急採用奨学金、また入学資金用の奨学金、法科大学院生の、海外留学希望者を対象とした奨学金制度も我が党の主張を反映していただいたものであるというふうに認識をしております。
次に、この奨学金の返還金の滞納についてお伺いをいたします。
会計検査院の検査によりますと、育英会におけるこの返還金の滞納が年々ふえており、十三年度末の延滞債権額は千五百六十二億に達しており、予測される全体の回収不能額は四百四十四億円になると見込まれております。奨学金は、返還された奨学金を後進育成のための資金として循環運用する制度であると理解をしておりますが、これ以上回収不能額がふえることになりますと、奨学金制度の根幹を揺るがしかねない重要な問題であるというふうに認識をいたしております。
実は、私の夫も、大学に入る前に父親を亡くし、この育英会の奨学金を受け大学を卒業いたしました。結婚しましてからもこの返還をしばらくの間していたという記憶がございます。この育英会の奨学金があって、大学を卒業して現在があるというふうに、大変ありがたいというふうに私自身も考えております。
この返還金の滞納額またこの滞納者の増加の原因について、文部科学省にお伺いをいたします。
○遠藤政府参考人 今御指摘がございました検査院の回収不能見込み額、四百四十四億円ということでございまして、これは要返還債権に係ります平成十四年度中の回収状況をもとに、これまで要返還総額が一兆七千六百三十一億円ございますけれども、これの十三年度末の滞納額千五百六十二億円のうちの将来の回収不能額を推計した想定の金額ということでございますが、返還金の滞納が増加いたしますことは、今後、奨学金事業を推進していく上で大きな障害となるもの、私どもそう思っておるわけでございます。
原因でございますけれども、さまざまな要因が絡んでいると考えられるわけでございますが、一つには、やはり社会経済状況あるいは雇用情勢等の影響、または病気など家庭の特殊事情等による経済的な問題がある、こう思っております。
それからもう一つは、これまでの事業規模の拡大に伴いまして、返還意識の低い者の絶対数がふえてきているということが懸念されるということも一つございます。
それから、従来、日本育英会でこの事業をやっておりましたけれども、返還金回収業務実施体制、必ずしも事業規模の拡大や奨学生の状況等に対応した、十分でなかったということも要因の一つになっているのではないか、こう考えておる次第でございます。
○古屋(範)委員 さまざまな原因が考えられるということでございますけれども、先ほど指摘をいたしましたように、この遅延債権全体について予測される回収不能額が四百四十四億ということで、新たな機構に移行するに当たり、滞納のさらなる増加が懸念される中、これらの不良債権は早急に償還されなければならないというふうに考えます。この具体的な方策について、まず文部科学省にお伺いをいたします。
また、今後は、返す能力のある奨学金貸与者に対しては回収対策を強化すべきであり、さらに、確実に返していただくことのできる返還金回収システムを構築すべきであると考えます。そうすることにより、新機構の財政基盤が強化をされ、それが新たな奨学金を必要としている一人でも多くの後進育成のための資金として活用することができるというふうに考えることができます。
この質問に関しては、副大臣のお考えをお伺いいたします。
○原田副大臣 御指摘のように、この奨学金は、先輩たちの返還金を踏まえて、また後進、後輩たちがその奨学金を受ける、こういうシステムになっておるわけでありますから、これはあくまでも借りた金は返してもらわなきゃなりません。ところが、先生御指摘のように、なかなかそれがはかばかしくないというのも事実でございます。私どもとしても、この返還金の回収業務については、特段の注意を払っておるところでございます。
具体的には、先ほど原因は局長からお話しになりました。ちょうどその裏返しになりますけれども、まずは奨学生に対する返還意識の徹底、これが必要だろうと思っております。奨学生募集のときの説明会やら返還説明会等で、その辺の重要性等についてしっかり彼らに認識をしてもらうということが第一であります。
二番目に、返還の方式といたしまして、いわゆる振替口座、これを進めるということが大事であります。どうしても、一回一回の返還になりますと、悪気がなくても忘れるということがございますが、銀行での振替口座をすることによって、これも九四%近く新規返還者には振替口座が普及しているということであります。まだ累積では七〇%ぐらいですから、その辺もこれからの問題になります。
さらに三点目といたしまして、連帯保証人、保証人に対する請求の早期化、これが挙げられます。実は今までは、滞納一年になったときに、やおら親、主として親でありますけれども、保証人としての責任を追及するようなところがありましたけれども、今後は保証人に対する請求を、滞納三カ月以上過ぎますと直ちに連絡する、こういうこともやろうとしております。
なお、個別返還指導の早期化という制度をこのたび導入いたしました。これは、いろいろあれしますと、やはり特別な事情がある方がおるわけですね。そういう人に対して、ただ一律にやるだけじゃなくて、その人には特別に会って返還条件を話し合うというようなことも、これに応じた対応をすることによって最終的にはしっかり返していただくような、そういう制度を考えておるところでございます。
いずれにしましても、一層の回収向上に努めてまいりたい、こう思っております。
○古屋(範)委員 さらにきめ細やかなこの回収システムの構築をお願いしたいというふうに思っております。
さて、日本育英会の業務は、平成十六年四月、この四月から独立行政法人日本学生支援機構に継承されました。新たな独立法人に引き継がれ、より充実した内容にするためには、少子高齢化社会の重要な制度として奨学金制度をとらえていくべきであり、そのためにはより効率的な運用を図るための回収と的確な実態の把握に努めるとともに、回収の実を上げるべく、日本学生支援機構にお願いしたいというふうに思います。
これまでも、苦しい国の財政事情の中、公明党の強い主張を取り入れていただき、学ぶ意欲と能力のある学生が経済的な面でも心配することなく安心して学べるように毎年充実が図られており、文部科学省も大変努力をしていただいているというふうに思います。
私は、将来的には、学費は奨学金貸与を受けて社会人になって自分で返すという形が理想であり、希望者すべてが無利子で貸与が受けられる制度の創設が図られるべきであるというふうに思います。
日本の世界に誇るべきものはやはり人材であると思います。この人的資源、現在のさまざまな困難な課題、経済的な課題、また年金を初めとする社会保障制度、環境、さまざまなこの難局を乗り越えるためのその根源的な力は、やはり教育ではないかというふうに思っております。そして、日本でも、欧米のように、高等教育について親に負担をかけず公的補助、奨学金で支えていくという、教育立国を目指すべきであるというふうに思います。
最後に副大臣の御決意を伺い、私の質問とさせていただきます。
○原田副大臣 御指摘のように、この奨学金事業の重要性、来し方そしてまたこれからもさらに充実をしていかなければいけない、さらに、その過程で、御党、公明党は大変大事な役割を果たしていただいたということについても、心から敬意を申し上げたいと思います。
それで、この奨学金の中身につきましては、もう既に御説明しましたように、有利子、無利子、こういうことがございます。御指摘のように、できることなら、無利子の枠をできるだけ大きくするということが非常に大切でありますけれども、これはもちろん、きょうは財務大臣、副大臣、おいででありますけれども、財政との話し合いもしっかりやらなきゃいけないわけであります。
もとより、有利子の場合でも、いろいろ、最近の事情、例えば実際は金利が非常に安くなってきたというようなこと、さらには卒業後に例えば病気なんかになったときには返還をしばらく猶予するとか、さらには仮に亡くなったりする場合にはそれを免除するというような、いろいろなことがきめ細かに対応されているようでございます。
しかし、全体としては、この奨学金の意味をしっかり踏まえて、さらなる充実、それがやっぱり教育立国日本の今後のあるべき姿ではないか、こう思うところであります。
○古屋(範)委員 さらにこの奨学金制度の拡充を強く望み、私の質問を終わりにさせていただきます。
ありがとうございました。