第204回国会 衆議院 内閣委員会-16号

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様、国会においでいただき貴重な御意見を述べていただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 順次、多少重なる部分もございますけれども、確認の意味も込めまして質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、秋田参考人、吉田参考人、お二人にお伺いをしてまいります。

 幼児教育の無償化が始まりまして約一年半が経過をいたします。この四月からは、さらに、幼児教育類似施設に対しましても一人当たり二万円の給付という制度がスタートいたします。この幼児教育無償化とともに重要なのが、お二人触れていらっしゃいました、質の向上だと思っております。

 この幼児教育無償化につきましては、我が党、全国約三千人の議員で、利用者の方約一万九千人に聞き取り調査を行ったことがございます。その中では八七・七%の方々がこの幼児教育無償化については評価をするというお答えをしていらっしゃいました。

 今後、二〇二四年度末までに、更に十四万人の保育の受皿を拡充をしていこう、待機児童を解消していこうということで、新たなプランがスタートをしてまいります。

 しかし、その中で、当然、その受皿の拡大ということも重要なんですけれども、その中身、幼児教育の質の向上ということが大変重要かと思っております。この質の向上に向けた今後の課題について、お二人にお伺いをしたいと思います。

秋田参考人 ありがとうございます。大変重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。

幼児教育の質の向上に関しましては、まず一つは、最も子供に対して効果があるということがOECDの調査で明確になっているのが、現職の保育者の研修でございます。それ以外の様々な条件に関しましては、効果がありそうだということは分かっていますけれども、例えば構造の質と言われるような、クラスサイズであったり、一人当たりの子供の担当を減らしていくというようなことも有効であろうということは分かっていますが、じゃ、何人だったら有効かというのは分からない。

 それに対して、まず直近で最も有効なのは、現在ある体制の中では、研修を行っていく、しかも、その研修においても、現在何が一番課題であるかというところの焦点や重要な概念について、実際に自分たちの実践を基にした事例などの共有による研修というものが有効であるということが、今オーストラリア等の海外の研修の事例からは明確にエビデンスも出されてきているというようなところになります。

 また、その中で、やはり個々人で保育者が保育に当たるわけではなく、チームで、園として行っておりますので、園長や主任、またミドルリーダーのリーダーシップというような形で、園全体の運営マネジメントが順調にうまく進むというようなことが保育の質の向上において重要であるということが言われております。

 その辺りについて、また、もう一方では、当然のことながら、今回の児童手当とも関係しますけれども、家庭とのやはり園の連携であったり、それから、幼児教育はその後、児童期以降にやはり大きな影響を及ぼしますので、小学校以降との連携、接続というような形で、家庭や地域との連携、コミュニティーをつくって、地域で子育てをやっていくというような形を実現していくということが、保育の質を、内側で子供と直接接触するやり取りと、それからその子供たち、家族を取り巻く全体としてのウェルビーイングのためには重要であろうというふうに考えております。

 以上です。

吉田参考人 幾つか重なりますので、そこは手短にお話をしたいと思います。

 幼児教育、保育の質の向上については、もちろん保育者の養成それから研修等々が重要であることは言うまでもありません。

 と同時に、やはり、特に幼児教育、保育は私立、民間がかなり比重が多うございますので、そうすると、やはりいわゆる園長と言われる方々のトップリーダーのマネジメント力がかなり重要だろうと思います。つまり、職員にどれだけ研修機会を保障するんだとか、どれだけみんなの気分を盛り上げるんだとか、これはやはりトップによって相当左右されますので、トップリーダーのマネジメント力を高めるという工夫、努力は避けられないと思います。

 それから、もちろん、構造の質と先ほどございましたけれども、やはりちゃんと屋外遊びができるような園庭環境であったり、余り詰め込みにならない保育室であったり、これは決して無視はできません。先ほどおっしゃったように、認可外施設の中には、かなりその部分で問題を抱えている施設がないわけではございませんので、子供の立場に立って、やはり許せないレベルのものは、それは制限しなきゃいけないということはあろうかと思います。

 もう一つ、私の方で申し上げたいのは、やはり質というのは評価を避けられません。なかなか保育の質というのは目に見えない、数値化できないものではありますが、しかしながら、評価についてもっとシステムを考えていくべきではないか。

 例えば、イギリスにおいては、OFSTEDという政府自身が第三者評価機関を持って、全ての施設を評価し、その評価を受けていないと幼児教育の無償化は適用されないという話でございますし、ニュージーランドにおいても、EROという、エデュケーション・レビュー・オフィスという第三者評価機関を政府が持っておりまして、そこが現場の保育実践について、丁寧な観点から、ナショナルカリキュラムとひもづけた形でやはり質の評価をし、評価をすれば、その評価を受けたということを例えば園の玄関に貼っておけば、保護者がより評価の高い園を選ぶというインセンティブになりますので、そういう意味で、評価システムの検討は今後の大きな課題だろうというふうに考えています。

古屋(範)委員 ありがとうございました。保育士の研修、あるいは園長のマネジメント力、環境、そして第三者評価、このような観点が今後重要になるということを伺うことができました。

 続けて、秋田参考人にもう一問伺います。

 今回、児童手当法の改正で、財源の確保についての改正が盛り込まれました。昨年十二月に閣議決定をされた全世代型社会保障改革の方針では、世帯合算については見送るということになりまして、しかし、引き続き検討されるということになっております。

 こうした少子化対策又は子育て支援に必要な安定財源の確保について、先生も、まだ三千億が足りないのだという先ほど意見陳述もございましたけれども、社会全体で子育てを支援していくというこの大きな方向性の中で、政府全体の予算の中で幅広く検討していくべきじゃないかなというふうに思うんですけれども、先生の御意見を伺いたいと思います。

秋田参考人 ありがとうございます。

 当然のことながら、まずはその財源をいかに増やすかということが極めて重要でありまして、先ほど伊藤参考人の話もあれば、阿部参考人の意見もあれば、いろいろな形で子供にとっての財源をどうやって増やすかというところがやはり最も大きな問題でありまして、それで、全世代型においても、やはり高齢者に比べて子供、子供といっても、ゼロから十五だけじゃなくて、先ほど阿部さんが言われましたけれども、もっと、高校生、大学生まで含んだ、そうしたところへのやはり予算投入ということが非常に重要に今後なってくるというふうに思っております。

 それのためのごく一部として、今回、特例給付の問題は出ていますが、そこだけで子供の予算が十分なわけではなく、今後更にどういうようにして拡大していくのかということについて、是非先生方に御議論をしていただきたいというふうに思います。企業の拠出というのも限界がございます。その中で、国全体としてやはり子供についての税財源をどう充てていくのかということの議論がもっとなされるべきだというふうに考えております。

 以上になります。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 阿部参考人にお伺いをしてまいります。

 先生とは、かつて子供の貧困について対談をさせていただいたことがございます。今日も、所得再配分機能についての言及がございました。かなり前の時点においても、先生、若い世代における我が国の所得の再配分機能、ここが弱い、あるいは逆転をしていたということを指摘されていました。ここでも、再配分の機能の逆機能、より可処分所得が減ってしまうというような逆機能は解消されたものの、子育て世帯の貧困率の減少という意味で、その効果は小さいというふうにおっしゃっています。なぜその逆転機能が解消されたかというと、そのとき、先生は、やはり児童手当が拡充されたということが一つの大きな要因だというふうにおっしゃっていました。中学まで、額も拡充をいたしました。

 子供の貧困問題と、それから児童手当の意義、これについてのお考えがあればお伺いしたいと思います。

阿部参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身は、理想としては、児童手当というのは、やはり、子育てする世帯を全て国として応援していくんだといったもので、普遍的な手当になるべきだというふうに思っています。それが理想だというふうにも思います。ですので、そこの意見は全く伊藤先生と同じです。

 ただ、これまでの何十年間の状況を見ていくと、児童手当の増額と負担の議論というのが必ずしも一緒になってはいないというふうに思います。なので、やはり誰がそれを負担するのかといった議論をしっかり踏まえた上で、日本の場合は非常に税金を上げることに対してのアレルギーが大きいかなと思いまして、ですので、そういった増税の話はなく普遍的なものを上げていくというのはやはりやや無理があるのであろう。

 特に、やはり、私自身も、生活保護ですとかそのほかのところで、ずっと長い間、予算カット、保護基準の引下げというのを見てきたという立場にある中で、それによってほかのものがスクイーズアウトされてしまうということに対しては非常に懸念を持っています。

 おっしゃるとおり、逆機能しなくなったのは、児童手当が大きいかなと思います。でも、そもそも、じゃ、何で逆機能しているのかということを考えるべきで、なぜ逆機能しているのかというと、これは社会保険料です、はっきり言って。社会保険料をどうするのかということについてきちんとやはり議論をしないことには、どうしても再分配機能が子育て期、現役世代において少ないといったところを見ることができない。

 今回の法案に関して言えば、実は貧困率というのは中間層以上に幾ら給付をしても全然変わりません、元々貧困でないので。貧困線よりちょっと上の世帯に対してどのような給付をしているかということだけが影響してくるんですね。そういった面においては、やはり貧困線よりちょっと上の世帯に対して児童手当を引き上げる、額として引き上げる又は社会保険料を減らすというどちらかをしなければ、これ以上の再分配による機能の改善というのは難しいかなというふうに思います。

古屋(範)委員 もう時間がなくなってまいりました。

 済みません、最後、吉田参考人に。

 保育士が不足をしております。この問題は本当に深刻で、我々も全力で取り組まなければいけないと思っております。この点に関して御意見があればお伺いをしたいと思います。

吉田参考人 一つは、繰り返しになりますが、まず、基本的な部分で、処遇あるいは労働環境を更に改善するということが基本だと思います。

 加えて、先ほど定着率のお話を申し上げたように、これは現場も相当工夫しなければいけません。お金だけつければいいというのではなく、本当に魅力ある、働きやすい、そしてやりがいのある職場だというふうに変えていきながら、また、社会に対して、保育の仕事はすばらしいね、お医者さん、弁護士に劣らず、立派な仕事だねという、何かモーメントを起こすことが重要だろうと思います。

 最後に、もう一つだけ申し上げますが、足りないのは事実ですけれども、いずれ待機児童は私は解消すると思っています。東京の特殊な地域を除くと、ほぼほぼ、あと数年で待機児童はかなり解消していく。既に、地方では、もう認可保育所の定員割れが出ている地域が相当出てきていると聞いています。

 そうすると、逆に、今度は人が余っちゃう。しかし、余るのか。先ほど伊藤先生がおっしゃったように、だからこそ、配置基準を改善をして、むしろ人的体制を充実するということをもうそろそろ視野に入れる時期かなと思いますので、それも併せてお考えいただければ大変幸いだと思います。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 処遇改善、勤務環境の改善を図りつつも、やはりその先に、質の向上につなげていくべき、このような御意見だったと思います。

 今日は本当にありがとうございました。今後の法案審議に生かさせていただきます。

 ありがとうございました。

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