第166回国会 厚生労働委員会 第31号

○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法案、いわゆるドクターヘリ特別措置法案につきまして質問してまいります。

 ドクターヘリは、医師や看護師が搭乗して現場に駆けつけ、即座に医療を開始することができます。半径五十キロ圏内ならば十五分で現場に駆けつけ、即座に治療に当たる救命救急システムで、空飛ぶ救命室とも呼ばれ、救命率を高めることができると大いに期待をされております。

 公明党は、平成十七年のマニフェストにドクターヘリの全国展開を図ると明記いたしまして、党内に渡辺参議院議員を座長とするプロジェクトチームを設置し、昨年七月には、ドクターヘリ救急医療の提供に係る体制の整備の推進に関する法制化についての骨子を発表するなど、先頭に立ちまして全国配備に向け法制化を推進してまいりました。さらに、先ごろ、「命のマニフェスト」を発表いたし、その第一番目に、ドクターヘリの五年間で五十カ所全国配備を推進するとの項目を掲げております。

 私も、党ドクターヘリ全国配備プロジェクト事務局次長といたしまして活動してまいりました。二〇〇四年十二月には、愛知県伊勢湾岸自動車道開通前の高速道路上に、警察、消防、病院、関係者など集合いたしまして、大規模な高速道路上での事故を想定いたしまして、実際にヘリを高速道路の上におろしまして、そこから患者を搬送するという訓練にも行ってまいりました。その様子を目の当たりにいたしまして、このドクターヘリの機動力というものを実感しているところでございます。このたび各党の皆様の賛同を得まして本法案が提出されましたことを大変に喜ばしく思っております。

 ドクターヘリは、医師と看護師が搭乗するため、重症化を避けられる、病院に行くまでの時間が非常に短くて済む可能性が高まるなど、迅速な治療による救命率の向上が望めます。また、交通事故や災害発生地での実効性ある救急医療の確保、さらに医師不足問題の改善にも貢献できるなど、ドクターヘリを活用すれば専門の病院への迅速な搬送ができるため、適切な治療を受ける選択肢が広がっていくことが考えられます。

 そこで初めに、ドクターヘリの利点と本法案提出の意義につきまして、提出者にお伺いいたします。

○渡辺(孝)参議院議員 古屋委員にお答えいたします。

 まず最初に、ドクターヘリの利点についてでありますが、一般に、重篤な救急患者であればあるほど、医師による早期の治療の開始がもたらす救命または後遺症の軽減効果が大きいと言われているところであります。

 救急医療用ヘリコプター、いわゆるドクターヘリは、事故、急病や災害等の発生時に、消防機関、医療機関等からの要請に対し、医師等がこれに搭乗し速やかに救急現場等に出動することができるわけであります。そして、搬送時間の短縮のみならず、救急医療に精通した医師が救急現場等から直ちに救急医療を開始し、高度な医療機関に至るまで連続的に必要な医療を行うことができること、また、救命率の向上や後遺症の軽減等に顕著な実績を上げているものであります。この点で、医師が搭乗せず、あるいは医師を搭乗させるために時間を要する他のヘリコプターとは異なるものであります。

 ちなみに、平成十七年度厚生労働科学研究によりますと、交通事故負傷者に的を絞り検討した結果では、ドクターヘリの事業効果について、医師の治療開始時間は従来の救急車の搬送と比較しまして二十七分短縮する、それから、交通事故死亡者は三九%、重度後遺症は一三%削減された、そういう報告がございます。

 次に、法案制定の意義でありますけれども、政府は、平成十三年度よりドクターヘリ導入促進事業として、負担割合を国及び都道府県それぞれ二分の一とし、基準額を一カ所当たり年間約一億七千万円とする補助事業を実施することにより、ドクターヘリ導入を進めております。しかし、現在、十道県十一機が運航するにとどまり、全国的に配備するには至っておりません。

 そこで、この法律案は、このような現状を踏まえ、救急医療用ヘリコプターを、地域の実情を踏まえつつ全国的に整備するという施策の目標を明確にし、その施策において留意すべき事項等を定めること、それから、救急医療用ヘリコプターによる救急医療の提供に関する費用に関し、必要な措置を定めること等により、救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の全国的な確保を図るものであります。

 また、法律が制定されることにより、救急医療用ヘリコプターの有効性が広く国民に知られるようになることも期待をしているものであります。

 以上でございます。

○古屋(範)委員 今、提出者渡辺孝男参議院議員より御説明いただきましたように、交通事故における場合も病院の搬送時間が短縮をされる、あるいは死亡率も大きく削減をされていくというこのドクターヘリ、法制化の意義は非常に大きいというふうに考えております。

 次に、大臣にお伺いいたします。

 私も、ドクターヘリを利用すれば、救命救急センターから遠い場所でもし事故が起きても、すぐにその場で治療が開始できるということで、救急車に比べて救命率が高い、そして、事故、病気の重症化を防げる、患者の入院日数を大幅に短縮できるなどメリットも多く、地域間の医療格差の解消にもつながると考えております。

 そこで、本法案の最大のポイントですが、公明党が主張し、本法案の目的に明記された、「良質かつ適切な救急医療を効率的に提供する体制の確保」であると考えます。現在、医師の偏在などで医療の格差が問題となっております。救急医療も例外ではございません。特に、地方、過疎地では十分な救急医療を受けることが難しい現状にございます。こうした状況を改善するためにも、良質かつ適切な救急医療を効率的に提供する体制の確立が欠かせない、このように考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

○柳澤国務大臣 医療の供給体制につきましては、地域間に格差があるということはたびたび御指摘を受けておりまして、私どもも、そうした傾向が見られるということについては、これを強く認識をして取り組んでいるところでございます。

 救急医療体制につきましても、そうした懸念がないように、ぜひ救急医療体制の確保に努めろという御指摘でございます。救急医療体制につきましては、現在におきましては、都道府県がその地域の実情を踏まえまして、それぞれが定める医療計画において、初期の救急医療、二次の救急医療、三次の救急医療というように、順次高次のところに行くということで、体系的な整備を行っているところでございます。

 先般の医療法改正におきまして、今回、医療計画をまた定めるということになっておりますが、救急医療というのは、四疾病五事業を重視するということの中で、五事業の一つというふうに重点的に位置づけることにいたしておりまして、国としても、医療提供体制の確保に関する基本方針、それからまた、計画策定に当たっての指針等を示して、またこれから示そうとしている、こういう状況にございます。

 今年度の予算においても、救急医療体制の充実に関する必要な予算を確保いたしておりますけれども、御指摘のように、都市、地方間の医療格差が生ずることのないよう、引き続き、計画さらには予算面、こうしたものでしっかりした取り組みを支援してまいりたい、このように考えます。

○古屋(範)委員 地方における救急医療体制の拡充のためにも、このドクターヘリの配備を強く求めてまいりたいというふうに考えております。

 次に、副大臣にお伺いいたします。

 現在、ドクターヘリ、全国の十道県の救命救急センターなどに合計十一機配備をされております。一機当たりの維持管理費として約二億円、一部を除き、国と各県が折半をすることとなっております。しかしながら、実際に導入する都道府県が財政的に大変厳しいために、導入したくてもできない、ドクターヘリは大変有効だが、なかなか導入できないという自治体が数多くあるのが現状であります。このため、本法案では、基金による助成を新たに設け、自治体の導入へと大きく道を開くこととなったわけでございます。

 さらに、本法案の第八条二項におきまして、「国は、予算の範囲内において、都道府県に対し、政令で定めるところにより、都道府県が前項の規定により補助する費用の一部を補助することができる。」と明記をされました。

 そこで、財政事情の厳しい自治体、地域への支援を促すために、ドクターヘリの全国配備が可能となるよう、国としても十二分な財政支援、財政措置を拡充すべきと考えますが、石田副大臣のお考えをお伺いいたします。

○石田副大臣 今、大臣からもお話がありましたように、都市と地方間の医療格差が生じることがないように、引き続き、都道府県の取り組みを支援してまいりたい、大臣からもこのように御答弁があったところでございます。

 厚生労働省といたしまして、これまでも、ドクターヘリの導入促進が図られるよう、都道府県に対しまして財政面において支援をしてきたところでございます。具体的には、ドクターヘリの運航や搭乗する医師の人件費など、都道府県が負担する費用について、これは、一機当たり年間総額約一億七千万円を上限として、国が二分の一の補助をしてきているところでございます。

 本法律案成立後も、各都道府県の実情に応じて、複数の県をカバーする広域搬送体制の構築、消防防災ヘリの活用等に関する助言等も行いながら、必要な関係予算の確保に努めてまいりたいと思っております。

 御指摘のように、本法案の第八条の二項に、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、費用の一部を補助する、こういうことも書かれておりますので、この点につきましてもしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

○古屋(範)委員 全国の都道府県での導入が一刻でも早く整いますよう、国としての支援を何とぞよろしくお願いいたします。強く要望しておきたいと思います。

 時間ですので最後になりますが、人材確保ということで、フライイングドクター、フライイングナースの育成につきまして、厚労省のお考えを伺いたいと思います。

○松谷政府参考人 ドクターヘリの搭乗には、一般的に、救急医療の専門医や救急医療での経験が豊富な看護師等が当たっているものと承知しておりますけれども、基本的には、ドクターヘリ事業を担う各病院の運航要領等によってこれが定められているというものでございます。

 現在、学会等を中心といたしまして、医師や看護師等を対象としたドクターヘリの講習会が実施されているという状況でございまして、厚生労働省といたしましても、必要に応じてこれらの活動を支援していきたいと思っております。

○古屋(範)委員 こうしたドクターヘリに搭乗する医師また看護師の養成というものも、しっかりと今後行っていかなければならない、このように考えております。

 一刻も早く全国都道府県で本格的にこのドクターヘリが導入できますよう、公明党といたしましても、マニフェストに五年間で五十機の全国配備ということを掲げております。本法案が早期に成立をし、そして全国に国民の命を救うドクターヘリが配備されることを強く求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

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