第197回国会 衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会-3号

○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 平井大臣、大臣就任おめでとうございました。本日は所信に対する質疑を行ってまいりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 近年、AIまたIoTなど、第四次産業革命の波が世界に押し寄せる中で、物づくりを始め世界に通用する技術力を持つ日本には、イノベーションをリードして、生産性の向上を通じて社会課題を解決する潜在力があると考えます。

 大臣は所信の中で、大学改革や若手研究者の活躍促進ということを述べていらっしゃいます。私たち公明党は、これまで、こうした潜在成長力を底上げする成長戦略に具体的に取り組んでまいりました。その鍵は、何といっても、人また地域の可能性とか潜在力を引き出すことであると考えます。イノベーションの推進に当たって、若手研究者、技術者、また女性の活躍の拡大、大学改革等が重要であると考えております。

 初めに、人材の強化についてお伺いをしてまいります。

 科学技術の向上へ研究者が希望を持てる仕組みづくりが求められております。諸外国においても、イノベーションを起こして経済社会の変化を先導しているのはやはり若者でありまして、イノベーションを起こして経済社会の変化を先導している若者たち、若手研究者また技術者の活躍を推進していくことが重要だと思います。

 先ほど大臣も触れられておりましたけれども、このたびノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑氏も、基礎研究を長期的な展望でここを支援していくべきだということをおっしゃっています。また、二〇一六年にノーベル賞を受賞された大隅良典氏も、基礎科学の重要性に触れられて、ここをめぐる日本の非常に危機的な状況ということを指摘をされております。

 一九九六年に当時の文部科学省が、博士号を取得して次のポストを目指すポストドクターが活力ある研究に欠かせないとして、ポスドク一万人支援計画を打ち出されました。この目標は達成できたんですが、任期つきの雇用、不安定なポストばかりで、高学歴でも収入の少ない研究者が生まれるという現状で、若い学生が博士課程に進まない。大学院の博士課程の入学者数は、二〇〇三年度約一万八千人、ここをピークとして減り続けて、二〇一八年度には約一万五千人まで減少をしてきております。

 さらに、二〇〇四年、国立大学の法人化で運営交付金が減らされた結果、大学は常勤ポストを減らしました。改革のための会議や事務処理がふえた結果、常勤教員の研究時間が奪われてしまう、このような結果も生まれております。

 こうした中で、若者を教育する、若手研究者が活躍すべき大学において、その機能を改善するために大学改革を早急に進めるべきと考えます。若手研究者、技術者の育成と活躍の促進のための取組、また大学改革の方向性について、大臣のお考えを伺いたいと思います。

○平井国務大臣 委員にいろいろ御指摘をいただきましたが、問題意識はもう全く同じだと思っております。

 新たな発見や発明等の物づくりイノベーションを実現していく上で、斬新なアイデアや発想を生む若手研究者の活用は必要不可欠であります。

 しかしながら、近年、若手研究者の安定的なポストが減少するというようなことで、課題も多く指摘をされています。本庶先生からもいろいろと指摘を受けたところでございます。

 政府としては、六月に閣議決定した統合イノベーション戦略において、大学のガバナンスと経営基盤の強化を通じた経営環境の抜本的な改善や、若手による研究や挑戦的な研究の奨励による研究効率性の向上を掲げたところです。

 現在、国立大学の経営基盤の強化、人事給与マネジメント改革を通じた若手研究者の活躍機会の創出などの大学改革、競争的研究費の若手研究者への重点的な配分といった優秀な若手研究者への支援、新興・融合領域の開拓に資する挑戦的な研究、独創性や分野横断的な俯瞰力を備えた人材の育成など、革新的な研究開発が行われるための持続的なイノベーションの創出の促進に取り組んでいるところであります。

 大変チャレンジングではありますが、引き続き、関係省庁と連携して、若手研究者の育成と活躍促進に何としてでも取り組んでいきたいと思っております。

○古屋(範)委員 大臣からも、若手研究者の育成についてさまざまな今政策を打っていらっしゃるということを伺いました。

 私も、再生医療の促進に長年取り組んでまいりました。山中先生とはノーベル賞受賞前からさまざま交流がございまして、議員立法で再生医療促進の法律をつくり、その後は再生医療の安全確保法、閣法もできて、先生にお伺いしたところ、この分野の法整備は日本は世界で最も進んでいるということをおっしゃっていました。

 しかし、いつもおっしゃるのは、やはり、この研究を支えている多くの研究者たちが非正規である、有期の中で、不安定な身分の中で研究を続けなければいけない。私も研究所に行って、直接若い方々と意見交換をしてまいりました。やはりその窮状というものをお一人一人が訴えていらっしゃいました。

 今、低下をしていく、世界の中で我が国の科学技術の存在感を高めていくためにも、ぜひ若手研究者の育成に更に力を注いでいただきたいと思っております。

 次に、科学技術分野の女性活躍の推進についてお伺いをしてまいります。

 第五期科学技術基本計画の中で、少子高齢化が進む中での人材の質と量、並びにダイバーシティーを確保して人材力を確保する観点から、女性研究者の採用をふやすなど、一層の女性活躍が掲げられております。

 しかし、科学技術分野は、諸外国と比較をいたしますと、女性の研究者比率が一五・七%でありまして、一層の増加が望まれているところでございます。

 第四回科学技術系専門職の男女共同参画実態調査、これは男女共同参画学協会連絡会が行った調査によりますと、一番御意見として多いのは、家庭、家事、育児、介護と仕事の両立が困難である。これは男性が五割、女性が六割以上答えていらっしゃいます。次に、育児、介護期間後の復帰が困難である。次に、職場環境。また、四番目として、男女の社会的分業。このような課題が挙げられておりまして、男女で差があるんですけれども、やはり、男女ともに育児を含む家庭生活の中で、女性の側に大きく負担がかかるということが見てとれると思います。

 女性研究者の活躍を推進するために、こうした性的役割分担意識を払拭していく、家庭と仕事の両立を図るために職場環境を整備していくことが課題となってまいります。

 私も、少し前になりますが、二〇一四年、静岡大学に参りまして、女性研究者支援の取組を見てまいりました。

 静岡大学では、二〇〇七年から、女性研究者が研究と出産、子育て、介護が両立できるように、独自の研究者支援制度、また、意識改革、保育施設設置などを進めていらっしゃいます。トップの意識改革が非常に重要だと思っております。副学長がここの分野を担当されていまして、研究者が妊娠中体調がすぐれないとき、また、不妊治療を行うときも休暇がとれる制度を独自でつくっています。相談窓口をつくり、保育施設を設置したり、法定基準を超える特別休暇、また育児・介護休業の導入などをされています。

 私も農学部の二人の女性の准教授と懇談をしてまいりましたけれども、出産してやはり育休からなるべく早く復帰はしたい、しかし、短時間で、保育園の送り迎えなどもやっていきたい。ですので、キャリアを続けていくために、例えば学生の指導などはかわりの方にお願いする。やはり、それは誰でもいいというわけではなくて、この分野に精通をした専門知識を持った方に支援を行ってもらう。こうしたサポート制度の重要性も語っていらっしゃいました。

 やはり、研究者の場合には、どうしても夫婦で別居しなければいけないという方が多いんですね。ですので、その点も非常に苦労していらっしゃるということでございました。

 これは一例なんですけれども、当事者のニーズを的確につかんで、女性が働き続けられる、そうした制度をつくっていかなければならないと思っております。大臣のお考えをお伺いいたします。

○平井国務大臣 委員御指摘のとおり、多様な視点やすぐれた発想を取り入れて科学技術イノベーション活動を活性化していくためには、女性の能力を最大限に発揮できる環境を整備して、その活躍を促進していくことが必要だと思います。

 しかしながら、お話にあったとおり、女性研究者の割合は増加傾向にはあるんですが、主要国と比較するとまだまだ低い水準で、理工系分野における女子学生比率やその伸び率も低い現状、状況にあること。そして、研究活動と出産、育児等との両立が困難な環境に置かれている、そういう場合などから、必ずしも女性研究者が十分活躍できる状況に至っていない面もあるということも、先生の御指摘のとおり私も認識をしております。

 そのため、第五期科学技術基本計画では、自然科学系全体での女性研究者の新規採用割合を三〇%にすることを目標として掲げました。そして、女性が研究等とライフイベントの両立を図るための支援等を行うこととしています。

 具体的に、例えば、内閣府及び文部科学省において、研究と出産、育児等の両立や研究力向上を通じたリーダー育成を一体的に推進するなど、ダイバーシティー実現に取り組む大学等に対する支援、女子生徒等が理工系分野への興味、関心を高めるためのシンポジウム等の開催等の取組を今行っているところであります。

 まだまだ十分とは言えませんが、引き続き、科学技術イノベーション分野における女性の活躍推進に向けて、関係府省と連携してしっかりと取り組んでまいります。

○古屋(範)委員 こうした研究分野で女性が活躍していく、働き続けていくためには、男性も含めた全体の働き方改革も必要になってくると思います。しかし、理科系の場合には、例えば、実験に取りかかってしまえば時間の制限というものが事実上余りないということもあります。大変難しい現実ではありますけれども、その中で、保育の充実を始め、きめ細かな支援策をしっかりと推進をしていただきたいと思っております。

 次に、ITを活用した地域の見守りについてお伺いをしてまいりたいと思っております。

 私なりに少子高齢社会におけるITの利活用というものに長年取り組んでまいりました。IoTの最大の特徴、MツーM、マシン・ツー・マシンで膨大なデータを蓄積できる。インターネットに接続されたものがデータで集積、分析して、その結果を私たちに提供をしてくれる。近年では、建物、電化製品、自動車、医療など、さまざまな分野でIoTは活用をされております。今後もインターネットにつながるものは爆発的に増加をしていくというふうに考えます。

 大臣は、所信の中でも冒頭にIT政策について触れられております。デジタルガバメントの実現に重点的に取り組むということをおっしゃっております。手続に付随して発生する添付書類をなくしていく、国民と行政機関の双方の時間、手間、コストを削減できる重要な政策であると思います。

 これとともに、高齢化が進んでいる日本にとって重要な取組は、やはり地域の見守りにITを活用していくということだと思っております。

 地域の高齢者の異変などに気づいたら、事前に決めた行政の連絡先に速やかに連絡、通報ができる、こうした見守り事業が全国の自治体に広がっております。地域における見守り活動は、互いに地域の中で活動する人たちに大きな気づきをつないでいくことが重要でありまして、情報共有による連携をいかに強化できるかが大きな鍵となっております。

 五年前になるんですが、私、秋田市を訪れまして、ここではエイジフレンドリーシティプロジェクトというものを実施しておりました。秋田市は、WHOが進めているエイジフレンドリーシティグローバルネットワークに我が国で初めて加盟をした市であります。今は十九市町村が加入をしております。世界で五百もの市町村が参画をしております。

 秋田市では、高齢者が豊かな経験、知識を社会で支えるアクティブな高齢者として暮らせる町を目指しました。タブレットを使いまして、限られた町内で、実証実験なんですけれども、希望した四十から七十九の方々がタブレットを貸与されまして、私も七十九歳の女性のお宅に直接行きまして、冬、雪が降っている、積もっている季節だったんですけれども行ってまいりました。

 買物とか灯油の配達、クリーニングの集配、タクシー予約。緊急をタッチすると、提携する医療法人のスタッフに二十四時間つながっていく。医療機関の受診、救急車の要請などもできる。登録した仲間同士で無料通話もできる。また、大手通信会社とも提携して、三百六十五日二十四時間体制で専門の相談員ともつながっていくことができる。七十九歳の女性の方もさくさくとタブレットを使って注文したり、きょうのお知らせ、地域の神社では何々がありますというようなお知らせも入ってくる。

 高齢化率が非常に高い、また豪雪地帯である、こういうところこそITを使った見守りというのは非常に重要であるというふうに思っております。

 しかし、残念ながら、ここは実証実験だけで終わって実用化には至りませんでした。やはり、タブレットを購入する、あるいは月々通信費を払っていく。電話もあるし、いざとなればそれで済むといえば済むわけですけれども、ここからどう、より生活を豊かにしていくかということを考えますと、ここの費用面、さまざまなものを考えると、なかなか普及に至っていないというのが現状であると思っております。

 こうした高齢社会におけるITの利活用、見守り体制について、大臣のお考えを伺います。

○平井国務大臣 非常に重要な問題の指摘だと思います。

 我が国は、世界に類を見ないスピードで高齢化を迎えています。昨日も、フランス、アメリカ、中国から私の部屋に来て、この問題をいろいろな形で議論をしたんですが、この高齢化問題を日本がいかにデジタル技術等を駆使して乗り越えていくかということに世界は注目しているわけですね。ですから、ここをぜひ進めていきたいというふうに思います。

 ですから、単に社会全体のデジタル化を進めるということが目標ではなくて、高齢者などのデジタル弱者の方々にもデジタル技術の恩恵を実感していただける政策を中心に、これを車の両輪として進めたいというふうに思っています。

 実は、私の母親は八十七歳でタブレットを使っていますが、私のアシストなしにはうまくいかないんですね。なので、やはり使い方をアシストできる、相談できるようなものをつくったり、あと、いろいろな、例えば地域の足となる自動運転バス等の実走なんかは、やはり公共交通機関が少ない山間地域などでぜひやってみたいというふうに思っております。

 今後も、高齢者とか不便な地域に寄り添って、デジタル技術の問題解決力をフルに使って、少子高齢社会などの社会問題の解決に全力を尽くしていきたいと思っています。

○古屋(範)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

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