第204回国会 衆議院 内閣委員会-10号

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様、お忙しい中、国会においでいただきまして、貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝申し上げたいと思います。

 私たち公明党は、このデジタル化を推進する上で、昨年十一月なんですが、デジタル改革の司令塔となるデジタル庁の創設に向けて提言を出しました。誰一人取り残さない社会の実現というものを訴えてまいりました。誰もがデジタル化の恩恵を最大限に受けられる環境の整備ということが大事なテーマなんだろうというふうに思っております。

 まず最初に、松尾参考人にお伺いをしてまいります。

 松尾参考人も、先ほども意見陳述の中で、誰もが使いやすい設計、高齢者のみならず、障害を持った方々、全ての人々が使いやすいデジタル技術、設計が必要だということをおっしゃってくださいました。

 私も、高齢社会におけるデジタル化ということに取り組んでまいりました。少し前なんですが、二〇一三年に秋田市で、高齢者がタブレットを使って、見守りもする、また地域の情報も得られて、買物とか通院などもできるというモデル事業を行いまして、応援もしてきました。実際、雪の積もった中、高齢者のお宅に伺って、どのように使っていらっしゃるか、それも見てまいりました。大変うまく使っていらっしゃったんですが、結局、これは実証実験で終わって、実用化はできませんでした。やはり、通信料とか費用の面とか、一応、イエデンもあって、テレビもあって、それにプラス通信料、端末を買う、こういうことが難しかったのかなというふうにも感じておりました。

 高齢者がデジタル技術の恩恵をあまねく受けていくために、課題また方策について更に御意見をいただければと思います。

松尾参考人 御質問ありがとうございます。

 今御紹介いただきました事例は、大変すばらしい、興味深いものだと思います。

 このITの分野、デジタルの分野、そうなんですけれども、例えば、ユーチューブというのが今ありまして、多くの若者が結構夢中になっているわけですが、これがサービスがスタートしたのは二〇〇五年のことです。ところが、一九九〇年代から動画の配信サービスというのは技術的にはあったんですね。日本でもかなり開発されていました。ただ、多くの方のブロードバンドの環境等々が整うことによって、やはり二〇〇五年になってようやくそれがサービス化され、今、二〇二一年になって社会全体に浸透している、そういうことだと思います。

 そのことから考えますと、その秋田県の事例というのも先進的な取組ではあるんだけれども、やはり社会の環境の変化、デジタル化の変化というタイミングをうまく見ることによって、もしかしたら、今だったらもっと実用化につながるのかもしれませんし、今、高齢者の方も徐々にスマホを使う方も増えてきたり、子供とLINEをやるとか、そういう方も増えてきていると思いますので、そういう意味では大分整ってきているのかなと。さらには、地域の高齢者の方、デジタルに弱い方に対して、それを教えてあげるような若者との交流とか、そういうサービスとかというのも同時につくっていくとよいのではないかなというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 今後の取組が大事なんだろうというふうに思います。政府の方も、デジタル活用支援員の事業を二〇年度に試験導入して、二一年度、拡充をする方針であります。デジタルデバイドを生まない取組が必要になってくると思います。

 松尾参考人にもう一問お伺いしたいと思います。

 先ほどの意見陳述の中でも、デジタル人材の育成について触れていらっしゃいました。デジタル社会形成基本法の中の二十五条にも、人材の育成ということが書き込まれております。

 先生は、学生とか高専での教育について先ほど触れられました。私は、それに加えて、今既に社会に出ている人たちを再教育していくリカレント教育も重要じゃないかと思っております。

 東大が一〇〇%出資をして、東大エクステンション株式会社をつくられました。昨年末訪問いたしまして、非常に受講者が増えている、また、一番難しい七十時間のコースを出た人は引っ張りだこだということでありました。実は私もその入門のジェネラルコースを実際に受講していまして、東大の教授陣による、どちらかといえばデータサイエンス人材を採用して生かしていく経営陣の講座で、大変勉強になりました。

 こうしたデジタル人材の育成に必要な政策、特にこのリカレント教育の重要性、日本で遅れていると思います。この点について、お考えがあれば伺いたいと思います。

松尾参考人 御質問ありがとうございます。

 リカレント教育、大変重要だと思っています。デジタル人材がこれから必要とされていく中で、学生だけではなくて、既に働いている方にきちんとそういった技術、スキルを身につけていただくということは重要だと思います。

 例えば、保険の業界にアクチュアリーという職業がありますが、こういう方は、実はAIの素養がすごくあります。同時に、例えば経済学部を出られた方というのも、実は経済学のモデルと機械学習、ディープラーニングの考え方は相当近くて、これも非常に可能性があると思います。

 そう考えますと、世の中、かなり多くの部分で、実はAIの勉強をすればかなりできるという人が潜在的にはたくさんいるというふうに思っていまして、そういう方も含めて、やはり、大学もそうですけれども、いろいろな教育機関で、もう一回戻ってきてもらって、短時間でもいいですので、そこでまた勉強してもらって活躍していただくということを進めていくということは大変重要かなというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 もう少し、民間あるいは大学、経済界、こういうところがきちっとタッグを組んで人材を育成していく必要があるんだろうと思います。

 次に、三宅参考人、石井参考人、お二人にお伺いをしてまいります。

 個人情報保護の関連で、三宅先生は、国の行政機関における個人情報の取扱いについて、個人情報保護委員会がしっかりと監督すべきだとのお考えだったと思います。私もそのとおりだというふうに思います。

 また、その一方で、先生は、地方公共団体における個人情報の取扱いについては、引き続き各自治体が自ら条例で律していけばよいのではないかとのお考えであるかと思います。

 しかし、国の行政機関と同様に、地方公共団体における個人情報の取扱いについても、独立規制機関である個人情報保護委員会が客観的な立場で外部から監督するようにした方が、住民の権利利益を保護することに資すると思いますし、また、EUにおけるGDPRを始めとする国際的な潮流にも合致するように思います。

 この点について、三宅先生、石井先生、お二人のお考えを伺いたいと思います。

三宅参考人 自治体の個人情報保護条例においては、個人情報保護委員会と、それから本人情報の開示請求に対する情報公開・個人情報保護審査会というようなところで、自治体の持っている個人情報を本人に開示させ、間違っている事実関係については訂正させ、それから、ひどい取扱いをしていれば利用停止をするという制度がありまして、かなり、それは、自治体ごとでの運用はやはりできているところも、先進自治体ではあります。

 ただ、全ての自治体がそういうようなことでやっているかというと、やはり、都道府県民なり市町村民の意識の違いによって、全くそういうところが開かれないところもございますので、全くそういう自治体でのチェックが及ばないところには、今回の個人情報保護委員会の権限によってボトムアップをしていくということはとても大事なことだと思っております。

 しかし、これまでの歴史で、自治体の個人情報保護条例が先にしてきた歴史的な経緯もありまして、そういうところからすると、先行している自治体の運用を抑え込んで標準化に、レベルダウンさせるようなことが決してあってはいけないと思います。

 そういう意味で、個人情報委員会が統一的なルールをするということによって自治体の運用がレベルダウンしないような運用をやはりしていかないといけないと思いますので、この辺りが果たして十分できるのかということを、この審議を通じながら、自治体の実態も踏まえていただいて、果たしてこの法律でいいのかどうか、十分審議をしていただきたいところだろうと考えております。

石井参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに、今回の改正案というのは、国際的な潮流により一層合わせるためのものであるというように考えております。

 繰り返しになりますけれども、官民一体の、国のレベルの法律を一体化するとともに、地方公共団体におけるルールを共通化する、それに個人情報保護委員会が中立、客観的な立場で執行をかけられるようにするということがまさに今回の法改正の主眼であって、国際的な潮流に合わせるものであるということです。

 条例がどこまで法律の上乗せができるかといった辺りの論点は確かにありますけれども、内閣官房での検討会の中で、地方公共団体の条例がどうなっているかということを非常に細かく調べまして、今回の法案の中では、おおむね地方公共団体の条例に規定されているものがカバーできるような形の標準的な共通ルールを設けているということでありますので、保護レベルが下がるようなものではない。かつ、地方公共団体が保護レベルを下げるようなものを定めようとすると、今度は個人情報保護委員会の権限が及んでいくということになりますので、その辺りは担保されていると言えようかと思います。

 あと、執行に関する権限なんですけれども、確かに、行政機関に対しては勧告権限までというところはあります。ただ、やはり、内閣官房の検討会の中でヨーロッパの公的機関に対する執行例を調べてみましたところ、数がまずそんなにないということ、それから、制裁金の事例が結構多いということ、余り高額なものは見られなかったかなという点があります。

 私が調べた範囲では命令事案は非常に少ないというところがありますので、そうしたヨーロッパの状況を鑑みた上で見ると、今回、個人情報保護委員会が公的部門に対して執行権限をかけられるようになった、そのこと自体が非常に意義があるものですし、勧告権限まで入っている、実地調査も行えることができるというのは大きな前進だというふうに捉えております。

 以上です。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 続けて、石井参考人にもう一問お伺いします。

 地方公共団体ごとの個人情報保護条例の規定の内容、その解釈が異なるということで、広域的なデータのやり取りに支障を生じている、いわゆる条例二千個問題ですね。企業の活動促進の観点だけではなくて、防災とか、この度の感染症対策といった国民の安心、安全に関わる施策を円滑に実施する上でも重要な課題ではないかと考えます。この条例二千個問題について、先生のお考えを伺いたいと思います。

石井参考人 御質問ありがとうございます。

 二千個問題は、地方公共団体の条例で定めていないところがあれば、規律を持っていても違う規律になっていて、そこが保護レベルの違いももたらしており、利活用の違いももたらしているというところが問題であった。今回、それを共通ルールをつくることで解消するというのが大きな改正の目玉になっているところでして、その中で、確かに、災害時ですとか人命救助とか、そういった場面における個人情報の取扱いにおいても、自治体間でそごが生じないようなルール形成ができる。個人情報保護委員会が考え方を発信することによって、自治体で、それぞれの自治体が悩まなくて済むというところもあろうかと思いますけれども、対応に違いが生じないようにできるというところが大きいかと思います。

 二千個問題に関しては、本当にいろいろなところで議論されてきた問題ではありますけれども、ヨーロッパに少し目を向けてみますと、GDPRが採択された背景の一つに、各加盟国の立法の違いがあるというところを、一貫したルールにして保護レベルを担保し、かつ信頼のある円滑なデータ流通を行うということが一つ趣旨として挙げられていますので、日本の場合は地方公共団体における条例の問題ですけれども、やはり規律の違いを正すということは諸外国においても重要な課題として認識された上での立法化だということが言えますので、今回の二千個問題の解消は非常に大きな意義があると考えております。

古屋(範)委員 参考人の皆様、ありがとうございました。本日の御意見はまたしっかり法案の審議に生かしてまいります。

 ありがとうございました。

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