第198回国会 衆議院 環境委員会-2号
○古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。
きょうは大臣所信に対する質疑、これまでの質疑と重なる部分もございますが、確認の意味も込めまして行ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
昨年は、世界で熱波や山火事、また洪水など、災害と異常気象が相次ぎました。その背景にあるものが地球温暖化だと言われております。
気象庁が一月四日、昨年の平均気温が東日本では統計開始以来最も高かったというふうに発表いたしております。昨年、本当に災害が多い年でございました。西日本の豪雨がございました。また、九月には、関西空港を浸水させた台風二十一号、台風被害も相次ぎました。
日本だけではなく、世界でも、統計開始以来、最近のこの四年間で、平均気温の最高記録が一位から四位を独占しているという状況でございます。
世界気象機関が、去年の夏、西日本豪雨を始め世界で相次いだ災害、異常気象が長期的な地球温暖化の傾向と一致をしていると、異例の警鐘を鳴らしております。
こうした中、昨年十二月、ポーランドで開かれました国連気候変動枠組み条約第二十四回締約国際会議、COP24、大臣も出席をされました。
二〇二〇年、来年からの温室効果ガスの削減を合意したパリ協定を本格的に運用するための実施ルールが採択されました。会議の直前までなかなかその合意案が煮詰まっていなくて、包括的な合意形成が難しいのではないかとも言われておりました。しかし、短い会期の中で、ほとんどの部分で合意に至られまして、締約国が協定を軸に温暖化対策を講じていく基盤が整ったと言えるかというふうに思っております。
注目すべきは、CO2の排出削減などの検証方法は、先進国又は途上国を問わず、原則同一の基準で適用していくということでございます。一方の、途上国が強く求めておりました資金の支援の強化、これにつきましては、先進国が二年ごとに資金拠出の見通し額などを報告するということが求められております。
このように、先進国、途上国が歩み寄る形でパリ協定のルールがおおむね採択をされたということは大きな前進であると考えます。
中でも、各国の温室効果ガス削減目標を締結国が相互に客観評価できるよう、削減目標と一緒に基準年など詳しい情報を提出していく、目標達成の進捗状況を各国が二年に一度報告をすることとなりました。
締約国間での信頼関係が構築されませんと、目標達成や引上げの継続的な努力につながっていかない、締約国が目標や努力の状況を相互に確認できる仕組みを設けた意義は大変に大きいと考えております。
短期間にルール採択にこぎつけられた一つの原動力は、温暖化被害に対する危機感があったのではないかと思っております。多くの国や機関を巻き込んで、パリ協定を軸に温暖化対策を進めていく基盤を整えていく意義は大変に大きいと評価ができるところでございます。
COP24の評価につきまして、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○原田国務大臣 ただいま古屋委員がまさに、むしろ総括をしていただいた、そんな感じがいたします。
とりわけこのCOP24では、先進国と途上国は、最終的には、立場を、いろいろありますけれども、最終的には一致して、パリ協定を実施していこうと。その意気込みは非常に私どもも評価したい、こういうふうに思っているところであります。
その際、私どもは、一つは「いぶき」二号を打ち上げた直後でありましたから、「いぶき」二号の活動をしっかり御紹介したということと、四年連続で、私ども、その統計はほかの国はどこも出しておりませんでしたけれども、四年連続、しっかりと今日まで温室効果ガスを減らしたということも報告をしてきまして、日本の役割、このことをこれからもより強く感じたところであります。
六月のG20では、こういうことを踏まえて、国際的なイニシアチブをとれるように頑張りたいと思いますから、どうぞ御指導いただきたいと思います。
○古屋(範)委員 ただいま原田大臣からCOP24の成果をお伺いすることができました。
しかし、期待されながらも合意に至らなかった点も残りました。例えば、他の国と共同で削減に取り組む場合に、削減量をどうカウントするかなど、市場メカニズムのルールは合意できずに先送りとなりました。また、CO2の削減目標を更に高める必要性について明確な合意ができなかった。今後の課題は、各国がルールをつくって、温暖化防止への取組を強化できるかどうかだというふうに思っております。
昨年十月なんですが、一・五特別報告書をまとめ、今後起こり得る被害を科学的に予測する、IPCC、気候変動に関する政府間パネルの報告書が提出をされました。この一・五度Cというのは、パリ協定が、今世紀末の気温上昇を、産業革命前に比べて二度より十分低く、一・五度に抑えるということを目指しているため、そのケースを分析したものであります。
報告書では、このままだと、熱波や気象災害、海面上昇、健康被害、食料また水不足、生態系の破壊など、甚大な被害がもたらされるリスクを指摘しております。一・五度Cと二度Cという、わずか〇・五度の違いでありますけれども、生息地を失う生物種の割合は倍以上異なるという影響を具体的に示しております。
パリ協定で各国が提出をした対策を全て実施したとしても、気温は三度上昇するということが見込まれております。気温上昇を一・五度に抑えようとする、温室効果ガスをどれだけ削減すればよいのか。この特別報告書では、二〇五〇年ごろに世界のCO2排出量を実質ゼロにする、つまり脱炭素社会を実現する必要があると算出をいたしております。その途中段階で、二〇三〇年までに四五%もの削減が求められているところでございます。
このIPCC特別報告は、地球温暖化をめぐる深刻な現状を改めて浮き彫りにしております。地球温暖化防止、これも世代を超えた課題でありまして、未来のためにどのような社会を残していくのか、それぞれの立場で、みずからの責任について改めて考え直していく必要があると思っております。
パリ協定が目指すこの二度C目標達成に向けて、気温上昇を抑えるために各国の削減目標引上げの必要性が指摘をされておりまして、今後、各国による積極的な取組と実効性の確保が強く求められていると思います。
環境省のこの点に関する見解を伺います。
○森下政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御指摘、御質問がありました、各国の取組の引上げ、目標の引上げということでございます。今後どのように取り組んでいくのかということでございます。
COP24におきまして実施指針が採択されたことを受けまして、今後はパリ協定の実施が本格的に始まっていく。そういった中で、今後特に排出増加が見込まれるアジア等の途上国における排出削減、これを促進していくことが非常に重要だというふうに考えてございます。
具体的なアプローチといたしましては、JCM、二国間クレジット制度を活用することによりまして、我が国のすぐれた技術の普及により、途上国における排出削減を進めるとともに、脱炭素ビジネスの発展といった点についても寄与してまいりたいというふうに考えております。
また、途上国における透明性の向上も排出削減の取組を促進させるための鍵と考えております。この透明性の向上によりまして、途上国の温室効果ガス排出量の把握のみならず、その国が講じるべき対策や、対策を講じたことによる効果などを把握することができるということでございます。
このため、我が国では、昨年十月に打ち上げに成功した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」二号によりまして、人間活動による二酸化炭素排出量を推定し、各国のインベントリーの精度の向上に貢献をするということでございます。
また、足腰を鍛えるということで、アジアにおける温室効果ガスインベントリ整備に関するワークショップというものや、あるいは地球環境ファシリティーが支援をいたします透明性のための能力開発イニシアティブ、こういった活動を通じまして、途上国の透明性向上のためのいわゆるキャパシティービルディング、こういったものを日本も積極的に実施をしているというところでございます。
また、二〇一七年のCOP23におきまして、民間セクターの透明性の向上を目的としたPaSTI、いわゆるコ・イノベーションのための透明性パートナーシップを立ち上げまして、主にASEAN加盟国と協力をしまして、企業に温室効果ガス排出量の公表を促すスキームですとか、モニタリング、排出量公表に関するツールなどの検討を進めているところでございます。
こうした取組によりまして、各国の排出削減の取組促進に貢献してまいりたいと考えてございます。
○古屋(範)委員 我が国が削減目標として掲げているのが、二〇三〇年には二六%削減ということでありますけれども、更に大幅な削減が必要だと考えます。二〇五〇年には八〇%削減を目指しているということですが、まだ長期的な戦略を議論している段階です。パリ協定では各国に長期戦略が求められておりますけれども、G7においては日本とイタリアだけが未提出であります。日本も速やかにこの長期戦略をつくって、世界に示す必要があります。
こうした課題の解決に向けて、政府の方では、二〇一八年八月から、有識者から成るパリ協定長期成長戦略懇談会を開催されまして、炭素税また排出量取引など、CO2排出のコストを見える化するカーボンプライシングの導入に向けて議論が現在行われていると思います。環境と経済の両立のためにはCO2を出さないことが経済的にも有利になるという仕組みが重要です。それが単なる増税にならないよう、ほかのエネルギー課税、また自動車税なども含めた全体での制度設計が必要と考えます。カーボンプライシングの導入の是非を問う議論がどうまとまるのか、注視したいと思っております。
野心的な目標を持った長期戦略の策定と世界的な目標の引上げについてどう貢献できるか、温暖化対策をリードしようとする日本が鍵を握っていると思っております。G20議長国として、また、さらには二〇年東京オリパラ開催国として、この地球環境問題への対応、世界でリードすべきと考えます。
この点につきまして、城内副大臣の見解を求めたいと思います。
○城内副大臣 古屋範子委員の御質問にお答えいたします。
パリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向けましては、温室効果ガスを、国内で大幅に排出削減するだけでなく、世界全体でも排出削減することが重要であります。そうでなければ、いわゆる二度目標、一・五度目標を達成することはできません。
こうした考え方のもと、我が国は、先ほど局長が述べましたとおり、二国間クレジット制度等を活用し、開発途上国への低炭素技術等の移転を通じて海外の温室効果ガスの排出削減に貢献しております。具体的には、例えば、モンゴルあるいはバングラデシュにおけるメガソーラーとか、インドネシアにおける工場廃熱発電等のプロジェクトがございます。
また、冒頭大臣からも、あるいは先ほど局長からもございました「いぶき」二号、昨年十月に打ち上げました。この「いぶき」二号等につきましては、大変観測精度が高いということで、世界じゅうのCO2濃度の分布が一目瞭然ということでございますし、また、二号につきましては、CO、一酸化炭素の観測もできることとなりましたので、人為的なものあるいは自然発生のものということの区別もできるようになった次第でございます。
さらに、昨年六月、未来投資会議におきまして、安倍総理大臣の指示を踏まえまして、現在、世界の脱炭素化を我が国が牽引し、環境と成長の好循環を実現する長期戦略策定に向けまして、有識者による懇談会、いわゆるパリ協定長期成長戦略懇談会で議論を行っているところでございます。今後は、世界のモデルになるよう、骨太な長期戦略を作成してまいります。
また、約三カ月後には、G20サミットが大阪、そしてそれに先立って、軽井沢町におきましてG20環境・エネルギー大臣会合がございます。こうしたG20の場も活用しながら、日本の取組を国際社会にしっかりと発信し、国際的な議論をリードすることで世界全体の温室効果ガス排出削減に最大限貢献してまいります。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
以上で質問を終わります。