第159回国会 衆議院 厚生労働委員会 第15号

○古屋(範)委員  公明党の古屋範子でございます。
本日は、参考人の皆様、大変お忙しい中、国会までお越しいただき、大変貴重な御意見をお伺いできますこと、深く感謝申し上げたいというふうに思います。
 今回の年金改革では、少子高齢化の進展で崩れつつある給付と負担のバランスを立て直すことが最も重要であると考えます。政府案こそがこの待ったなしの課題にこたえることのできる法案であり、公的年金制度を持続可能な、また安定的なものにする、私たち国民の安心につながる改正であるというふうに考えます。
 一方、給付と負担という最も大事な肝心の数字が欠落している民主党案に対して、マスコミからさまざまな意見がございます。これは四月七日付日経でございますが、「選挙を意識するあまり、保険料の負担は増やさないと強調する一方で、給付は政府案と同水準を約束するなど、数字のつじつまを無理やり合わせた」、また、四月八日付読売には、「
「絵に描いた餅」となりかねない。」また、四月九日付日経には、「単に国民に幻想を与えるだけに終わってしまう恐れがある。」など、厳しい指摘がございます。

 実は私、最初に山崎先生に質問をさせていただきますけれども、現在横須賀市に住んでおります。神奈川県立保健福祉大学が横須賀市に開学したことを、市民の一人として大変喜んでおります。両者の法案についてですけれども、初めに率直な御感想を山崎先生にお伺いいたします。

○山崎参考人 今回の政府提案の法案、あるいは民主党の提案の印象ということでございますが、最初に申し述べましたように、いろいろな議論が分散しておりまして、どうまとめていいのかというくらい多様でございましたが、かなりはっきりと政治レベルでは方向性が見えてきた、あと一歩かなというふうな感じがいたします。
 あと一歩を今ということになると、やはり対立するのかなというふうに思いますが、かつて昭和六十年に大改正がありました。あの改正は、ほぼ十年議論をしているわけでございまして、その程度の時間があれば最終的に収れんする可能性があるのではないかというふうに思っております。
 ですから、印象としては、私は、一見対立していますが、大きな流れとしては収れん傾向にあるというふうに見ております。

○古屋(範)委員  冒頭の意見陳述にもございましたように、政府案また民主党案、双方に利があり、収れん方向にあるというお話でございます。しかしながら、民主党案に財政的裏づけが明示されていないため、対案として同レベルで論ずることはできないという最初の意見陳述であったというふうに思います。
 次に、女性と年金問題について質問をしてまいります。
 今回の法案の中で女性と年金の問題について特に注目すべきことは、専業主婦の年金受給権が明記されたことによって、現在世帯単位となっている厚生年金も個人単位の方向に大きな一歩を踏み出したというふうに思います。そして、離婚時に厚生年金を分割できる新たな制度の導入が盛り込まれたことは、山崎参考人も大変に評価されていると指摘されておりましたが、私も全く同じ思いでございます。
 女性は男性に比べ平均寿命が長く、また、さらに平均寿命が延びていくという予測がございます。また、女性の社会進出、核家族化の影響、中高年夫婦の離婚の増加とライフスタイルがさまざまに変化している現在、女性が人生の最後を単身で過ごすというケースが非常に多くなっております。離婚時に厚生年金を分割できるということは、女性の老後に新たなセーフティーネットが張られ、生活保障が前進するという大きな意義があるというふうに考えております。
 この点における山崎先生の評価、また、女性と年金についての先生の将来に向けてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○山崎参考人 財政問題にかなり偏った議論が行われているんですが、実は、今回の改正法案には、離婚時の年金分割だとか、あるいは育児支援の観点からの保険料免除期間の延長だとか、その他いろいろ提案があるわけでございまして、非常に重要な要素だというふうに思っております。
 私、女性と年金の問題で何とか合意が得られないだろうか、もし合意が得られれば、今回の改正を導く一つの原動力になるのかなというふうに思っておりました。ただ、専門家の間でも本当にまとまらなかったわけでありますが、これも政治的には一つの方向がはっきり見えてきたというわけでございます。
 今回の政府提案の法案では離婚時に限定しているわけでございますが、むしろこの点に関しては、将来的には民主党案の方向に行くべきだというふうに私は考えておりますが、しかし、専門家の間でもこれだけ意見の違いがある中で、一気にそこまでいくのはやはり難しいのかな、しかし、大きな手がかりにはなっているというふうに思っております。
 私自身は、離婚時に合意を得るというのは非常に難しいと思っております。ですから、むしろ婚姻時であれば一〇〇%合意が得られると思っております。
 以上です。

○古屋(範)委員 確かに、離婚時に年金の分割の合意を得るというのは現実的には大変かもしれませんが、先生の御評価のように、女性と年金の問題が一つ大きな一歩を踏み出すことができた、このような御評価であろうかというふうに思っております。
 その女性と年金の問題に関しまして、女性はやはりパート労働者が大変多いわけでございます。このパート労働者への厚生年金の適用拡大について、私ども公明党としては、パート労働者などの老後の年金を充実する、また、正社員が多い企業と非正社員の多い企業間で保険料の事業主負担の公平性を確保するとの観点から、将来的には適用拡大の方向で見直すべきと考えております。
 今回の政府案では、現下の雇用また景気情勢で適用を拡大すれば、パート労働者の占める割合が多い企業の負担が多くなって倒産やパートの解雇が進みかねないことが懸念されるため、さらに議論を重ね、五年以内に具体的な結論を出すことになったわけでありますけれども、パート労働者への厚生年金の適用拡大について、引き続き山崎先生のお考えをお伺いいたします。

○山崎参考人 女性と年金の問題で、離婚時の年金分割を提案しながらもその割に大きな支持が得られないのは、セットになっていた短時間労働者への適用拡大を今回見送ったということにあるというふうに思っております。恐らく研究者レベルでは皆さん一致していることだと思うのですが、経済状況等の中で非常に業界の間で批判、反対が強いということで五年間の検討ということにしたことだというふうに思います。
 一番のポイントは事業主負担の問題だと思います。適用外であれば事業主負担を免れる、適用すると事業主負担がかかってくるということでございまして、ここのところを何とか中立化できないかということで私は審議会でも提案させていただいたんですが、事業主負担については、被保険者として適用した場合にその半分を事業主が負担するということではなくて、人件費の総額、つまり、学生であろうと、うんと短時間の労働者であろうと、その者に支払った賃金の総額に対して一定率をお願いするという形に切りかえてはどうだろうかと。これは賃金を課税ベースにする外形標準課税になりますが、社会保険料というのは実質的に人頭税でございますから、これをいっそのこと徹底させた方がいいのではないかというふうに思っております。

○古屋(範)委員 やはり引き続き検討すべき課題であろうかというふうに思います。
 次に、先ほどもお話に出ました次世代育成支援策の強化についてお伺いしてまいります。
 年金問題を考えるとき、やはりその根底にあります少子化対策をどう考えていくかが大変重要なポイントであるというふうに思っております。
 私ども公明党は、坂口厚生労働大臣並びに厚生労働省の皆様の献身的な御努力により、これまでさまざまな子育て支援を次々に推進、また実現をしてまいりました。その結果、来年度予算では、不妊治療費の助成や児童虐待対策、また待機児童の解消など、支援策が大きく拡充することとなりました。また、公明党の努力により、児童手当も小学校三年まで拡充をされます。
 この子育て対策を年金制度の中でやることはさまざまな御意見があることは存じておりますが、私は、社会全体として、将来を支えてくれる子供たちに対していろいろな方面からさまざまな支援があってもいいのではないかというふうに考えております。

 やはり、働く女性にとって、子供を産み育てる、さまざまな苦労がございます。また、一部には、子供を育てるということが重荷というような空気も一部にあろうかというふうに思います。国全体として、そのような苦労があっても、やはり子供とともに生きていくこと、その方が楽しいというような大きな空気を醸成していくことが肝要かというふうに思われますけれども、今回の政府案では、子育て世帯について、現在の一歳までの育児休業中の保険料免除制度の取り扱いを三歳まで拡充する、また、勤務時間を短くするなどして働いている場合、子供が生まれる前の賃金に基づき給付額を算定するなど、子育て世帯に対する配慮が拡充されることになっております。

 山崎先生がおっしゃられていましたように、私も、次世代育成支援の施策を本格的に強化していかなければいけない、このように考えております。子育ては社会全体で支えるべきとの考えから幅広い支援策をとるべきというふうに思いますけれども、この次世代育成支援につきまして、高山先生、また山崎先生、お二人にお考えをお伺いしたいと思います。

○高山参考人 お答えいたします。
 現在提出されている政府法案における次世代育成支援は、次のステップに向けたものだと私も理解をしておりまして、高く評価しているところでございます。これ以外にさらに強力に推進すべきもの、あるいは年金制度の枠外で子育て支援をもっと充実することを真剣にお考えになっていただきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○山崎参考人 恐らく、この点に対しては、高山先生と私、全く一致できることでございます。
 やはり、年金制度にとっての最大のリスクは少子化でございます。だから産みなさいと言ってはいけないと思うんですが、子供を産み育てることについて、老後の保障と同じように社会全体で支え合うという、いわば育児の社会化というのを推進する必要があるというふうに思っております。そういう意味で、今回の改正法案にこういった要素も含まれているわけで、これを廃案にするのは非常に残念だというふうに思っております。
 ただ、今後、本格的にといった場合に、年金制度の枠内で全面的に引き受けるのかどうかということについてはいろいろの議論があると思いますが、私自身は、介護保険と同じように市町村をベースに、現役世代の負担、企業あるいは国、自治体の負担をお願いしながら、子育てに関連する現金やサービスを一元的に提供できる体制をつくれないかというふうに思っております。

○古屋(範)委員 両先生から、さらなる強力な少子化対策の推進が必要という御意見をちょうだいできたというふうに思います。また、年金制度の中でのこういった育児支援、こういうものも必要であるというような御意見であったかというふうに思います。
 最後の質問になります。米澤先生にお伺いをいたします。年金積立金の運用のあり方についてお伺いをいたします。
 年金積立金は平成十四年末で約百四十七兆円がございます。この積立金は、現在、厚生労働大臣が定めた運用資金の構成割合に基づいて年金資金運用基金が行っていますが、今後、新しく設立されます独立行政法人が運用を行うことになっております。
 この巨額の積立金の安全かつ効率的な運用のあり方について、先生の御意見をお伺いいたします。

○米澤参考人  今後、独立行政法人の方で運用をすることは決まっておりますが、今回の財政再計算のもとで、新しい予定利率で、まだ基本的なポートフォリオの作成はこれからになっておりますので、詳細なところは組織も含めてこれから決めることになるかと思います。
 ただ、一般的な話としまして、何だかんだ言ってもやはり国債を中心としながら、先ほど言いました、国債のみではいろいろ問題がございますので、株式等も含めたポートフォリオ、十分に分散させたポートフォリオで運用していくというしか今方法はないと思っています。
 かつ、もう超大規模な資金でございますので、かつ公的な資金でございますので、その運用の仕方は、例えば民間にいろいろ発注するときも工夫しながら、マーケットインパクトを避けながらうまくやっていく必要があるかと思います。その点では、大規模がゆえにいろいろ工夫しなくちゃいけない点も多々あるかと思います。
 それから、これまでも、そうであってはならないために、わざわざ毎月の運用枠の細かなところまで決めておりました。というのは、何かPKOか何かでやっているんじゃないだろうかという疑惑もあったことは事実でしたので、そういうことは絶対にないというように、ある意味では自分で首を絞めるようなことまでもしてきました。
 これは、言ってみれば、ある人に言わせればコスト、それはコストじゃないかと言われればそうかもしれませんが、コストと言われようとそういう点の疑惑は全くないように、かつ、やはり多額ですので、マーケットインパクトを避けながら徹底的な分散投資をしていきたい。
 繰り返しますけれども、やはり何だかんだ言っても国債が中心となるということは変わりないと思います。
 以上でございます。

○古屋(範)委員  大変示唆に富んだ先生方の御意見、ありがとうございました。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【参考人意見陳述全文】

○山崎参考人 本日は、お招きいただきましてどうもありがとうございました。
 私は、年金改正の政府案を支持する立場から意見陳述をさせていただきます。
 なお、高年齢者雇用安定法の改正法案もかかっておりますが、年金の六十五歳支給をスムーズに実現する上で不可欠の法案でございます。今国会での成立を願っております。
 まず最初に、改革の方向について収れんする傾向が見られるということについてお話しします。
 年金改革につきましては、これまで随分議論がありました。例えば、基礎年金を全額税方式に切りかえるべきという提案、あるいは二階部分を民営化すべきという提案がありました。さらに、財政方式を積み立て方式に切りかえてはどうかという提案もありました。給付水準につきましては、ミニマムの保障にとどめてはどうかという提案もありました。また、第三号被保険者問題につきましては、パートへの適用拡大のほか、負担を調整する、あるいは給付を調整する、そして、年金分割という提案もありました。
 今でも、専門家、関係団体の間でも意見に大きな違いがあります。しかし、今国会に提案されている政府案と民主党案を比べますと、研究者の目で見ると、少なくとも政治レベルでは改革の方向性について収れんする傾向を見てとることができます。党派を超えた対話と協調が可能な状況が形成されつつあるように思います。
 ただし、民主党案は十分な財政的な裏づけを欠くものでありまして、政府案と同じレベルでは比較できないわけですが、改革の基本的方向性、枠組みに関しましては、多くの共通点があるというふうに思っております。その意味で、私は与野党対決法案だとは考えておりません。

 第一点でございますが、いずれも社会保険方式を基本にしているということで、税方式に決別しているということであります。
 民主党案の税負担による最低保障年金は、国庫負担の配分を一律配分から低所得者重視に切りかえたものであって、従来提案されています基礎年金の全額税方式論とは異なるものだというふうに見ております。また、社会保険方式を基本に置くことは、介護保険を推進した民主党の政策とも一致しているというふうに思います。
 第二点として、厚生年金の民営化という話は消えているということでございます。

 第三点として、賦課方式をいずれも基本としているということで、積み立て方式への切りかえを退けているということでございます。

 第四点ですが、一定程度の給付の抑制は必要だけれども、モデル年金でいえば所得代替率五〇%を確保するという点でも共通しておりまして、ミニマムの保障に限定すべきだということにはなっていないわけでございます。
 それから、第三号被保険者問題につきましては、年金分割を採用することとしております。これも一致しております。ただ、離婚時に限定するかどうかという違いはありますが、思想的には大きな隔たりはないというふうに見ております。

 次に、制度体系の一元化をめぐってであります。
 今回の二つの改革法案を導いたのはスウェーデンの改革であります。両案ともこれを手がかりにしているわけでございます。スウェーデンの改革に見られる二つの新機軸、イノベーション、いわば抜本改革の二つの要素のいずれを重視するかという軸足の置き方の違いだと思います。
 民主党案は、所得比例年金への一本化と低年金者に対する保障年金という要素を取り入れた、これを重視したものであるというふうに思っております。一方、政府案は、財政を重視し、保険料を最終的には固定し、そして給付と負担の自動調整を取り入れた。こちらに軸足を置いているものであります。

 ところで、私も審議会の委員で審議に参加しましたが、審議会の中でも、このスウェーデンの制度体系の一本化という方向を支持する意見は少なくなかったわけであります。私も、長期的には十分に検討に値する案だと思っております。ただ、今回の改正で一気にということになると、時期尚早だというふうに考えております。
 一元化ということが言われるわけでございますが、これは全国民レベルでの給付と負担の公平化であります。民主党案での統合一本化に限定されるものではなくて、制度の分立を前提にした制度間調整をも含む概念であります。医療保険制度改革でもそのように理解されてきました。

 年金について見ますと、五十九年の閣議決定以来、一元化への取り組みが行われてきました。しかし、中身はまちまちでございます。基礎年金は財政調整です。船員保険と厚生年金は、これは統合しました。続いて、それ以来、旧三公社あるいは農林年金をそれぞれ厚生年金に統合しました。今国会に国共済と地共済の改正法案がかかっておりますが、これは財政単位の一元化でありまして、財政調整であります。

 今後の展望を考えてみますと、被用者年金については統合一本化は可能であります。しかし、自営業者の国民年金と被用者年金制度の間での統合一本化の展望は、当面見えないというふうに見ております。
 なぜ統合一本化が難しいのかということでありますが、自営業者と被用者の間では、越えがたい相当高い壁があるというふうに見ております。就業形態、所得、報酬、そういう概念の違いがあり、制度設計は非常に難しい。また、連帯意識も共有しがたいということであります。
 この壁というのは、医療保険制度改革で我々は経験済みであります。仮に、民主党案のように、年金制度において完全な、全面的な統合一本化が可能であるとすれば、それは国保や地方団体が提唱している医療保険制度の統合一本化も可能にするということであります。しかし、現実には、被用者グループを代表する健保連や労働団体、経営者団体の間からは、自営業者と被用者を別制度とし、財政的にも生涯にわたって完全に縁を切る突き抜け方式が提案されているわけでございます。

 昨年三月に策定されました医療制度改革に関する基本方針を見ますと、実現可能性を重視し、高齢者医療に限定して独立方式とリスク構造調整を折衷するという案になっておりますが、これさえも現実には展望は開けていないわけであります。意外に老人保健制度はよくできているというのが専門家の間での陰の声であります。

 次に、世代間の給付と負担の公平について申し述べさせていただきます。
 政府案では世代間の不均衡は変わらないという厳しい批判があります。しかし、税制や社会保障全体の改革の方向を見てみますと、大きく是正される方向で施策が展開されています。
 まず、年金課税が強化されました。これは、税制面での世代間の公平化にとどまらず、国保や介護保険の負担の適正化にも大きく寄与するものであります。
 また、医療保険制度改正では、十四年改正で高齢者の定率一割負担が入り、さらに、一定以上の所得者につきましては二割負担が入っております。
 介護保険制度改革では、施設入所者には在宅とのバランスやあるいはホテルコストに着目した応分の負担を新たに求めるという方向で改革が進んでおります。
 その一方で、若い世代に対する相当な施策の充実が図られようとしております。次世代育成支援という観点から、次世代育成支援対策推進法を柱として本格的な支援策が講じられる方向であります。

 今国会には育児・介護休業法の改正案が出ております。育児休業期間を一年半まで延長するということであります。また、年金改正では、子供が三歳に達するまで、この間の保険料を免除するということになっております。また、短時間労働により報酬が低下した場合も、年金制度上で配慮するということになっております。さらに、児童手当も就学前から小学校三年の終了時まで延長するという本格的な次世代育成支援の対策が講じられようとしているわけであります。

 最後に、改革は先送りできないということをお話しさせていただきます。
 厚生年金、国民年金ともに、既に実質収支は赤字であります。つまり、将来に向けて相当残しておかなければいけない積立金を取り崩しつつあるということであります。現在の保険料は平成六年以来十年間にもわたって据え置かれたままであります。後世代への負担をこれ以上転嫁できないというふうに考えております。保険料の引き上げと、そして給付の適正化を急ぎつつ、何とか安定軌道に乗せていただきたいというふうに思っております。

 以上をもちまして、私の意見陳述を終えます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○衛藤委員長  どうもありがとうございました。
 次に、米澤参考人にお願いいたします。

○米澤参考人 横浜国立大学の米澤です。
 本日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、社会保障審議会年金資金運用分科会の委員としまして、年金積立金の運用のあり方に関してこれまでいろいろ議論に参加させていただきました。本日は、この積立金の運用に関しまして、政府案の大きく二つの点、予定利率の水準、それから、これまでの年金資金運用基金から新しく独立行政法人に移る、組織が変更される、この二つの点に関しまして、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 結論を先にまとめてお話しさせていただきますと、予定利率は、私たちも十分に部分的に議論をさせていただきましたが、今後のマクロ経済から見て、大変ではあるが十分妥当な水準にあるというような認識におります。それから、もう一つの方の独立行政法人に移行するという点も、いろいろ運用の仕方において工夫が必要かと思いますが、これから述べる点において、私は、今以上にいろいろ効率的な運用ができるのではないかと期待しているということ、この二点を最初にはっきりさせておきたいと思います。
 それでは、本日与えられた時間の中で、一枚のメモを皆様の方にお配りしておりますので、これに従いまして、今述べました話の周辺の考え方等をお話しさせていただきたいと思います。

 これは、右肩の上に平成十五年三月十三日と書かれておりますが、これは直近の三月ではなくて、ほぼ一年前の三月十三日でございます。このメモは、さかのぼってその前の秋ごろから、分科会におきまして、年金積立金の運用のあり方、特に株式を含める運用がいかがなものかというような認識に立ちまして議論をして、半年間の議論を経ました意見書の要約でございます。
 この時期を思い起こしていただきますと、皆さん臨場感あるかと思いますが、日本の株価におきましても、底であってほしいと思いますが、非常に最悪な経済環境だったわけです。ですので、そこでの議論、どういう議論がされたかということは、かなり今後の資産運用に関していろいろポイントになる点があるかと思いましたので、配らせていただいたわけです。
 このメモに従いまして簡単にお話しさせていただきますと、その非常に経済環境が悪かったときも、大きな点は、一番に書かれていますように、二つでございます。年金の給付額は名目賃金上昇率に追随して払うというこの制度がございましたので、これが大前提で、運用の際もこの制約に従って運用していかなくちゃいけないというのが一つの点でございます。

 もう一つは、これは特に一般的な話でございますが、資金を運用する場合には、十分に分散化された、ポートフォリオという言葉をよく使いますが、それによって運用する。例えば、債券だけではないし、もちろん株式だけではなくて、それらをうまくミックスして、しかも、日本の年金ではありますが海外の資産をも視野に入れて、意図は、十二分に分散されたというのがポイントでございます、そういうようなもので運用していく。これが、現代の知恵というんでしょうか、金融工学の教えるところでございます。
 この二つをやはり基本的に維持していくことが大事ですねというのを、非常に不況なときに再確認をしたわけでございます。

 もう少し各論をお話しさせていただきますが、二にございますように、いろいろ過去の人の知恵におきまして、非常に経済が悪くなったときにポートフォリオの中身を変えたいという誘惑に駆られるわけですが、それは非常に慎重でなければならない、一たん決めた基本ポートフォリオというのはよほどのことがない限り変えてはいけないというようなことを教えられて、このときも、その指示に従うのがやはり過去の知恵から得られるべきものじゃないだろうかということで、大半の方の意見が一致しました。
 下手にそこのところを変えますと、株式を組み入れているようなポートフォリオですと、株が高いときに組み入れ比率を高くして、低いときにもう我慢できなくて低くするということは何を言っているかというと、一番高いときに株を買って一番安いときに売っているという、非常にあってはならないような運用になるかということでございます。


 それから、次にもう一点。必ずこういうときにお話が出てくるのは、でも、株式というのは本当に危険だよねと。片っ方で、国債ないしは財投債があるので、それで全部運用していったらいいんじゃないだろうかという議論は盛んに聞きます。これは、賃金は非常に物価とも関連していますが、年金がそういうものに追随しなければ、これは聞く耳を十分に持つ話でございます。もちろん、御存じのように、今でも大半は国債でございます。七〇%程度国債でございますので、これは誤解のないように。
 でも、それを一〇〇%にしなかったということは、アメリカの結果でも、国債の収益率、利回りと思ってください、ここから物価上昇率を引いたもの、実質の利回りないしは実質の収益率で議論しますと、実は、これはリスクに関して株式と逆転するんですよね。名目は、御存じのように、国債を買っていて満期まで持っていれば安定しますが、そこから物価上昇率を引いた実質でありますとひっくり返るというのがアメリカの結果でもありますし、日本でも、期間は、サンプルはアメリカと比べると非常に少ないんですが、ほぼ同様な結果が得られています。ということで、アメリカのアカデミックなペーパーでも、だれが長期の国債を持つかというようなタイトルで議論をされています。
 御存じのように、そこから出てきたのがインフレ連動債だと思います。昨年度、我が国でも初めて発行されましたが、インフレ連動債は年金などから見て非常に魅力的な資産ですが、まだそれが十分に得られないような場合ですと、リスクの点から見て、やはり一定の株式をも含むというのは必然的に出てくる道でございます。

 それからもう一点。私個人が特に大事にしたいのは、やはりこれだけ多額のお金を、大事なお金を運用するわけですので、これは、運用の目的としては安全に、かつ効率的に収益を上げるというのはもちろんですが、同時に、マクロ的にこの資金をうまく国民経済的に使いたいというのは、私個人はかなり意図を持っております。
 そのときに、全額国債ないしは財投債でいくというのが、果たして資金の配分から見て、マクロ的に見て、いいんだろうかと。そもそも、こういう問題というのは財投改革から出てきた問題でもありますので、私は、なるべくそんな余計なリスクは負いたくはないんですが、やはり民間の資金、資本に入れたい。それは、大事な資金を預かって運用するという点からは、決して見逃してはならない点だと思います。この点からも、なぜ一〇〇%国債ないしはそれに準ずるものではないのかという点に関して、おのずと答えが出てくるんではないかと思っております。

 以上が、運用のあり方に関する基本的な考え方でございます。

 次に、今いろいろ御議論されています財政再計算に伴います次回の予定利率ですが、今度は、前回の四・〇%から三・二%に下がったわけです。その基礎的な議論の際にはいろいろ参加させていただきましたが、私どもは、年金部会に提案させていただいたケースでは、この値がほぼ真ん中になるように、前後もう少し経済がよくなった場合のシナリオ、それから、もっとそれよりか下になるような最悪のシナリオという三つの案を持ちまして、ほぼ真ん中の数字が採用されたというふうに理解しております。
 この三つというのはどういうことかといいますと、足元は内閣府の「改革と展望」でフォローして、ただ、それは残念ながら二〇〇七年ぐらいまでですので、今、その後二十年、トータル二十年、三十年で予測するためには、かなり大胆な仮定のもとに計算せざるを得ません。
 その場合に、何がいいケースか悪いケースかというとき、やはり技術進歩率、TFP、トータル・ファクター・プロダクティビティーといって、要は、人口の成長からいくと低成長を余儀なくされるわけですけれども、その上にどのぐらいオンするかというのは技術進歩の率なんですね。これはなかなか推測するのは難しいんですが、難しいがそういう三つのケースをとらせていただきまして、それに従って各予定利率がはじかれてきているわけです。その中で、今回採用されました数字というのはほぼ真ん中に相当しているというので、非常に妥当な水準ではないかというふうに思っております。
 かつ、これは余談かもしれませんが、この計算等をやっていたときは一番日本の経済が底、底であってほしいと思いますが、そういうときに行ったもので、決して楽観的な状況を絵にかいてやっていたわけではない。そういうような環境ではなかったもとで計算されたというふうに理解しております。

 それから最後に、最初の話で、運用のところはこれまで年金資金運用基金の方で行われておりました。実は、これもいろいろ問題が多々あることは私もマスコミ等から存じ上げておりますが、事運用に関しましては、これほど透明性のもとで運用されているところはないぐらい、ここまで出すかというぐらいのところの透明性を持って運用されているということは、御確認いただきたいと思います。
 ただ、やはり、いろいろな計算にもよりますけれども、株が下がっているときはそれなりの損失が出ているのは事実でございまして、これをどう責任という問題に必ず皆さん方はなるかと思います。

 ただ、基本的なところは、株式を含めた資産運用に関して結果で責任をとらされたら、これはみんな首が毎日毎日飛んでいくというのが実際でございますので、この工夫も、やはり結果ではなくて、そこで当然負うプロセスをちゃんと踏んで運用したかどうかというところで責任を問うというのが常識になってきております。とはいえ、もし仮に大きくずっと損を出しているというようなところは、私、個人的にはやはり問題なしとはしないと思っております。
 今度、独立行政法人になりますと、まず一つは、運用に関するところが、今までは審議会と基金とに幾分分かれている感じがありますが、それが一体化されます。行政法人の方に一体となりまして、今と同じように専門家が一体となって運用するということで、そこで専門性が効率的に発揮されるんじゃないだろうかというのは一つ期待しております。
 プラス一番の大きなところは、独立行政法人の器がそうでありますように、監督官庁の方でそれを評価することになっています。評価しなくちゃいけないことになっています。ここはやはり、今まで考えてみると必ずしも十分な評価が行われてこなかった点は、若干私もそうかなと思います。
 この評価というのは、今後、独立行政法人へ移りまして、その評価をするときに入ります。これからの運用次第ですけれども、評価をきちっとしてやれば、それなりの責任というんでしょうか、いろいろの問題点があればその改善というものが出てきて、それがよりスピード化されるのではないかというふうに思っております。
 以上のような視点からまとめますと、予定利率に関しましては十分可能な水準だと思いますし、それから、基金の制度変更に関しても期待が持てるんじゃないかというふうに私は思っております。

 以上でございます。(拍手)

○衛藤委員長 どうもありがとうございました。
 次に、高山参考人にお願いいたします。

○高山参考人 高山でございます。
 本日は、衆議院厚生労働委員会にお招きくださいまして、まことにありがとうございます。参考人として年金関連法案に意見を申し述べ得る機会をちょうだいいたしましたこと、大変光栄に存じます。

 以下、十一点にわたり意見を申し述べます。

 一。日本の公的年金は、二〇〇〇年三月末の段階で約六百兆円の債務超過となっておりました。この債務超過は、既に政府が支払い約束をした年金給付のうち、財源が手当てされない金額でございます。この債務超過の圧縮問題、すなわち、六百兆円の追加資金をだれが、いつ、どのように負担するかという問題こそが、今回の年金改革における主要テーマにほかなりません。この問題を、以下、問題一と呼びます。求められているのは負担の構造改革でございます。

 二。他方、公的年金制度への信頼は、今、かつてないほど揺らいでおります。年金制度に対する信頼をどのように取り戻すかという問題について的確に回答を与えることも、今回における年金改革の重要なテーマでございます。以下、この問題を問題二と呼びます。

 三。政府提出の改正法案は、問題一について、1年金保険料の引き上げ、2国庫負担の引き上げ、3給付水準の実質的引き下げの三つによって債務超過を圧縮、解消しようとしております。これからの十五年間、毎年一兆五千億前後の定期的な年金負担増計画となっております。
 政府案が実現いたしますと、企業は従来よりも一段と厳しいリストラを強行せざるを得なくなります。また、その結果、厚生年金の空洞化が一層進み、多数の若者が労働力市場から締め出されてしまいます。現役労働者の手取り所得は伸び悩み、消費支出も低迷してしまいます。失業率は上昇し、結果として経済成長が阻害されてしまいます。さらに、若者にとっては年金負担の方が年金給付よりも大きくなるおそれが強く、若者の年金不信を取り除くことはできません。

 四。既に年金を受給しているお年寄りの年金給付も、これから二十年近くにわたって実質目減りが続きます。政府シナリオの基準ケースを想定しますと、モデル年金受給世帯の年金水準は五〇%台から四〇%強まで低下いたします。給付水準の五〇%保証は既裁定年金にはございません。詳細はお手元の図の一と二をごらんになっていただきたいと思います。

 五。政府案は保険料水準固定方式と呼ばれておりますけれども、同時に給付水準固定方式という性格を兼ね備えております。この二つの約束を同時に守ることは容易ではありません。将来シナリオが狂うということはよくあることでございますが、仮にそうなった場合、受給開始年齢のさらなる引き上げに追い込まれるおそれが強うございます。

 六。政府案による国庫負担の引き上げが実現いたしますと、税金のむだ遣いがふえてしまいます。なぜ年金に税金を投入するのかという点について、原点に立ち返った議論が必要でございます。

 七。問題一と問題二の解決に当たって、政府割り当てを間違ってはいけません。問題二を解決するためには、スウェーデン流のみなし掛金建てへ切りかえるのが最善でございます。拠出した保険料は年をとったら必ず年金給付の形で返ってくる、そのような安心のできる仕組みをだれにもわかるような形でつくること、そういうことによって、制度への加入意欲を高めるのでございます。なお、その際、過去拠出分との区分経理が求められます。

 八。問題一は、年金保険料を引き上げることの是非をどう判断するかによって解決の方法が違ってきます。他の代替的な手段との比較検討を十分になさった上で、解決方法を決めなくてはなりません。

 九。また、給付の実質的な引き下げも、年金額の多寡にかかわらず一律に行うのか、あるいは高額の年金給付を受給している人に率先して譲ってもらうのかのいずれかによって、改正案の具体的な内容が異なってきます。

 十。年金数理部局を厚生労働省から分離して、公正取引委員会や会計検査院のような中立かつ独立の機関とする必要がございます。タックスペイヤーの立場からしますと、与党の政府案づくりだけに協力する現行の仕組みは改めなければなりません。

 ちなみに、アメリカ合衆国の年金数理部局は、与党ばかりでなく、野党や民間のシンクタンク、さらには大学の研究者に対しても公平かつ中立的に情報を提供しております。そのような仕組みが政策論議を中身の濃いものにしているのです。

 十一。最後に、政治への期待を申し上げます。

 信頼と安心の年金制度、それは、国民が究極的に政治家と政府をどこまで信頼することができるかにかかっております。政治家が第一に追求すべきものは国民の間にわき上がる信頼であり、名声である、これは故石橋湛山首相がおっしゃったお言葉でございます。
 白虎のように天下をへいげいし、将来を冷徹な目でお見据えになってください。そして、知恵を広くお求めになり、あらゆる政策手段について想をお練りになってください。新しい政策展開によってどのような帰結がもたらされるのか、そのことについて想像力をたくましくなさってください。その上で、重い決断をなさっていただきたく存じます。

 どうか審議を十分尽くしていただきたい。数の論理だけを優先し、強行採決を繰り返すというようなことはぜひとも避けていただきたく存じます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

○衛藤委員長
 どうもありがとうございました。

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