第204回国会 衆議院 文部科学委員会-5号

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様、お忙しい中、国会においでくださり、御意見を述べていただきましたこと、心から感謝を申し上げたいと思います。

 私たち公明党も、遡りますと、一九九九年に党の基本政策に、少人数学級の実現ということを主張いたしました。特に、コロナ禍を受けまして、昨年は、安倍総理始め文部科学大臣など、少人数学級の実現に、強く働きかけてきたところでございます。本法律案の早期成立を期してまいりたいと考えております。

 まず、末冨参考人にお伺いをしてまいります。

 三十五人学級ということでありますけれども、少人数学級の規模はこれで十分かどうか。

 主体的、対話的で深い学びを実現しようとする学習指導要領、また、中央教育審議会「令和の日本型学校教育」答申で、個別的な学びと協働的な学びの実現など重要な方針が示されておりますけれども、今後の先生の展望についてお伺いしたいと思います。

末冨参考人 御質問に回答させていただきます。

 まず、三十五人学級といいますのは、少人数学級の一里塚としては大変重要でございます。ただし、特に困難な地域の学校を中心に、一層の少人数化が可能なような運用も必要だと考えられます。

 個別的な学びと協働的な学びは、私の資料の中でも説明させていただきましたが、学習集団の柔軟化ということです。様々な特性を持った子供たちが、とりわけ、協働的な学びの中でお互いに成長し合うという学びが可能になりますが、特に困難な地域の学校、あるいは発達特性や障害を持った子供、そして時々学校に来る不登校の子供など、多様な子供がいる学級におきましては、丁寧なグループワークの寄り添いというものが必要になります。

 であるとするならば、三十五人学級で十分かと言われれば、そうではございません。とりわけ、エビデンスが日本でも示されている低SESの子供たちあるいは困窮世帯の子供たちが多い学級や学校に対しては、更なる少人数化を可能とするような方策が必要とされると考えております。

 以上です。

古屋(範)委員 多様な学びを実現していくために更なる少人数学級の推進が必要である、このような御意見かと思います。

 続けて末冨参考人にお伺いをしてまいります。

 今回は小学校ということでありますけれども、中学校での三十五人学級の必要性についてどう思われるか、また、これが今後も実現しなかった場合の、デメリットがあるのではないかということについてもお伺いしたいと思っております。

 中学校で三十五人学級を導入する場合に、教育の質の向上をさせていかなければならないと思いますけれども、必要な条件は何か、この点についてお伺いをしたいと思います。

末冨参考人 まず、中学校三十五人学級が実現しなかった場合のデメリットにつきましては、私も東京都下の公立中学校にはしばしば参りますが、既に新学習指導要領の実現に際しての困難を来しております。

 とりわけ、主体的、対話的で深い学びあるいは探求的な学びに取り組む学校においても、狭い教室の中で四十人の生徒がせめぎ合うような状況の中で、落ち着いてゆったりとした対話というものが一切不可能な状況になっています。これは、私の資料でも指摘した学級内の音環境という問題にも起因しております。つまり、物理的に、主体的、対話的で深い学びの実現が困難になっている。デメリットが既にあるという状態になっております。

 その上で、中学校での三十五人学級につきましては、私自身は、やはり教員が、ティーチングスキルそして評価スキルを伸ばしたいという気持ちを持っている方たちが非常に多いんですね、であればこそ、部活動の徹底した外部委託化というものをまず推進する必要があるというふうに考えております。そして、そこで生まれた時間で教員が自らのスキルをきちんと伸ばせるということを三十五人学級の前提としたいと思います。先ほど菊田先生からも御質問がありましたように、そのことが中学校の指導スタイルをより一層よい方向に変えていく前提条件にもなるというふうに考えております。

 以上です。

古屋(範)委員 末冨先生、資料の中でも、感染症対策のみならず、教師の声が聞こえにくい、人数が多いと聞こえにくいということを指摘していらっしゃいますけれども、中学においても更なる少人数学級の推進が必要なのだ、こういう御意見を頂戴いたしました。

 次に、清水参考人にお伺いをいたします。

 実は、私は、一度も教師として教壇には立っておりませんが、大学時代、教育学部に通いまして、教育課程を取得いたしました。

 その中で感じたことといいますのは、特に積み上げの教科の場合に、つまずきの箇所というのがあるように思います。そこの、つまずきの箇所でつまずいてしまった場合に、その先なかなか学習を進めていくことが困難になる児童生徒がいるのではないかと思います。もちろん、学習塾などに通ってそういうものを解消していくこともできる御家庭もありますけれども、できない御家庭の場合に、そこから先、勉強していく上で分からなくなってしまうというようなことが起きるのではないかと思います。

 この少人数学級の実現と、そして、こうした学習のつまずきを解消していく、この辺について、教育現場に長く携わっていらっしゃいました清水参考人の御意見を伺いたいと思います。

清水参考人 それでは、今御質問ございましたけれども、いわゆるつまずいてしまう子供について、まずは授業の中で十分にその子に対応できる時間の確保が必要であろうかと思います。

 先ほど私は、三人のグループの二十四人というお話をいたしましたが、そのぐらいの人数であれば、いわゆる三十人学級にすると、三十人ぴったりの学級もありますが、やや下回る学級が多くできますので、そういった意味では二十四人ぐらい。そういったときには、そういう子たちにも授業の時間で十分に対応できます。

 当然、そういう子たちについては、クラスの中での教え合いというのも非常に大きくて、先生、ここがつまずいているよというのは、子供たち同士が分かることもあるので、子供たち同士が教え合いをできるような、そういった時間の確保の上でも少人数が有効である。あとは、少人数にしたことによる、事務作業の時間が減ることによって、放課後などにまさに個別に指導をしていく、そういったものが可能になってくるのではないかというふうに思っております。

 以上でございます。

古屋(範)委員 やはり、一人一人の生徒に対してきめ細かな指導をしていくという上で少人数学級が大変有効なのだというふうに思います。

 もう一度、末冨参考人にお伺いをしてまいりたいと思います。

 先生の資料の九ページに、教員確保につきまして、教員確保に際しては、小学校高学年専科教員、特別免許状授与権の政令市移管、市町村具申権の拡大、教育免許更新講習の見直し等々、このような御意見がここで述べられています。

 特に、特別免許状の活用の在り方につきまして、どのような具体策があるのか、先生のお考えをお聞きしたいと思います。

末冨参考人 まず、特別免許状につきましては、とりわけ都市部においてニーズが高い教員といたしましては、まず、英語が教えられるということもそうなんですが、英語に限らない外国語理解、あるいは外国文化理解が可能なキャリアを有する教員のニーズが非常に高くなっております。これは、特に都市部の住民構成が多様化しているということにニーズがございます。

 あるいは、ICTの指導ですとかのプログラミングにアドバンテージを持つ教員のニーズも非常に高いです。

 それとともに、地域で貧困、虐待等の支援に関わってきた団体からコーディネーター教員を是非登用したいという声もございます。こちらの方は、先ほどの加配の御質問とも重なりますけれども、加配の充実とともに、担任外で、家庭とそして子供両方の支援、あるいは学習の保障を行っていけるようなタイプの教員というものを社会人から登用したいというニーズもございます。

 そのためには、都道府県しか免許授与権のない状況が特別免許状の活用の壁になっているということを御理解いただきたいと思います。既に基礎自治体では、もしもこの免許が柔軟化されるのであればこうした方を登用したいという見通しが立っている自治体も多うございます。であればこそ、基礎自治体への権限移譲あるいは具申権の確立といったものを重視したいというふうに考えております。

 以上です。
古屋(範)委員 ありがとうございました。

 様々な意味で外部人材の活用というものは非常に必要であって、今後、制度を柔軟化しながら更に進めていく必要があるんだろうなというふうに思います。

 もう一問、末冨参考人にお伺いをしてまいります。

 先生の示されました資料の十七ページなんですけれども、ここに、生きる力指標群が示されております。教育のビッグデータの構築や既存の調査の改善に大変時間がかかるのではないかというふうに思いますけれども、これについて更に御意見があればお伺いをしたいと思います。

末冨参考人 ありがとうございます。

 確かに、全ての児童生徒の教育ビッグデータ、あるいは全ての教員の教育ビッグデータを構築するということは時間がかかります。であればこそ、モデル自治体でのデータベースの構築、運用というものが急がれます。既に先進自治体においては運用事例もございますし、あるいは、これを機会に取り組みたいと手を挙げてくださる自治体の心当たりもございますので、モデル自治体の開発というものが重要になります。

 あるいは、本田参考人もおっしゃられましたけれども、抽出調査において多様な自治体を選定して学級規模の効果の検証をしていく、あるいは、学習プロセスの改善の検証をしていくという戦略性があれば、統計的なクオリティーを確保しながら、例えばですけれども五年を目途としての検証も可能であるというふうに判断をしております。

 以上です。

古屋(範)委員 末冨先生には、これまで子供の貧困対策について様々御指導をいただいてまいりました。コロナ禍において、更に貧困家庭が困窮を極めて、教育格差が広がったのではないかというような調査結果もございます。

 この子供の貧困の問題、それから、今回、少人数学級を進めていく、こうした学校教育との、子供貧困の中で少人数学級に求められるもの、また期待されるものについて、最後、お伺いをしたいと思います。

末冨参考人 少人数学級の実現が、とりわけ困難な世帯の子供たちに対して重要であるのは、学校が、安心して学べることができる、友達としゃべったり遊んだりすることができる、居場所であるということに尽きると思います。学校や学級が安心した居場所であればこそ、子供たちが学ぶ意欲を持ち、そして自らの能力や資質を伸ばしていくことができる土壌となると考えております。

 とりわけ困難な世帯の子供たちは、残念ながら、家が居場所ではございません。家こそが最も気を遣い、大変な場所であるという状況も少なくない中で、少人数学級で、教員がより丁寧に関わり、あるいは友達たちがより丁寧に関わる時間が長くなるという条件を保障することは、特に、この国で最も厳しい状況に置かれている子供たちの成長のためには不可欠であるというふうに考えます。

 大変重要な御質問、ありがとうございます。

古屋(範)委員 貴重な意見、ありがとうございました。

 大変困窮している家庭にとっても、学校が、少人数学級で安心して学べる、居場所があるということが重要なのだということを、今、御意見を伺うことができました。

 今日、三人の参考人全員に質問できなかったこと、申し訳ございません。今日いただきました御意見を更に法律の審議に生かしてまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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